HLV基地を守る要塞へと友軍部隊と共に突入したホワイト・ディンゴであったが、メガ粒子砲やザクによる攻撃で前進が困難であった。
突撃した通常タイプのジム部隊が、メガ粒子砲のビームで溶かされ、ザクのマシンガンの弾幕を受けて次々と大破していく。
連邦側も量産型ガンタンク部隊による砲撃を行っているようだが、生存者がいる可能性を配慮してか、見当違いな場所に当たっている。
『くそっ、何所の馬鹿だ! まともに砲撃が当たっていないじゃないか!』
『第3MS中隊の被害が甚大です! あのままじゃ全滅だ!』
「恐ろしい程の抵抗だ。やはり、宇宙への脱出手段だからか」
抵抗の激しさに、レイヤーがどう突破するか考える中、アニタより無線連絡が入る。
『隊長、先に攻撃した部隊の生存者は居ません。砲兵隊に連絡します』
「そうしてくれ。航空部隊は?」
『対空砲の排除をすれば、より効果的な空爆が行えると返答しています。対空砲を最優先に叩きましょう』
「よし、砲兵隊に繋いでくれ。こちらが観測を行う。指示された座標に砲撃するように」
『了解です。こちらオアシス、ファング1より観測します。座標の場所に砲撃を!』
先に攻撃した部隊の生存者が居ないことを確認すれば、レイヤーは量産型ガンタンクの砲兵隊に連絡をつけるようにアニタに指示を出し、こちらが観測を行って座標を送ると告げる。
それに従い、アニタは砲兵隊に連絡を付けた。
『隊長、俺たちは?』
「援護してくれ。砲撃が正確になれば、攻撃されかねないからな」
『ファング2、了解。護衛につきます!』
マイクが自分らはどうするかを問えば、レイヤーは自分の援護に着くように指示を出す。
次にレイヤーは量産型ガンキャノンに乗るマイクに対し、砲撃が届かない標的に向けての砲撃をするように指示する。
「ファング3は、砲撃が届かない場所に!」
『ファング3、了解! 手の届かない場所はお任せを!』
細かい指示を間髪入れずに出せば、二機の僚機は指示通りの行動を取った。
ファング2ことレオンはホワイト・ディンゴに近付いてくるザクに牽制射撃を行い、ファング3のマイクは、量産型ガンタンクの砲撃が届かない場所にある対空砲へ向け、中距離用キャノン砲で砲撃して破壊する。
ある程度を破壊したところで、レイヤーはオアシスのアニタに残りの対空砲が何所なのかを無線で問う。
「オアシス、残りの対空砲は何所にある?」
『残りは三つ、航空部隊でどうにかなる数です。多少、文句は来ますが…』
「ファング3、狙えそうか?」
『何を言ってるんです? 俺の射撃の腕、知ってるでしょ?』
アニタからの知らせで残り三つだと分かり、対空砲が量産型ガンタンクの狙えない場所にあると分かれば、レイヤーは部隊位置の射撃の腕を持つマイクに狙えるかどうかを問う。
これにマイクは狙えて同然だと返し、ガンタンクの砲撃が届かない位置にある対空砲へ向け、自機の両肩にあるキャノン砲を向ける。
赤外線スコープで照準を定め、砲弾の弾道計算を数秒で終わらせれば、着弾点まで計算し、砲口を対空砲に着弾できる角度までする。普段のマイクとは思えない行動だ。
『よし、この角度なら!』
砲口を着弾できる角度にすれば、いつもの口調でトリガーを引き、物の見事に対空砲へ砲弾を着弾させて破壊した。
続けざまに次の対空砲の位置を確認し、その位置にどうやって砲弾を着弾させるか計算、砲口を角度にしてトリガーを引く。
二つ目を破壊し、最後の一つを破壊に狙いを定めようとした。この時、マイクは弾道計算と着弾計算に夢中でザクの接近に気付いていなかった。
そんな彼を援護する為、レイヤーは無言で接近して来るザクをマシンガンで撃破する。
『隊長?』
「気にするな。砲撃に集中しろ」
これにマイクは気が抜けて破壊されたザクを見る中、レイヤーから砲撃に集中するように言われ、再び計算に入って集中した。
再び計算を行い、砲身の角度を着弾する位置に合わせれば、引き金を引いて発射する。
放たれた二発の砲弾は最後の対空砲に命中し、見事に敵要塞から対空能力を奪った。
「ファング1よりオアシスへ、対空設備は排除した! 航空部隊出撃要請!」
『了解! こちらオアシス、
『こちらCP、了解した。直ちに戦闘爆撃機を向かわせる。座標を指示せよ』
敵要塞から対空能力を奪い、航空部隊の要請をすれば、数分余りで上空に待機していた戦闘爆撃機であるジェットコアブースターの編隊が現れ、敵要塞へと爆撃を始める。
幾らMSがあるとは言え、MSは陸戦兵器だ。制空権を取られれば地上の兵器とは何ら変わりない。上空からの爆撃を受け、ジオンのMSは次々と大破していく。
「よし、突撃だ!」
爆撃が終われば、レイヤーは突撃を指示して他の隊と共に要塞へと突入した。だが、要塞には第二の関門が待ち構えていた。
『高熱源反応! 上空から出現!』
『な、なんだあいつは!?』
それは、上空を飛んでいる巨大な物体を見て、マイクは驚きの声を上げた。
要塞への攻撃が開始され、ヒューエデンで激しい戦闘が行われる中、遥か後方の基地で病院を抜け出したシュンが、MSハンガーにある機体に乗ろうとしていた。
無論、無断で抜け出したので、憲兵や整備兵等に取り押さえられる。
「おい! まだ退院許可は出てないぞ!」
「そうだ! 病人は大人しく病室に戻ってろ!」
「うるせぇ! ただ血が足りなかっただけだ! 一日休んだんだ! なんともねぇよ!」
憲兵を初め、ロブからも止められる中、シュンは無理にでも乗ろうと強引に進む。彼が乗ろうとする機体はガンキャノン重装備型だ。
RX-77ガンキャノンの発展型であり、主に装甲が強化されている。若干重量が上がって機動力は低下し、生存性が高いコア・ブロック・システムはオミットされたが、全体的に性能が向上されている。カラーリングが赤から青になった。ビームキャノン仕様もあったが、シュンが乗ろうとしているのは通常の実弾キャノン仕様である。
そんな彼らの元へ、一人の兵士がヒューエデン要塞の戦況を知らせる。
「おーい! 大変だ! ヒューエデンで変なMAが出たぞ!!」
その知らせと同時に、拡声器から増援部隊を発進させよとの命令が出される。
『前線部隊より増援要請だ! 待機中ならび出撃可能なMS部隊は直ちに出撃せよ!』
「よし、こいつに乗ろう」
「だから駄目だって言ってるだろうが!」
アナウンスが響いた後、シュンは青いガンキャノンに乗ろうとしたが、やはりボブたちによって止められる。
だが、生理食塩水がシュンの方へ投げ付けられる。このパックを投げ付けて来たのは、中年のパイロットだ。階級は大尉で中隊長だ。
「大尉、一体何を?」
「そいつも出せ。MSは一機でも多い方が良い」
「ですが!」
「良いから出せ! 今はホワイト・ディンゴのピンチだ! 責任は俺が取る!」
「ありがとうございます! 大尉殿!!」
大尉の助け舟に、憲兵と整備兵たちは泣く泣く従い、シュンは敬礼してから生理食塩水を飲んでからコックピットに飛び乗った。
機体を起動させる中、整備班長であるボブより説明を受ける。
「全く、病人を戦場に出すなんて馬鹿げたことを。まぁ過ぎたことは仕方がない。こいつはガンキャノンの重層型だ。量産タイプよりも重装甲でビームキャノンも搭載できるが、今は通常タイプと同じ実弾だ。装甲が厚くなっているが、機動力も劣っている。お前には関係ない事だが、こいつは支援タイプだぞ。お前に扱えるか?」
「優れた兵士はどんな兵器も扱ってこそって言うだろう。慣らしもやっていないが、役には立つはずだ。行ってくるぜ」
「いくら装甲が厚いからって、無茶するなよ! それとライフル忘れるな!」
「発進するぞ! 離れろ!!」
ボブより短い説明も受ければ、シュンは起動させてから操縦桿を握り、ハッチを閉めた。
発進すると分かれば、直ぐにボブを初めとした整備兵等が離れ、誘導員がガンキャノンを誘導する。
先に他のMS隊が出撃しており、ヒューエデンへ向かって走って行く。シュンもその後に続くため、拡声器を使って道を開けるように告げる。
「急行する! 道を開けろ!!」
『踏まれるぞ!』
誰かが大声で叫べば、進路上に居る者達は全て道を開けた。開いた道へ向け、シュンは機体を動かし、ガンキャノンを走らせる。
基地から十分に離れれば、増援の中隊と同じく、スラスターを吹かして現場へ急行した。
「なんだぁ、あの玉ねぎ見てぇなのは?」
前線へと辿り着いたシュンは、空を飛んでいる巨大な紫の玉ねぎのような物体、アッザムを見て思わず声を上げる。
そのアッザムはただのアッザムでは無く、アッザム・オルガと言う改良型であり、ミサイルの追加に加え、下部のメガ粒子砲は機銃になっている。アッザム・リーダーも健在だ。
浮遊しているアッザム・オルガは次々と連邦軍のMS部隊を撃破しており、砲撃支援に当たっていた量産型ガンタンク部隊は既に全滅していた。
周囲の黒煙が多いからして、半数が連邦軍のMSであると分かる。
「こんだけデカけりゃあ当たるだろう」
シュンは座席の後ろにある照準器を取り出し、自分の目線に合わせれば、搭乗機の両肩にあるキャノン砲の照準をアッザムに合わせる。
確実に当たるようになれば、トリガーを押してキャノン砲を発射する。
「あっ! くそ!」
確実に合わせたつもりだが、相手は移動しており、初弾は外れてしまった。初弾を外せば、無線機から文句を言うマイクの声が聞こえて来る。
『誰だ! 外しやがったのは!?』
「おっ、隊長、生きてるか!?」
『その声は…シュン! お前、病院を抜け出したのか!?』
「ジッとしてられない性質でね。助太刀するぜ!」
マイクの声が聞こえれば、シュンはホワイト・ディンゴが生きていると思い、チャンネルを合わせて彼らと連絡を付ける。
『とんでもない奴だな。そのMSは?』
「借りた。傷を付けたら怒られるかな?」
『始末書どころか軍法会議物よ!』
『まぁ、今は強力なMSが一機でも必要だ。アッザムタイプを落とすぞ!』
病院を抜け出した挙句、使用許可も出ていないMSに乗って駆け付けたシュンに対し、今は懲罰を不問として、共にアッザム・オルガを撃破することに専念した。
最先端部に搭載されているアッザム・リーダーが射出され、シュンの方へと向かっていく。地上に居るホワイト・ディンゴは、飛んでいるアッザム・オルガに向け集中砲火を浴びせる。シュンもビームライフルやキャノン砲で砲撃する。
『ファング4、飛行物体が向かっているわ! 注意して!』
「なんだ、ありゃあ?」
アニタの知らせでこっちに飛んでくるアッザム・リーダーに気付いたが、既に展開された後であった。
触媒が降り掛けられ、次いで発生装置が鳥かごのようにシュンのガンキャノンを包むように展開し、磁場が発生して電磁波と高熱を浴びせる。
「な、なんだ!? 機体温度上昇!」
凄まじい電磁波と高熱を浴び、コックピット内でサイレンが鳴り響く。
だが、シュンは操縦桿を動かしてワイヤーに体当たりを仕掛け、無理やり電磁波から抜け出した。
『なんて奴だ! あの状況で抜け出すとは!』
『あんた、本当に人間?』
高熱の電磁波より抜け出したシュンに、ホワイト・ディンゴの面々は驚きの声を上げる。
そのシュンはお返しとばかりに、近くにある岩石を持ち上げて空を飛んでいるアッザムタイプに向けて投げ付ける。
飛んで行った岩石にアッザム・オルガの乗員たちは驚愕して迎撃できず、岩石が当たって地面へと墜落していく。
墜落する中、近くに居るザクがシュンのガンキャノンに向けてマシンガンを浴びせるが、オリジナルよりも更に重装甲を貫通できるはずも無く、そのまま近付かれてラリアットを食らわされる。
まだザクは健在であったが、シュンは無視してアッザム・オルガまで走る。一方でホワイト・ディンゴは、残っているMS部隊の攻撃を受けていた。
「邪魔だ!」
道中、グフが立ち塞がり、ヒートロッドで攻撃してきたが、シュンはこれを回避して両肩のキャノン砲は撃たず、あろうことか飛び蹴りを食らわせた。
重量がオリジナルより倍の飛び蹴りだ。当然、グフの胴体は拉げ、奇跡的に助かったパイロットは悲鳴を上げながら飛び出す。
アッザム・オルガの方へ辿り着いた所で、迎撃の上部のビーム砲を躱し、スラスターを吹かせて本体に取り付き、ビーム砲を機体のマニピュレーターで圧し折って破壊し、殴り始める。更には圧し折ったビーム砲の砲身を突き刺してアッザム・オルガを完全に沈黙させる。
『アッザムタイプ、沈黙を確認!』
『凄いな、ぶっつけ本番の機体で大型兵器を倒すとは…』
アッザム・オルガが完全に沈黙したのを確認すれば、レイヤーは驚きの声を上げる。
『敵機撃破を確認。周囲には敵機の反応は見当たりません。要塞から白旗も確認!』
最後の一機はホワイト・ディンゴが仕留めれば、要塞は抵抗を止めて白旗を上げた。
アッザム・オルガを初め、要塞全てのMSが全て撃破されて要塞の防衛設備も全て破壊されてしまった。小火器や対MS携帯兵器で抵抗しようにも、無意味に等しい。悪足掻きをした所で敵に対した損害を与えられないので、投降するのが正しい判断である。
『終わったか…こちらの損害は?』
『増援を含め、殆どのMSが稼働していません。健在とすれば、我々ホワイト・ディンゴとファング4くらいです。手痛い損害ですよ』
『そうか…HLV基地まで後もう少しだ。おそらくこれ以上の抵抗を受ける事だろう。撤収して、次の攻撃に備えよう』
手痛い損害に終わったヒューエデン要塞の戦いに、レイヤーはこの大陸においてジオン軍の最後の脱出手段があるHLV基地ではこれ以上の抵抗があると予想しつつ、津具に備えるため撤収すると告げた。
その時、宇宙において最終決戦が終わっており、ジオン軍最後の宇宙拠点がある月のグラナダにて、終戦協定締結の交渉が行われていた。
交渉が終わるまで戦争は継続状態だ。終戦が宣言され、ジオン本国が地球の部隊、宇宙の部隊に戦闘中止並び武装解除命令を出さぬ限り、地球での戦いは続く…。
アニメでは一回しかやらない岩石投げをやってみたいのでやってみた。そんでZで見せたドロップキックもやってみた。
毎度思うが、どんどん分数が短くなってる…。
次回でコロ落ち編最終回です。
ピクシブで連載してる外伝と並行して進めているので、またかなり遅くなりますが…。