復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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更新が一カ月に一回に落ち込んでるな…


ブロークン・ヒル

 ホワイト・ディンゴが撤収した後、残って調査団に加わったレオンは、墜落したジオン軍のヘリを調査する一団に加わっていた。

 その中で一人の調査員が遺体の手錠に繋がれた耐爆ケースを発見し、上官に報告することなく無断で開けようとする。

 どうやら中身を金塊と思って独り占めするつもりのようだが、それに気付いたレオンは気付かれずに彼の背後に接近する。

 

「っ!?」

 

「おい、迂闊に開けるんじゃない。中が科学(BC)兵器だったらどうする気だ?」

 

 背後に立ってワザと拳銃の安全装置を外した音を聞かせれば、耐爆ケースを持っていた兵士はそれを置いてレオンを見る。

 

「猫糞は見逃してやる。だが、次は無いぞ」

 

 怯えた表情を見せる彼に対し、レオンは見逃してやると言えば、猫糞を働こうとした調査員は上官に報告に向かった。

 

「さて、中身はなにやら…防護服を付けて確認するか」

 

 調査員を追い払った後、レオンは偶然を装うためにその場から離れた。

 数分後、調査員の上官が現場に到着し、レオンも偶然を装って現場に辿り着けば、上官と共に対生物兵器調査隊による施設の設営が終わるまで待つ。

 設営が終われば、対BC兵器用の調査員たちと共に防護服を着て施設内へと入った。

 

「よし、開けるぞ…!」

 

 耐爆ケースの中身を空けると、防護服を着た調査員が言えば、施設内に居る一同は無言で頷いた。

 専用の道具で鍵を開ければ、静かにケースを開こうとする。ブービートラップが仕掛けられている可能性があるからだ。

 

「トラップは仕掛けられていないな」

 

 糸のような物が無いと確認すれば、ケースを全開にして中身を確認した。

 ケースの中には何らかの液体の入ったガラス瓶が入っていた。落としても中身が零れないように、厳重に固定されている。これほど厳重に固定しているのは、明らかにBC兵器であると言う証拠だ。

 

「どうやらあんたの言う通り、本当にBC兵器の類の様だ…なにかは知らんがな」

 

「それをこれから調べようと言うのさ。専門家に聞いてな」

 

 ケースの中身にある化学兵器を最初に見つけた調査員が言えば、レオンはこれからそのBC兵器の名前を調べると答えた。

 

 

 

「ただいま帰投しました」

 

「おかえり。それで、何か分かったか?」

 

 調査を終えたレオンは、ホワイト・ディンゴの駐屯地がある基地へと帰投した。

 レイヤーに調査した物が何か問われれば、レオンは調査結果を上官に報告する。

 

「あの撃墜したヘリが積んでいた物は、耐爆ケースに入れられた化学兵器のサンプルでした。幸い、ケースに命中せず、中身は漏れておりません」

 

「か、化学兵器だって!? ぞっとするぜ! 中身は金塊じゃ無かったのかよ!」

 

「あぁ、中身は金ぴかに光る金塊では無く、地球の環境を破壊するほどの化学兵器さ。俺たちは運が良かった」

 

 調査結果で撃墜したヘリが積んでいたのが化学兵器であると明かせば、撃墜した者であるマイクは冷汗を掻く。

 もし撃墜して化学兵器のサンプルが漏れれば、あの一帯が汚染されて封鎖されるか、自分等の身体に何らかの症状が出る。

 そうならないで良かったと、一同はホッとする。

 

「んで、その化学兵器の名前は?」

 

「アスタロスだ。残った資料によれば、ジオン軍がキャルフォルニアベースで化学兵器として研究していたらしい。条約違反と知っていながらな」

 

「アスタロス? たしか、そいつはコロニーの農業用と地球砂漠化防止のためのもんじゃ無かったのか?」

 

「知っているのか?」

 

「確か、科学雑誌で見たような気が…普段見てない雑誌だから余り覚えてないが…」

 

 次にボブが化学兵器について問えば、レオンはその化学兵器の名前、アスタロスだと告げた。

 ボブはこの名前を知っているようであったが、普段あまり見ない雑誌で見た名前であって余り覚えていないようだ。

 

「これをジオンは兵器に転用したと言うのか?」

 

「事実です、サンプルが証拠ですよ。ジオンがこんな兵器に頼らなければならないほど、追い詰められているという証拠でしょう。とにかく、サンプルがこれだけとは限らない。連中はこいつを宇宙の施設へ持ち出し、大量生産の準備に入る事でしょう。そうなれば…」

 

 レイヤーがアスタロスを兵器に転用したのかを問えば、レオンは事実であると答えた。

 

「なんにせよ、戦争はもうじき終わる。そんな兵器が使われれば、連邦もまた同じ兵器による報復に出て戦争が長期化する。それだけは、絶対に避けなければならない。何としてでも見付けだそう」

 

「スタンリー大佐もそう思ってるでしょうな。上層部にもその情報は知れ渡っています」

 

 戦争を長引かせないよう、なんとしてもアスタロスを確保する必要がるとレイヤーが決心めいた表情を浮かべながら口にすれば、レオンもそれに賛同した。否、レオンだけでなく、マイクやボブ、アニタも。

 シュンは事の顛末を事前にアウトサイダーから聞いており、確実に彼らホワイト・ディンゴと自分では敵わない荒野の迅雷ヴィッシュ・ドナヒューが止めてくれると信じているが、ネオ・ムガルの影があるので、最悪な結果にならぬよう彼らを助けなくてはならない。

 戦争を一日でも早く終わらせようとする彼らの努力にシュンも賛同する中、そんな彼らの元へ、新しい指令が届く。

 

「隊長、スタンリー大佐からです」

 

「ん? 噂をすればかもしれない」

 

 オーストラリア方面軍司令官から呼び出しに、レイヤーはアスタロス関連かもしれないと部下に言ってから、オアシスへと向かった。

 十数分後、オアシスからレイヤーが出て来た。出てきたレイヤーは全員にスタンリー大佐からの指示を伝える。

 

「思った通り、アスタロスの追跡任務だ。もっとも、情報は既にスタンリー指令にも届いているがな。敵の前線基地に辿り着く前に奪取せよとのことだ。各自、出撃準備に移れ!」

 

 思った通りにアスタロスの追跡任務であったことを明かせば、レイヤーは全員に出撃準備を行わせた。

 

 

 

 数十分後、出撃準備を終えたホワイト・ディンゴは輸送機のミデアに乗り込み、敵前線基地の警戒ラインギリギリまで飛ぶ。

 ここでホワイト・ディンゴの装備は、レイヤーが隊専用のジム、レオンも同じくジム。前回の戦闘で、搭乗機の量産型ガンキャノンが損傷したからである。マイクは損傷が軽微であった為、僅かな整備で戦闘可能となった。

 四番機であるシュンは、整備したジム・ストライカーのままだ。

 前線基地の警戒ラインギリギリの距離まで来れば、そこから降下してアスタロスのサンプルを持っているとされる部隊の追跡を始める。

 

『各機へ通達。ここからは敵の勢力圏内だ。何所からか敵が仕掛けて来るか分からない。用心して進め』

 

『隊長、この辺りもミノスキー粒子が濃くてレーダーが余り効きません。十分に注意してください』

 

 先に前に出た 乗るレイヤーが全員に告げれば、一同は周囲に目を配り、オアシスから来る地形情報も聞き入れてより一層の警戒をしながら追跡を行う。

 前線基地の警戒ラインに入って数m進んだ後、地雷か隠れていたマゼラアタックの攻撃でもあったのか、オアシスの右前にあるホバーが爆発した。

 

『っ!? 敵の攻撃だ! オアシスを守れ!!』

 

 襲撃を受ければ、各機は臨戦態勢を取り、一番オアシスに近い距離に居たレイヤーは指示を出しながらオアシスの前に出て盾を構える。

 

『無事か!?』

 

『大丈夫、走行と探索には問題ありません! 少し動きが鈍くなりますが…』

 

『各機へ通達! オアシスが中破した! 敵をここで迎え撃つ! 予備部隊に応援要請を!』

 

 オアシスのアニタが無事であると分かれば、直ぐにレイヤーは臨戦態勢を維持しつつ備えてある予備戦力を呼び込むように指示を出す。

 応援が来るまでその場で待っていたが、敵はこちらの都合など考えるはずが無く、直ぐに仕掛けて来る。

 ザクとグフの混成部隊で、それも重爆撃機のドダイに乗ったのが四機ほどだ。

 ドダイからのミサイル攻撃が飛んで来れば、乗っているザクやグフは持っている主兵装の弾幕を浴びせる。

 

『うわっ!? こいつ等!!』

 

『応戦するんだ!』

 

 空襲を受ける中、レイヤーは反撃を命じ、自分が率先して飛来してくるドダイに乗ったザクやグフに向けてマシンガンを放つ。

 シュンを含めた部下たちも応じて対空射撃を行う中、一機のドダイが被弾して地面へと墜落していく。上に乗っているザクは墜落の間際に降りたが、そのまま弾幕の餌食となり、火達磨となって乗っていたドダイと同じ末路を辿る。

 二機目は乗っていたグフがマイクのガンキャノンの砲撃をもろに受けて吹き飛べば、そのドダイは離脱した。三機目は被弾して墜落、ザクは降りて上空からマシンガンを撃ちながら落下したが、レオン機のビームスプレーガンの直撃を受けて空中爆発を起こす。

 最後の四機目のグフが乗ったドダイは、グフが降りた後に即時、出撃した基地へと帰投する。

 

『っ!? 地上より敵増援部隊! マゼラアタックです!』

 

『なるほど、通りで飛び降りてくるわけだ!』

 

 飛び降りたグフを撃とうとしたホワイト・ディンゴであったが、それと同時にマゼラアタックが砲撃しながら突っ込んで来た。更には一個中隊分のドップも飛来し、ミサイルまで撃ってくる。

 

「この調子だと、ザクも出てきそうだな!」

 

 ドップに向けてマシンガンを撃ちつつ、シュンは地上にもMSが出て来ると予想する。

 言った側からか、ザクⅡJ型が一個小隊ほど岩陰から出て来た。

 

『畜生! 言った側から!!』

 

「どうして悪い予感ばかり当たるんだ!」

 

 マシンガンを撃ちながら出て来るザクに対し、シュンは文句を言いながらも応戦する。

 

「こちらファング4、固まってたら纏めてやられそうだ! 俺が囮になる!」

 

『余り無茶はするな! 増援が来るまで持ち堪えれば良い!』

 

 固まっていたら纏めて倒されかねないので、シュンは自分が囮になるように別の方向へと移動を始めた。

 レイヤーはそれを了承しつつ、向かって来たグフに制圧射撃を掛け、岩陰に引っ込ませた。

 囮を買って出たシュンは、近くの遮蔽物までマシンガンを撃ちながら機体を走らせる。

 遮蔽物まで隠れたところで、マシンガンを撃ちながらホワイト・ディンゴに接近しようとするシールドを持ったザクに、腰のラックに付けていた散弾銃を取り出してそれで撃ち始める。

 大量の球が撒き散らされる中、ザクは怯んでシールドを構えながら後退する。

 

『ホワイト・ディンゴ、こちらはもう直ぐ到着する! それまで耐えてくれ!』

 

「もうじきか…!」

 

 双方ともが撃ち合いとなって膠着状態となる中、要請した増援部隊の声が無線機より聞こえて来る。

 増援が来ても、前線基地を攻撃するには数が足りないので、こちらが退くことになるだろう。

 シュンはもうじき退くことになると分かれば、マシンガンを再装填してから遮蔽物越しから敵機を撃つ。向こうも同じように遮蔽物となる岩に隠れながら撃ってくる。

 この状態が数秒間ほど続いたが、オアシスのアニタから新手が前線基地より来たことを知らされる。

 

『隊長、北東からファング4に接近する機影あり! この速度、速い!?』

 

『まさか噂のドムか!』

 

「とどめを刺しに来たか…!?」

 

 新手が来る方向へメインカメラを向ければ、三機のドムと呼ばれる重MSがホバー移動しながら高速で接近してくるのが見えた。内一機は、右肩にキャノン砲を搭載したキャノンタイプだ。

 後方のドム・キャノンが右肩のキャノン砲を撃てば、先頭のザクマシンガンを持ったドムがそれを放ち、主兵装のジャイアント・バズを持つ二機目も移動しながら撃ってくる。

 警告音を聞く前にシュンは、直ぐにその場から移動し、三機のドムタイプのMSと交戦を開始する。

 

『隊長、ファング4が!』

 

『くそっ、敵機が多過ぎて向かえない! ファング4、増援が来るまで二分だ! 持ち堪えられるか!?』

 

「これくらい、持ち堪えて見せますぜ!」

 

 三機のドムタイプのMSに襲われるファング4を助けようとしたレイヤーたちだが、敵前線基地より来た部隊の攻撃を受けているのか、向かえない状況であった。

 増援が来るまで約二分、それまでに三機のドムによる攻撃を絶えねばならない。

 自分は持ち堪えられると答えたシュンは、飛んできた砲弾を躱しつつ、マシンガンを撃ちながらドム部隊と交戦を行う。

 向こうは連携を組んで攻撃してくるため、単機のシュンは苦戦を強いられる。

 

「うぉ!?」

 

 避けきれなかったのか、ドム・キャノンが放った砲弾を胸部に受けて地面に倒れた。

 爆発反応装甲のおかげで撃破されずに済んだが、立ち上がろうとする前に、二機の通常タイプのドムがホバー移動で高速で迫る。

 

「ちっ、なんて硬さだ!」

 

 倒れたままマシンガンで反撃するシュンであるが、ドムは重装甲のMSだ。100mmマシンガンでは余りダメージは与えられない。

 更にこちらは動けない状況なので、二機目のドムが持つジャイアント・バズを受けてしまう。

 シュンは敵が放ったと同時に足のスラスターを吹かせて回避し、背中のバックパックのスラスターを吹かせて無理に立ち上がる。

 

「っ!?」

 

 この瞬間にマシンガンを持つドムが迫っており、左手に持ったヒートサーベルで斬り掛かろうとしていた。

 迫る重MSに対し、シュンは直ぐに機体の左腕に装着しているシールドのパイルバンカーを突き刺そうと操縦桿を動かす。

 素早く放たれたパイルバンカーを受けたドムだが、撃墜には至らず、直ぐに後退して二機目のドムのジャイアント・バズで撃破させようとする。

 

「クソッ、避け切れない…!」

 

 これは避けようも無かったが、シールドを構えて防御に徹する。

 放たれた砲弾を見事に受け切ったシュンであるが、その代わりにシールドを破壊され、やや左腕に損傷が残る。

 だが、爆風が巻き起こってこちらに反撃の隙が生じたので、直ぐにロングビームスピアを抜き、動こうとしているドムに向けて突き刺す。

 煙が晴れれば、スピアは標的に突き刺さっていたが、努力部がある胴体では無く、一つ目の頭部とバズーカであった。

 

「ちっ!」

 

 ジャイアント・バズは誘爆する可能性があるので、直ぐにスピアのビームを消して離れる。

 頭部を失ったドムもまた離れ、マシンガンを持ったドムかドム・キャノンにシュンのジム・ストライカーを撃破させようと撃たせる。

 弾丸と砲弾による攻撃が来る中、シュンはスラスターを吹かせながらドムによる攻撃を避け、散弾銃を取り出して反撃に出る。

 敵の距離は散弾銃の有効射程外であるため、ただ敵を怯ませるだけの程度だ。その程度だが、こちらは増援が来るまで持ち堪えるだけで良い。

 牽制射撃のおかげで敵は迂闊に接近してこず、手持ちのマシンガンを撃ってホバー移動で損傷機と共に後退する。散弾銃の弾が切れるまで撃ち続けていれば、二分経った頃合いか、念願の増援が現れた。

 

『ホワイト・ディンゴ! 騎兵隊のご到着だ!』

 

『増援か! 十秒遅かったぞ!』

 

『ヒーローは遅れてやってくるもんさ!』

 

 増援は量産型ガンタンク一個小隊にジム・コマンドG型二個小隊による中規模な物であった。

 厳戒態勢の前線基地を攻撃するには少ないが、こちらが撤退することを前提にしているので、この数で十分である。

 四機のガンタンクによる砲撃支援が行われる中、ジム・コマンド四機の小隊が前進して目に見える敵機に向けて手持ちのマシンガンの弾幕を浴びせる。

 

『ほらっ! 早く撤退するぞ!』

 

「悪いな!」

 

 シュンの方にも増援のジム・コマンドが来たので、弾切れになった散弾銃を持ちながら撤退を始める。

 ホワイト・ディンゴも撤退していた。余り動けないオアシスは、やって来たジム・コマンドが抱えられており、三機がマシンガンを撃ちながら殿を務め、煙幕をばら撒いてからブロークン・ヒルより撤退した。




次回更新はいつになる事やら…

次回はコロ落ちも含め、三度はジオンの襲撃を受けているトリントン基地でございます。

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