どうも、オリ話は毎度苦労するYT-3です。
そんなわけで、今回の8割ぐらいは完全オリジナルです。
それでもよろしければどうぞ。
4月13日。
新歓週間も終わって、ようやくゆっくりした学校生活ができそう……できればいいなぁ。
「ナギ。今日も委員会なのかい?」
「ううん。今日はお休み。達也くんもだったよね?」
「ああ、そうだな。ようやくゆっくりできる。
だが、ナギは部活だろう?俺のような暇人と一緒にするのはどうかと思うぞ」
「まあ、そうなんだけど」
確か、射撃場で魔法を使った射撃の適性をみるとか。
「そうなんですか。まあ、二人とも大活躍だったですもんね。少しは休まないといけませんし」
「それはその通りなんだけど……。大活躍はしたくなかったかな」
「今や二人とも有名人だぜ。いや、ナギはもともとだけどよ。
達也は、魔法を使わずに、並み居る
ナギは、丁寧な対応で女子の先輩たちに順調にファンクラブを築いていった、紳士な当主、ってな」
「……ナギは総じて好評価なのに、なんで俺のは正体不明なんだよ」
「あ、あはは……」
どうしてだろうね。同じぐらいの忙しさだったのに。
「噂によると、達也くんは魔法否定派に送り込まれた刺客ってことになってるらしいよ〜」
「一体誰なんだ、そんな無責任な噂を流しているのは……」
「あたし〜」
「って、おい!」
「冗談よ冗談」
「……勘弁してくれ。
「ゴメンゴメン。でも、噂の中身は本当だよ?」
「……はぁ。なんか、もう色々と諦めたよ」
まあ、それがいいよ。
こういった人たちを抑えるのは、諦めが肝心だから。
「随分疲れてるな?」
「他人事だと思って……一週間で2回も死ぬかと思った身にもなってみろよ」
「そりゃ、真っ平だ」
「正直だね、レオ……」
「改めて考えてみたら、よく無事だったね」
「でも、今日からデバイスの携帯に制限が戻りますし、もう心配ないですよね?」
そうだといいんだけどね、美月さん。
そう上手くいかないのが世の中だと思うんだよ。
◇ ◇ ◇
マズイ!予想以上に話し込んじゃってた!
このままじゃ遅刻しちゃう!
こうなったら……瞬動だ!
『廊下は走るな』は今でも残っているけど、走ってはいないからOKだよね?前に
……見えた!射撃場!
ギリギリ間に合った!
「こんにちは、遅れてすみません!」
遅刻はしてないけれど、時間ギリギリになっちゃってるから、謝らないと!
「ナギくん、こんにちは。
どうしたの遅かったね?……って、あっ!着替えてきちゃってたの」
「えっ!?部活って、ユニフォームに着替えて来るんじゃないんですか!?」
「練習林が使える日はそうなんだけどね。
正直な話、屋内で魔法を使って射撃するのに、たいして汗はかかないでしょう?
だから、射撃場を使う時は着替えてこなくていいって言ってたんだけど……。そういえば昨日話してた最中に風紀委員で呼ばれて行っちゃってたっけ」
なんだ〜。着替える必要はなかったのか〜。
それなのにわざわざ準備棟までいった意味って……はあ。
「まあまあ、そう落ち込まないで。
ナギくんみたいにした方がいいことはいいんだし、次回から気をつければいいから」
「はい、分かりました」
「うむ、よろしい。
それじゃあ、あっちの三人の方に行ってね」
五十嵐部長に促されて、競技ゾーンに近いところにいる三人の方に行く。
そのうち二人は、ほのかさんと雫さん。もう一人は、五十嵐部長の弟の
魔法競技系の部活なんだから、ある意味当然なのかもしれないけど。
「こんにちは、ナギくん。
なんというか、残念だったね?」
「こんにちは、ほのかさん、雫さん。あと、
まあ、仕方がないと諦めるしかないね。いい運動になったと思うことにするよ」
「前向きだね。準備棟からここまでの移動を『いい運動』だなんて」
いちいち悩んでたら、頭の中で小さいアスナさんと
っと、
「よし、それじゃあ全員揃ったかな?
今日は新人四人の射撃センスをみるからね。他の部員は改善点とかを探してあげること。
というわけで、まずはスピード・シューティングもどきをしてもらおうと思うんだけれど、四人ともスピード・シューティングのルールはわかる?」
五十嵐部長の質問に頷く。
真由美お姉ちゃんの弟としては、分からないとか言ったら後でひどい目にあうからね。
ボク以外の三人も分かっているみたいだ。
「それなら良かった。
それで、もどきって言ったのはね、対戦する時のように紅白二色のクレーを飛ばすのよ。やるのは一人ずつだけどね。
それで正確性と判断力を見るわけ。
ただ、ウチの部費もそこまで多くないから、クレーの数はそれぞれ50個だけど。
それと、立ち位置はそこの円ね」
五十嵐部長はそう言って、ほのかさんの足元のサークルを指差した。
「CADは部の特化型を使ってもらうわ。
どんな魔法が欲しいかを伝えて、受け取ったらちゃんと試し撃ちをしてね」
「質問です。CADは使わなくてもいいですか?
正直にいうと、現代魔法はあんまり得意じゃなくて……」
「別にいいわよ、ナギくん。ルールでCADのスペック上限は決まっているけれど、使わなくちゃいけないとは決まってないから。
他には質問はない?他の子も遠慮せずに言っていいのよ?」
ボクは他には特にないし、それは三人とも同じみたいだ。
「それじゃあ、まずはナギくんからね。
次に
「分かりました」
順番が決まったところで、立ち位置に移動する。
CADを使わないボクはすぐに始められるから、本当に立つだけで準備は終わった。
「いつでも大丈夫です」
「それじゃあ始めるわよ」
五十嵐部長がコンソールを操作すると同時に、3カウントを知らせるランプが一つ灯った。
正直に言って、『精霊魔法』はスピード・シューティングみたいな正確性が必要とされるものには向いていない。というか、『正確に』という考え方自体がなかった。
元から『数撃てば当たる』とか『とりあえず広範囲を攻撃する』とみたいな使い方をされてきた魔法だから、当然といえば当然だ。まあ、その分威力は高いんだけど。
だけど、そのままじゃこの世界では上手くやっていけないことは分かっている。
だから、ボクは対処するための方法を考えたんだ!
最後の赤いランプが灯り、クレーが射出される。
まずは、
「【
火の矢が四条、白のクレーに向かって飛んでいく。
それを誘導すると同時に、頭の中で次の魔法のイメージを固め始める。
炎の矢が命中して爆発を起こすのと同時に、再びクレーが射出される。今度は
「——【
発射した闇の弾丸を誘導しつつ、再び次の魔法のイメージを組み上げる。
弾丸が当たり、
「【
これが考えた末の到達点。
『
「【
もちろん欠点もある。
同時に複数のイメージを保たなくちゃいけないから、精密誘導ができるのは十条が限度ということが一つ。
「【
二つ目は、イメージが混同しないように、同じ属性はもちろん、似たような属性も続けて撃たないようにしなくちゃいけないこと。
「【
三つ目も、混同を防ぐために、詠唱をしてイメージを固めすぎるわけにはいかない、つまり無詠唱で発動しなくちゃいけないこと。
「【
また、それらのせいで、ボクが唯一無詠唱で複数属性が撃てる魔法、
「【
頭を使い続けるから消耗も激しいし、
「【
だけど、競技用の『精密射撃』魔法としてみるなら、『精霊魔法』ではこれに並ぶものはない!
「【
そして、真由美お姉ちゃんや香澄ちゃん、泉美ちゃんが練習に協力してくれたこともあって、今ではスピード・シューティングで真由美お姉ちゃんと
それなのにもしも外したら、三人に申し訳なさすぎる!
「これで最後!
【
「パ、パーフェクト……」
「すごい……」
「ふう。どうでしたか?」
スピード・シューティングもどきではパーフェクトをとったけど、この結果がそのままSSボード・バイアスロンに使えるかどうかはわからないんだ。
いろいろと細かい違いもあるだろうし、もしかしたらルール的に問題があるかもしれないから、そこらへんが分かっている先輩たちに聞かないと。
「完璧よ!
スピード・シューティング部の現役選手でも、パーフェクトを取れる人は珍しいのよ!十分だわ!
……そうね。ただ一つ気になったことといえば、その、魔法名?みたいなのは必ず言わなくちゃいけないの?言わなくていいなら無駄に見えたんだけど」
「本当は、あのくらいの規模なら言わなくても大丈夫なんですけど、それはあくまで単発のときだけですね。
さっきみたいに連続して使用するときは敢えて言ってるんです。
言わないと、自分で混乱しちゃうかもしれないので」
放った後も誘導とかしなくちゃいけないしね。頭の中で間違えそうになるのは意外と致命的なんだ。
「なるほど、そういうこと。
じゃあ、他に気付いたことのある人……はいないみたいね。
それじゃあ、ナギくんありがとう。戻っていいわよ。
次は
「は、はい!」
まあ、二科生のボクがパーフェクトをとっちゃったんだし、気負って緊張しちゃうのも仕方がないか。
でも、ボクにはどうしようもないし、ほのかさんと雫さんのところに行ってよう。
「お疲れ、すごかったね」
「ありがとう、雫さん。
……って、ほのかさん、大丈夫!?」
頭を抱えて、雫さんに支えられてる。
顔色も少し悪いし、保健室に連れてった方がいいんじゃないかな?
「ナギくん、ありがとう。
でも大丈夫です。少し経てば元に戻りますから」
「本当?それなら良かった。
でも、どうして急に……」
「ほのかは、光波の揺らぎに敏感だから」
「光波の揺らぎ……もしかしてボクの魔法のせい!?」
『光の矢』の出した光に反応しちゃったってことですか!?
「ご、ごめん‼︎そんなことがあったなんて知らなくて!」
「本当に大丈夫なんです。
突然だったので驚いただけですし、フラッシュを見ちゃったみたいな感じです」
「本当?それでもごめん。
これからはできるだけ使わないようにするから」
「そこまでしなくても大丈夫ですよ。
くると分かってたら心構えができますから、ここまでにはならないですし」
「ほのかもこう言ってるし、気にしなくていいと思うよ」
本当にそうならいいんだけど……。なんか罪悪感があるなぁ。
でも、本人が大丈夫って言ってるんだし、気にしすぎない方がいいのかな?
「わかった。これからは気をつけることにするね」
「うん、ありがとう」
「それよりも、さっきの魔法、全部が『
「そうだね。あれがボクの使える
他には
「そうなんですか。
それにしても、吉田くんの話だと一つでもかなり辛い魔法って話でしたけど、五十、発?も使ってたのに息切れ一つしてないんですね」
「そこは秘密、ってことで」
「理屈がわからなくても、アレだけのスピードで、アレだけいろんな種類の魔法が飛んでくるっていうのは、相手からすればすごい脅威」
まあ、たしかにそうかもね。
でも、これを対人使用をするぐらいなら、一つの属性を100とか200とか用意した方がいい気もするけど。
「あ。
「本当ですね。もう具合は良くなりましたし、行ってきますね」
「ほのか、頑張って」
「頑張ってください」
さて、
◇ ◇ ◇
「そういえば、ぼーや。昨日チャチャゼロに頼んでたガキのことだがな」
「さっそく何か進展があったんですか?」
もう夕食後のティータイムになっているんだけど、忘れてたのかな?
「……オイ。その顔は、私が言い忘れていたとでも思っているんじゃないか?」
「えっ!違うんですか!?」
「はあ。そこまで驚かれるとは、お前の前世の私は一体どんな奴だったんだ……。
夕食中にチャチャゼロから念話が来たんだよ。忘れていたわけではないさ」
そうだったんだ。
「話を戻すぞ。ぼーやが尾行してほしいと頼んでいた…
「はい。とりあえず彼が関わっているのは確定していそうでしたから」
「そいつだがな。ぼーやが危惧していた通りになったらしい。例の、工場に出入りしている男と接触したそうだ。
さらに言うと、その男の方に別口で探りを入れている奴も出たようでな。
どうも気配断ちが上手い、忍者とかの類いらしい。
例の女護衛にも気付かれずに工場内に侵入してみせたそうだ。チャチャゼロも、人形じゃなければ気付かれてただろうと言っていたぐらいにな」
「……そうですか」
これはまずいことになったな。
こうなったらどこまで侵食されているのかが分かり次第、ボクが突入するしかなさそうだ。
「それじゃあ、チャチャゼロさんにそのまま
もちろん、無理をして例の護衛や、その忍者にバレない程度にお願いします。
どうも
「私もそう思って、すでに尾行させてるぞ。もちろん、今現在もだ。
カメラをもたせているから、一高の生徒とともに例の男に接触したら撮るように言っている」
それなら大丈夫かな。チャチャゼロさんなら、もし荒事になっても信用できる。
とりあえずチャチャゼロさんには、後で上等なワインを用意しておかなくちゃなぁ。
はぁ。どんどん出費が
殺戮人形「ケケケ、トビキリノヲ頼ムゼ」
さて、第十四話いかがでしたでしょうか?
私はものすごく書きづらかったです。
というか、ナギくんのタメ口のイメージが湧きません。特に女性に対して。
だって原作ネギくんがタメ口だったのって、
だから、いちいち敬語で書いてから語尾を修正するというめんどくさいことをしています。
ですので、自分でも違和感がバリバリありますので、ちょくちょく修正していきます。
さて、今回でおそらく最後であろう部活風景が描かれて、次回からは物語が動き始めるはずです。
それでは、次回『追跡』をお楽しみに。
・・・今回で、UQで出た『闇火』以外の