取り敢えず、マリマリが使っているのは劣化版ゲート・オブ・バビロンです。
宝具は出せませんが、様々な武器が召喚できます。
目的地である壊滅した前哨基地へ徒歩で辿り着いたマリは、そこで探している者達であるサイキックハンター達を見付けた。
「ほう、あれだけの攻撃を受けてもまだ生きているとは…やはりSクラスの能力者と言う訳か」
「あれはちょっと余所見してただけだから。本当なら、あんなのお菓子食べながら避けれるのよ」
サイキックハンター達の隊長である男は、マリを見るなり化け物を見るような視線で睨み付ける。これに対しマリは、冗談交じりで答えた。周囲からは彼女の存在に気付いた部下たちが様々な追加装備を付けた突撃銃や自動小銃、軽機関銃、散弾銃、狙撃銃の銃口を向けるが、隊長である男は左腕を挙げて彼らを抑える。
腕を下げてから再び口を開き、目の前に居る金髪の女を「魔女」と蔑む。
「舐めた口を。報告では、何も無い場所から武器を取り出したと聞く。どうやら魔女のようだな。我々はウィッチハンターも兼ねている。百人目の魔女の首はお前のようだ」
隊長は「魔女狩りも兼ね備えている」とマリに伝え、左腕に付いてあるデバイスからホログラム映像を映すボタンを押し、今までの戦果を彼女に見せびらかす。それは今まで自分が殺してきた「魔女」と表す女性達の生首であった。これを見たマリは少し怒りを覚えた。
「あんた、趣味が悪いわね」
「フン、貴様らのような害悪な者達にこの私が価値を与えてやっているのだ。そう、私のコレクションだ。どうだ、嬉しいだろう?」
マリに趣味の悪さを指摘されたが、隊長は「自分が価値を与えてやっている」と、自慢げに答えた。
これに更に怒りを覚えたマリは、剣を右手から召喚してそれを握り、刃先を目の前の男に向けて宣戦布告を宣言する。
「とんでもない
「この人数相手に大きな口を叩けるとは。良いだろう、我が隊も全力で行かせて貰おう」
そうマリの宣戦布告を受け取った隊長は、部下たちにハンドサインで攻撃命令を出してから後ろへと下がる。
先に隊長をやられては元も子もないのか、重武装のサイキックハンターたちが盾になるように展開し、手に持ったブルパップ方式の突撃銃を向けるなり引き金を引いて撃ってくる。
常人なら直ぐに死んでいるが、マリは魔法の障壁を張って防ぐ。これを見た隊長は、対物火器を使用するよう無線機で指示を出す。
「ライフル弾は効かん! 大口径か対物火器を使用しろ!!」
指示に応じて携帯式ロケット砲などの対物火器を装備した兵士たちが前に出て、マリに照準を向けて発射する。
これも障壁で防がれてしまうが、障壁にひびを入れることに成功する。効果ありと確認したハンターたちは、続けてロケットを発射し続ける。更に火力を上げるため、マリが乗っていたジェガンR型を撃ち落としたアーマード・トルーパー、通称ATと呼ばれるスコープドックを投入した。
このスコープドックと呼ばれるATは、大型ミサイルポッドなどの重武装をしたタイプだ。携帯兵装のヘビィマシンガンをマリに向け、兵士たちと共に撃ち続ける。流石に火力を強化されては障壁も持たないのか、十数秒ほどで崩れた。
「やったか!?」
マリを倒したと思った随伴の兵士達であったが、煙が晴れた後には彼女は影も形も無かった。
「血の跡も無いぞ」
「跡形も無く吹き飛んだんだろうぜ」
「馬鹿野郎、普通は血の跡が残るもんだぞ」
倒したと思って迂闊に近づいた兵士たちはマリを完全に倒した物だと判断する。
しかし、ハンターと彼らを率いる隊長らは赤外線スコープを着け、姿を消したマリを探す。理由は簡単、死体を確認していないからだ。
「AT部隊も赤外線スコープを使え! 何所から出て来るか分からんぞ!!」
「生きてるわけがないだろう」
指示を飛ばす隊長に悪態を付きながら、兵士たちもヘルメットに付いてある赤外線スコープを起動し、マリの姿を追った。
「おい、向こうに熱源が…」
「味方じゃないのか? っ!?」
赤外線スコープを起動してから数分で熱源を発見した兵士はそれを同僚に知らせたが、同僚はそれを味方だと思い、碌な報告もしなかった。その所為で胴体から頭を胴体から斬りおとされてしまう。即座にそれに気付いたハンターたちは、全員に臨戦態勢を取るよう大声で告げる。
「油断するな! 奴はS級ランクの能力者だ!!」
「全員、周囲警戒を怠るな! 互いの死角をカバーしろ!!」
ハンターたちの指示通りに兵士たちはお互いの背後に張り付き、周囲に銃口を向けたが、姿を隠しているマリに一方的にやられていくだけであった。
「う、うわぁぁぁ! 死にたくない!!」
「馬鹿野郎! 逃げるんじゃない!!」
分隊支援火器を持った一人の兵士が恐慌状態を起こし、周りの制止の声も聞かずにその場から逃走した。
「お、俺達も…」
「逃げるな…! 敵前逃亡罪で罰するぞ!」
これに連動して、死の危険を感じた他の兵士たちもその場から逃げ出そうとしたが、ハンター達から銃口を向けられる。崩壊の危機は脱したものの、マリは依然と姿を現さず、次々と兵士たちは狩られていく。流石のハンター達も額に汗を流し、死の恐怖を感じて銃を握る手を震わせる。
一体どこから来る…!?
そんな思考がハンターと兵士たちの脳内を支配する中、一機のATが突然爆発した。
「あそこだ! 撃ち殺せ!!」
爆発した時に、一人のハンターがマリの姿を捉えた。彼が撃った方向へ向け、続けて他のハンターと兵士たちが銃を撃ち始める。空薬莢が排出口から飛び、辺りに撒き散らされる。
数秒間ほど千発以上の弾丸を撃ち続け、空薬莢の山が出来上がった所で、ハンターたちは引き金から指を離した。兵士たちもそれに続いて銃口から手を離して息を呑む。
ハンドサインで一人のハンターが散弾銃を持つハンターに命令を出す。無言で頷いて散弾銃を持つハンターは得物を背中から取り出し、散弾銃を握りながら目標を見失った場所へ近付いた。
狙撃銃を持つハンターも、散弾銃を持つハンターを補佐するようにその場所へ照準を向ける。ポイントマンの男が始末し損ねたに備えてだ。
「クソっ、居ない!」
「あの女はまだ生きて…グワッ!」
散弾銃を持つハンターがマリを仕留めてないと知らせた途端、指示を出そうとしたハンターが撃たれて倒れた。直ぐに迎撃態勢を取り、狙撃手のハンターも同僚が撃たれた方向から計算してそこにスコープを向けたが、目に穴が開けてあの世へと旅立つ。
「命中…」
ハンターたちに気付かれずに狙撃手を仕留めたマリは、彼を仕留めたボルトアクション式狙撃銃M200チェイアタックを抱えながら移動する。狙撃手の基本中の基本だ。連邦軍の狙撃兵らはその場で狙撃銃を構えたままであるが、ハンターの狙撃手たちは移動している。これは経験の差か、訓練内容の違いであろう。
「ATを前に出せ! ライフルなら防げるはずだ!」
遮蔽物に身を隠す隊長は、ライフル弾を防げるATを前に出して狙撃を防ごうとした。
「そう来ちゃう? ならちょっと威力のあるのを」
ATを前に出して対処するハンターたちに対しマリは、ATの装甲を容易に貫通できる徹甲弾が入った弾倉を左手に召喚し、通常弾の入った弾倉と入れ替える。薬室に入ったままの通常弾はボルトを引いて排出して、ボルトを押し込んで徹甲弾を送り込む。それからスコープを覗き、ATのコクピットへ照準を定めた。
横風も風力も無い好条件であり、重力を計算に入れるだけで済んでいる。照準が定まり次第、マリは直ぐに引き金を引き、ATに乗っている操縦者の命を奪う。
ATの装甲の厚さは14mmであり、徹甲弾を使われてしまえばあっと言う間に貫かれてしまうほどの脆さだ。操縦者を失ったATは、その場で死した弁慶の如く動かなくなる。
『て、徹甲弾だ!』
「
『落ち着け! 動き回って的を絞らせるな!』
『お、おい! 俺たちはどうなるんだ!?』
同僚がやられたのを見ていたATの操縦者たちは、守るべき歩兵を見捨てて狙撃を避けるために動き回り始めた。しかし彼女の狙撃からは逃れることはできず、偏差射撃で次々と仕留められる。狙われていないハンターたちは、これを気にマリの元へ行こうとしたが、彼女が張り巡らした罠で犠牲者を続出した。
「クソっ、たかが女一人になんて醜態ぶりだ!
「はっ!」
この醜態ぶりに隊長は胃を煮え繰り返し、ATよりも装甲が厚い装甲車の出動を命じる。装甲車には歩兵戦闘車とは違い、機関砲もミサイルが搭載されていないが、代わりに強力な連射力を誇るチェーンガンが装備されているため、歩兵にとっては侮れない存在である。
「ちょっと遊び過ぎたかしら」
おいたが過ぎたことを理解したマリは狙撃銃を消して剣を出し、チェーンガンによる凄まじい掃射を避けながら前に出る。
「VTOLも投入だ! あの女を炙り出せ!」
隊長は更にVTOLも投入し、マリを跡形も無く消そうとしたが、彼女はこれを魔法などで防ぎながら飛び出す。
「出て来たぞ!」
「撃ち殺せ!!」
マリが姿を現したため、ハンターと兵士たちはマリに向けて手に持った銃を撃つが、彼女が左手に持つ自動拳銃であっさりと返り討ちにされる。装甲車とVTOLは誤射を恐れてか、チェーンガンやロケット砲を撃つのを止めた。
「クソが!!」
マリに近い距離に居るハンターが大ぶりのナイフを抜いて彼女に斬り掛かる。しかし彼女に勝てる筈もなく、あっさりと避けられ、マリが持つ剣の刃で腹を突き刺された。周囲に居る兵士たちがマリに向けて一斉射撃を行うも、彼女は瞬間移動を使って回避し、自分を撃った兵士らを切り捨てる。
数秒ほどで彼女に立ち向かったハンターと兵士たちは全滅した。これを見た隊長は、邪魔な味方が居なくなったのを好機と捉え、直ちに次なる手を打つ。
「わざわざ出て来るとは有り難いことだ! 全員一斉射撃だ! 遠慮は要らん! 奴を跡形も無く消してしまえ!!」
目の前に居る女に指差ししながら指示を出せば、配下のハンターと兵士達や装甲車にVTOL、ATがありったけの火力を浴びせた。
「ま、待て! うわっ!」
まだ生きている兵士がマリの近くいたが、ハンターの兵士たちはお構いなしに戦友もろとも攻撃する。この見方を切り捨てる攻撃に対してマリは、分厚くした障壁で防御し、攻撃が止むのを待つ。鼓膜が破てるような程の攻撃が続くが、マリは耳栓をしてそれを防ぐ。
物の数秒で攻撃が止むと、彼女は障壁を解き、連邦軍の追跡隊を排除したと同様の攻撃を行う。それは様々な武器を召喚して相手に飛ばしたり撃ったりする攻撃のやり方だ。ちなみに追跡隊を排除した時よりも武器は多い。
十分に武器を召喚し終えたのを見て、マリは目前の全ての敵に向けて放つ。
尚、飛ばした武器は、勝手に彼女の武器庫へと戻ってくる。
「ぶ、武器を召喚した!?」
「こ、こんなの初めてだ…!」
「やはりS級能力者か…!」
一人の女が召喚した多数の武器を見て、隊長は人生の中で今までにない絶望を味わった。彼が絶望している間に様々な武器がハンターと兵士たちに向けて飛んで行き、次々と彼らを串刺しにしていく。
放たれた武器は、ATも装甲車、VTOLも意図も容易く貫いてしまうほどだ。追跡隊の将兵たち同様、ハンターと兵士たちは戦意を喪失し、恐怖を覚えた。
「逃げ…ぐっ!?」
逃げ出す兵士たちが居たが、装甲車やVTOL、ATは爆発して飛び散った破片が突き刺さり、誰も彼女から逃れることすら出来ない。
「ば、化け物目…!」
生き残ったハンターがマリに向けて銃を撃とうとしたが、彼女の自動拳銃か剣でとどめを刺された。
「この化け物が!!」
マリが近くに来たところで、死んだふりをしているハンター達が一斉に襲い掛かるも、刃を振り下ろした場所に彼女は居なかった。
「なっ、何所に!?」
「ここ、ここ」
目で探すハンター達であるが、背後からマリの声が聞こえた後に、全員が声の下方向へ振り向いた瞬間、彼らは一瞬で全滅した。
部下全員と借りた正規軍の部隊が全滅したところで、マリに殺される恐怖を感じた隊長は、この恐怖から逃れようと頭に拳銃の銃口を突き付けて自決を図る。
彼は指揮車の残骸で下敷きになって自力で逃れられず、迫りくる恐怖から逃れる方法は、自決以外何もなかった。直ぐに引き金を引こうとしたが、マリがそれをさせる筈も無く、拳銃を握っていた右手を剣で切り落とされる。
「グァァ…!!」
「ただでは殺さないって言ったでしょ? それに聞きたいこともあるから」
「貴様に話すことはない…!」
マリが「聞きたいことがある」と言えば、殺されることが分かっている隊長は彼女の顔に血が混じった唾を吐き付けた。
「サイッテー」
血が混じった唾液を頬に浴びた彼女は、堪忍袋の緒が切らし、隊長の手足を全て切り落とす。手足だけでは飽き足らず、鼻まで削いだ。マリの内なる残虐性が発揮されたようだ。
凄まじい痛覚をありとあらゆる方向から感じる隊長は、絶叫して悶え苦しむ。これだけ斬られても、まだ息があると言う事は、マリが敢えて傷口に治療魔法でも掛けているおかげだ。これ以上は苦しみたくない隊長は、楽に殺してもらうため、マリの質問に答えることに応じた。
「ぐ、グァァァ!! わ、分かった! なんでも話すから楽に殺してくれ!!」
「良いわ。それじゃあ早速聞くけど、この娘知ってる?」
質問に応じた隊長を見たマリは、懐から出した写真を見せる。
「こ、この娘は…第七十九軍管区世界で目撃したと言う情報がある…」
「第七十九軍管区世界? 本当にそこに居るの?」
「不確かな情報だが、歩哨が町で何度も目撃したと証言している…話すことは話した…は、早く楽にしてくれ…」
探している少女の情報を得たマリは、隊長が頼んだことをせず、その場を立ち去った。
「お、おい…! 待ってくれ! ら、楽にしてくれると約束したはずだ…!」
必死に声を上げて立ち去っていくマリを呼び止めようとするも、彼女は無視した。
それから物の数分後に隊長は苦しみながら息を引き取った。
何故、解釈せずに立ち去ったのかは、今まで彼に殺された能力者たちの報いを晴らしたかった為なのかは、彼女以外には分からない。
「第七十九軍管区世界ね…」
そう探している少女の目撃情報がある場所を呟いたマリは、魔法で次元の亀裂を作り、そこに入って連邦軍の占領下である第七十九軍管区世界を目指した。
サイキックハンターは、ウィッチャー3に登場するウィッチハンターに未来的な装備を持たせたタイプ。
主に能力者を狩るのが仕事。魔法使いも狩る仕事もしている。
連邦、同盟の双方に存在しており、全員が腕利きの者揃い。
様々な装備を駆使して魔法使いや能力者を狩る。
次回からは本編に行こうかと思います。