魔法科高校の立派な魔法師   作:YT-3

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どうも、小ネタを仕込んでいる時が一番書きやすいYT-3です。

書いていたらいつもの倍だったので、分割して二話連続投稿です。

それでは一話目、どうぞ。


第十一話 SSボード・バイアスロン部

 

 翌日の昼、ボクはエリカさん、美月さん、レオくん、幹比古くんと一緒にお昼を食べている。

 ああ。入学三日目で、ようやく同級生とお昼を食べられたよ。

 昨日のは渡辺先輩に呼ばれてだからカウントしない。

 あれは、先輩と食べているところに達也くんたちもいた、が正しいと思うから。

 

「それじゃあ、ナギくんも達也くんも風紀委員をすることになったんですか?」

「結局そうなったね。

 まあ、風紀委員は名誉職だから、内申とかには期待できないっていうことことらしいんだけど、誰かに力を必要とされるっていうのは悪くないから」

「そうなんだ……。

 じゃあ、今日も達也くんが生徒会室に行っているのも、風紀委員関係?」

「いや、たぶん深雪さんと一緒にお昼を食べたいからじゃないかな?」

 

 それに昨日の話からすると、深雪さんがお昼を作ってきてるんだろうし。

 そんなものを一科生の前で食べたら、また一悶着がありそうだしね。

 

「あ〜、それは分かる気がする。達也くんって、シスコンだものね」

「また、達也が聞いたら全力で否定しそうなことを言って……」

「本人がいねーのをいいことに、言いたい放題だよな」

 

 あはは……。

 でも、達也くんがシスコンだっていうのは否定できないかなぁ……。あの、冗談に思えなかった冗談(・・)の件もあるし。

 

「あっ、そうそう!

 風紀委員って、勧誘期間中は校内をウロウロしてるんだよね?」

「ウロウロって……。そこは巡回って言ってほしいかなぁ」

 

 何か問題が起きてないかを見て回るために、歩くんだから。

 

「それならさ、あたしと一緒に回ってくれない?

 一人で見て回るのもなんだし、誰か一緒に回ってくれないかな〜、って思ってたんだけど」

「は?まだ決めてなかったのかよ」

「絞り込めてはいるんだけど、悩んでるのよ。単細胞のあんたみたいに、いろいろと単純に考えてはいないの」

「んだと、このアマ!」

「もしかして!風紀委員の方で、見回る順番とか決まってたりするんですか!」

 

 ああ。美月さん。まだ止めるために頑張っているんだね。

 こういうのは、ケンカするほど仲がいいって言うらしいよ。アスナさんといいんちょさんもよくケンカしてたけど、お互いに無二の親友だって言ってたから。

 

「それは決まってはいない、って聞いてはいるんだけど……。

 ごめん。今日は巡回のついでに、SSボード・バイアスロン部に挨拶に行って、そのままデモンストレーションの会場付近で待機していようかなと思っていたんだ」

「あー。入部が決まっているのに、いろいろあって行けてなかったんだっけ?

 それじゃあ、仕方がないかぁ」

「もしかしたら、達也くんなら予定がないかもしれないし、誘ってみたら?」

「そうだな〜。そうしよっかな。

 深雪と家でどんな風に過ごしているのかとかも聞きたいし」

 

 それは、普通の兄妹のように……はないね、絶対に。

 流石に一線は越えてはないと思うけど……ない、かなぁ?ないといいなぁ。

 

「うわっ。どうしたのよナギくん、そんな遠い目をして」

「大丈夫だよ。

 ただ、達也くんと深雪さんの今後を案じていただけだから」

「そこからどう考えたら、あんな老成した目になるんだい……」

 

 老成って……。

 まぁ、ある意味仕方がないかなぁ。一応90年近く生きているわけだし。

 完全体の闇の魔法(マギア・エレベア)になった影響で、精神年齢は実質的に10歳のままとは言っても、多少はね?

 

 結局最後までこの調子で、長い人生の中で初めて(・・・)の、高校の友人とのお昼休みっていうものは楽しく終わった。前世じゃ高校には行ってなかったからね。

 

◇ ◇ ◇

 

 そして放課後。

 ボクと達也くんは、一年生ということもあって少し早めに来てたんだけど……。

 

「なんでお前らがここにいるっ!」

 

 まさか、一番遅れてきた同窓生に会って早々こんな言葉をかけられるとは思わなかった。

 

「いや、さすがにそれは非常識だろう……」

「ここは風紀委員会本部なんだから、風紀委員だけしかいないのはすぐにわかると思うんだけど……」

「なんだとっ!」

「うるさいぞ!特にそこの新入りっ!」

「も、申し訳ありません!」

「「すみません」」

 

 渡辺せん……委員長が怒るのも無理はないか。

 時間もなくなってきてるし、いつまでもいがみ合ってるわけにもいかない、っていうのもあるだろうし。

 教員枠だと紹介された二人の先輩から同情の視線で見られてるってことは、森崎くんにはこれからキツい調き…教育が待っているんだろう。頑張ってね。

 

「よろしい。ではすぐに座れ。

 ……さて、これで全員揃ったな?

 そのままでいいから、あたしの話を聞くように。

 今年もまた、あのバカ騒ぎの一週間が来てしまった。

 去年には、調子に乗って大騒ぎしたヤツや、それを止めようとしてさらに騒ぎを大きくさせてくれたヤツもいたな」

 

 ……いや、結構な人数が気まずそうな空気を出しているけど、それじゃダメでしょ風紀委員!?

 

今年こそは(・・・・・)、身内から処分者を出さずに済むよう、気を引き締めて任務に当たってくれ。

 いいか、くれぐれも風紀委員が率先して騒ぎを起こすことのないように!」

 

 しかも、毎年の恒例っ!?

 

「今年は幸いなことに有望な一年が多く、卒業生分の補充が間に合った。

 紹介しよう。立て」

 

 まだ混乱してるけど、取り敢えず立たなくちゃ。

 って、達也くんと森崎くんはすぐに立ち上がったけど、今のを聞いて混乱してないの!?しかも、この展開は聞いてないよね!?

 

「1-Aの森崎(もりさき)駿(しゅん)、1-Eの司波(しば)達也(たつや)、同じく1-Eの春原(はるばら)(なぎ)だ。

 早速だが、今日から巡回に加わってもらう」

「それはいいんですが……、役に立つんですか?」

「心配する必要はないさ。三人とも腕に問題はない。

 森崎のCAD操作スピードはなかなかのものだったし、司波の腕前はこの目で見ている。

 特に春原に関しては、最小は1人から、最大で約1000人まで捕捉できる誘導性付きの捕縛魔法がある。

 対集団において傷つけずに無力化することに関しては、この学校でも右に出るものはいないだろう。大規模な乱闘が起きそうな場合は躊躇(ちゅうちょ)せずにすぐ呼ぶように」

 

 さすがに、千条の魔法の射手(サギタ・マギカ)の精密誘導はできないなぁ。できたとして二十から三十が限界だ。もともと精密性には欠ける魔法だし。

 

「基本的に、新入りであっても例外なく、部員争奪週間は各自単独に巡回することになっているが、それでも心配だったら一緒に回ればいい」

「いえ、やめておきます」

「それで、岡田の他に言いたいことのあるヤツはいないか?」

 

 渡辺委員長が周りを見渡すけれど、特に問題はなさそうだ。

 

「よろしい。

 巡回要領は前回までに打ち合わせた通りだ。

 では早速行動に移ってくれ。レコーダーを忘れるなんてことのないように。

 新入りにはあたしの方から説明する。

 それ以外の者は、出動だ!」

 

 渡辺委員長の号令と同時に、先輩方五人が立ち上がり、(きびす)を揃えて、右の拳で左胸を叩いた。風紀委員での敬礼か何かかな?

 達也くんや森崎くんも動けてないから、ここは新人ってことで見逃してもらおう。

 

「それじゃあな、頑張りすぎんなよ」

「何かあったら、なんでも言ってきてくれたまえ」

「はい、わかりました。

 辰巳先輩と沢木先輩も、頑張ってきてください」

 

 最後に出動していった辰巳先輩と沢木先輩を見送って、この部屋には一年生三人と、渡辺委員長だけが残った。

 それにしても、森崎くんは話が終わってからずっと達也くんかボクを睨んでいるけど、それだけ納得がいってないってことなんだろうなぁ。睨んでいるのも達也くんの方が長いし。

 

「はあ。

 三人とも、そろそろ説明するぞ」

 

 あっ。さすがに渡辺委員長の話の間は、達也くんを睨むのはやめるのか。

 

「まずはこれを渡しておくぞ。

 見ればわかると思うが、風紀委員の腕章と録画用のレコーダーだ。

 腕章は左腕に付けておけ。

 レコーダーは胸ポケットに入れておけば撮影できるサイズになっている。スイッチは右の側面だ」

 

 言われた通りにポケットに入れると、確かにぴったりだ。

 

「今後、通常の巡回の際も必ずレコーダーを携帯するように。違反を発見したらすぐにスイッチをいれること。

 だが、撮影は意識しなくてもいい。風紀委員の証言は、原則そのまま証拠になるからな。

 あくまで、念の為だと思っておけばいい。

 それと、携帯端末を出せ。委員会用の通信コードを送信する」

 

 その言葉に頷いて端末を出したんだけど、一人だけ少し古めの型で、恥ずかしいな。

 っと、受信中……OK。二人も大丈夫みたいだ。

 

「よし、ちゃんと受け取れたか?

 報告の際はこのコードを使用すること。こちらからの指示もこのコードで出す。必ず確認するように。

 最後に、CADについてだ。

 平時でも、風紀委員は学内でのCADの携行を許可されている。使用についても、誰かの指示を仰ぐことはしなくていい。

 ただし、不正使用が判明した場合には、委員会から除名されるのはもちろん、一般生徒よりも重い罰が下されるぞ。

 一昨年はそれで退学になった者もいる。甘くは考えないことだ」

「質問してもよろしいでしょうか」

「なんだね、達也くん」

 

 どうしたんだろう?何か引っかかるようなところはあったかな?

 

「CADは、委員会の備品のCADを使用してもよろしいのでしょうか」

 

 えっ?どうして?

 

「別に構わないが……、なぜだ?

 君が言うには高級品らしいが、それでもあれは旧式だぞ?」

「あのシリーズは設定が面倒なので敬遠する人も多いのですが、設定の自由度が高い上に、非接触型(NCT)スイッチの感度に優れている点で、未だに熱狂的に支持されている機種ですよ。おそらく、あれを購入した人もファンの一人だったのでしょうね。

 それと、バッテリーの持続時間が若干短くなる代わりに、処理速度も最新型と同程度までクロックアップすることも可能です。

 というか、中条先輩ならこの程度のことは知っていそうでしたが……」

「あいつは、恐がってこの部屋に降りて来ようとはしないんだ……」

 

 ああ。それは中条先輩らしいかも。

 

「あぁ、なるほど。

 それと、もう一つの理由として、自分の私物のCADは特化型しか持ってきていないというのもあります。

 特化型では幅広いことには対応しづらいという問題がありますからね。いちいちカートリッジを変えればいい話ですが、それだと汎用型を使った方が早くなりますから」

 

 へぇ〜。そんなことも考えていたんだ。

 

「なるほど。だが、設定はどうする?」

「こんなこともあろうかと、昨日の段階で、特に使われた形跡の少なかったものを調整してあります。問題ありません」

「……たしか、あれ全部で30分ぐらいじゃなかったか?

 幾ら何でも早すぎるだろう……。

 まあいい。そういうことなら好きに使うといい」

「それでは、この二機をお借りします」

 

 二機?二機の同時使用って高等技術じゃなかったったけ?

 

「二機だと?……つくづく面白い男だな、君は。

 それで、森崎と春原はどうする?」

「いえ、自分は自前の物を使わせてもらいますので」

「ボクはそもそもCADを使わないので……」

 

 現代魔法はろくに使えないし、『精霊魔法』は起動式が作れていないしね。

 

「……CADなしで、あの速度で魔法をくみ上げるのか。

 春原もなかなかに常識はずれだな」

「それはよく言われますね」

「そうか。まあいい。

 それでは三人も出動してくれ。

 一人では手に余ると感じたら、すぐにこちらへ連絡すること」

「「「了解です(しました)」」」

 

◇ ◇ ◇

 

 あの後、校庭の方に行く二人とは部屋の前で分かれて、ボクは、デモンストレーションの準備のために校舎裏に集まっていたSSボード・バイアスロン部に挨拶に来てる。

 それにしても、デモンストレーションの準備をどこでしているのか分からなかったから、歩き回って探してたらだいぶ遅くなったなぁ。

 

「初めまして、って感じがしないけど、それはこっちだけかな?

 私がバイアスロン部部長の五十嵐(いがらし)亜実(つぐみ)よ」

「そうですね、初めましてになります。

 ボクのことは知っているみたいですけれど、礼儀ですし挨拶はさせてください。

 初めまして、一年E組の春原(はるばら)(なぎ)です。ナギと呼んでください」

「そう?それならナギくんと呼ばせてもらうわね。

 いや〜、それにしても十文字会頭が、ナギくんがウチみたいな目立った成績のない部活を選んだって言った時はおどろいたわ〜。

 本当にウチで良かったの?

 ナギくんみたいな有名人なら、どこからも引く手数多じゃない」

「そうかもしれませんけど、部活は成績とかで選ぶのではなくて、自分が楽しそうだと思えることをするのがいいと思っているので、ここが良かったんですよ」

 

 3-Aの彼女たちは、みんな自分の好きなことをして毎日楽しそうに過ごしていたから、それに少し憧れてるっていうのかな?

 

「それなら良かったわ。

 それじゃあ、知ってるかもしれないけど、一応ウチの部活の説明をすると——」

「おーい、亜実(つぐみ)!」

「えっ!?萬谷(よろずや)先輩!?それに風祭(かざまつり)先輩も!

 どうしてここに!?」

 

 ?五十嵐部長は三年生だろうからその先輩ってことは、スケボーでこっちに来てるあの二人の女性はOGの人?なんで学校に?

 って、あれは……光井さんに北山さん!?

 

「ああ、わるい。新人の勧誘中だったか?

 それならちょうどいい。コイツらも頼む」

「新入部員よ。可愛がってあげてね」

「えっ!?」

 

 って、放り投げた!?危ない!受け止めないと!

 

「【風よ、彼女たちを(ウェンテ・イーラ・ノービス)】!」

「「きゃっ!」」

「だ、大丈夫?」

「それじゃあな、亜実(つぐみ)

「積もる話はまた今度にしましょう」

 

 って、逃がすもんか!これはどう見ても誘拐まがいの行動だ!

 

「待ってください、風紀委員です!事情を聴かせてもらいます!」

「まずっ!新人って風紀委員なの!?」

「って、もしかしてあのナギ様!?どうしよう、色紙もってないけどサイン貰えないかな!?」

「そんなこと言ってないで、すぐに逃げるわよ!」

「逃がしません!魔法(サギタ)()射手(マギカ) (アエー)(ル・)(カプ)(トゥー)(ラエ)!!」

 

 とりあえず取り押さえる!話はそれからだ!

 

「うわっ!」

颯季(さつき)っ!」

 

 っ!物理障壁っ!

 

「あっぶなー。助かったよ」

「とにかく逃げるわよ!」

 

 (アエー)(ル・)(カプ)(トゥー)(ラエ)は威力がないから、物理障壁を展開されると突破できないんだ!

 こうなったらとにかく追っかけて、ゼロ距離で叩き込むしかない!

 

 

「五十嵐部長!ボクはこれからあの二人を追いかけます!」

「いや、その必要はないよ」

「えっ?渡辺委員長?どうしてここに」

「あたしもあの二人を追っかけてきたんだ」

 

 ……それはいいですけど、そのスケボーはどこから?

 

「それで、現役のバイアスロン部はグルじゃないんだな?」

「わ、私たちは無関係です」

「ボクも証言します。そもそもあの先輩方が来ていることを知らなかったようでした」

「そうか、ならばいい。邪魔をしたな。

 あの二人はあたしが追いかけるよ。春原はそこの二人から事情を聞いておいてくれ」

「わかりました。よろしくお願いします」

「……なんとなく、何があったかはわかったような……」

「それじゃあな」

 

 そういうと、渡辺委員長はあの二人を追っていった。

 ……もう見えなくなっているんだけど、見つける手段はあるのかな。

 

「うぅ……、怖かったよぅ」

「大丈夫ですか?光井さん、北山さん」

「うん。ありがと、ナギさん。風紀委員になっていたんだね。

 それでここは……」

「第二小体育館裏、SSボード・バイアスロン部の待機場所です。二人とも災難でしたね。

 それで、一応何があったか聞いてもいいですか?」

「えーと、校庭で勧誘に呑まれて……、そこでさっきの人たちに抱え上げられて連れてかれて……、そしたら渡辺風紀委員長がすごい形相で追ってきてぇ……うぅ」

 

 渡辺委員長……。被害者を怖がらせちゃダメでしょう……。

 

「それで、走り回られてたらここに着いた」

「そうでしたか……。ありがとうございます」

「!!光井ほのかに、北山雫……さん!?

 ……初めまして、バイアスロン部部長の五十嵐(いがらし)亜実(つぐみ)です。

 今回は先輩たちが迷惑を掛けたわね。ごめんなさい」

「はい、ありがとうございま、す?

 先輩は私たちのことをご存知なんですか?」

「ええと、うん、まぁ、ちょっとね」

 

 ああ、入試で成績優秀者だった人の情報は漏れているんだっけ。光井さんも北山さんも優秀だったんだ。

 道理であの二人に誘拐されたり、部長が獲物を狙う目になっているわけだ。

 

「その様子だと、入部希望者ってわけじゃなさそうだけど、こうしてあったのも何かの縁だし、ナギくんにも説明するところだったから一緒に聞いてもらえないかな」

「私は雫がいいのなら。雫はどう?」

「私は、ちょっと聞いてみたいかな?」

「ありがとうね。

 私たちはバイアスロン部、正式にはSSボード・バイアスロン部、っていうのはさっきナギくんが言っていたかな?

 まあ、正式名称って言っても、SSボード自体が、スケートボード&スノーボードの省略語なんだけどね。

 SSボード・バイアスロンっていうのは、伝統的なスキーと射撃の二種(バイア)競技(スロン)のことじゃなくてね。

 春から秋ではスケートボード、冬はスノーボードを使って移動しながら、コースに設置された(まと)を魔法で()ち抜いていく競技なのよ」

「魔法で、撃ち抜く(・・・・)……?」

 

 あっ、北山さんが引っかかった。

 

「そうよ。細かいルールはいろいろあるんだけど、大体のところを説明するとね。

 自分の色の(まと)だけを魔法で破壊しつつ林間コースを走破する、っていう競技なの。

 (まと)を破壊ができる射撃ゾーンは、200メートルごとに10メートルずつ設置されているわ。

 それで、破壊した(まと)の数とゴールするまでのタイムを競うのよ。自分の色以外の(まと)を壊しちゃうと減点になっちゃうから、魔法のスピードと威力はもちろん、正確性も必要になるわ」

「へぇ〜。だから魔法で撃ち抜く、なんですね」

「そうなのよ!

 それで、よかったら仮入部でもいいから入ってみない?

 面白くなかったら無理には引き止めないから!

 そうだ!この後、第二小体育館の裏でちょっとしたデモンストレーションをするんだけど、それだけでも見てもらえないかな?」

「ええと……」

 

 光井さん。諦めた方がいいかもしれませんよ。五十嵐部長は諦めが悪そうですし。それに——

 

「?なに、雫?」

「ほのか。私ここに入りたい」

「ええっ!?」

 

———後ろの北山さんの目が、すごいキラキラしてるんだもん。

 

「本当!?北山さんは入ってくれる!?」

「はい。ほのかがいいなら」

 

 ああ。これで退路が()たれちゃいましたね。

 

「え、ええっと……」

 

 左を見ても五十嵐部長が、右を見ても北山さんがいるだけで、逃げ場はないですよ。

 ……こっちを見ないでください。

 本人同士の話ですし、一応強引な勧誘というわけでもないので、どうしようもないんですよ。

 

「……私も雫と一緒なら」

「ありがとー!

 やった、さらに二人も期待の新人をゲットよ‼︎」

「「うおおおお‼︎」」

 

 その〜、なんというか、頑張ってください?

 

「……五十嵐部長、そろそろ移動しないとデモンストレーションの時間になりますよ」

「あっ!本当ね、ありがとう、ナギくん!

 それじゃあ、みんな行くわよ〜」




シルバー「こんなこともあろうかと」

はい。いかがでしたでしょうか?
では二話連続投稿の二話目もどうぞ。

・・・主人公「……障壁貫通効果を追加しないと」

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