どうもお久しぶりです、原作を読んだら逆に書けなくなっていたYT-3です。
さて、今回はプロローグの続きからです。そちらを読んだ直後の方がわかるかも。
それではどうぞ。
第一話 物語の始まり
「春原家八代目当主をさせていただいています、
あ、なんか固まってる。
やっぱり、理由もよくわかってなかったのに口を挟むのは良くなかったかな?
「あ、ああ。すまない、気を遣わせてしまったようだな。
俺は
それで、こっちが妹の——」
「
「いやいや、勝手に口を挟んだのはボクですし、ボクのほうが謝るべきですよ。兄妹ゲンカに口を挟んで申し訳ありません。
それで、もしよければどうしてケンカしていたのか、ボクに教えてくれませんか?第三者が聞くことで何か解決するかもしれませんよ」
今のやりとりで、この二人の仲が悪くはないことはわかったんだけど、そうなるとなんでケンカしていたのかが分からない。理由をどうにかできればケンカも収まって、きっとこの二人のためにもなるだろう。
「じつは、今日の入学式でわたしが新入生総代として挨拶をすることになっているのですが……」
「すごいじゃないですか!!つまり、入試の成績がトップだったってことですよね!」
「ええ。ですが、筆記だけなら兄がトップだったんです。それもダントツで」
「え?あ、あ〜」
そういえば先週、
「ですので、本来ならわたしじゃなくてお兄様が挨拶をするべきだと申し上げているのですが……」
「俺は、流石にそれはまずいだろうと言っていたんだ」
「……うーん」
つまり、深雪さんは達也くんの方が相応しいと思っていて、
達也くんは総合成績の通りに深雪さんがするべきだと思っているのか。
「……べつに深雪さんは、自分が挨拶をしたくないわけではないんですよね?」
「そうですね。わたしがやりたくないというわけではないんですが……」
「だったらやればいいと思いますよ?
深雪さんがしているところを、達也くんは見てみたいと思っているでしょうし」
「……そうなんですか、お兄様?」
「ああ、ナギの言う通りだ。かわいい妹の晴れ姿を見たくない兄貴なんていないよ」
……ん?
「そうでしたか……。差し出がましいことをしてすみませんでした」
「いや、俺はべつにいいさ。深雪が俺のために怒ってくれているのはわかっているからな。
ただ、俺もお前のことをいつも思っていることはわかってほしいかな」
「お、お兄様!ナギ君もいるのに、そんな、『想っている』だなんて……」
も、もしかしてこの兄妹って……
「だ、大丈夫ですよ、ボクは気にしないので……」
「……すまない、話がよくわからないんだが」
しかもこっちは天然だ!?
まあ、愛のカタチは人それぞれっていうけれど、大丈夫かなぁ……
「っと。深雪、そろそろ時間だろう」
「あっ、そうですね。それではお兄様、行ってきます。
ナギ君も、ありがとうございました」
「いや、大したことはできていないし、お礼を言われるほどじゃないですよ」
「それでもです。それでは、またいずれ」
「はい、頑張ってきてください」
うん。やっぱり女の子は笑っているのが一番だな。
それじゃあ当初の予定通り、達也くんさえよかったら話でもして時間を潰そうかな。
「ナギ、よければ入学式までの時間つぶしに付き合ってくれないか」
「え?ああ、大丈夫ですよ。むしろボクのほうからお願いしようとしていたところです」
「そうか、それなら良かった。
俺は魔工技師志望なんだが、今自分で研究しているものが上手くいかなくてな。
それで、会ったばかりで悪いんだが、古式魔法の観点から何かアイディアをもらえないかと思っているんだ」
「それはべつに構わないですが、ボクなんかでいいんですか?」
「実は体術の師匠が古式魔法の使い手なんだが、飄々としている人でな。まともな答えが返ってくるのかもわからない。
それで、失伝した魔法の復元に尽力していて、理論にも詳しいであろうナギに頼みたいんだ」
「わかりました。そういうことなら任せてください」
「べつに答えづらいことは答えなくて構わないからな。
それで、俺の研究テーマは『魔法を用いた重力制御型熱核融合炉の実現』なんだが、これには常駐型の方式が……」
◇ ◇ ◇
「……つまり、古式魔法での飛行魔法は単体で『飛行魔法』として成立しているわけではないということか?」
「あくまで春原家の伝えていた魔法だと、『飛行』という基礎となる呪文以外にも『急加速』や『急旋回』の呪文があったんだ。
これってつまり、連続した飛行はできるけど、不連続な挙動はできないってことだよね?」
「そうだな、確かにその伝承が正しければ単体では成立していない。
となると、飛行魔法は不連続なことができないという点で『ループ・キャスト』に近いものがあるな」
ループ・キャスト……。
たしか、魔法式の最後に同じ魔法式を複製する部分を作ることで、一回の起動式で同じ魔法を連続して使えるようにした技術だったっけ?
「そうだね。だとすれば『ループ・キャスト』を上手く使えれば常駐型の魔法を現代魔法で再現できるかも」
「ああ、そうだな。『ループ・キャスト』か……。
ありがとう、これで一つ大きな
「お役に立てたなら何よりだよ。
魔法師の工業的価値を確立して『兵器』として扱われている現状を変えるっていう目標は応援できるから、手伝えることがあれば手伝うよ」
「その時はぜひともよろしく頼む。やっぱり古式魔法の立場からだと見えるものが違うからな」
「……さて、お話は終わったかしら?」
!!?び、びっくりした〜。
「おどかさないでよ真由美お姉ちゃん」
「ふふふっ。ナギくんが夢中になってて気が付かないのが悪いのよ。
それで、達也君ははじめましてよね?生徒会長の
「よろしくお願いします。ところで、なぜ自分の名前を?」
「それは当然よ。入試で筆記の成績がダントツでトップ、しかも主席の深雪さんのお兄さんともなれば忘れるほうがどうかしてるわ」
「……そうですか。あともう一つよろしいですか?」
?なんだろう。どこか訝しんでいるような…。
「なに?私が答えられることだったら答えるわよ」
「それでは。深雪に自分の入試の成績を教えたのは会長ですか?」
「そうだけど。この前予行に来てくれた時、『兄の筆記の成績は一位でしたよね?』って聞かれたから、兄妹だし平気かなーって思ったんだけど、ダメだった?」
あ、達也くんが頭を抱えてる。
まあ、あの兄妹ゲンカの元凶は悪気はなかったっていうんだから、しょうがないか。
「……いえ、もう済んだことですし大丈夫です。
ところで会長、何か伝えたいことがあるから話しかけてきたのではないんですか?」
「ああ!そうだった!ほら達也くん、そろそろ入学式の時間だから移動したほうがいいわよ。ナギくんは用事があるから少し残ってね」
「本当ですね、ありがとうございます。
じゃあ、ナギ。先に行っているぞ」
「うん。ついでにボクの席も取ってくれるとありがたいかな」
「わかった。それでは会長、失礼します」
そう言って達也くんは講堂に向かっていった。
うん、達也くんは頭もいいし大局的にものを見れている。気遣いもできているし話してて不快になるわけでもない。
将来、絶対に有名になるだろう。ここで友人になれたのは当主としても個人としてもよかったな。
「それで真由美お姉ちゃん、ボクに用事ってなに?」
「べつに大したことじゃないわよ。ただ、言いたいことがあっただけ」
「言いたいこと?」
「そうよ。じゃあ言うわね。んんっ。『入学おめでとう、ナギくん』」
真由美お姉ちゃんは会長の顔から家族の顔になって、言ってくれた。
なら、ボクも家族として返さなくちゃ。
「ありがとう、真由美お姉ちゃん。ところで、生徒会長がここにいて大丈夫なの?」
「それは大丈夫よ。『迷子になっている新入生の案内』って名目で抜けてきたから」
「なんでわざわざ。あとでもよかったじゃない」
「あの息の詰まるところから、外に出てリラックスしたいっていうのもあったのよ。おかげでいいものも見れたから大満足ね」
「いいもの?」
なんだろう?三年生の真由美お姉ちゃんからしたら特に何もないと思うんだけど。
「そうよ。入試の筆記トップ1・2の二科生が入学式の朝から魔法について議論しているって光景」
「筆記の2位ってボクだったんだ」
「ナギくんたちのような規格外の二科生がいてくれると、校内の意識改革がしやすくなるのよ。だからああやって目立ってくれると会長としても姉としても嬉しいのよね」
「意識改革をするならまずは学校の体制から変えないと」
学校は一科生と二科生の間に対抗意識を持たせて競争心をださせたいのかもしれないけど、この学校の体制だと差別意識ばかり生まれてしまって競争心なんて出てこない。
「……やっぱりそう思う?」
「そうだね。まず、この制服が問題点その1だよ。
同じ学校なのにデザインが違う、しかも根本的に違うんじゃなくて一部分が『有る』か『無い』かの違いだし、その部分も学校のエンブレムなのもまずいよ。
これじゃあ『無い人たち』は、学校側から『お前たちは学校を背負う価値の無い奴らなんだ』と言っているようなものだし、それが原因で差別されるよ」
「正解。実際にそこから差別は起きているわ。しかも一科生を『
「指導体制が問題点その2で、指導要員が足りないから一科生のみに個別指導がつくのは仕方が無いにしても、例えば、放課後に二科生優先で教員に質問ぐらいできるようなシステムがないと。
これじゃあ一科生は
「……確かに、二科生が勉強についていけなくなったって退学したり、問題を起こす事例は毎年それなりの数でているわ。
今日にでもナギくんの言ったシステムを教員に提案してみるわね」
「ありがとう、お願いするね。
そして進級システムが問題点その3だね。
今のままじゃ二科生がいくら勉強して成績を上げても、評価されて一科生になれるなんてこともないから、二科生のやる気のもとや目標が無い状態なんだ。
このままじゃ二科生の成績はいつまでたっても伸びないし、実際にはどうであれ『正しく評価されない』っていう不満だけがたまっていって、いつか大きな爆発を起こすよ」
「その通りなのよね。でも、学校はお役所仕事でこっちの意見は聞き入れてくれないし。実際に爆発が起きてくれないとそこらへんの待遇改善はされそうにないのよね……。
あーもう!生徒だけで出来そうなことならどうにかするのに!」
やっぱり、生徒会長として出来る限りの事はしたいんだろうけど、あくまで
「魔工技師志望の人や古式魔法師のことも含めて、正直学校の体制は最低に近いよ。地道に問題追及していって、問題が起きたときに学校が日和って中途半端な対応にならないように、イニシアチブをとっておくのが今できる最善のことじゃないかな」
「やっぱりそれしかないわね……。二科生が大活躍してくれたら問題提起もはかどるのに」
「ご期待に添えるよう努力するよ」
話の切りもついたから立ち上がろうとして周りを見たら、小柄な女の子が走ってくるのが見えた。
……服は新品じゃなさそうだけど、先輩なのかな?
「あっ、いたいた!会長ー!」
「あら、どうしたのあーちゃん?」
「あーちゃんはやめてくださいっていつも言ってるじゃないですかぁっ!」
ああ。真由美お姉ちゃんの被害者か……。
「それで、えーとこちらの方は?」
「ああ、この子は春原 凪くん。この前生徒会室で、弟みたいだって話したでしょ?
ナギくん。この子は
「そう言っているのは会長だけですっ!!
えっと。中条 あずさ、二年生です。よろしくお願いします、春原くん」
「春原家当主、春原 凪です。一年ですしナギでいいですよ」
「……ほわ〜」
「どうかしましたか?」
「っは!い、いや、テレビで見るのと同じ顔だなーっと思って……」
「そうでしたか。いつも見てくださってありがとうございます」
「い、いえ、べつに、いつもってほどじゃ……」
「……それで?どうしたのあーちゃん?」
?真由美お姉ちゃんがなんな不機嫌になってる。
二人で話してて、会話に入れなかったからかな?
「あっ、そうでした!会長!そろそろ来てくれないと準備とかもあるんですよー」
「え?もうそんな時間?」
「それが、
「もう、二人とも真面目なんだから!
じゃあナギくん、そういうわけだから」
「わかったよ。達也くんと一緒に会場から見ているから頑張ってね」
「そういうことなら、かっこいいところを見せなくちゃね。
じゃあね。ちゃんと聞いてるのよ!」
「ナギくん、それではまた」
「ええ、真由美お姉ちゃんをよろしくお願いします」
じゃあ時間もそろそろだし、ボクは達也くんと合流しようかな。
◇ ◇ ◇
「えーと……」
「ナギ、こっちだ」
あ、いたいた。
って、四人組の女の子が隣にいる。知り合いかな?
「ありがとう達也。その子たちは知り合いなの?」
「いや、席を探してたそうでな。いま自己紹介をしたばかりだよ」
「そうなんだ。ああ、挨拶がまだでしたね。
初めまして、春原家当主の春原 凪です」
「はじめまして、
「あたしは
「春原だとちょっと長いですよね?ナギでいいですよ」
「オーケー。じゃあナギって呼ばせてもらうね」
そのあと残りの二人とも簡単に自己紹介をして、席に着いた。
「へぇ。では四人とも今日が初対面なんですか」
「そうなのよ。仮想型の端末が禁止だっていうからマップが手元になくて」
「そうそう。おかげで案内板とにらめっこしてたら知り合ってね」
「あたしは単純に忘れたんだけどね」
「そうなんですか。では、こんな出会いをくれたことを昨日の貴女がたに感謝しなければいけませんね」
「あー、そうだね。昨日きちんと下調べしてたらこうやって有名人と会話することもなかっただろうし」
「そう考えると、昨日の自分を褒めたくなりますね」
「そうそう。入学してすぐにこんなイケメン二人と知り合えるなんてついてるよ!」
「でも、二回目があると思っていると失敗しますからね。次からはきちんとしたほうがいいですよ」
「はーい」
「わかりましたー、ナギせんせー」
「あははっ、『ナギせんせー』って何よ!」
「だって、いまのなんか先生みたいだったじゃん」
「確かに、そう聞こえました」
ナギせんせー、か。なんか懐かしいな。
ところで、達也くんはなんでそんな尊敬するような目でボクを見ているの?
「あっ。そろそろ始まるみたいですよ」
「ほんとだ。さすがに静かにしなきゃ」
「初日から目をつけられたくないしね」
さて、真由美お姉ちゃんと深雪さんはどんなスピーチをするんだろう。楽しみだ。
◇ ◇ ◇
あのあと、入学式は滞りなく終わった。
真由美お姉ちゃんも深雪さんも素晴らしいスピーチだったけど、『みんな等しく』とか、『魔法以外にも』とか際どいフレーズがあって、前のほうに座っていた一科生の一部がピリピリしてたのが気になった。
真由美お姉ちゃんは生徒会長として、深雪さんは二科生に兄を持つ妹として、この学校の差別を問題視しているだろうからその言葉を使うのは予測できていたけれど、まさか入学式もまだなのに差別思想に染まっている人がいるのには驚いた。
確かに魔法師にはその傾向がある人が多いのは知っているけれど、そういう人たちが問題を起こしているのを知らないのかな?結構ニュースとかでもやっているんだけど。
それはともかくとして、ボク達はみんなでIDカードの交付に来ていた。
一列に並んで女性から先に受け取ってもらい、ボクが最後に受け取ったところで、エリカさんがボクと達也くんに楽しそうに話しかけてきた。
「ねえ、二人とも何組?」
「俺はE組だ」
「ボクもE組ですね」
「やたっ!あたしもE組!」
「私も同じクラスです」
エリカさんと美月さんが嬉しそうに、特にエリカさんは若干飛び跳ねながら喜んでる。
それにしてもこの三人と一緒か。面白いクラスになりそうだ。
「あたし、F組だ」
「あたしはG組」
「まあ、クラスが違うだけですし、何かあったら話しかけてきてください」
この二人とは別になっちゃうのか、さすがに六人全員が一緒にはならないか。
「そうだね。それじゃ、あたし達はクラスにいって新しい仲間を作ってくるよ」
「それじゃあね」
手を振って、教室へ行く二人を見送る。
あの二人ならすぐに新しい友達ができるだろうから大丈夫かな。
「どうする?あたし達も教室にいってみる?」
「すみません。実は用事が入っていて、少ししたら出なくちゃいけないんですよ」
入学案内によると、今日のホームルームは自由参加らしい。
本当は新しい友達を作るためにも出たかったんだけど、ついてないことに出れるだけの時間はなかったんだ。
「用事?」
「たしか、今日の夕方のニュースに生出演しますよね。もしかしてそれですか?」
「そうですよ。今日魔法科高校に入学するということで呼んでいただいたんです」
「そうだったんだ。今日の夕方のニュースね?あたしも見とこうかな。
じゃあ司波くんは?」
「すまないが、俺も妹と待ち合わせしていてな」
じゃあ、達也くんはこれから深雪さんと一緒に帰るのかな。
「へえ、司波くんって妹いたんだ」
「もしかして、新入生総代の司波 深雪さんですか?」
「えっ!そうなの?」
「そうだが……。よくわかったな。
ナギは朝一緒にいるところをみていたんだが、二人はそうじゃないだろう?」
?驚くほどのことなのかな?
「うーん、別に驚くほどじゃないでしょ。『司波』なんて苗字、この少ない生徒数でそんなにかぶるわけはないんだし」
「それはそうなんだが……、あまり似ていないだろう、俺たち。初見で当てられるのは珍しくてな」
「そんなことはないよ。顔の作りも似ているし、ボクだって一目で親族だってわかったんだから」
「そうね。なんか、こう、凛とした雰囲気も似てるのよ」
「それに、お二人のオーラはよく似ていましたし」
「……そうか」
!?今一瞬だけど達也くんの雰囲気が変わった!
美月さんに対して……敵意?どうしてだろう。
「それにしても、オーラの違いがわかるなんて柴田さんは本当に目がいいんだね」
……つまり、霊子放射光過敏症の柴田さんには、見られたくないものが見られてしまうかもしれないから敵意を抱いた、っていうことなのかな。
「?美月はメガネかけてるけど」
「そういうことじゃないよ。大体柴田さんのメガネには度が入っていないだろう?」
そうだろうな。前世ではメガネをかけてたから違和感からすぐ気付いたけど、あれは重度の霊子放射光過敏症の人、つまり精神的活動から出るとされていて、精霊を構成する粒子でもある『
目がいいというのは
「お兄様、お待たせ致しました」
あっ、ちょうど深雪さんが来たみたいだ。
少し雰囲気が悪くなってたからこれで変わるといいな。
「早かったな」
「ええ、お待たせするわけにはいけませんから。
ナギ君もこんにちは。朝はありがとうございました」
「こんにちは深雪さん。朝も言ったけど、別に気にしなくていいですよ」
「そうですか、わかりました。
……ところでお兄様?そちらの方々は?」
な、なんか深雪さんがこわい笑顔になってから、急に気温が2度ぐらい下がったような気がする!
達也くんの周りに女の子がいるのがそんなに気に入らないの!?
「落ち着け、深雪。二人は入学式で知り合ってな。たまたまクラスも一緒だったから少し話していただけだよ」
「そうでしたか、それは失礼いたしました。司波 深雪です、どうぞ兄ともどもよろしくお願いします」
「柴田 美月です。よろしくお願いします」
「あたしは千葉 エリカよ。司波さん……だと分かりづらいから深雪でいい?」
「大丈夫よ、私もエリカって呼ばせてもらうから。柴田さんも美月でいい?」
「はい、大丈夫ですよ深雪さん」
「それにしても、意外と見た目によらず気さくな感じね」
「そういうエリカは、見た目通り活発な感じね」
やっぱり女の子は打ち解けるのが早いなぁ。
ってあれ?
「あれ?真由美お姉ちゃん?どうしたの?」
「「「「……えっ?」」」」
エリカさんたちと真由美お姉ちゃんの隣にいる男の人が驚いている。やっぱり『お姉ちゃん』っていうのがまずかったのかな。
「ああ、ナギくんに用事があるわけじゃないわよ。
実は深雪さんをお誘いしようと思ってきたんだけどね。
それと、こんにちは。また会いましたね、達也くん」
「こんにちは、
つまり、深雪さんを生徒会か何かに勧誘するつもりだったけど、予定がありそうだからまた今度にしようってことかな。
「……それでナギ?七草会長とどういう関係なのよ」
なんかエリカさんがニヤニヤと、美月さんと深雪さんが疑問そうに、男の先輩が真剣にこっちを見てる。
別に隠すことじゃないし、いってもいいか。
「実はボクの両親が死んでしまった後、後見人を真由美お姉ちゃんのお父さんにしてもらっているんです。
それで、九歳ぐらいから
「……ごめん、軽々しく聞いちゃいけないことだったわね」
なんか周りの空気が重くなってる!!
美月さんも男の先輩もなんか苦しそうな顔をしてるし!
「気、気にしなくても大丈夫ですよ。もう昔のことですし。
ところで真由美お姉ちゃん、隣の人は?」
「ああ、彼は生徒会副会長で二年生の
「……服部 刑部だ」
「1-Eの春原 凪です。よろしくお願いします」
「おなじく、司波 達也です」
「い、1-Eの柴田 美月です。よろしくお願いします!」
「同じく、1-Eの千葉 エリカです」
ボク達の挨拶に服部先輩は目で返しただけだった。
なんだろう、態度が悪いな。
「それじゃあ深雪さん。今日は都合が悪いみたいなので、今度ゆっくりお茶でもしながらお話ししましょうね。あと、達也くんも」
「待ってください会長!二科生に遠慮なんて——」
「服部副会長、生徒会役員としてそれは問題発言ですよ。
それに、遠慮したのは『二科生に』ではなく『家族に』です。アポ無しの私たちが出直すのが自然でしょう」
「うぐっ」
なるほど、これが一科生と二科生のあいだの差別意識なのか。
エリカさんも目を尖らせているし、美月さんも不満そうにしている。
やがて真由美お姉ちゃんの言葉が正しいとわかったのか諦めたような顔になった。
「それじゃあまた今度。ナギくんは生放送頑張ってね」
「ありがとう真由美お姉ちゃん」
さて、そろそろボクも行かなくちゃ。
「じゃあ、ボクもそろそろ時間ですので」
「そうか、頑張ってこいよ」
「?ナギくんはどうかしたんですか?」
「ああ、さっきの話のとき、深雪さんはいなかったんでしたっけ」
「ナギは夕方のニュースに生出演するらしいから、そのためにこれから行かなくちゃいけないそうよ」
「そうなんですか。それでは頑張ってくださいね」
「わかりました。気合を入れて頑張ります」
思っていたよりもいろんな出会いがあった一日だったけど、たのしかった。これからの学校生活も楽しみだな。
読了ありがとうございます。
それでは今回の補足です、と言っても一つだけですが。
・『案内板を〜、仮想端末が〜』の部分
実は原作のこの部分で、美月を含めた女生徒四人分の掛け合いがあるのに、口調からして美月が話したであろうセリフがないという奇妙なことになってます。
おかげでここら辺の流れの自信がありません。何かおかしかったらご報告ください。
さて、今回から原作に入りました。
入学式編ではどんな活躍をしてくれるのでしょうか。
それでは次回もお読みください。
ヒロイン&アーティファクトのアンケートは入学式編終了まで受付中です。よろしくお願いします。