ブラド公の串刺し刑がモデルです。
ちょっとグロ注意。
シュンがモスクワの戦いが行われている1941年11月30日の世界より、次元の亀裂に飛び込んで別の世界へと向かっている頃、統一国家群の集合体である統合連邦と呼ばれる勢力の宇宙艦隊が、同等の勢力であるワルキューレの支配地域、植民地世界の宇宙に現れ、標的にした惑星に向けて大規模な侵攻作戦を実行していた。
彼らの大義では、惑星に住む民衆の解放作戦であるが、知らぬものが見れば、立派な侵攻作戦にしか見えない。凄まじい数の大艦隊が、惑星に向けてロケット弾やミサイル、ビームなどを撃ち込み、ある程度の防衛戦力を削いだ後、輸送艦に搭載されている地上部隊を載せた降下艇が続々と標的の惑星に向けて降下して行く。砲撃を行っている戦闘艦艇からも降下艇が続々と出撃している。
降下艇を出撃させている輸送艦の艦内では、将官が降下艇に乗り込む大勢の歩兵に向け、拡声器を使ってこの作戦が民衆の解放作戦であることを説いていた。
『勇敢なる連邦軍の歩兵部隊よ! これは民衆の解放作戦である! ワイルドキャットに支配され、中世時代のような暮らしを強いられている民衆を、諸君らの手で開放するのだ! 勝利は既に我々の手の中にある! 安心して惑星へと降り立ち、現地の方々と握手を交わすのだ!!』
そう高い場所から降下艇に乗り込む将兵達に告げている将官であるが、誰も聞いている様子はない。
『こちらブラボー4-8、満員だ。発艦する』
「了解ブラボー4-8、発艦を許可する」
兵員を満載した降下艇から、順次輸送艦から発艦して惑星へと降下して行く。
作戦の主要目標である惑星へと降下して行く降下艇の数は数えきれない程であり、三十個師団相当の戦力が投入されている大規模な侵攻作戦であるが、連邦軍からしてみれば、通常の侵攻作戦で投入する規模にしか過ぎない。
群れを成すように降下艇が惑星へと降り立てば、うち一機が安全に着陸できる浜辺へと着陸し、載せている歩兵を続々と浜辺に降ろしていく。
「行け、行け!」
「ゴー、ゴー、ゴー!」
先に降下した歩兵部隊の指揮官らが、先導するように部下たちと共に砂浜へと降り立ち、周囲警戒を行う。異常が無いと判断すれば、上空で待機している群れに向け、安全な着陸地点であることを合図で知らせた。この合図を見て、上空で待機している降下艇群が、一斉に降下地点へと向けて降りて来る。
たちまち降下地点にされた浜辺は、連邦軍の歩兵で埋め尽くされ、降り立った彼らは地上を目指して一斉に全身を始める。まるで動物の大移動のようだ。
着陸した降下艇から、全ての歩兵が降り立てば、敵の防衛拠点となる場所へと突撃を開始する。しかも、戦車や歩兵戦闘車を待たずに突撃を行っていた。まるでソ連赤軍や中国人民義勇軍などを始めとする共産国軍の人海戦術のようだが、人命軽視感がある連邦地上軍からは、これが一般的な歩兵戦術である。
突撃した歩兵らは、遮蔽物となる場所へと隠れ、まずは降下前の艦砲射撃で徹底的に破壊された敵の要塞化された機関銃陣地などの防衛施設へ向け、一斉に手榴弾を投げ込む。手榴弾が爆発した後、連邦軍の歩兵部隊はワルキューレの防衛拠点へと雪崩れ込んだ。
「占領完了! 予定より速過ぎます!」
銃声や爆破音が暫く響いた後、ワルキューレの防衛施設は連邦軍の参謀たちが予想をはるかに上回る時間で終わってしまった。
理由は何故か?
それは敵の歩兵は一人も居ないからだ。居るのは装備を身に着けた人形だけで、防衛施設から出て来た歩兵たちは、あっけなく戦闘が終わったことに呆けていた。この様子を見ていた完全装備の女性将校は妙な違和感を抱き、軍団長である初老の男性将官に罠の可能性があると指摘する。
「閣下、余りにも呆気なさ過ぎます。罠の可能性が…」
「中佐、それは考え過ぎだ。それに砲撃でみんな逃げたんじゃないのか? 工兵部隊、直ちに軍団本部を設営せよ!」
「イエッサー!」
敵が居ないことを楽観視する軍団長は彼女の意見を無視し、近くで資材を抱えて待機している工兵部隊に、先ほど傘下の歩兵部隊が制圧した防衛施設に軍団本部を設置するよう指示した。この指示に応じ、工兵隊は指定された場所へ向けて軍団本部の設営を始める。
敵兵が一人も居ないことに、女性将校は納得のできないまま、自分の大隊本部がある場所へと帰ろうとしたが、何所からともなく味方の将兵らの悲鳴が耳に入って来た。
どうやら、彼女の悪い予感が的中したようだ。
『うわぁぁぁ!?』
「何事だ!?」
同じく悲鳴を耳に入れた軍団長は、直ちに報告に来た兵士に問い詰める。
伝令兵は上官からの問いに対し、少し慌てながらも自分が見た世にも恐ろしい光景を伝える。
「砂浜で展開していた歩兵部隊が、く、串刺しにされております!!」
「串刺しだと? 貴様、こんな状況で何をふざけたことを!」
「か、閣下! その伍長の言っていることは本当です!!」
砂浜に居た味方の歩兵部隊が串刺しにされたとの報告を受け、軍団長はふざけているのではないかと思い、伝令兵の胸倉を掴んで怒鳴り散らした。
同じく様子を見て慌てて帰って来た自分の部下も、伝令兵と同じような反応を見せているので、一体どんな状況なのかを見るため、味方の部隊の将兵が串刺しにされた現場である砂浜が良く見える崖に足を運んだ。
「な、なんだこれは…!?」
軍団長の目に映った光景は、伝令兵と部下が言った通りの光景であった。
砂浜に居た歩兵部隊、約三個連隊分の将兵全員が、みな砂浜の中から現れた先端が鋭利に尖った無数の棒に串刺しにされ、息絶えていた。
砂浜の中から某が突き出してくるのが突然過ぎたのか、みな驚きの表情を浮かべる間もなく串刺しにされて死んでいたが、何名かは串刺しにされても暫くの間に生きている者は少なからずいたが、突き刺された際に内臓を酷く損傷している為、十数秒後に息絶えた様子だ。
自分等が生きている時代の物とは思えない光景に、様子を見に来た連邦軍の将兵らは、ある者は恐怖し、ある者はこれが現実なのかどうか、目を擦り始める。
「お、おい…これ…」
「これ、歴史の教科書で見たことあんぞこれ…」
「た、確か、ルーマニアの…ブラドの辺りに描いてあった…」
味方の兵士たちが串刺しにされた光景を見た彼らは、自分達が歴史の教科書で見た項目を思い出し、目の前に広がる光景と同じ絵を見たことがある者は互いに向き合う。
「おい、なんか、音が聞こえないか?」
「空耳じゃないのか…?」
中世ヨーロッパで盛んに行われた串刺し刑のような光景に、連邦軍の歩兵たちが絶句する中、地中から何かが浮かび上がってくるような音が陸地に居る将兵らの耳に入ってくる。
空耳ではないかと思う彼らであったが、砂浜と同じように、地中から先端が尖った無数の棒が飛び出し、その場にいた将兵らを全て串刺しにした。
「ぐぁ!?」
「う、うわぁぁぁ!! ぼ、棒だ! 棒が地面から棒がぁ!?」
近場に居た味方の歩兵たちが全員串刺しにされたのを見て、慌てながら味方の知らせようとしたが、その兵士も真下に現れた棒に串刺しにされ、血を吹き出しながら息絶える。
次々と地中から現れる棒によって串刺しによる被害が増大し、指揮官も兵卒と同じく串刺しとなり、指揮系統が混乱する。それを見計らってか、砲撃で逃げたはずのワルキューレの歩兵部隊が、茂みや破壊されたスクラップの中から続々と飛び出してくる。連邦軍から見れば、石器時代レベルの戦車は林から出て来る。
全員が女性であり、その装備は、皿のような形をしているブロンディヘルメットと、濃いカーキ色の戦闘服、武器はリーエンフィールドNo4にステン・ガン、ブレン・ガンと言う第二次世界大戦期のイギリス陸軍歩兵であった。戦車もまた、クロムウェル巡航戦車やシャーマンファイアフライ中戦車と言う物である。
そんな女兵士らの襲撃を受けて混乱した連邦軍の将兵らは、更に混乱を極める。
「て、敵襲! ワイルドキャットです!!」
「こ、こんな時に!? 誰が指揮を執ってくれるんだ!?」
指揮官を串刺しにされて混乱する連邦軍の将兵らに、ワルキューレの歩兵部隊は容赦なしに銃弾や榴弾の雨を浴びせた。
標的にされた連邦軍の歩兵部隊は、成す術も無く水冷式重機関銃やM2重機関銃の機銃掃射で薙ぎ倒され、迫撃砲から降ってくる砲弾や戦車から放たれる榴弾で四方を失い、挽き肉へと変えられる。
串刺しにされた将兵らを除き、瞬く間に串刺しの被害を免れた数千人の歩兵は死体へと成り果てた。何名かの指揮官が持ち直し、小銃に銃剣を付けた敵兵らに向けて迎撃を行っていたが、数が少な過ぎ、各個撃破されていく。
「ま、待て! 降伏する! 撃たないでく…」
両手を上げて降伏する連邦兵が居たが、奇襲攻撃を仕掛けたワルキューレの歩兵らは、戦意の無い彼らに向けて容赦なしに銃弾を撃ち込んだ。
奇襲攻撃から数分、歩兵部隊が瞬く間に敗走状態になる中、串刺しを免れた戦車部隊が反撃に出ようとする。
「あんな化石みたいな兵器を使う連中なんぞ、俺たち戦車部隊だけで十分だ! 戦車前進、奴らを返り討ちにするぞ!」
約一個大隊規模の戦力を持つ戦車部隊の隊長は、逃げる味方の歩兵部隊を追撃してくる敵部隊の迎撃を行うべく、配下の部隊に出撃を命じた。この指示に応じ、まだ串刺しにされていない戦車部隊は迎撃に出る。
まだ歩兵戦闘車や装甲車、偵察車が生き残っている筈だが、乗員らはあろうことか先ほどの串刺しの光景を見るために搭乗しておらず、殆どが稼働していなかった。戦車部隊の幾つかも、差ほどが稼働していない。
射程距離に、銃剣で突き刺されるか、敵歩兵との白兵戦を繰り広げている味方の歩兵部隊が混じっていたが、戦車部隊は容赦なしに機銃掃射や榴弾による一斉射撃を行い、味方諸共脅威を排除しようとする。
味方の歩兵に混じってワルキューレの歩兵の肉塊が飛び散る中、戦車部隊の射線上にある平地は、たちまち地獄絵図となる。指揮系統が混乱しているのか、それとも彼らが生き残るために、味方の部隊を切り捨てたようだ。
「ひ、酷い誤認だ…! み、味方撃つなんて…!!」
生き残っている歩兵の一人が、苦しみながらも自分たちごと味方を撃った戦車部隊を睨み付けながら口を動かす。彼の身体は既にズタズタであり、生きているのが不思議な物であった。彼の周りには、誰かも性別も分からない死体が大量に転がっている。物の数秒後で、彼は味方に恨みを持ったまま息絶える。
「や、やったぞ! よし、我々だけで作戦を実行する! レーダーの情報では、連中は化石レベルの戦車だけだ! 各中隊、手順通りに行くぞ!!」
自分等だけで敵を排除したと意気込み、それで戦車大隊の大隊長は、自分等だけでも作戦を実行できると思い、配下の部隊に作戦継続を行うことを通信で指示する。指示に応じ、傘下の部隊は退き始める敵歩兵部隊の追撃に当たる。
連邦軍が保有する戦車は、M1エイブラムスやT-90などを初めとする主力戦車よりも遥か上を行く性能を持っており、二度目の大戦目の戦車如きが勝てる筈も無い。側面を晒したとしても、近距離まで近付かれなければ、徹甲弾によって貫通されることは無いのだ。
それに自動装填システムも搭載され、連射力も優れ、上部の装甲もそれなりにあり、トップアタック(戦車の上部攻撃)にも耐える事もでき、機動力も優れている。これで、一方的な虐殺が出来る。何らかのパニックが無ければの話だが。
「さぁ、狩りの時間だ。名一杯あのビッチ共の戦車をスクラップにしてやれ!」
「イエッサー! 味方が梅毒に掛からないようなほど身体をズタズタにしてやります!!」
ある戦車長が言えば、砲手は残虐な笑みを浮かべながらそれに答え、砲塔の前面機銃を逃げ回る敵歩兵部隊に向けて撃ちまくる。
放たれる前面機銃の口径は12.7mmで、1200発分と言う恐ろしい連射力を持ち、逃げている敵兵等は挽き肉へと変えられる。ある程度の距離に近付いて、脚を失ってもまだ息のある者を操縦手は見掛けたのか、弾が勿体ことを告げる。
「おい、弾が勿体ないぞ。それにこいつは機動力がある、俺のスポーツカー並だ。みんな轢き殺しちまおうぜ!」
「それじゃ、履帯が…」
「戦車長、もう死体を踏みまくってんだ。今さら生きてる人間なんて踏み潰したって変わらねぇよ」
「分かった。砲手、12.7mmの射撃は中止。操縦手、敵歩兵を轢き殺せ」
「了解!」
操縦手からの説得に応じた戦車長は、轢き殺すように指示を出した。
それに応じ、操縦手は戦車の速度を上げ、這いずりながらも逃げようとする女性兵士を轢き殺そうとする。
「い、嫌…!」
脚を失いながらも肉塊の中を這いずり回って逃げる女性兵士はその表情に恐怖を抱き、泣きじゃくりながら必死に手を動かして前に進むが、戦車の速度は速い。そのまま彼女は高速で迫る連邦軍の主力戦車に踏みつぶされ、肉塊となる。
退却した何名かのワルキューレの歩兵が遮蔽物となる装甲車の残骸に隠れ、対戦車投射器であるPIAT(ピアット)を構え、狙いが定まり次第に発射した。バネの力を受けて発射された対戦車弾頭が主力戦車に向けて飛び、車体に命中するが、全く効果が無かった。
これを見た対戦車火器班は、直ぐにその場から離れて逃げようとするが、容赦なしに電気のこぎりのような機銃掃射を浴び、肉塊へと変えられた。上半身と下半身が分かれ、無残な死体となって地面に横たえる。
「敵戦車確認!」
「蹴散らせ。徹甲弾装填!」
次にクロムウェルやシャーマンファイアフライなどの戦車が歩兵の退却支援のために出て来るが、遥か先を行く主力戦車に適うはずも無く、たった一両に十数両の敵戦車が黒煙を上げるスクラップに変わり果てた。運良く撃破を免れた敵戦車もあったが、串刺しや奇襲攻撃で多数の味方を殺されている戦車兵たちは、容赦なしに脱出する敵戦車兵に機銃掃射を浴びせ、敵歩兵と同様に無残な肉塊へと変えた。
「戦車が押してるぞ! 俺たちも行こう!」
『おぉ!!』
この戦車部隊の虐殺のような反撃により、混乱状態の連邦軍侵攻部隊は体勢を立て直し、一気に作戦継続に出る。これによって奇襲攻撃が失敗したワルキューレの部隊は、退却を始める。原因は簡単、敵の数が多過ぎたからだ。それに兵員は十個歩兵師団程度で、装備も貧弱その物であり、そんな装備で未来的な装備を持つ軍隊と戦うなど、無茶な話である。
連邦軍侵攻部隊の初日に上陸した七十五万の兵力のうち、二十万人以上と言う甚大な数の兵力が死んだが、五十五万の兵力でも作戦は十分継続は可能であった。しかし、将官や佐官クラスの士官の大勢が死んでおり、指揮系統も余り回復していない様子だ。
奇襲攻撃が始まって数時間後、何とか連邦軍はワルキューレを押し返すことが出来たが、反撃の際に二個師団の戦力が全滅すると言う事態に終わる。
「な、何とか押し返したぞ…」
「初日に大勢が死んだな…」
「あぁ、指揮官もだ…」
たった一個師団相手に二十三万以上もの被害を出した侵攻部隊であったが、うち十九万は地面より現れた無数の棒による串刺しによる被害であった。大量の串刺しから奇襲攻撃と言う凄まじい惨劇を乗り越えた将兵らは疲れ切り、その場でへこたれて尻餅をついていた。
制空権に関しては、降下艇が何十機も撃墜されたが、駆け付けてくれた味方の戦闘機部隊によって何とか保たれた。これもワルキューレが差し向けたのがスピットファイアレシプロ戦闘機だけで助かった事だろう。
しかし、この一連の惨劇を生き延びた将兵らに、息つく暇も与えず、更なる地獄が訪れた。
その地獄は、敵戦車部隊を追撃している連邦軍の戦車と歩兵の混成部隊が最初に目撃した。
「な、なんだあれは…?」
『馬の集団だ…それに甲冑を身に着けた奴らが乗っている。中世ヨーロッパの騎兵隊のようだぜ、こりゃあ』
『追撃停止! 機動兵器部隊の到着を待つ!』
最初に目撃した戦車長が言えば、歩兵の他に、派手な装備を施した馬に乗る騎兵隊が居ることを通信で知る。一旦彼らは追撃を停止し、機動兵器を装備した部隊が到着するまで、新たに現れた敵部隊の装備が他にあるかどうかを調べる。
綺麗に横一列に並んだ歩兵や騎兵隊の背後には、アームスレイブや戦術機と呼ばれる連邦軍とは違う別世界で開発された機動兵器が、それぞれのサイズに合う槍を持って突っ立っている。
ちなみに、アームスレイブは、主従追随式機甲システムの英語読みの略称であり、更に略してASと呼ばれる。
二足歩行の戦闘用ロボットであり、当初は強化骨格を想定していたが、余りにも低スペックになってしまうため、様々なシステムを搭載するために全長8mと大きくなってしまったが、あらゆる武器を扱う人間のようなマニピュレーターを持ち、あらゆる地形を走破する汎用性を持っている。しかし、障害物の多い地形には他の陸戦兵器よりは勝るものの、平原や遮蔽物の無い場所では、ただのデカい的となる。
おまけにどれほど高性能となろうとも、ASは戦車より火力・防御・射程距離に劣るため、連邦軍が主に使用する更に大型な機動兵器である同じ人型のモビルスーツや昆虫や動物、恐竜型の機動兵器のゾイドなどとは違って万能性は低い。
同じ連邦軍が運用しているアーマード・トルーパーと同等になっているが、性能や生存性に関してはASが勝っている。
次に戦術機と呼ばれる機動兵器は、戦術歩行兵器の略称。宇宙より飛来した
MSと同様のサイズの人型兵器であり、三次元的な機動と高い機動力に兵器の汎用性を持っている。
ちなみに開発された時代は、西暦で言えば二十世紀の七十年代辺りであるが、開発された世界の科学力は月まで行ける程の物であり、このような人型兵器を開発できるかもしれない。第一世代から第三世代までの機体が開発されている。
動力の本体と背中の跳躍ユニットの二系統に分けられ、本体は燃料電池とマグネシウム電池で動き、跳躍ユニットはジェット燃料で稼働する。
ASが開発された世界と同様に米ソの冷戦期に開発され、更に地球外生物にも攻められているにも関わらず、団結もしていないため、ASと同様に運用が国々によって違う。
名前に関しては、航空機の開発、主に戦闘機の開発が行われなかったため、戦術機の名前には、戦闘機の名前と正式番号が使われている。なお、性能面に関しては、対人戦を想定しないために機動兵器同士の戦闘にはめっぽう弱い。
ASの方は、ドイツで開発された第三世代機であるドイツ語で狼を意味するヴォルフと呼ばれる高性能ASだ。歩兵や騎兵隊と同じような西洋甲冑を来た騎士のような外見を持っており、手には同サイズまでに大型化されたハルバードが握られていた。
高性能に似合う高価な機体であり、大量生産に向かない機体であるが、この軍団規模の部隊は一個師団分の数のヴォルフを保有している。この軍団が、余程の精鋭部隊であることを示しているのだろう。
戦術機は、EF-2000タイフーン。本来はNATO加盟国軍の主力戦闘機であるが、あの世界では制空権は無いも同然であり、ロボット兵器となっている。
第三世代機として開発されたため、性能は高いが、ASのヴォルフよりは大量生産が進んでいて配備もそれなりに進んでいる。外見も歩兵や騎兵隊とは変わり無さそうな物となっているため、巨大な槍を持って攻撃命令を待っていた。
「アームスレイブに戦術機か…MSとゾイドが来れば、圧倒できるな。MS隊かゾイド隊が到着次第、敵部隊に対して攻撃を開始する!」
自分等が保有する機動兵器より、相手が持つ機動兵器が劣っている物ばかりであると双眼鏡を見て分かれば、指揮官は味方の部隊の到着次第に、攻撃に移ると配下の部隊に告げた。
数秒間待っていれば、戦術機と同じサイズの大型の人型機動兵器であるモビルスーツ部隊と、ゾイドと呼ばれる機動兵器部隊が、戦闘ヘリを加えた部隊と共に前線へと到着する。この心強い部隊の到着により、追撃隊は自分等に立ちはだかる軍団よりも多くの戦力を有し、強力な物となった。
強力な戦力を得た指揮官は、双眼鏡から見える敵部隊の数を見ながら、自分等が勝ったも同然と確信して薄ら笑いを浮かべる。
「ふふ、敵は四万余りの歩兵と二万騎余りの騎兵、そして機動兵器が八百機ほど。こちらは十万の歩兵と数千両の戦闘車両、戦闘ヘリなどの航空支援機が二百機。機動兵器の数は千二百機以上。どちらが勝利するか、こんなもの子供でも分かるわ。全軍、攻撃かい…」
「お待ちください! 敵軍より投降勧告が出されております!!」
「投降勧告だとぉ!? 正気か!? この数に向けて! どんな戯言をほざいているのか聞いてやろうではないか!」
双眼鏡から目を離して勝利を確信した後、指揮官は攻撃命令を出そうとしたが、ワルキューレの部隊が自分等に投降勧告を行っていると言う報告を受け、どんな御託を並べ立てているのか気になり、攻撃を中止して敵の投降勧告に耳を向ける。
投降勧告を行っているのは、綺麗に横隊になって並んでいる自軍の部隊より前に出た白馬に跨り、東欧のような甲冑を身に着けている四十代くらいの女性であった。手には良く聞こえるようになのか、拡声器が握られていた。
『堕落した文明を我が聖域に持ち込んだ愚か者たちに告げる! 今すぐその文明を持って立ち去るが良い! 貴様ら愚かで堕落した文明は、この清しい心を持つ誇りある世界には一切不要!! 先ほどの串刺しにされた貴様らの将兵らの亡骸を見たであろう、あれは警告である! 今より三時間の有余を与える。即時この汚れなき惑星であるワラキアから貴様らの堕落した文明を持って出て行け! そちらの返答次第では、残る貴様らも串刺しにされた者達の後を追うことになろう!!』
この演説のような投降勧告を聞いた指揮官は、少しばかり顔を引き付けながらも、部下に勧告の返答を出すように告げた。
「とんだ戯言を…民衆は高度な文化を望むものだ! おい、こう返答しろ。我々は野蛮な文化を押し付ける貴様らから民衆を解放しに来た、とな!!」
「はっ、我々は野蛮な文化を押し付ける貴様らから解放しに来た! 繰り返す…」
部下の通信兵にそう告げれば、返答が終わるのを待つ。返答が完了したのと同時に、指揮官はレシーバーで全軍に攻撃命令を出す。
「返答しました!」
「よろしい! では、これよりワラキア解放作戦第一段階を敢行する! 捕虜はいらん! 我が軍には向かう愚か者は全て排除せよ!!」
『イエッサー!!』
指揮官が攻撃命令を出せば、命令を受けた部隊は侵攻作戦の第一段階を開始した。
最初に機甲戦力が上空のヘリ部隊と共に前進し、返答を受けて地響きを上げながら向かってくる敵部隊に向けて最初の戦端を開く。
「連中は馬鹿の集まりだ! 支援砲撃も無しに歩兵と騎兵が突っ込んできやがる! しかもあちらには飛び道具が一切無い! こっちの独壇場だ! 派手に殺し回れ!!」
向かってくるのが一切の飛び道具を持たない歩兵と騎兵だけであると分かれば、興奮しきっている前線指揮官は、地上の戦闘車両と戦闘ヘリ部隊に一斉射撃を行うよう指示を出した。
これに応じ、上空の戦闘ヘリは一斉に主翼に装備されている対地ロケット弾やミサイルを一斉に雄叫びを上げながら突っ込んで来る敵歩兵と騎兵隊に向けて発射し、地上の戦闘車両は、戦車が主砲を撃ち込み、ロケットやミサイルなど装備する戦闘車両は遠慮なしに目標へ向けて撃ち込む。
これ程の圧倒的な火力の一斉射撃の恐怖を知っていれば、武器を捨てて逃げている筈だが、雄叫びを上げながら突撃する歩兵や騎兵らは、まるで恐怖でも削がれているが如く、死を恐れずに突っ込んで来る。
自分等が死なないとでも思っているのだろうか?
その答えは、着弾する寸前に分かる。
「全弾の弾着…今、っ!? ぜ、全弾…目標に命中する前に…ロスト…!?」
「そ、そんな筈は…! 我が軍の火力は、魔法障壁ですら意図も容易く…」
歩兵と騎兵らに降り注いだ死の雨は、全て見えない傘によって防がれた。
自分等が望む結果とは、大いに違ったことに驚きを隠せない指揮官は、指揮も出せずに呆然としていた。
『どういうことだ!? 全弾命中する前に、傘みたいのに…』
『俺たちの火力は、ワイルドキャットや時空帝国の魔法障壁をぶち破れるんだぞ! なんで防がれちまうんだ!?』
「あ、あり得ねぇ…ファンタジーワールドなんぞが、俺たちに適うはずが…」
最前線に居る機甲部隊も、見え透いた物とは違う結果に終わったことに絶句していた。
そんな機甲部隊の真下に、地中から再び何かが上がってくるような音が鳴り響き、物の数秒後で地面より勢い良く生えて来る。真上に居た戦車や、上空に居る戦闘ヘリを串刺しにしながら生えて来た。
『う、うわぁぁぁ! せ、戦車や装甲車が串刺しにされたぁ!?』
『せ、戦闘ヘリもだ! またあの棒だ! 動き回れ! 串刺しにされるぞ!!』
「チャーリー1-1、落ち着け! 戦車や戦闘ヘリが串刺しになるか! 地中から敵の増援部隊がっ!」
配下の機甲部隊が続々と串刺しになって行く中、それを信じられない師団長は、指揮車から地面から現れた新手の敵部隊であることを告げたが、自分のその地面から突き出た棒によって串刺しにされ、即座に息絶える。
「き、機甲部隊全滅…! ガンシップ部隊もです…!」
「ば、馬鹿な…!? たかだか時代を間違えている連中相手にだぞ…!」
最初の砲火が始まって物の数分、最前線にいた機甲部隊は、乗員ごと全て地面より突き出て来た先端の尖った棒に串刺しにされて全滅していた。
報告を受けて絶望する指揮官の目前に広がる光景には、戦車や装甲車、上空を飛んでいた戦闘ヘリも串刺しにされていると言う摩訶不思議な光景が広がっている。この光景を見た連邦軍の将兵らは、最初に遭遇した地獄である串刺しを思い出し。戦意を失い始める。
しかし、連邦軍にはもはや主力と言っていいほどの機動兵器が残っている。
この万能とも言え、相手の主力として使い、もはや戦争の花形と言ってもいい機動兵器を使えば、戦局は幾らでも逆転できる。
そう思っている指揮官は、待機している機動兵器部隊に突撃を命じた。
「よし、MS隊、ゾイド隊で…」
「あ、あぁ…機動兵器部隊の真下からも…!!」
「なん…だと…!?」
だが、その万能とも言える機動兵器でさえも、地中から現れる神出鬼没な串刺し棒の前には、成す術も無く串刺しにされるだけであった。
サイズに似合った串刺し棒によって串刺しにされ、爆発することなくその場に佇んだ。
人型のMSはブラド公の串刺し刑の様子を写した絵のようになり、動物型や昆虫型、恐竜型のゾイドはまるで針山が敷かれた落とし穴に落ちた動物のように串刺しになっている。何機かは被害を免れた様子だが、それを操るパイロットの心境は相当な物であろう。
更に串刺し棒は歩兵らの足元にも現れ、出た分の棒だけの数の将兵が一気に串刺しにされる。中には肛門から串刺し棒を突き刺され、口から尖端を出している者も居る。連邦軍の陣地は、もはや阿吽絶叫の地獄のようであった。
ちなみに、追撃部隊の指揮官は呆然としている所を、騎兵隊の長槍に突き刺されて息絶えた。
「い、嫌だ…! 死にたくない!!」
「こんなところに居たくねぇ! 俺は逃げるぞ!!」
ただでさえ脆い指揮系統はこの串刺しによって完全に崩壊し、指揮官を失った歩兵らは、我先にと降下艇が待つ着陸地点へ逃げ出し始める。一部の部隊は、戦場から勝手に逃げ出す始末であった。
連邦軍はまだ後方に数十万単位の戦力を残している筈だが、その後方でも串刺し棒が姿を現し、次々と将兵らや装甲車両、機動兵器を串刺しとなり、後方も大混乱に陥っていた。既にこの惑星ワラキアに降下した部隊は壊滅状態であり、作戦継続など不可能に近かった。仮に出来たとしても、中佐からの指揮官は皆、地中より現れた棒で串刺しにされて指揮は執れない。
そんな混乱状態の連邦軍の侵攻部隊に、ワルキューレの中世ヨーロッパのような強襲部隊が襲い掛かる。
「き、来たぞ!」
「撃ち殺せ! 殺し尽すんだ!!」
まだ戦意のある兵士が手に持っているライフルで、向かってくる時代錯誤な敵兵等に向けて撃ち込んだが、全て甲冑に弾かれ、彼らの持つ剣や槍、斧などの刀剣類で斬り殺される。
刀剣類を持つ敵軍に対して、装備が遥かに優れている連邦軍が圧倒的な筈だが、指揮官を失った彼らは混乱状態であり、成す術も無く、次々と斬り殺される。
ある者は首を飛ばされ、ある者は腕を斬りおとされ、ある者は足を斬りおとされ、ある者は腹を斬られて内臓を曝け出し、ある者は胴体を切り裂かれて息絶える。まるで中世ヨーロッパのような戦場だ。人間の四方と言う四方が斬りおとされ、大地を血で赤く染めて行く。
更に殺戮を盛り上げるように、騎兵隊が到着する。来て早々、騎兵隊は降下艇に向けて退却する連邦兵等に容赦なく長槍を突き刺し、周囲に串刺しにされている連邦兵等と同じように次々と突き殺す。必死にこの場から逃げようとする連邦兵等にとっては、悪夢以外何物でもない。
「こ、これは…夢だ…夢なんだぁ! アヒャヒャヒャ!」
余りの惨事の連続に、現実逃避を行う兵士が出て来たが、そんな兵士にも容赦なくワルキューレの槍兵は容赦なく槍の刃を首に向けて突き刺す。勢いよく血が噴き出したのを確認すれば、肉が固まる前に刃を抜き、次なる獲物に襲い掛かる。
戦況はワルキューレに傾いており、混乱状態の連邦軍はただ逃げる事しか出来なかった。
幾つかの部隊は指揮力を回復させて抵抗を見せているようだが、軍団の将兵は自分等が思っているほど弱くなく、直ぐに随時駆逐されていく。
「相手は近接武器しか持っていないんだ! ビームライフルで…!」
連合軍のMSであるストライクダガーに乗り込むパイロットは、槍を持って跳躍ユニットで接近してくるタイフーンに向け、同じ機体の数機の僚機と共に撃ち込むが、一発も当たることなく、直ぐに懐に潜りこまれ、持っている槍でコックピットを一突きにされる。他の三機の僚機も、最初に突き刺されたストライクダガーと同じ運命を辿る。
ステゴサウルス型の大型ゾイドであるゴルドスも、高度な連携を取る四機のヴォルフに足をハルバードで斬りおとされて動けないところを、コ最後に現れた五機目のヴォルフにコックピットを斬られて沈黙する。
連邦軍が惑星ワラキアに降下して十数時間余り、降下して数十分後に開始された惑星内における戦闘は、連邦軍の敗走によって幕を閉じた。
敗走の最中、取り残された部隊が幾つもあったが、逃げる連邦軍の侵攻部隊はわが命大事と彼らを見捨て、降下艇で宇宙に居る艦隊の元へ逃げ込んだ。
その宇宙艦隊も突如現れたワルキューレの宇宙艦隊の奇襲に遭い、地上と同様にかなりの損害を受けていたが、地上から敗走してくる敗残兵たちを全て回収するまでこの場に留まり、全ての敗残兵を回収次第、即座に惑星ワラキアの宙域より脱出して拠点へと次元転移して逃げた。地上や宇宙における戦闘は、全てワルキューレの勝利に終わる。
地上や宇宙で完全に戦闘が終了すれば、損害が皆無な軍団を率いている女性指揮官に、部下らしき男が馬に乗りながら彼女の傍に近寄り、戦闘が終了したことを報告する。
「総督、第91宇宙艦隊より報告。敵宇宙艦隊は、地上より脱出した敗残兵たちを回収した後、次元転移装置を使って撤退セリとのことです」
「ご苦労。我が祖先の加護もあり、堕落した文明を広めようとする侵略者たちは撃退した。天よりお守りくださった我が祖先に感謝の意を表しよう」
報告を受けた女性指揮官は、長い黒髪をなびかせながら白馬から降り、天に居るとされる自分の祖先に向けて祈りを始める。そんな彼女に向け、部下らしき男は報告を続ける。
「幾つかの敗残兵の部隊が取り残されたようで。その蛮人共が血迷って、我が領土で暴れ回るかもしれません。戦術を直ちに掃討戦に切り替え、被害が広がる前に、全ての敗残兵共の始末を行います」
「うむ、許可する。我が領土を汚し回ろうとする蛮人共に、串刺し刑を執行せよ」
「御意」
敗残兵の存在を知らされれば、総督と呼ばれる女性は掃討戦の許可を出した。
部下が過ぎ去った後、彼女の目前に広がる光景には、串刺しにされた連邦軍の機甲戦力と歩兵が見えていた。
情人が見れば異常な物だが、彼女からしてみれば、先祖代々続くこの大地を守って来た串刺し刑によって保たれる平和の象徴と見えた。
その戦いより数日後、異世界転移を果たしたシュンが、この異常な世界である惑星ワラキアの地に来た。
「今度の世界は中世的か…ちょっと熱いな…」
まだこの世界の全貌を知らないシュンは、返り血塗れな冬季用戦闘服を脱ぎ捨て、装備を身に着けて辺りを見渡す。
「ふむ、マジで中世な世界だな」
青空の世界に似合う緑に覆われた美しい林を見れば、ここが中世ヨーロッパのような世界であることを認識した。上着も脱ぎ捨てれば、肌着の上に装備を身に着け、大剣を鞘に戻してから小銃を抱え、人が居そうな場所を目指して移動する。途中、耳に付けている小型の通信機でガイドルフに連絡を取ってみるが、雑音だけが返ってくるだけだ。
道中に見える美しい緑豊かな景色に目を奪われつつ、持ってきた携帯食料を口にしながら平原へと出ようとした。だが、林を抜けて平原で待っていたのは、美しさを台無しにするものであった。
「クソ、マジか…また普通じゃねぇ…!」
そのシュンの目に映っていた光景は、この世界の全貌とも言える串刺しにされた多数の死体であった。数は尋常の物であり、串刺しにされた死体の腐敗は進んでおり、カラスやハエが集っていた。街道に沿って立てられている串刺しにされた死体を見て、シュンは絶望を和らげようと、冗談な言葉を呟く。
「こう腐っちゃ、かかしには使えねぇな…ん?」
そんな冗談を呟いていると、シュンの目に燃え盛る炎が映った。炎が見える先は、街道へと続いている方向にある。何かあるかと思い、シュンは全力疾走でそこへ向かう。
レースカーにも匹敵するほどの脚力で向かった街道の先にあった物は、撤退戦で取り残された連邦軍部隊の蛮行によって焼かれた村であった。どうやら、生き延びた敗残兵たちが良き場を失い、暴れ回っているようだ。
「ちっ、とんだ物を使って暴れ回ってるな」
彼が舌打ちをするほどの脅威な物とは、MSのストライクダガーと、オオカミ型の中型ゾイドであるコマンドウルフだ。それぞれが四機編成の小隊で存在し、合計で八機の機動兵器が村を焼き払っている。
「あの死体から見て、ここはワルキューレの支配下の世界ってことだな。そんで暴れ回ってんのが、連邦軍ってことか…正規軍が聞いて呆れるな」
村に駐屯している警備部隊の死体の装備が、大戦下のイギリス軍で全員が女性であることが分かると、ここがワルキューレの支配下の世界であることを認識する。無論、警備部隊は機動兵器に襲われて一溜りも無かったのか、原形も留めない程の無残な死体となって横たえている。
更に詳しい情報を聞き出すべく、まだ綺麗に残っている裸の女性の死体を死姦している連邦兵の背後に近付き、頭を掴んで無理矢理引き離し、下半身の男性器を奪ったナイフで切り落し、喉元にナイフを突き付けながら問う。
「おい、死姦好き野郎。ここはワルキューレの何所の植民地だ? いい加減に答えると、喉元にこいつをぶっこむぞ」
「ひ、ひぃぃ! ワラキアって所だ! い、命だけぶ…」
「ワラキアか…とんだヤベェ所に来ちまったな…」
ここがワラキアであることが分かれば、シュンはその兵士の喉元にナイフを突き刺して殺害してから、その兵士が脱ぎ捨てているボディアーマーを手に取り、今身に着けている装備と交換する。未来的な個人装備がちゃんと身に付けられていることを確認すれば、銃声や爆破音が連発して聞こえて来る方向に向かう。
ワルキューレに属している頃に、この惑星の事の噂を知っていたシュンは、またも地獄へ送られたと心の中で嘆きつつ、広場に出て、もはや野党と化している敗残兵たちの前に姿を現した。
「なんだテメェは!? 俺たちに歯向かおってのか!?」
「ハチの巣にされたくなきゃ、そこでジッとしてろ!!」
正規軍の兵士とは思えないその台詞を聞きつつ、シュンは警告を無視しながら背中の大剣を抜き、手近な距離に居る兵士に瞬時に近付き、大剣の刃を振り下ろした。
「マジで撃つ…」
標的にされた敵兵は引き金を引く前に大剣で斬られ、胴体を真っ二つにされる。
「ジェムをぶった切ったぞ…!」
「マザーファッカーめ、ハチの巣にしてやる!」
「死ねぇ!!」
斬られた個所から勢いよく血が噴き出す中、シュンは周りに向けて銃を撃とうとする連邦兵崩れたちに向け、斬り掛かった。
次回はストライクダガー&コマンドウルフ戦です。
次回辺りから、チーフ参戦かな?