復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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何だろう、このところ執筆が進まない…。


シンプソンズ・ギャップ

 アリス・スプリングス奪還後、シュンはシミュレーターに勤しんでいた。

 そのシミュレーターは一年戦争でかの有名なホワイトベース隊との模擬戦闘であり、相手は後に英霊となって復活するアムロ・レイが乗るガンダム、カイ・シデンが乗るガンキャノン、ハヤト・コバヤシが乗るガンタンクの三機だ。

 ホワイトベース隊の大半は少年少女らであり、数々のジオンの追跡を退けて来た歴戦の猛者たちだ。

 他にも戦死したリュウ・ホセイや新たにパイロットとなったセイラ・マスが乗るコア・ブースターを入れるべきだが、生憎と補給部隊が持ち帰った時点でのデータしか無い。いや、むしろその方が良いだろう。

 

「おや、バートル君はシミュレーター中か。精が出ますね」

 

 ホワイトベース隊の三機のMSを相手に、奮戦するシュンの姿を見たマイクは、茶化すようにその様子を見る。

 結果はアムロのガンダムの強さの所為であって敗北である。カイのガンキャノンとハヤトのガンタンクを撃破にまで至ったようだが、アムロが駆るガンダムだけは勝てなかったようだ。

 マイクが見る中、シュンはまた挑戦し始める。

 

「本当に試作機か? ガンダムってのは。それにしても、他にもガンダムが居るのだから驚きだよな。あれの兄弟機に七機くらいあるし、北極にはニュータイプ専用機のテスト機。予備パーツで作った陸戦型ガンダムを除けば、十機以上は居るって噂だぜ。そんなにあるなら、俺たちの方にも回してもらいたいもんだな。バートル君よ」

 

「ヒーローになるつもりは…くそっ、六度目の戦死だ! 一体どうなってんだこの天パーの餓鬼は!?」

 

 シュンのガンダムとの戦いぶりを見ていたマイクが愚痴をこぼしていたが、当の彼はまたも敗北した。

 

「その坊ちゃん。ガンダムの設計士であるテム・レイの息子さんだ。それとニュータイプだって言われてる」

 

「なんだい、そりゃあ。まるで漫画かアニメの主人公じゃないか」

 

 そんなシュンとマイクの背後からレオンが近付き、アムロがガンダムを設計した技師の息子であると明かし、更にはニュータイプと告げる。

 その事実を知ったマイクは、まるで漫画かアニメの主人公だと言い始める。実際、そうであるが。

 彼らのやり取りの間に、シュンはシミュレーターで七度目の戦死を遂げた。

 

「くそっ、また負けた。性能差か?」

 

「まぁ、隊長は十一回目でようやく勝ったからな。そう言えば、初見で倒した奴がいるらしい」

 

「マジかよ。一体どんな奴だ?」

 

「さぁ? 噂では、モルモット隊に属している士官らしい。蒼いジムに乗ってるっさ」

 

「是非とも会ってみたいな」

 

 七度目の戦死を遂げたシュンに、マイクは隊長であるレイヤーは十一回目でようやくガンダムを倒せたと口にする。

 更にホワイトベース隊との模擬戦シミュレーターを、初見でクリアしたパイロットの事を明かす。マイク曰く、蒼いジムに乗っている実権部隊であるそうだ。

 そんな会話を進めている二人に、整備班長のボブが近付いてくる。

 

「おい、デカいの! こんな所でゲーム何てしてる場合か! もうちょっと機体をどうにか傷を付けないようにしてくれないか? お前が毎度に左腕やら被弾するもんだから溜まったもんじゃない。整備の事を考えてくれ!」

 

「済まねぇ、次からは気を付ける」

 

「それなら良いが…もう少し当たらない努力をしてくれねぇか? いくら先行型が硬いからって、余り前に出て良いもんじゃねぇぞ。訓練も良いが、隊長たちを見習ってくれ」

 

 自機をもっと大事するように言われたシュンは、大人しく謝れば、ボブは腕を組みながらもっと隊長たちを見習うように告げた。

 それから数時間余り、次なる命令を受けたのか、オアシスからレイヤーが降りて来て、スタンリー大佐からの次なる命令を伝える。

 

「全員集合! 新しい任務だ!」

 

 

 

 次の指令を受けたホワイト・ディンゴは、仮設のブリーフィングルームに集まり、直接指示を受けたレイヤーより指令の内容を聞いた。

 

「殆どの損害も受けず、アリス・スプリングスを奪還できた。しかし北部と南部の抵抗が激しいようで、スタンリー大佐はレッドポッサム本隊を二分して増援として派遣した。俺たちが向かうのは北だ。まだ敵の占領下にあるダーウィン基地よりどんな理由か分からないが、ガウ攻撃空母が、南部に向けて飛行中だ」

 

 レイヤーはスタンリー指令から聞いたことを皆に告げれば、聞いた通りに北部の敵拠点から発進したガウ攻撃空母の飛行ルートが、北部の増援として向かったレッドポッサムの上空を通過することを知らせる。

 

「その飛行ルートは、レッドポッサムから派遣された北部の増援の上空を通過する。爆撃される恐れがあるってことだ。俺たちは飛行ルートにあるシンプソンズ・ギャップで、ガウを待ち伏せする。その為、スタンリー大佐は試作ビームライフルの使用許可を出した。マイク、お前の腕なら、ガウのメインエンジンの狙撃は出来るだろう?」

 

 飛行ルートにある渓谷地帯であるシンプソンズ・ギャップでガウを待ち伏せすると伝えれば、それを撃墜するための装備の許可も出ていることも知らせた。

 試作ビームライフルを使用する者は、レイヤーが指定したマイクだ。指定されたことを受けたマイクは、胸を張りながら期待に応えると口にする。

 

「ご指名ありがとうございます! この俺に任せてください! 二発で撃墜して見せます!」

 

「期待しているぞ、マイク」

 

「本当に大丈夫かしら…?」

 

 レイヤーがお気楽なマイクに指定したことに、アニタは心配になってきた。

 一連の作戦説明を終えれば、ホワイト・ディンゴは直ぐにシンプソンズ・ギャップへと出撃した。

 

 

 

『霧が濃いな…』

 

『待ち伏せにはもってこいじゃないですか』

 

『逆に、狙撃も難しくなるがな』

 

 出撃してガウの飛行ルートにあるシンプソンズ・ギャップへ到着したホワイト・ディンゴは、濃い霧とミノスキー粒子の歓迎を受けた。

 視界の悪さにレイヤーが口にすれば、お気楽なマイクは濃い霧のおかげでうってつけだと口にする。確かに待ち伏せにはうってつけだが、こう濃くては当たる確率は低い。

 レオンが口にすれば、アニタはマイクの性格を心配して注意する。

 

『マイク、あんたの狙撃が作戦の肝なのよ。分かってんの?』

 

『なーに、俺様の腕を信じなさいって! しっかり索敵頼むぜ、アニタ』

 

『はぁ、不安だわ。隊長、こんな奴に任せて良いんですか? レオンの方が向いてるんじゃ?』

 

『俺は格闘戦には自信があるんだが、ロングレンジはちょっとな…』

 

 マイクより冷静なレオンにやらせるべきだと主張するアニタであるが、レオンは自信が無いと言って辞退する。

 そんな彼女に、一番隊員の事を分かっているレイヤーは、マイクの腕を保証すると告げる。

 

『この隊の中で射撃の腕はマイクが一番だ。俺が保証するよ』

 

『狙撃手は、冷静沈着で、精密な計算と繊細な手捌きが求められるって言うのに…意外だわ』

 

『意外とは何だよ! 繊細の俺にはピッタリじゃないか!』

 

 レイヤーを感心させるほどの腕前を持つマイクに、アニタが驚いたことを口にすれば、彼は突っかかって来た。これをレオンが止める。

 

『二人ともその位にしておけ。もう直ぐ、作戦地区だぞ』

 

『そうだ。全員配置に…』

 

 レオンに賛同してレイヤーが指示を出そうとした瞬間、反応に気付いたアニタがモニターに起こっている現象を全機に知らせた。

 

『隊長、敵です! ですが、この反応は…? データ照合無し!』

 

『敵の新型か?』

 

「(まさかな。この過去の世界にまたネオ・ムガルが)」

 

 アニタからの知らせにレイヤーがジオン軍の新型と判断したが、シュンはネオ・ムガルの存在を疑った。

 ネオ・ムガルなら、この世界に無いMSを投入してきてもおかしくない。

 直ぐにその正体は、向こうから明かしてくれた。

 

『全機警戒して! 識別不能の反応がこちらに接近中!』

 

『何所のMSだ!? ちっこいのに骨やらテレビみたいなのも居るぞ!』

 

『ファング3は温存したい! 俺とファング2、ファング4で対処する! オアシスはいつも通り索敵だ!』

 

 ホワイト・ディンゴに向かって来るMSは、どれも異世界の物ばかりであり、それを見たマイクが驚けば、レイヤーは冷静に指示を出して対処する。

 その異世界のMS部隊を見たシュンは、即座にこの世界にネオ・ムガルの手が伸びていることを察し、搭乗機の専用バズーカの安全装置を解除して、先陣を切って突っ込んで来る地上戦用のMSに照準を合わせる。

 

「やっぱり奴らか。俺を殺しに来たか?」

 

 照準を合わせてから呟けば、その地上戦用MS、ティエレン地上型に向けてバズーカを撃ち込んだ。

 かなりの重装甲であるが、ホバー移動が出来ない所為でバズーカの弾頭を受けたティエレンは下半身の身を残して爆散した。

 先頭の敵機を撃破すれば、残る四機の同型機は右腕の二連装の滑走砲を撃ちながら遮蔽物へと逃げようとする。足が通常の18m代より短いために動きは遅く、レイヤーやレオンのジムに容易く撃破されていた。

 しかし、中には機動力を高めた型が居るらしく、地上をホバー移動しながら滑走砲を撃ってくる。

 

『ドムの子供か?』

 

 モノアイにホバー移動をする為、マイクはジオンの重MSであるドムの親戚と呟いたが、生憎とこのティエレン高機動型は別の世界のMSだ。全くドムとは関係ない。

 それに小人形態のティエレンだけでなく、骸骨のような外見を持つヘリオン陸戦型、ちゃんとした人型であるリーオー、ジン・オーカーまで姿を現し、手にしている携帯火器をホワイト・ディンゴに向けて雨あられと浴びせて来る。

 

『隊長、俺たちガウが来る前にやられませんかね?』

 

『無駄に喋ってる暇があれば、後方へ行ってキャノン砲でも撃っておけ! ここは俺たちに任せれば良い!』

 

 遮蔽物に隠れたマイクは反撃しつつ、ガウが来る前に自分たちが謎の敵部隊に全滅させられそうだと心配の声を上げれば、レイヤーは後方へ行って支援しろと言って、向かって来る敵機の胴体に数発ほど撃ち込んで撃破した。

 レオンの方にもジン・オーカーが迫り、腰から抜いた剣を振り下ろしたが、彼は避けて左手で抜いたビームサーベルをコックピットに突き刺し、引き抜いて次の敵機を右手のマシンガンで攻撃し始める。

 

「すげぇな。流石は特殊部隊の事はある」

 

 レオンの動きを見ていたシュンは舌を巻く。そんなシュンは喋る前に撃破したリーオーの残骸からビームサベールを引き抜き、機体の背中のウェポンパックからビームスプレーガンを取り出し、高速移動しながら滑走砲を撃ち込んで来るティエレン高機動型の足に照準を合わせる。

 敵は高速で移動しているので当たらないので、少し先に照準を向けて撃ち込めば、片足を破壊されたティエレンはバランスを崩し、バラバラになりながら火達磨となって爆発する。

 鬱陶しい敵を一つ片付けたが、高機動型のティエレンはあと三機いる。滑走砲を盾で防ぎつつ、先の未来予知射撃で一機ずつ確実に倒していく。

 

『オアシス、ジオンのMSはどうした?』

 

『先も言った通り、反応は正体不明のMSばかりです。新型の可能性が…』

 

『いや、ジオンの新型じゃない。どうやら、先客は俺たちを襲っている奴らに皆殺しにされたようだ』

 

 戦闘の最中、レイヤーはアニタにジオンのMSは何所に居るのかを聞いたが、レーダーと索敵を見ている彼女はその類の反応がない事を知らせる。

 新型の可能性をあると考えるアニタであるが、レオンはザクの残骸を見付け、謎の勢力のMSであることを伝える。シュンは正体を知っているが、自分の正体を明かさないために敢えて黙っていた。

 

『でもモノアイだぜ? モノアイはジオンのじゃないのか?』

 

『マイク、モノアイはうちのジムにも使ってるのがあるわ。いつジオンが特許を著作権会社に申請したって言うの?』

 

『ジムがモノアイ? ジムはバイザーじゃないか。なんで一つ目なのを…』

 

『はぁ、真面目にやってくれ!』

 

 ジンやティエレンがモノアイなため、マイクはジオンの新型と主張したが、アニタはモノアイを採用しているジムも居ることを伝えれば、彼は知らなかったのか、驚きの声を上げ、モノアイを採用する疑問を告げようとする。

 これに呆れたのか、レオンは真面目にやれと言って議論を終わらせた。

 それでも的確に戦闘を行うホワイト・ディンゴの面々であったが、その隊長であるレイヤーは、ネオ・ムガルのMS隊がシュンの陸戦型ジムに集中していることに気付いたのか、狙われる理由を狙っていた敵機を撃墜した後に問う。

 

『ファング4、この正体不明の敵はお前の方に集中しているように見えるが、何か恨まれることでも?』

 

『さぁ、色んな所から恨まれてますから、分かりませんなっ! と』

 

 隊長からの問いに、シュンは近接戦闘を挑んで来たティエレンに蹴りを入れて転ばせ、それからビームスプレーガンを撃ち込みながら答える。

 

『隊長! 上空よりガウ攻撃空母が来ました!』

 

 異世界のMSとの戦闘が続く中、目標であるガウ攻撃空母がこのエリアへと入って来た。

 

『ようやく俺の出番だな! 隊長、へんなMSの相手は任せましたよ!』

 

『良いから! 早く狙撃ポイントへ行け!』

 

 アニタからの知らせで標的のガウ攻撃空母が来たのが分かったマイクは、自機の腰にある試作型ビームライフルを取り出し、狙撃地点へと向かった。

 まだ異世界のMS部隊は残っており、手近に居るレイヤーたちを狙って来る。特にシュンの陸戦型ジムに集中している。マイクも例外では無かったが、彼もホワイト・ディンゴのメンバーだ。右肩のキャノン砲で反撃して撃破する。

 

『邪魔するなよ! 俺は繊細なんだ!』

 

 そう言ってからバックパックのスラスターを使って狙撃地点まで飛び、ビームライフルを構えてガウが来るのを待つ。

 標的のガウは搭載している全てのMSを地上へと降下させた。どうやら狙撃される前に撃破しようと言う根端だろう。だが、下はホワイト・ディンゴと異世界のMS部隊が交戦している。三つ巴になることは確実だ。直ぐにアニタは隊長を含めた隊員全員にガウからMSが降下したことを知らせる。

 降下したジオンのMS隊、ザクは最初にここを陣取っていた味方の仇を取るべく、彼らを皆殺しにした異世界のMS部隊を攻撃する。ガウもまた搭載火器でシンプソンズ・ギャップに展開している異世界のMS部隊に攻撃し始める。

 

『三つ巴だな。ファング3は狙撃に専念しろ!』

 

 状況が三つ巴になったことを確認したレイヤーは直ぐに指示を出し、降下したザクからの攻撃を避けながら、背後から攻撃しようとする異世界のMSを先に攻撃して撃破する。

 

「こいつ等の方が厄介だな!」

 

 シュンの方にもザクが来た。ザクはシュンを攻撃しようと背中を見せたリーオーを躊躇いも無しに手持ちのMMP-10マシンガンを撃ち込み、撃破してから陸戦型ジムに攻撃してくる。

 ザクが来る前に撃破したジン・オーカーの残骸を盾に、ビームスプレーガンで撃ち返す。

 一対一の撃ち合いになる中、狙撃地点に辿り着き、ビームライフルで狙撃態勢を取るマイクのジムキャノンを攻撃しようとするザクを目撃した。

 

「うわっ!」

 

 狙おうとするが、撃ち合っているザクが標的を指示したのか、ガウがシュンの陸戦型ジムが居る方向へ向け、連装砲を発射してきた。

 異世界のMSの残骸で作った即席のバリケードは吹き飛ばされ、その余波で陸戦型ジムも吹き飛ぶ。頑丈な装甲のおかげで無事であったが、敵機は容赦なくマシンガンを撃ちながら近付いてくる。

 撃ち返そうとしたが、先の砲撃でビームスプレーガンが壊れて使い物にならなくなっていた。

 マイクのジムキャノンを狙っていたザクはレイヤーの攻撃で撃破され、黒煙を上げている。

 シュンを攻撃していたザクはマシンガンの弾が切れたのか、マシンガンを再装填することなく腰のヒートホークを引き抜き、スラスターを吹かせて一気に近付いてくる。

 こちらも機体を起き上がらせ、振り下ろされたヒートホークを盾で防ぎ、サーベルを引き抜くことなく右拳でザクを殴り、よろめかせたところでシールドの打突部分を胴体に突き刺す。コックピットの部分に突き刺したためか、ザクは機能を停止した。

 それと同時にマイクはガウの左翼のエンジン部の狙撃に成功したようだ。左翼のエンジン部から火を噴いているが、ガウはまだ健在だ。

 

『もう一丁! うわっ!?』

 

 次に右翼のエンジン部を狙おうとした瞬間に、マイクのジムキャノンの狙撃地点が砲撃を受けて崩落した。

 砲撃したのは、頭部を外して代わりに長砲身を胴体に付けたティエレン長距離射撃型だ。護衛には三機のティエレンがついている。

 足場を崩されたジムキャノンは落下していくが、マイクはこれを好機と捉え、ビームライフルの照準をガウの右翼エンジン部の進行方向に定め、直ぐにトリガーを引いてビームを発射する。

 放たれたビームはマイクの狙い通りにエンジン部に命中し、両翼のエンジンを失ったガウは地上へと墜落していく。

 

『やった! 当たった!』

 

『まさか当たったのか!?』

 

『ガウ、撃墜を確認! マイク、あんたそんなことが出来たの!?』

 

 誰もあの芸当は出来ないと思っていたが、マイクは物の見事にやってのけた。

 これに一同が驚くが、レイヤーは冷静に指示を出し、残敵の排除に当たる。

 

『各機、敵はまだ残っているぞ! これより掃討戦に移行する! ファング4、ウェポンラックから武器を出せ!』

 

 指示に応じ、それぞれが指示された通りにジオンのザクを含め、異世界のMS部隊の掃討を始める。

 ザクは乗っているパイロットで少々手強かったが、連携を取れば呆気ない物だ。

 異世界のMS、ネオ・ムガルがこの世界に持ち込んだMS隊に対しては、乗っている者が対した技量も無いためにザクより容易であり、倒すにはそれ程の手間が掛からなかった。

 

「死にやがれ!」

 

 背中のウェポンラックで100mmマシンガンに切り替えたシュンの陸戦型ジムは、遠距離から砲撃して来る長距離射撃型の排除を行う。

 護衛が三機いたが、マシンガンの乱射で三機とも戦闘不能になるか撃破され、護衛機無しでは何も出来ない長距離射撃型は足を破壊されて地面に倒れた。

 

『撃つな! 降伏する!!』

 

「投降か? そんじゃ、ここにいる訳を…」

 

『じ、自爆スイッチが!? い、嫌だ! 俺は死にたく…』

 

「ちっ、聞けず仕舞いか」

 

 とどめを刺そうとしたシュンだが、敵機は投降すると無線で言って来た。

 しかしネオ・ムガルは存在を隠したいのか、機体は自爆した。他の敵機の残骸も機密保持のためか、次々と仕掛けられた爆弾が爆発して木っ端微塵に吹き飛んで行く。

 シュンが倒した敵機が最後だったのか、シンプソンズ・ギャップに居た敵部隊は全滅した。

 

『隊長、敵部隊全滅! ですが、識別不能なMSは全て爆発…残骸も含めてです…! 一体何が目的だったのかしら?』

 

『フゥー、イレギュラーが多くてヒヤヒヤしたぜ。そのイレギュラーは、流行りの異世界から来たって奴かな? まぁ、異世界からドラゴンが来ようが、このマイク様の敵じゃない』

 

『この戦略的価値も無い場所で、あれほどの戦力で何をしていたのか調べたかったが、無理の様だな』

 

『まだ何か残っているかもしれません。調査部に調べさせましょう』

 

 戦闘を終えたホワイト・ディンゴの面々が、ネオ・ムガルが送り込んで来たMS隊に対するそれぞれの意見を言う中、唯一正体を知っているシュンは何も言わず、ただ燃え盛る敵機の残骸を見ていた。

 ジオン軍がここに居る理由は謎のままであり、レイヤーも分からず仕舞いだ。

 

『とにかく、俺たちを待ち伏せていたって訳ではなさそうだ』

 

『まぁ、戦闘は終わった事ですし、早く撤収しましょうよ』

 

 待ち伏せでは無いとレイヤーが言えば、マイクは早く撤収しようと口にする。

 これにアニタは訳があると見抜き、その理由をマイクに問い詰める。

 

『マイク、あんたなにそわそわしてるのよ?』

 

『いや、早く帰ればジャクリーンちゃんのラジオに間に合うとか、そう言うのじゃ…あっ』

 

『はぁ、あんな芸当をやった奴だなんて信じられないわ。やっぱり馬鹿よ。作戦の成功は奇跡だわ』

 

 アニタからの問いに、マイクは自分が好きなラジオを聞くために撤収しようと言う物でありそれも予想通りであり、隠そうともしなかった。これにアニタは呆れ返る。

 

『まぁ、何にせよ。作戦は成功した。さぁ、撤収するぞ』

 

 作戦は成功し、マイクの射撃の腕はホワイト・ディンゴの中で一番と言う事は証明されたので、レイヤーの指示通りにホワイト・ディンゴはシンプソンズ・ギャップから撤収を始める。

 

「これからもっとヤベェのが来るだろうな…」

 

 戦闘で少しばかり損傷した陸戦型ジムに乗るシュンも、次にネオ・ムガルが来るときはこの時代のMSでは太刀打ちできない物が来ると察し、撤収するホワイト・ディンゴの面々に合流して共に撤収した。




次話も遅れると思います。

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