魔法科高校の立派な魔法師   作:YT-3

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レポート③では、『究極(アルテマ)技法(・アート)』と呼ばれる技術、及びそれを利用する技を考察します。

『魔力』及び『魔法』ついてはレポート①をお読みください。
『気』及び『気を用いた技』ついてはレポート②をお読みください。


レポート③ 『究極技法』に関する考察

究極技法(アルテマ・アート)とは

 

(1)通常の技法とは比べ物にならないほど、強力な力を得る

(2)習得するためには、その技法に対する『適性』が必要

(3)習得から習熟までにも、非常に高い難易度(年月や才能など)を要求される

 

最低でも以上の3条件を全て満たし、なおかつ伝説的な伝承を持つ技法のこと。

そのため、使用者が極端に少ない、もしくは現代では一人もいないことも多く、真に伝説上だけに存在するものになっている技法も少なくない。

 

 

 

(かん)()(ほう)

 習得難易度:A++〜A+++

 使用者:春原凪(発動のみ)

 

自身の肉体を世界との窓口とし、魔力(仙気)と気、相反する性質を持つサイオンを強制的に混ぜ合わせ、極めて活性化させた『(かん)()()』を身に纏う技法。魔力と気の性質についてはレポート①②を参照。

活性化したサイオンは肉体の情報体(エイドス)の活性状態を引き上げ、超常的な身体能力を与える。また、自身の情報体(エイドス)外界(イデア)間の擬似的な障壁となるため、外部からの魔法式投射の妨害、外界との情報の交信遮断による耐寒・耐熱・耐毒などの多数の副次効果も併せ持つ。

 

ただし、超活性化状態のサイオンは魔法式の状態に固定できないため、(かん)()(ほう)を使用している状態では魔法を使うことはできない。これは現代魔法、古式魔法、『魔法』のいずれにも共通する。

また、体力を消耗する『気』と精神力を消耗する『魔力』を大量に消費するため、長時間全力を維持することは不可能。修練によって緩急をつければ発動時間を延ばすこともできるが、現在唯一発動に成功しているナギは体質的な問題でそれが不可能なため、事実上、現代で完全に習得している者は存在しない。

 

 

()(あい)(けん)

 習得難易度:B+〜A+++

 使用者:故・春原孝道、春原凪(劣化)

 

拳を高速で動かし、拳圧を飛ばして攻撃する技の総称。狭義では、それに加えてポケットを鞘代わりに滑りを起こし速度を上げる技のことを指す。

一定以上の威力になると拳圧が衝撃波となり、音を置き去りにする。その状態になった居合拳には「()(おん)(けん)」という別名がある。

 

使用には必ずしも(かん)()(ほう)を用いる必要はないが、特例としてここで記述する。

 

〈居合拳〉

 殺傷性ランク:ランクC

 戦術的ランク:戦闘級

 

基本にして王道。魔法や(アル)(テマ)(・ア)(ート)を併用せず、己の体捌きのみで行う居合拳。

春原孝道のように習熟すればプロボクサーのストレート以上の威力になるが、まだ完全習得に至っていないナギではせいぜいデコピン程度の威力しかない。

 

(ごう)(さつ)・居合拳〉

 殺傷性ランク:ランクB

 戦術的ランク:戦闘級

 

第一強化段階。魔法や(アル)(テマ)(・ア)(ート)を併用し威力の底上げを行った状態で、通常の居合拳と違い一瞬の"タメ"を必要とする。

その威力は普通乗用車の衝突に匹敵し、直撃を受ければ戦闘続行は厳しいものになる。ただし、ナギは通常の居合拳と同程度の威力しか出せない。

 

(しち)(じょう)(たい)(そう)・無音拳〉

 殺傷性ランク:ランクA

 戦術的ランク:戦術級(真の威力は戦略級)

 

居合拳奥義の一つ。(かん)()(ほう)で超強化された身体能力で撃ち出す、超威力の高速七連撃。

 

真の使い手が用いたこの技は、一発一発が艦載砲をも上回る威力を誇り、また、練り込まれた超活性化サイオンが(グラム)( ・ デ)(モリッ)(ション)と同じ役割を果たすため魔法的な防御も不可能な絶技。

ただし、(かん)()(ほう)を扱えなかった春原孝道はこれを習得するには至らず、ナギは(かん)()(ほう)を扱いきれないため、この世界でその真の力を引き出した者はまだ居ない。

 

なお、見た目は極太のレーザービームそのもの。練り込まれた超活性化サイオンが、一般人でも目視できるレベルの余剰サイオン光を発生させているためである。

 

 

 

(マギ)(ア・)(エレ)(ベア)

 習得難易度:EX

 殺傷性ランク:ランク外・対象が自身のため

 使用者:エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、春原凪

 

エヴァンジェリンが魔物になってすぐ、まだ弱かった時代に開発した(アル)(テマ)(・ア)(ート)

発動直前の魔法を膨大な魔力で固定・掌握・吸収、それも含めて自身の持つ情報を組み替え直し、増幅強化して発動する秘技。

吸収した魔法によって効果が変わるが、吸収する魔法の規模が大きくなるほど発現する効果も高くなる。

 

吸血鬼の真祖の莫大な魔力を前提としており、また、使用者の持つ強い負の感情・記憶に『種』を植え付けることで習得するため、習得の段階から極々限られた適性が必要になる。

習得後、使用に従い『種』が芽吹き、自身の体を侵食する。その際、情報体(エイドス)内の情報連結を破壊し、魔素と呼ばれる魔物特有の特殊な(プシ)(オン)に置き換えられていき、その侵食が一定以上に達すると暴走、一時的に意思なき魔物と化す。

増幅された負の感情そのものと言えるそれすら取り込み、自らの一部とすれば、自意識を取り戻し『吸収鬼の真祖もどき』ともいうべき不死者になれる。だが、それが叶わなければ完全に自我を失い、世界を呪い破壊を撒き散らすだけのバケモノへと堕ちてしまう。

 

その性質上、自身の負の感情に呑まれやすく、暴走してしまいがちな面がある。数百年は共にあるエヴァンジェリンは完全に御し切っているが、ナギはまだ一部手綱を取りきれていない部分があり、自我こそ失わないものの感情が攻撃的になってリスクとリターンの考慮が浅くなる時がある。

この状態を元に戻すには、そうなった原因を取り除くか、外側から誰かに『英雄』としての感情を揺さぶって貰い、目が覚めたナギが手綱を取り戻す必要がある。

 

 

(ヘー・アストラペー・)天 大(ヒューペル・ウーラヌー)(・メガ・デュナメネー)

 術式装填:(キーリプ)(ル・アス)(トラペー)

 

雷系最大魔法『(キーリプ)(ル・アス)(トラペー)』を装填した(マギ)(ア・)(エレ)(ベア)。その身を雷と化し、超高速での移動を可能にするナギの切り札。

その最大速度は秒速150km以上、マッハ440オーバー。あまりの速度に自身では完全な能動的移動ができないため、風系の魔法で空気を薄め、そこを『落ちる』ように移動する。その副次的効果で、衝撃波は弱められている。

 

しかし、思考速度は変わらないため移動前にルートを決める必要があり、移動中は無防備になる。また、先行放電などの雷特有の前哨現象はなくせないため事前察知も不可能ではなく、カウンターをされることもある。

加えて、雷化してない出掛かりなどを突かれると潰される可能性もあり、万能とは程遠い。

 

強引に現代魔法的な考え方をするならば、放出・移動・収束・発散系複合魔法の到達点。金属ではなく自身の肉体を元に行う『ヘビィ・メタル・バースト』とも言える。

自身の肉体から電子を放出、それを収束系で空気を薄めた通り道へ移動させ(先行放電)、収束系硬化魔法で電子の位置を固定し、陽子(プラス)(マイ)(ナス)が引きつけ合う力に従って後を追うように落ちる。肉体の電子を失っているが、自身に必要な化学変化は発散系で擬似的な化学結合を創り維持している。

 

通常は一部の電子のみで移動を行うが、自身の持つ全電子を放出し、さらに『(キーリプ)(ル・アス)(トラペー)』の持っていた電子も加えて行うと、「(チハ)磐破(ヤブルイカ)(ヅチ)」という技になる。

これを行うと、装填していた『(キーリプ)(ル・アス)(トラペー)』を放出するために雷化が解けてしまう。文字通りの全力をかけた、最速最大威力の突撃である。

 

 

(タストラパー・ヒ)天 双(ューペル・ウーラヌー・メ)(ガ・デュナメネー)

 術式装填:(キーリプ)(ル・アス)(トラペー)×2(二重装填)

 

上記『(ヘー・アストラペー・)天 大(ヒューペル・ウーラヌー)(・メガ・デュナメネー)』の完全版。

装填数を二倍にすることで自身をより雷に近づけ、雷速に追いつく思考加速と常時完全雷化を可能にした。

展開中、自身の内に収めきれなかった電気エネルギーを髪のように編んで蓄えるため、腰を越すほどの長髪に見える。

 

存在的には人や魔物というよりも最上位の雷精霊に近く、魔法の形をとらない(魔法の影響下にない)電気を自在に操れる。

特に雷で自身の肉体を編むことには高い適合性を持ち、放電させた空気を操って雷の分身を最大千体作り出す『(らい)()』という魔法を無詠唱で即時扱える。ただし、これで作り出した分身は雷化中のナギに準じる速度と力を持つが、思考は単純で突撃などの単純な行動しか行えない。

 

また、ナギ自身は常時完全雷化の恩恵で、純粋物理攻撃を完全に無効化する絶対的な防御能力を持つ。

さらに、体の一部を切り離しても『繋がったまま』と誤認させることも出来るなどの非常に高い戦闘能力を誇り、ナギ最大の切り札である。

 

 

《障壁破壊掌》

 

ネギ式(マギ)(ア・)(エレ)(ベア)

使用に(マギ)(ア・)(エレ)(ベア)を前提とするためここで記述するが、正確には(マギ)(ア・)(エレ)(ベア)の性質を利用した応用の一種である。

 

自身が多種多様で膨大な情報の集まりであることを利用し、障壁を展開している魔法式に触れ、ノイズを送り込むことで構造を矛盾させ崩壊四散させる技。

障壁の種類、強度によって送り込む情報を変える必要があり、全ての状況、相手に通用する『完成形』は、魔法開発の天才ネギ・スプリングフィールド(ナギ)が百年近くをかけてもあと僅かまでしか漕ぎ着けられていない難関問題である。

 

『改・』は、表面的な自身の魔物性を抑え、見た目上は人間の腕と変わらなくする技術を指す。

『試作(なな)号』は、特に収束系に対する効果に特化したパターンのことを指す。

 

 

氷の女王(クリュスタリネー・パシレイア)

 術式装填:千年氷華(アントス・バゲトゥ・キリオン・エトーン)

 

氷系最大魔法の一つ『(アントス・)年氷(バゲトゥ・キリオン)(・エトーン)』を装填した(マギ)(ア・)(エレ)(ベア)。最大半径数キロに及ぶ巨大な氷の世界を支配する、エヴァンジェリンの切り札。

使用者は氷結領域内に限り、氷属性上級魔法(「闇の吹雪」など)以下の魔法を、無詠唱、無制限、無尽蔵、無数、無反動で即時発動できるようになる。

直接的な攻撃能力はなくとも、数十にも及ぶ大魔法を即時展開する様は、正しく(アル)(テマ)(・ア)(ート)の名に相応しい。

 

装填後すぐ、使用者が指定したポイントに特殊な立体魔法陣が織り込まれた起点となる氷柱を作成。その氷柱が周囲の水蒸気を掻き集めて成長し、樹木のような巨大な『呪氷』を作り上げる。この時、付近に湖などの大きな水場があるとそれを凍らせ、氷結領域の一部とする。

作り上げられた氷は、発散系で氷の結晶構造を強引に保ちつつ、収束系で水分子の位置関係を歪めた特殊なものとなっており、一種の刻印魔法の性質を持つ。それを氷属性の精霊に読み取らせ氷柱内に大量にストックすることで、即時大量発動を可能にしている。

 

呪氷は常に発散系と収束系、振動系魔法の影響を受けており、最上位精霊クラスの影響力を上回る干渉力がなければそれらの魔法による改変を受け付けない。また、成長の場である氷柱表面には幾重にも重ねられた防御魔法陣が展開されており、とてもではないが新たに魔法式を上書きするのは不可能である。

故に氷柱を破壊するためには、『氷の内部に発散・収束・振動系以外の魔法を掛ける』か『外部から防護魔法陣を上回る威力の物理的衝撃を加える』しかない。

 

(ヘー・アストラペー・)天 大(ヒューペル・ウーラヌー)(・メガ・デュナメネー)』などとは違い、自身の情報の改変は最小限である。

自身に付与される効果としては、『起点魔法陣への遠隔からの魔力流入』『最上位氷精霊に並ぶ氷属性精霊への干渉能力』『氷結領域内の探知能力』のみであり、氷結領域が強力な魔法を発動し続けていることも相まって、現代魔法関連技術の精度では肉体情報の変質を検出できない。

 

本来ならば起点魔法陣を再度作成したり、作成場所に自身の背を指定することもできる。また、領域内を自在に転移することすら可能。

しかし、エヴァンジェリンに対し氷属性の適性に劣るナギでは十全に発動することは叶わず、本来の目的である『上級以下の氷属性魔法の無制限発動』を残し、大半の機能を削ってしまっている。その劣化版のことを、エヴァンジェリンは『(クリュス)(タリネー)(・アルケ)(イゴース)』と呼んでいる。




評価基準について。

①習得難易度
EX……努力ではどうにもならない、極々限られた者だけが持つ適性を必要とする。
A……基本的に習得までに長い年月を要し、才能によっては一生習得出来ない可能性も高い。
B……努力と反復練習の賜物であり、正しい修行を長期間積めば習得が可能な技。
(+)……それを習得するまでに必要な期間の目安。前提条件を習得した上で、+判定一つにつき約5〜10年。本人の才能によって大きく変化する。

②殺傷性ランク
ランクA……一度に多人数を殺害し得る魔法。
ランクB……致死性の高い魔法。
ランクC……致死性がない、または低い魔法。
事後判断……威力の調整が利く攻撃性魔法。
ランク外……防御魔法など攻撃性魔法ではない。

③戦術的ランク
全て一回の威力で計算(一回で複数展開できる場合は合計される)
戦略級……都市、あるいは艦隊を壊滅できる魔法。
戦術級……大集団を無力化、もしくは戦車や戦闘機などの機動兵器を破壊できる魔法。
戦闘級……個人、または小集団を無力化出来る魔法。

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