もう一つの方(非公開)の筆が全然進まないYT-3です。
長くなりそうなので、先に分割して投稿します。
それではどうぞ。
およそ十五分後、壬生紗耶香は落ち着きを取り戻した。
「壬生さん、落ち着いた?」
「はい。すみません取り乱してしまって……」
「まあ、それは仕方がないだろう。
それで、お前は何という組織に入っていたんだ?」
「それが……」
そこで、壬生は言い淀んだ。
言うべきか言わないべきか迷っているという感じではなく、そもそも言うことができないという感じで。
「もしかして、名前も知らずに入ったの?」
「いえ、そんなはずはないです。確かに聞いたはずだし、いくら嫉妬で頭の中が染まっていたとしても、名前も知らないような怪しい団体に入るはずないです。
でも、いくら思い出そうとしても思い出せないんです。名前だけじゃなくて、装備をもらった場所も、リーダーの名前も……」
「まあ、でしょうね」
そして、それを当然のように達也は肯定した。
摩利に目で説明を要求された達也は、感情のこもっていない、事実だけを述べる口調で説明した。
「壬生先輩には、マインドコントロールの形跡があります。
魔法に関する機密情報を公開することが差別撤廃になるなどという理論のかけらもない話を信じ込んでいましたし、先ほどの渡辺委員長とのやりとりにも矛盾があり、そもそもそれだけ長期間に渡り怒りを覚え続けたというのには無理があります。
おそらく、相手にはなんらかの手段で洗脳できる人材がいたんでしょう。
自分ならその状況で、襲撃部隊が口を割らないように、捕まったら重要な記憶を忘れるように催眠しておきます。他の襲撃犯からも大して情報は得られないでしょう」
達也の口から述べられた話は、その場にいた全員に驚きをもたらした。
特に、当事者である壬生は目を見開いて固まり、桐原は強く拳を握りしめ怒りを
「まあ、図書館の時点で壬生先輩から情報を得るのは諦めていましたから、それは大して問題ではありません。
エガリテが動いている以上、相手はブランシュで間違いないでしょう。
リーダーの名前も、
司という名前に、ナギのみがピクリと眉を動かした。
ほのかたちが襲われた事件の時、『司様』という名前が出たことを知っているのは、当人たちを除けばナギのみなのだから、当然といえば当然なのだが。
「問題は、奴らがどこにいるのかということですが……」
「待て。まさか達也くんは、奴らのアジトに踏み込むつもりじゃないだろうな?」
「そのまさかですよ。
それと、踏み込むだけで終わらせるつもりはありません。叩き潰します」
「危険よ!学生がすることじゃないわ!警察に任せるべきよ!」
「その場合だと、壬生先輩は家裁送りになりますが?」
達也がそう言うと、真由美や摩利は今口に出そうとしていた言葉が喉に詰まった。
緊張感が高まる空気の中、口を開いたのは十文字だった。
「なるほど。司波の言う通り、警察が介入するのは好ましくないだろう。
だが、二度目を防ぐためにも、このまま放置はできない」
そこで一旦話を切ると、眼光鋭く達也を見る。
「しかし、相手はテロリスト。下手をしなくとも命の危険が付きまとう。
俺も、七草や渡辺も、このようなことで我が校の生徒に命をかけろとは言えない」
「当然、それはわかっています。
俺は、風紀委員や部活連などの力を借りるつもりはありません」
それでも達也は微塵も動じず、間を空けずに言葉を返した。
「……まさか、一人で行くつもりではあるまい?」
「本当はそうしたいのですがね……」
「お兄様だけを行かせるわけにはいきません。一緒に行かせていただきます」
さもそれが当然だという雰囲気で、深雪は参戦の表明をする。
「俺も行くぜ」
「あたしも。さっきはあまり戦えなかったし」
「二人が行くのなら僕も行くよ。暴走しそうだから、ストッパーがいないとね」
それに続くように次々と友人たちが声を上げる中、たった一人ナギだけが、静かに口を閉ざしていた。
「司波くん。もしあたしの為にって言うのなら
だから、警察に任せましょう?もし何かあったら、そっちの方が耐えられないわ」
「壬生先輩の為ではありませんよ。俺は、自分の為に消しに行くんです」
殺しに行くのは誰かの為ではないと。説得に応じるつもりはないと言外に伝えて、達也は言葉を続けた。
「相手は、俺たちの生活する空間が標的にしているんです。
俺は、俺と深雪の
その、冷たい刃物のような眼差しで、この場にいる全員が、達也が言っていることは本当だと、その為ならば手を血に染めるぐらいなんてことはないと思っていることを理解した。
その覚悟に、一高校生が抱くにはあまりに不釣り合いな決意に場の空気が凍る中、口を開けたのは一人だけだった。
「ですが、どうやってアジトを突き止めればいいのでしょうか?
壬生先輩も襲撃犯もダメとなると、司主将もダメでしょうし……」
「簡単なことだよ、深雪。
分からないのなら、知っている奴に聞くだけだ」
「知っている方ですか?」
そう聞く深雪に、「ああ」とだけ短く答えて、達也は視線を動かした。
「『彼女』に聞いてもいいんだが、今はアフターケアで忙しいだろう。
となると、知っていそうなのはあと一人」
言葉に『お前から聞き出せなくても構わない』と言う意味を込めながら、達也はその人物と目線を合わせた。
「そういう訳だ。
ブランシュのアジトを教えてくれ、ナギ」
そのことを知っていた十文字以外の、驚きで染まった視線が一斉にナギを刺す。特に、姉という関係を築いている真由美は、信じられないという風に言葉を零した。
「そんな……。ナギくんが……?」
「ええ。北山さんたちが襲われた際に処理部隊がすぐに来たことや、今回の車両の移動でばれにくくする為にも、奴らの根城はすぐ近くにあると考えられます。剣道部を休んだ人間が徒歩でどこかへ向かっていることを考えても、おそらく徒歩圏内でしょう。
また、奴らには洗脳があります。過信してアジトを変えていない可能性は大きいですね。
そして徒歩圏内なら、その付近一帯を地主という形などで管理している春原家が、ナギが見つけられないはずがありません」
その説明には隙がなく、聞いていた全員が、ナギが情報を持っていることを確信した。
「……そういうことなら・・・」
そして、ナギが、閉ざしていた口を開いた。
「そういうことなら教えない」
全員が予想していた言葉とは逆だったが。
『知らない』ではなく『教えない』。つまり、教えるつもりはないと言っているのだ。
一瞬驚いたような表情を見せた達也だったが、彼からしたらわざわざナギから聞き出す必要はない。『彼女』のほうは弱みを握っているのだから、多少手間だが確実に引き出せる。そう思い、話を進めようとした。
「そうか。なら仕方がない、『彼女』に聞きに——」
「それに、突入の許可も出さない」
その人物に聞いたとしても無駄だと。ナギは口を挟む。
それを聞いて達也は、僅かに不機嫌そうな表情を作りナギのほうを見た。
「ナギの許可を得る必要はないだろう?」
「あるよ。
あの土地は、現在も春原家が所有しているものだ。上の建物は別だけど。
それでも入るというのなら、住居不法侵入で訴えるよ」
その言葉を聞いた達也は、わずかに逡巡する。
警察の介入が好ましくないから自分たちで突入しようというのに、それで犯罪者として捕まってしまっては本末転倒だ。
「逆に、ボクが許可を出せば、土地の借用契約に基づいて立ち入り調査を行う、という大義名分ができる」
「なら許可をくれ。それとも、何か教えられない理由でもあるのか?」
「教えられない理由、か……」
そんなものは当然だと、そういう雰囲気を漂わせてナギは答えた。
「殺すつもりで行く。そう言ったからだよ」
その答えに、達也は困惑の色を浮かべる。
「そんなもの、当然だろう。
相手はテロリストだ。情け容赦をかけるような連中でもない」
「相手が、自分から望んでテロリストになったのならね」
そして、誰もが忘れていた可能性を告げる。
「なに?」
「普通に考えても、家族や恋人を人質に取られて、仕方がなく加担した人だっているかもしれない。
ましてや、今回の相手は洗脳を使える。つまり、洗脳によって無理やり加担させられている可能性もゼロじゃない」
そう言うと、ナギは壬生のほうを見て、全員に説明するように言葉を続けた。
「壬生先輩や、他の有志同盟の方のことだってそうです。
洗脳によって善悪の区別がつかなくされていたのが明らかなら、たとえ警察に引き渡したところで精神鑑定から不起訴処分になるのが自然です。家裁送りなど、まずありえません」
「あっ!」
その通りだと気づいたかのように、真由美が声を上げる。
「学校側も、そんな『被害者』を処分はできません。せいぜい謹慎ぐらいでしょうし、それも実質的に洗脳から復帰するリハビリのためでしょう。
そもそも襲撃犯は引き渡さなければならないのですし、付近の住民が戦闘音を聞いているでしょう。なかったことにはできません」
そこでナギは十文字を見ると、「もちろん」と前置きして話を続けた。
「十師族の『力』ならそんな無理も押し通せるかもしれませんが、そんなことをしても、再発防止には何の役にも立ちません。
問題が起きたなら、改善点を精査し、対策を協議し、関係者に浸透させるまでしないと再発防止は出来ません。それを出来なくしたら、また同じような問題が起きるだけです」
そう言われた十文字は、決まりの悪そうな顔をした。自分の考えていたことを当てられて、その上ナギの意見が正しかったからだろう。
「話が逸れたけど、ボクが許可を出さない理由の一つはそれ。
自分や仲間の身が危なくなって殺してしまったなら仕方がない。
でも、初めから殺すつもりで行く人間を連れて行くわけにはいかない。
まずは極力怪我をさせないように無力化することから。そうでないと、『正当防衛』とも呼べない、ただの殺人だ」
自分のやろうとしていることは殺人だと断定されて、さすがの達也も言葉に詰まる。
今さら殺人に抵抗を覚えるような精神はしていないが、それでも社会的にはまずい。捕まっても『本家』が手を回して何事もなく出てこれるだろうが、そうなったら『借り』が出来てしまうし、何より深雪共々今のままの生活は続けられなくなる。それは、彼が何より優先すべきものだ。
数分ほど誰も口を開かず、静寂が包んでいた世界で、思考から舞い戻ってきた達也が口を開いた。
「……分かった。
確かにナギの言う通りだ。初めから殺しにかかるのは間違っていた。
俺は、出来るだけ殺さないように戦う。みんなもそれでいいな?」
「お兄様がそう仰るのでしたら」
「ああ」
「初めからそのつもりだったしね」
「今の話を聞いて、NOって言えないでしょ」
皆思うところはあったのだろう。参戦する意思は変わらなくとも、先程までの熱に浮かれた感じはなくなっている。
「そういう訳だ。奴らの居場所を——」
「『理由の一つ』、って言ったよね?」
だが、それだけでは認めない。
それは、人として当たり前の考え方を認めたにすぎない。
それだけで友人を戦地に連れ込むほど、ナギは彼らの価値を低く見てはいない。
「まだ何かあるのか」
「もう一つだけだよ。それが重要なんだけどね」
そして、二日前に彼が至った結論を告げる。
「今回の事件、討論会を囮にした今回の襲撃自体が囮。
本命は、それで刺激されて乗り込んできた魔法師の返り討ちだ」
その可能性を考えていた者は少なかったのだろう。事前に聞いていた十文字以外、全員が驚きに顔を染めた。
「おかしいと思わないですか?
機密情報の持ち出しが目的なら、学内に手勢を増やせた時点で、ばれないように密かにやらせればいいんです。
逆に魔法師の卵を潰すことが目的なら、わざわざ『討論会を開く』なんて分かりやすい襲撃の合図を作らずに闇討ちしていけばいいし、情報の持ち出しに手勢を割く理由もないです」
「つまり、今回のことは失敗することが前提の、ただの挑発だったってこと……?」
真由美が、信じられないという風に呟く。
無理もないだろう、今回の事件で多少ではあるが負傷者が出ているのだ。それがただの挑発だと言われても信じ難いだろう。
「そういうこと。
自分たちの学校が襲われたら、誰だって襲撃犯やその仲間に怒りが湧くし、その上同じ学校の生徒が洗脳されていたなんてなったら、義憤にかられて突撃しに行く人も現れるだろうし。
現に、春原の方で確認している『実力者』と思われる人物は襲撃に参加していなかった。アジトに入っていった人数と、今回の襲撃犯の人数にも50人近い差がある。
明らかに、屋内戦ということで少人数で来た魔法師を返り討ちにする気満々だよ」
「なるほど」
達也も、その推測に同意する。
彼にとって、自分を
しかし、ナギの言う通り行動が矛盾している。そして、そこからナギが導いた推測でしか、その真意は推測できない。
つまり、自分たちが乗り込むのは相手も想定内。その上で、準備万端迎え撃つつもりということだ。
「相手は、計画が失敗して慌てているただのテロリストじゃない。
ほとんど全てが相手の予測通りに動いてきた策士だ。
相手のアジトの中には、トラップも山ほど準備されているだろう。戦闘員一人一人も、付け焼き刃だった襲撃犯とはレベルが違う戦闘力を持っているはずだ。
その上で聞くよ。それでも自己満足のために、命をかけて突入する気はあるかい?」
ナギの言葉は、
これから行くのは、ただのアジトではなく死地。洗脳の可能性がある以上、自分は相手には手加減をしなくてはいけないのに、相手はこちらを殺すつもりでくるハンデキャップマッチだ。
たとえ魔法科高校の学生といえど、尻込みするのは当然だし、それは、自分の命を守ろうとする動物の本能として正しいことだ。
「ああ」
そして、即答する達也は、やはり生命としてどこか狂っているのだろう。
「……普通、ここで即答する?」
「どちらにせよ、命の危険があるのには変わりがない。ただ相手の戦力値が上方修正されただけだ。
それに、言ったはずだ。俺にとってこれは譲れない一線なんだと」
そう言って、ナギと達也は視線を交差させる。
ナギは、達也たち友人の命のため。
達也は、深雪の変わらない日常のため。
お互いに、大切なもののために、自らの意見を通そうとする。
空気が軋み、
「……はぁ。分かったよ。怪我はしないでね達也くん」
「分かってくれてありがとう、ナギ」
「本当は認めたくないんだけどね……。置いていっても付いてきそうだし、一人で勝手に行かれるよりは一緒に行ったほうが安全だから」
不本意だが仕方がないと、ナギは肩を落として言う。
「そうか。
それで、みんなはどうする?
こんな状況だ、やめると言っても誰も文句は言わないが」
「お兄様がお向かいになるのに、深雪が何もせず待っているわけにはいきません」
「そうね。確かに危ないかもしれないけど、達也くんが行くのに行かないわけにはいかないよね〜」
「そうだぜ!ンな危険な場所にダチ一人で行かせるわけねーだろ」
「僕だって、もう神童ではないけど、それでも簡単にやられる気はないよ」
「はぁ。みんなもか……」
結局のところ、全員の意思は変わらなかった。
意思が硬いと見るべきなのか、好戦的と見るべきなのか。
「俺も行こう」
「十文字もか?」
「ああ。十師族に名を連ねさせてもらっている、十文字家の当主代理として当然のことだ」
「ナギくんも、そんな危険な場所に行くの?」
「うん。ボクが行かないと立ち入り調査って名目は使えないから。
もともと、何もなければ明日にでも踏み込むつもりだったんだ。それが早まっただけだよ」
「なら私も——」
「七草、渡辺。お前たちは残れ。この状況で生徒会長と風紀委員長が居なくなるのは生徒の不安を煽る。
それに、万が一別働隊がいた時に対処できる人間が必要だ」
「それは、そうだけど……」
それでも真由美は弟のことが心配なのか、なかなか納得しない。
「大丈夫。一応万が一はないように、春原の秘密兵器にも動いてもらうから」
「秘密兵器?そんな人がいるの?」
「うん。七草さんにも実力が認められてる、って言えば実力は信用できるでしょ?」
「あの狸親父に?本当にそんな人がいるなら、確かに少しは安心だけど」
「いなければボクが一人暮らしはできないって」
明らかにされた事実に、達也と十文字は納得の表情を見せる。彼らは、一高周辺という重要な土地を、なぜナギ一人で管理しているのかと不思議に思っていたのだが、春原家にそのような人物が付いているのだったら確かに安全ではあるだろう。あとは本人の管理力が問われるが、それは十分以上にあったようである。
「……分かったわ。ただし、絶対に怪我しないで帰ってきてね」
「了解」
そして、突入する人間が出揃ったと思ったところで、それまで一言も発しなかった桐原が口を開いた。
「会頭。俺も行かせてください。一年が行くと言っているのに、二年の俺が行かないわけにはいきません」
「桐原。先輩の面子のためだというのなら、連れて行くことはできない。そんなものに命を掛けさせるわけにはいかない。
それとも、他に理由があるのか?」
「それは……。ありますが、ここでは言えません」
「ほう?ならば、場所を変えよう。
春原。桐原の参加は、俺に一任してくれないか?」
「分かりました。ただし、責任を持って決めてください」
「当然だ」
そう言って、十文字と桐原は部屋を出て行った。
「ナギ。今のうちに奴らの居場所を教えてくれ」
「そうだね」
この時間を使って、作戦の大枠だけでも決めておくべきだろう、と考えて、端末を操作してマップを呼び出した。
「相手の拠点は、街外れの元バイオ燃料工場。
特に業績が不調というわけじゃなかったのに、ひと月前に急に撤退したから不審に思って調べてたんだ。ブランシュと繋がったのは一週間ぐらい前だけど」
「となると、その会社の上層部にも、賛同者か洗脳された人間がいそうだな」
「それにしても……また随分と目と鼻の先に住み着いたわね。これも挑発の一環ということかしら?」
「そういうことだろうな。それと、こっちで調べようとした際に、すぐに見つけられるようにというのもあるんだろう。
問題は、先ほどの推測が春原の考え過ぎで、そいつらがすでに移動していないかということだが……」
「その可能性はないですよ。
今現在も、春原家の方でその工場は監視しています。何か動きがあったら連絡が来るはずですけど、来ていませんから」
そう言ってナギは端末を振る。実際は念話で来るのだが、わざわざ言いふらすことでもないと誤魔化したのだ。
「なるほど〜。『最若の当主』って呼ばれているのは伊達じゃないってことね」
「あまりその二つ名は気に入ってないんだけどなぁ。『最若』って最も弱いって書く『最弱』とのダブルミーニングだし」
「その気持ちは分かるわ。自分が気に入ればいいんだけど、そうじゃない二つ名で呼ばれてもね〜」
真由美も、うんうんと首を縦に振る。
この血の繋がらない姉弟の意外な共通点に、達也たちは苦笑するしかなかった。
◇ ◇ ◇
そうやって情報交換を行っていると十文字たちが帰ってきて、桐原も参戦することを伝えた。
その後彼らも交えた作戦会議を行い、突入作戦を決定した。
①まずはナギが先行し、借用契約に基づいて立ち入り調査を行う旨を伝える。
②そこで立ち入りを認めたら達也たちはナギの付き添いということで中に入る。立ち入りを拒否された場合、十文字の用意した車にレオが硬化魔法をかけて正面突破。
どちらの場合でも、エリカ、レオ、幹比古が正面入り口前に陣取って敵の逃走を防ぐ。これは、硬化魔法で防御に優れたレオ、足が速く車両でもない限り引き離されることはないであろうエリカ、精霊の視覚同調で敵の接近を感知できる幹比古、と各々の特性に合った配置だ。ちなみに裏門周辺は
③その後、立ち入りを認められた時は固まって、拒否された場合は達也&深雪&ナギと十文字&桐原の二組に分かれて正面と裏から、工場内に突入する。高い魔法力の深雪と徒手格闘戦に慣れている達也&ナギ、防御に優れ通路に壁を作ることで敵を逃がすことのない十文字と剣術で近接戦に自信のある桐原、という、こちらもバランスのいいチームだ。……実際のところは、ナギは達也の監視、十文字は桐原の突入を許可した者として守る責任からこう分かれたのだが。
◇ ◇ ◇
こうして、突入部隊と作戦が固まった。
しかし、彼らは知らない。
突入先に待ち受ける『実力者』は、並の実力者ではないということを。
剣術部部員「なんか俺空気だな」
はい。そういう訳で先に分割して投稿します。『廃工場』はまた次回に。
今回の話し合いの結果、十文字主導→春原主導、殺しに行く→無力化しに行く、事態を揉み消す→公開する、と結構原作から変わっています。やることは変わってませんけど。
次回は、ついに『実力者』が登場します!ご期待ください!
それでは、今度こそ『廃工場』でお会いしましょう。
・・・保険医「私なんか前回の最後から、一言も描写がないわよ」