復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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すまん、チーフ戦まで行けなかった…

対MS。ゾイド戦です。

これ、やり過ぎかな?


串刺し世界Pat2

 時間は、シュンが惑星ワラキアに来る前の数時間前に遡る。統合連邦軍が誇る英雄が、彼よりも先に惑星の大地へと降り立っていた。

 彼はUNSCと呼ばれる連邦参加の勢力の一つに属しており、属している勢力は幾度も無く危機に瀕したが、その度に彼が救って来た。

 一度、四年ほどコールドスリープで寝ていたが、問題なくUNSCの対抗勢力である軍事的・宗教的連合軍であるコヴナント軍との戦線に復帰し、更に功績を上げる。この時に、彼は戦友とも呼べ、最愛のパートナーとも言える存在と離れ離れとなる。

 パートナーの名はコルタナ。高度な知能を持つAIであり、ホログラムによって具現化が可能だ。

 英雄である彼と共に死地を潜り抜けた中であるが、開発者である五十代の女性であるキャサリン・ハルゼイ博士のクローンの脳を利用して製造されたAIであるために寿命が短い。

 さて、英雄の方へ戻ろう。

 英雄の名は、マスターチーフ。UNSCの海軍の特殊機甲部隊であるSPARTAN-Ⅱに所属する兵士であり、識別番号は117で、コールサインはシエラ117だ。

 三十年以上の従軍歴を持ち、数々の武勲を上げ、捕虜勲章以外の多数の勲章を授与している最強の兵士である。なお、六歳の頃から従軍している。様々な武器を扱うことができる。

 彼が寝ている間に自分の世界が、統合連邦と惑星同盟が存在している世界と融合していたのか、様々な機動兵器も扱える。UNSCに復帰後に、それらの訓練を受けたのだろう。

 それだけでない。彼は緑色に塗装されたスパルタン専用のパワーアシスト兼装甲服を身に着けている。

 アーマーは「ミニョルアーマー」と呼ばれ、様々な機能を付けているために凄まじい重量であるが、パワーアシストのおかげで軽やかに動くことができ、200kgもの重量がある物体を簡単に持ち運べ、人間の頭蓋骨を用意に粉砕することが可能である。

 更にアーマーの装甲は特殊合金の多層構造であり、表面にはエネルギー兵器を拡散するコーティングが施され、装甲内部にはジェル層があって衝撃を吸収するため、2kmと言う高さから落ちても無傷で済む。エネルギーシールドも搭載しており、ほぼ全ての攻撃を無力化できるが、キャパシティには限界がある。しかし、安定した状態を続けさせれば、再び完全な状態に戻るオート・リチャージも搭載されている。

 背中にはマグネットがあり、武器を引っ付けることができ、足裏にもマグブーツが搭載され、無重力下でも重力下と同じように移動ができる。全身にスラスターも搭載しているので、宇宙空間でも高速移動が可能で、重力下でも降下やダッシュが容易に可能だ。

 ヘルメットにはフラッシュライトを始め、戦闘を補助する機能が幾つか搭載されており、HUDには銃の種類にも関わらず、中央には常に照準が表示され、戦闘をサポートする。銃器火器の残弾もエネルギーも表示し、広い範囲の通信機能を持つ無線機やレーダーも搭載している。

 これ程の高機能を持つバトルアーマーであるが、弱点は重過ぎて水に沈むことがある。

 その点を除けば、最強の戦闘服である。

 この機能を持つアーマーは全歩兵に装備させるべきだが、高性能な分、製造コストが高く、二個連隊分で生産が打ち切られている。ミニョルアーマーに袖を通せると言う事は、スパルタンとして認められたわけだ。

 

 惑星ワラキアの大地に降り立った最強の兵士に最強のアーマーを身に着けた兵士は、随伴するUNSCの宇宙海兵隊一個小隊と共に周囲警戒を行い、周囲に敵影が居ないことを確認すれば、ハンドサインで海兵隊員たちに知らせ、周囲警戒を解かせた。

 

「よし、警戒解除。総員、楽にして良し」

 

 マスターチーフが手を下げたのを確認すれば、小隊長である中尉は部下たちに楽にするよう告げる。これを聞いてか、小隊に属する海兵隊員たちは、手にしているMA5Dアサルトライフルの銃口を下げ、姿勢を低くした。

 

『こちらモルフォ1-2、離脱する』

 

「ありがとう、撃墜されないように気を付けろよ」

 

『大丈夫、マスターチーフが居れば、撃墜されることは無い』

 

 マスターチーフら含む海兵隊員等を運んだUNSC全軍に採用されているペリカンと言う愛称で呼ばれる降下艇が離脱するのを通信で聞いてか、中尉は自分を運んでくれたペリカンのパイロットに礼を言いつつ、敵機に撃墜されないように返した。

 パイロットが冗談を言って返した頃には、ペリカンは空高く上がっていた。周りに敵機の機影が居ないことを確認できれば、ペリカンは母艦がある宇宙に向けて飛んで行く。

 敵機かミサイルによって降下艇が撃墜されず、無事に大気圏を抜けたことを確認すれば、この惑星の地図が乗っているホログラムを中央に投げ込み、自分等が与えられた地域の立体映像が映し出されれば、簡略したミーティングを行う。

 

「よし、確認を行うぞ。任務は数日前にこの星に取り残された残存兵の調査だ。我々はこの地域周辺で探査を行う。もし生存者が居る場合は、救助する必要がある」

 

「地上軍の尻拭いでありますか?」

 

「ミシェル二等軍曹、黙って聞け。腹の立つ地上軍とはいえ、我々の戦友だ。助けない理由が無い」

 

「おー、怖い、怖い」

 

 救出と言う言葉を聞き、一人の地上軍の将兵を蔑む思考を持つ二等軍曹が割って入って来たが、中尉はそれを低くした声で黙らせ、地上軍の将兵も戦友の一人であると注意する。

 

「二等軍曹、黙れないなら、敵に黙らせてもらうが良いか?」

 

「さ、サー! 中尉殿!」

 

 注意された二等軍曹はふざけた態度を取ったが、二度目の注意で敵にお前を仕留めさせるとも言える発言を受け、背筋を凍らせて上官に対して正しい態度を取る。自分等宇宙海兵隊員が一番であると考える二等軍曹を黙らせた中尉は、ミーティングを再開する。

 自分等にとっては大英雄であるマスターチーフと共に遂行する調査任務は、数日前、およそ四日前に行われた連邦地上軍二百六十万人の大兵力によるワラキア解放作戦もとい侵攻作戦の失敗で逃げ遅れた敗残兵の調査だ。

 この侵攻作戦は、宇宙軍八千隻もの艦艇による支援によって行われ、敵の装備も第二次世界大戦以下であるから、作戦成功率は百パーセントと言う軍事作戦では素晴らしくてこの上ない数字であったが、敵の予想を遥かに上回る反撃により、作戦は百八十万と言う多大な犠牲者を出して失敗に終わる。

 作戦の大失敗を受け、直ぐに敵対勢力である同盟軍のプロパガンダに使われ、作戦の主力を担っていた地上軍のプライドはズタズタであった。宇宙軍も同様であり、あれ程に惑星より脱出してくる将兵らの救出にも関わらず、かなりの損害を出したことから、「連邦宇宙軍は脆弱な集団」と言うレッテルを張られた。

 そして同盟軍のプロパガンダの軍上層部と広報部の対応は、「こちらは大損害を被って失敗が、相手に自軍の六倍の損害を与えた」と言う事実を隠ぺいした物に変えた。まるで太平洋戦争こと大東亜戦争時に戦況が悪化してプロパガンダに走った大日本帝国の大本営のようだ。

 

 しかし、事実を塗り替えたとはいえ、敵地に取り残された将兵らを見捨てるわけにはいかない。

 そう考える連邦軍の第四軍である宇宙海兵隊は、敵地に取り残された戦友達が生きているかどうか調べるべく、こうしてマスターチーフを含める宇宙海兵隊一個連隊を敵地へと潜入させたわけだ。

 調査は小隊ごとに行われ、惑星各地へと分断する。調査範囲は100㎞と範囲は広く、マスターチーフが属している小隊の調査地区は、惑星ワラキアの首都とされるブラン城周辺だ。

 敵の首都付近で調査を行うと言う事は、敵に発見される確率が高く、場合によっては大多数の敵と交戦する羽目になるが、マスターチーフは一人で大多数の敵と戦い、撃退した功績を持っているため、彼に随伴する海兵隊員たちは、必ず自分達は安全に任務を遂行できることを確信していた。

 

「以上だ、何か疑問は?」

 

 ミーティングが終われば、中尉は部下たちに異論はないのかを問うた。

 マスターチーフを含めて誰も異議が無い事が分かれば、中尉は出発することを告げた。

 北と南、西と東にそれぞれ一個分隊に分けて調査を行う。マスターチーフが属する分隊は、北の辺りを調査するアルファ分隊だ。ちなみに、中尉が分隊長を務める。

 

「よし、出発する! 俺たちアルファ分隊は北だ。南はデルタ、西はチャーリーで東はブラボー。分かったらさっさっと行け!」

 

『イエッサー!』

 

 中尉が怒号を響かせれば、小隊は四つの分隊に別れて生存者の救助に向かった。

 消音器を装着した銃を抱えて…。

 

 

 

「ぐえぁ!」

 

 時間は、シュンが二人目の敗残兵を肉塊にしている場面へと戻る。

 二人目が肉塊となった所で、連邦兵たちは手にしている盛田式アサルトライフルを、シュンに向けて撃ち始めた。

 この無数の弾丸の雨に対し、シュンは先ほど肉塊にした二人目の死体を盾にする。

 連邦軍の歩兵と自分が身に着けているアーマーの防弾性は高く、敵兵と数mほど離れていれば、ある程度は防いでくれた。これを利用して、シュンは一気に固まっている集団に近付き、纏めて大剣で叩き斬る。

 

「ひっ、ひぃ!」

 

 叩き斬られた四人の戦友の胴体が下半身から斬りおとされ、凄まじい音を立てて勢いよく血を撒き散らしながら地面に落ちたのを見た連邦兵たちは、恐れおののき始める。

 当然であろう。あれだけ撃っても、シュンが身に着けているアーマーに二、三発くらいしか当たらず、直撃でも無いからだ。おまけに同盟軍のある程度の弾から身を守ってくるアーマーを、まるで温かいバターのように斬っている。この光景を見て、恐れを抱かない者は、機動兵器に乗っている者だけだ。

 

「怯むな! ハチの巣にしろ!!」

 

 怯んでいる兵士等に、指揮官が活を入れれば、兵士たちは直ぐに射撃を再開した。

 物の数秒で弾は暴風雨のようにシュンに吹き付けて来る。これを防ぐ手段である死体の活用は、惨たらしく殺してしまったために出来ない。ハチの巣になって肉塊にされる前に、奇跡的に近くにあった家屋のドアに飛び込み、銃弾の嵐を回避した。

 

「馬鹿め! 木造住宅が耐えきれる物か!」

 

 逃げた先は木造住宅であり、連邦軍の正式採用の突撃銃の弾丸を防ぎ切れる物ではない。

 即座にシュンが逃げた木造住宅に一斉射撃が加えられ、窓ガラスは次々と割れ、弾丸が木製の壁を容易く貫通し、匍匐状態になっている彼の頭上を弾丸が飛ぶ。少しでも頭を上げれば、たちまち頭部は原形を留めない程に破壊されるだろう。それに、一個小隊分の人数による一斉射撃だ。常人なら恐怖の余り頭を上げ、無数の弾丸を浴びてあの世へと送られる。

 しかし、シュンには呆れるほど慣れた災難だ。敵が木造住宅に集中している間、シュンは裏口のドアを開け、ハチの巣状態の木造住宅から飛び出した。

 

「まだ撃ってるな」

 

 立ち上がったシュンは、敵が前の世界の赤軍兵士と同様にまだ住宅を攻撃していることを確認すれば、敵の背後に回り込み、味方の背後を守っている兵士を大剣で斬り殺す。

 

「ん、なっ!? お前…」

 

 凄まじい音を立てて大将にされた兵士が肉塊となれば、その音に別の兵士が気付いて即座に持っているライフルをシュンに向けたが、彼が投げたナイフを頭部に突き刺され、息絶える。

 まだ自分がとっくに這い出ている木造住宅に向け、敵が撃ち続けているのを確認すれば、遠慮なしに背後を晒している連邦兵等を纏めて斬り殺す。凄まじい音を立てて斬られた兵士らは、内臓を撒き散らしながら宙を舞う。無論、血を撒き散らしているので、味方の返り血を浴びた兵士らが、背後で大剣を持つシュンの存在に気付き、大声で叫んだ。

 

「う、後ろだ! 後ろに居るぞ!!」

 

 大声で叫ぶ兵士であるが、既にシュンが暴れ回っており、連邦兵等は対処する間もなく大剣の錆となって行く。シュンが大剣を振るうたびに無残な肉塊や内臓が周囲に撒き散らされ、まるで地獄絵図のような光景が作り出されていく。何とか銃を撃っている兵士も居るが、シュンに当たることなく、その兵士も周りの肉塊となっている味方と同様に真っ二つに叩き斬られる。

 

「あ、あひぃぃぃ!!」

 

 自分の部下が次々と肉塊にされるのを見て、恐怖した隊長は部下を見捨てて自分だけ生き残ろうとしたが、シュンがそれを許すはずが無い。逃げる敵の隊長を見たシュンは、命乞いをする最後に残った兵士を斬殺した後、そこら中に落ちている血塗れの盛田式ライフルを拾い上げ、弾が残っていることと確認してから照準器を覗き、逃げる隊長の背中に向けて数発ほど撃ち込んだ。

 盛田式アサルトライフルの性能は、未来の軍隊が使用することもあって精度が良い。短発で撃てば、必ず命中すると過言ではない。銃弾を背中に受けた隊長は、血飛沫を上げながら地面に倒れる。

 

「よし、これで歩兵は全滅か…」

 

 周囲にバラバラの死体となった連邦軍歩兵の多数の死体を確認して誰も動いていないのを確認すれば、敵歩兵は全滅したと確認する。後は、ストライクダガーやコマンドウルフを初めとする機動兵器だ。何処かで暴れているだろうと思って、その場から移動しようとするシュンであったが、わざわざ出向くほどでもなく、目標が自ら来てくれた。

 

「ぶわっ!?」

 

 突如となく、隣に落ちて来た巨大な鉄塊が起こした衝撃で、シュンは近くで火災を起こしている家屋まで吹き飛ばされた。壁を突き破り、家屋内まで吹き飛ばされたが、シュンには殆どの外傷が見られない。

 そんな彼を、共和国のオオカミ型の中型ゾイド、「コマンドウルフ」に乗り込むパイロットは、拡声器を使って意気揚々と踏み潰したと勘違いして叫んでいた。

 

『や、やったぞぉ! 大剣野郎を踏み潰した!!』

 

『本当か!? 直ぐに死体の確認を行う!』

 

 その勘違いの報告で、同じ機体に乗る僚機が、シュンが居る家屋まで接近してくる。

 でかでかと叫ぶ声を聴いていたシュンは、直ぐに起き上がって燃え盛る家屋から飛び出し、自分の存在に気付かず、足元を疎かにしているコマンドウルフの前足の一本を大剣で切り落した。右前足を斬りおとされたコマンドウルフは、叫び声を上げながらバランスを崩して地面に横たえる。

 戦闘メカのはずのゾイドが、痛覚を感じて叫ぶのは、単なる機械では無く、生きている機械生命体であるからである。

 残り三機のコマンドウルフに乗るパイロット達は、大剣で易々と鋼鉄の機械の足を斬りおとすシュンの姿を見て、驚きの声を上げる。

 

『嘘だろ…!?』

 

『魔法剣士対策のコーティングが施してんだぞ! 一体どうなってんだ!?』

 

『新型の、特殊合金か!?』

 

 彼らが驚きの声を上げる中、シュンは右前足を斬りおとされてバランスを崩したコマンドウルフの頭部に大剣の刃を振り下ろそうとする。

 

「前の世界じゃ戦車をぶった切ったんだ! 今さらデカいメカの犬ころの前足を斬ったくらいでな、驚きはしねぇな!!」

 

 そう言いながらコックピットがある頭部に大剣の刃を振り下ろし、未だに脱出できずにいるパイロットごと斬り殺した。

 前頭部を斬られたコマンドウルフは、両断されたパイロットと共に息絶える。

 これで残るは三機だ。ストライクダガーも含めてあと七機であるが、この様子のシュンからして、残る七機も全滅させる勢いだろう。

 

『こ、コマンドウルフを…!』

 

『あり得ねぇ、人間がゾイドに勝つなんて…! 対機動兵器の火器も使わずに勝つなんてあり得ねぇ! きっとマグレだ!』

 

 大剣を持った人間が機動兵器を倒したのを見て、残るパイロット達は恐れを抱いたが、一番近い距離に居るコマンドウルフのパイロットはマグレだと自分に言い聞かせ、自機の自慢の近接兵装であるエレクトロンバイトファングで、シュンを噛み砕こうと飛び掛かった。

 全長147mの巨体と46t、否、AZ二連奏ロングレンジキャノンとアシスタンスブースターなどの追加装備を施して66tもの質量を持つ機体が頭上から飛び掛かってくるが、シュンは怯むことなく大剣を構え、一定の距離まで近付いてくるのを待っている。

 近付いてコマンドウルフが自分を噛み砕こうと大きく口を開いて飛び掛かって来た時、シュンはそれを待っていたかのように両足に力を入れて踏ん張り、思いっ切り力を入れて大剣を向かってくるコマンドウルフに向けて振り下ろした。

 通常なら、人間の方が質量の差で負ける筈だが、結果は我々の予想よりも異なるどころか、信じられない結果に終わる。

 そう、追加装備も含めて66tもの重量を誇るコマンドウルフが斬れたのだ!

 

「馬鹿…!?」

 

 キャノピーを易々と切り裂いて迫ってくる巨大な刃に、パイロットは驚きの表情を浮かべながら言い終える間もなく、乗っているコックピットごと二つに分断される。

 

「おぉぉぉ!!」

 

 完全に頭部が左右に別れた後に、シュンは更に力を込めて叫び声を上げながら巨大な刃を動かす。数十秒後、シュンを噛み砕こうとしたコマンドウルフは真っ二つとなり、左右に別れて地面へと落下する。大きな音を立てて二つに分かれた残骸が落ちた後、爆発もせずに横たえたままとなる。

 巨大な質量を持つコマンドウルフを二つに分断したシュンは、少し息を乱しながらも直ぐに整え、近くに対機動兵器用の携帯式ロケットランチャーを見付け、それを拾い上げて弾頭を先に搭載し、驚くべき光景を見て呆然としているコマンドウルフに向けて撃ち込んだ。

 

『ば、馬鹿な…!?』

 

『ゆ、夢か…!? これも夢なのか…!?』

 

 彼らにはロックオンされている警告音が聞こえず、標的にされたコマンドウルフは、背中に搭載されているロングレンジキャノンに誘導弾を受け、砲塔に内蔵されているエネルギーにも誘爆して大爆発を起こす。

 味方機が大破したのを見て我に返ったパイロットは、即座に背中に搭載されているロングレンジキャノンを、再装填を行っているシュンに向けて撃つ。

 だが、この兵装は対機動兵器用だ。対人火器では無い。一応ながら、本機には対人用の機関砲が装備できるはずだが、今のコマンドウルフには搭載されていない。

 

「く、クソッ! ロックオンシステムが!」

 

 完全なる対機動兵器用であるため、自動照準機能は発揮されず、見当違いな場所へと撃つだけだ。パイロットは即座にマニュアルに切り替えようとしたが、その頃には既に対機動兵器用のミサイルが発射された後だった。発射されたミサイルは、コックピットへ向けて真っ直ぐと飛んで行き、数秒後にはコックピットに命中して目標を無力化した。

 

「犬ころ一個小隊分は全滅させたな。後は…!」

 

 頭部を失ったコマンドウルフが地面に倒れ込んだのを確認すれば、頭部に搭載されている75mm対空バルカン砲を撃ってくるストライクダガーの方へ振り向き、持っている対機動兵器用のロケットランチャーを捨て、機関砲レベルの弾頭を回避しつつ、身を隠せる場所へ飛び込む。

 

「さて、MSと戦うのは闘技場以来だな…乗ってんのは、馬鹿とは違って訓練受けた兵隊だ。馬鹿とは違って歩兵対策の訓練してんだろうな」

 

 頭部の機関砲を掃射してくるストライクダガーを見ながら、相手が同じMSとは言え、闘技場で戦ったザクとは全く違う物だと判断すれば、相手が撃ってくるのを止めるのを確認してから、対抗策となる武器を探し始めた。

 一方で、頭部のバルカン砲による掃射を止めたストライクダガーのパイロットは、シュンのバラバラの死体を確認するために、前に出て来る。

 

『死んだかどうか確認する。生きてたら、ビームを浴びせろ』

 

 一機が僚機に援護を頼んでから前に出て、シュンを探し始める。

 相手は一人で四機の火力と速度を増加したコマンドウルフを倒した男であるが、そんなものはマグレだと、その男の死体を探すパイロットは高を括る。

 そんな油断しているストライクダガーを見たシュンは、サーチライトに見付からないように移動しつつ、機械の巨人が足元を疎かにしたところで、身を隠している場所から飛び出し、大剣で片方の足を斬った。

 

『な、なんだ!? 急にバランスが!』

 

『奴だ! 奴が生きてる!!』

 

『う、撃つな! 味方に当たる!!』

 

 左足を切断されてバランスを崩そうとするところで、シュンは身を曝け出したため、控えていた三機に見付かってしまう。直ぐにビームの嵐が来ると思ったが、後方に控える三機は誤射を恐れてか、撃とうともしなかった。シュンはこれを利用し、バランスを崩して倒れ込んだ敵機を盾にしつつ、右往左往している一機の敵機に向けて再度回収した対機動兵器用のロケット弾を撃ち込む。

 コマンドウルフとは違って左手に持たれている盾で防がれてしまう。防がれたのと同時に、倒れている敵機が巨大な右手でシュンを叩き潰そうとしたが、シュンの大剣によって斬りおとされる。また攻撃されてはかなわないので、シュンは攻撃手段を奪うために左腕も斬りおとした。

 

「う、うわぁ!? なにをする!? 離せ!!」

 

「ちょっと付き合え」

 

 敵機が行動不能になったところで、シュンはコックピットのハッチを斬り、中に居るパイロットを引きずり出した。

 シュンは彼を盾にして残る三機に接近する腹だ。直ぐに暴れ回るパイロットの両手と両足を圧し折り、ズタズタになった彼の首根っこを掴み、彼を盾にしながら残る三機のストライクダガーに走って近付こうとする。

 これを見た残る三機に乗るパイロット達は、ますますシュンに手を出せない。

 

『な、なんて奴だ! ヒューイを人質にしながらこっちに来やがる!!』

 

『ひ、卑怯者目! 何とか狙撃は出来んのか!?』

 

『む、無理です! どれほど出力を弱めても、ヒューイごと燃やしてしまいます!!』

 

 人質を取りながら接近してくるシュンに、三名のパイロットはどうする事も出来ない。

 ましてや、人質を取っている犯人だけを無力化できる兵装など無く、その腕も無い。

 

「そうだ、撃ってくんじゃねぇ。そのまま動かなきゃ、生かしてやるからよ!」

 

 そう三機の巨人に向けて言いつつ、大剣が届く距離まで近付いたところで、片手で大剣を振るって手近に居るストライクダガーの足を切断し、バランスを崩した所で武器を持っている右腕を切断した。しかし、まだバルカン砲を搭載している頭部が残っている。邪魔な人質をそこらに投げ捨てた後、シュンは自分に正面を向ける倒れ込んだ敵機の頭部を立てに切断した。

 

『ようやく離したな!? 踏み潰してやる!!』

 

 人質を離した所で、彼らに遠慮は無くなったのか、一機が自分を踏み潰そうと左足で踏み付けて来たが、シュンは臆することなく落ちて来る巨大な足を大剣で切断し、地に足を付けている片方の右足をも大剣で切断した。

 

「下手な真似しなきゃ、死なずに済んだのにな…!」

 

 自分を踏み潰そうとした敵機に対してそう言いながら、シュンは巨大な胴体にあるコックピットのある辺りに刃を振り下ろし、中に乗っているパイロットを殺害した。

 斬られた個所から火花が散り、電が音を立てて走り回っている。もう爆破寸前であろう。直ぐにシュンは中破させた敵機から離れ、三機のMSを撃破した自分を恐れる最後の一気に襲い掛かる。

 

『う、うわぁぁぁ!!』

 

 向かってくる悪魔のような男に対し、パイロットは恐怖の余りビームライフルを乱射するが、全くシュンに当たらない。オーバーキルとされるほどの対空バルカン砲が頭部に搭載されている筈だが、彼は恐怖の余り、その兵装の存在を忘れてひたすらビームライフルを撃ちまくっていた。

 そんな恐慌状態のパイロットが乗っているストライクダガーに対し、シュンは容赦なく大剣で足を斬り、他の三機と同様にバランスを崩させる。敵機がバランスを崩した所で、シュンは残る足をも切断し、完全に立て無くした後、倒れ込んだ敵機の衝撃で吹き飛ばされないよう地に足を踏ん張らせて衝撃に耐える。

 衝撃に耐えたところで機体によじ登り、大剣の刃をコックピットに向けて思いっきり突き刺した。

 大剣を握る柄からは、中に居るパイロットを刺した感触が伝わってくる。

 パイロットが完全に息絶えたのを確認すれば、巨大な刃を引き抜いて、それを背中に下げている鞘のラックに固定させる。

 

「クソッタレの化け物が! 死ね!!」

 

 格好良く全滅させたところで、立ち去ろうとして居たシュンだが、情けで生かした筈の二機目のパイロットがコックピットから飛び出し、自分に向けて拳銃の弾を撃ち込もうとしていた。

 そんな殺気に気付いたシュンは、直ぐに腰のホルスターに差し込んである連邦軍正式採用の自動拳銃を素早く抜き、瞬時に自分を撃とうとしているパイロットへ向けて二発ほど撃ち込んで無力化した。

 これで自分に対しての脅威は無くなった。

 そう認識したシュンは、動かなくなった機械の巨人から飛び降り、未だ燃え盛る村まで戻ろうとする。戻っている最中、両手両足の骨を圧し折った唯一の生き残りであるパイロットが、自分に向けて罵声を浴びせて来る。

 

「このマラ舐め野郎が! 俺はまだ生きているぞ!! 今すぐこっちに来い! お前のナニを噛み千切ってやる!!」

 

 卑猥な言葉を交えての罵声が来るが、シュンはそんな罵声に対し、笑みを浮かべながら律儀に返す。

 

「そうやって強がってろ。もうじきワルキューレの部隊が駆け付けてくるだろうぜ。そしたらお前、外で串刺しにされている連中の仲間入りになるだろうな」

 

 その返しを聞いたパイロットの表情は、完全に青ざめていた。

 そんな彼を放置したシュンは村に戻り、回収できる分だけの物を、ワルキューレの部隊が来る前に回収しておく。主に回収するのは食料に水、武器弾薬と衣類などだ。それらを敵歩兵の死体から剥ぎ取った行軍用の大型バックパックに詰め込んでいく。

 出来るだけ詰め込めば、連邦軍の敗残兵たちの蹂躙を受けた村を見渡す。

 

「誰も生きてねぇなこりゃあ…まぁ、あんなもん見ちまったら、こうなるんだろうけどな」

 

 輪姦されて死んでいる女性と少女や、撃ち殺されている少年も含める男性たちを見ながら呟けば、敗残兵たちがこんな蛮行に出たのは、外で立てられている串刺しにされた死体が原因だとシュンは考察する。

 焼き尽くされた村の処理を、これから急行してくるワルキューレの部隊に任せ、シュンは村で回収した黒いマントを纏い、死んでいる敵の隊長の首を切断して自分の腰にぶら下げた後に立ち去る。

 シュン以外に生きているこの村の生存者は、両手両足を切断されたストライクダガーのパイロットしかいない。

 後に残された者は、村人たちの焼死体や射殺された死体、シュンに立ち向かって無残に惨殺された連邦兵の死体だけであった。




次回はチーフ戦です。

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