IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第83話 決して捕まえることのできない光

「きゃっ!?」

「あ、ごめんなさい」

「い、いえ、私もちゃんと見てませんでしたから」

「大丈夫か、蘭?」

「あ…………」

 

 えーと、今の状況。

 一夏に誘われて、大はしゃぎだった蘭が、歩いてる人とぶつかった。

 そして体勢を崩した蘭は一夏に抱きとめられ、そのまま顔を赤くしてる。

 するとそれを見た箒が、蘭とは違う意味で顔を真っ赤にさせ、私はそれを静かに見てる。

 

 ――何このカオス。

 

「えっ、うっ、あっ……!」

 

 とうとう蘭は暴走を始め、一夏の胸でばたばたと手を動かす。

 一夏も一夏で、そんな様子には気がつかないし……。ホントに鈍感なんだから。

 ああ、夏なのに寒い。

 前の一夏たちからは熱気が、後ろの箒からは寒気が発せられてる。

 ……ほんとに、誰かどうにかしてちょうだい。

 

「あ、あ、――アレですっ!」

 

 ここで、状況に変化が起きる。

 もがく蘭が苦し紛れに指さしたのは、さっきのとは違う射的屋だった。

 

「お。もしかして得意なのか?」

「え、ええっ、まあっ」

 

 そう言って、蘭は一夏から離れ、少しだけ着崩れた浴衣をなおす。

 その表情はまだ真っ赤で――動揺から立ち直っていないのは明らかだった。

 

「というわけで、行こうぜ。……ん?箒、あんまり離れてるとはぐれるぞ。ほら」

 

 言うなり一夏は箒の手を掴み、射的屋に向けて歩き出す。

 ……私?もう一夏の前を歩いてるけど。

 

「へい、らっしゃーい」

「おじさん、四人分ください」

「お。モテモテじゃないの、若いの。よしっ、おまけ無しだ!」

「ええっ?いや、まけてくださいよ。せめて女子の分だけでも」

「がっはっはっ。無論断る」

 

 一夏は屋台につくなりすぐにお金を払ってしまった。……私の分まで。

 

「……一夏。自分の分くらい、自分で出す」

「いや、いいって。こういうのは、男が出すもんだ。それに……葵、さっきので結構お金使っただろ?」

 

 さっき……。そう言われて、金魚すくいのことを思い出す。

 ついでに、一夏に笑われたことも。

 

 ガスッ!

 

 受け取った鉄砲の銃床で一夏を殴る。

 

「痛って!?なんだよ!」

「……別に」

 

 箒や蘭よりも先に構え、獲物を狙う。

 うーん……どれにしようかしら?

 はっきり言おう。射的は得意だ。

 部活は射撃部だし、そもそも実銃を使ってるんだもの、当たり前だ。

 だけど……そんな「プロ」の私が遊びに本気を出すって、どうなんだろう?

 カッコ悪いよね、絶対。

 

 それに加えて、問題が一つ。

 欲しいものが、一つも無いのだ。

 

 ……と、いうわけで。

 

「……何か、欲しいものはある?」

 

 コルクの弾を込めている三人に振り返る。

 

「え?いや、別に……」

「馬鹿にするな」

「…………」

 

 三者三様の返答。

 特に蘭は、とても真剣な表情で鉄砲を構えている。

 ……まあ、お手並み拝見ね。

 

「おー、なんか本格的だな。がんばれ、蘭」

「はい、そのつもりです」

 

 ……ネタ?ネタなの、今のは?

 

 それはともかく。

 蘭は真剣な表情のまま鉄の札を睨み続け……コルクを発射した。

 

「お」

「おお?」

「おおおっ!?」

「……Hit!」

 

 べしっ。――ぱたん。

 

「そ、その鉄の札を倒すとは……!え、液晶テレビ当たり~~~~~っ!」

「え?えっ?え……?」

 

 ――すごい。

 あれを、一発で倒すなんて。

 少なくとも、紅也以上の腕前だわ。

 

「すげえな、お嬢ちゃん!絶対に誰にも倒せないようにして――ああ、なんでもない」

「……上手」

「は、はぁ……」

「液晶テレビを狙うなんて、すげえな。しかもゲットしてるし。いや、驚いた」

 

 そう言って、一夏は拍手する。つられて周りの観客も手を叩き始め、その輪は次第に大きくなっていく。

 ……そんな中。

 

「なっ、また……!」

 

 箒はというと、今三発目の弾丸を外し、四発目を装填しているところだった。

 ……さっきの私も、はたから見たらこんな感じだったのかしら。

 

 あ、四発目を外した。何を狙ってるんだろう?

 

 蘭は液晶テレビを受け取ったものの、なぜか沈んだ面持ちだった。

 ……他に何か狙ってたのかしら?

 

「ぐっ……」

 

 五発目、外れ。そして残弾はゼロとなる。

 

「箒、相変わらず下手だなぁ」

「う、うるさい!ゆ、弓なら必中だ!」

「……紅也みたいなことを言う」

 

 紅也は、あの悪い癖があるせいで、銃はあまり使わない。

 だから、よくこんなふうにぼやいていたのを聞いた。

 

『くっそ~。いっそのこと、ビームボウとか発明できないかな?』

 

 ……と。

 

「……紅也、か」

「? 箒?」

「いや、なんでもない」

「そうか?……ったく、しょうがねぇなあ」

 

 一夏は一瞬怪訝そうな顔をしたものの、すぐに元通りの表情に戻った。

 そして自分の残りの弾を箒にあげつつ、すでに弾込めを済ませてある鉄砲を渡す。

 

「大体、構え方がおかしいんだよ、お前の場合。こうやって、腕をまっすぐにしながら、射線に対して真っ直ぐに視線を置いてだな――」

「……うむ」

 

 ……あら?また違和感が。

 

 そうだ。

 一夏と身体が密着してるのに、まったく動揺してないどころか……沈んでる?

 一体何故?

 そうこうしている間に一夏によるレクチャーは終わりを告げ、箒は弾を発射する。

 

 ぺしーん。――ぽとり。

 

「お!ぬいぐるみが当たったな」

「おー、嬢ちゃんもうまいことやったなあ。がっはっはっ、今日は大損だ」

「……隣のだるまがよかったのだが……」

「うん?」

「いえ、なんでも」

 

 ……だるま、ね。箒らしいわ。

 

「――と、葵は撃ってないのか?」

「……今、やる」

 

 一夏に返事をしつつ、片手で銃を構える。

 そしてそのままロクに狙いも定めず――発砲。

 コルクはまっすぐに進み、隣にあっただるまの眉間を撃ち抜き、そのまま転落させた。

 

「おお、こいつはすげえな。ほい、どうぞ」

「……ありがとう」

 

 どこか晴れ晴れとした顔になった店主から、だるまを受け取る。

 ……これのどこがいいのかしら?確かに、妙な愛嬌はあるけど。欲しがるほどのものじゃないわね。

 

「……で、どうするの?」

 

 だるまを持ったまま、後ろの方を見る。

 そこには、女子中学生が持つには大きすぎる荷物を持ち、ふらふらしてる蘭の姿が。

 

「だ、大丈夫です!このくらい……!」

「でも、確かに邪魔だよなあ。……弾に取りに来させるか?」

「そうですね!じゃあ、お兄に電話します!」

 

 そう言って携帯電話を取り出す蘭。私はそこに黙って近づき、テレビを持ち上げる。

 

「あ……」

「……持ってあげる」

「いや、葵。そういうのは俺が――」

「……大丈夫」

 

 それを示すかのように、私はテレビを片手で持ち上げる。

 普通の人間とは身体の作りが違うのだ。このぐらい、造作も無い。

 

「わ!すごい……」

「……どうも」

 

 自分が両手で支えきれなかった荷物を片手で持ち運ぶ私を見て、驚嘆の声を上げる蘭。

 それがなんだか照れくさくて、私はあいまいな返事を返す。

 

「あ、葵……。すまないな」

「……箒が気にすることじゃない。今は二人で回って」

「……いいのか?」

「……別に」

「だが、私は――」

「箒、せっかく葵がこう言ってくれてるんだ。また合流するまで一緒に回ろうぜ」

「……一夏の言うとおり。行ってらっしゃい」

 

 妙に食い下がる箒をとどめたのは、一夏の言葉だった。

 二人が去っていくのを確認した私は、傍らでしょんぼりとした様子の蘭に声をかけた。

 

「……じゃあ、行こ?」

「ああっ、一夏さん……」

 

 空いてる方の手で彼女の手を握り、半ば引きずるような形で、私は出口へと向かった。

 

 歩く私達は、互いに無言。

 それはそうだ。

 最近忘れられてる設定だけど、私は本来口数が多い方ではない。

 ……まあ、戦闘中は例外。あれは、私であって私ではない。

 なんというか……コンバット・ハイの結果だと思ってくれればいい。

 

 話が逸れた。

 最近セリフの数が多くなってきたのは、一夏をはじめとする学園のメンバーと打ち解けたことが原因だ。

 実際、オーストラリアの友達とも、私は普通に話す。

 初期のころに無口だったのは、環境の変化に慣れていなかったためだ。

 つまり、何が言いたいかというと。

 一夏という共通の知り合いを失った今、私と蘭との間で会話が成立する訳が無いのだ。

 

 ――そう。

 

「あの、葵さん」

 

 彼女の方から話しかけてこない限りは。

 

「……何?」

「えっと、その……葵さんと一夏さんはお友達……ですよね?」

「……どういう意味?」

 

 私は、あえてとぼけてみせる。

 どういう意味で聞いてるのか、なんて分かり切ってる。

 友達なのか、それ以上に思ってるのか……ということだ。

 でも、あえて聞く。

 だって、そっちのほうが面白いから。

 

「どういうって、いえ、その。他意はなくてですね、知り合って間もないのに、ずいぶんと仲が良さそうに見えたので……」

 

 いや、それは乙女アイで補正をかけてるからでしょ?

 確かに、仲がいいほうだとは思うけど……。一夏にとって、それは当たり前なんじゃない?

 

「……一夏は、誰にでも優しいから」

「あっ、そ、そうですよね!困っちゃいますよね、あれ!」

「まあ、そこがいいんだけど」

「そうですよね!分かります。……って、ええ!?」

 

 ばっ、と手を離し、大げさに反応する蘭。

 ……なにこれ、面白い。

 

「あれ?何で驚いてるの?」

「だって、『いい』って、それって……」

「あら?いい人って意味よ。誤解した?」

「あ、え、違います!私も一夏さんは、いい人だと思ってます!」

「ふーん、蘭ちゃんにとって一夏は、ただの『いい人』なんだ」

「え!?そ、そんなことは……」

 

 いじればいじるほど赤くなっていく蘭。

 なんだか、その必死さが可愛らしい。

 ……紅也とは別の意味で、新たな扉が開きそうだ。

 

「じゃあ、逆に聞くわね。蘭ちゃんと一夏は、ただのお友達?」

「ち、違う……いえ、違わないんですけど、えっと、その……!」

 

 あらあら、いっぱいいっぱいになっちゃって。

 今話すことじゃないけど、片思いの相手から『ただのお友達』扱いされるって、つらいでしょうね。

 

 話している間に私達は、神社に面した道路に着いていた。

 そんなことにも気付かない様子の少女は、あわあわと両手を振って、頭から湯気を出している。

 

「わ、私は、一夏さんのことが――」

「おーい、蘭」

「――って、お兄!?」

 

 残念、タイムアップだ。

 もうちょっといたずらしたかったんだけど、まあ、いっか。

 

「一体何だよ、荷物って。見たところお前手ぶらじゃん」

「えっと、それは……」

「……これ」

 

 横合いから口を出し、自転車に乗って来た少年にテレビを渡す。……もちろん片手で。

 「あ、どうも」と礼を言った少年は片手でそれを受け取ろうとして……案の定バランスを崩した。

 

「――って、重っ!?こんな重いもの片手で持ってるなんて、いったいどんな……」

 

 そう言いながら顔を上げた少年は、私を見る。

 そして、まるで何か信じられないものを見たかのように目を見開き……。

 

「は、初めまして!蘭の兄の五反田弾といいます!」

「……山代葵。よろしく」

 

 なんだろう、このテンションの高さ。

 

「いやあ、家の蘭が迷惑をおかけしまして」

「ちょっと、お兄!」

「……別に、迷惑じゃない」

「そうですか。それはよかった」

 

 ……何がよかったんだろう?

 

「それはそれとして……蘭!一夏と一緒にいる、って……学校の友達と一緒じゃなかったのか?」

「え、いや、それは、たまたま……」

「たまたまでも何でも、ダメだ!生徒会のみんなと行くっていうから許可したけど、一夏と一緒など認めん!帰るぞ!」

「お兄!」

 

 ……兄妹って、どこでもこうなのかな?

 紅也曰く、「すべての兄はシスコンであり、すべての妹はブラコンである」。

 前者はともかく、後者は違うと思う。

 

「いいから帰るぞ!」

「待って!せめて一夏さんに電話を……」

「いーや、お前はすぐそういうことを……」

「……そのくらい、いいんじゃない?」

 

 弾が妹を思う気持ちは、よく分かる。

 でも、束縛しすぎるのはよくない……と、思う。

 だからこそ、このタイミングで口出しさせてもらった。

 

「う……で、でも……」

「連絡しないと、一夏たちも困る」

「ですよね!じゃ、ちょっと電話します!」

 

 蘭はぱあっと笑顔になると、携帯を取り出して私たちから離れた。

 残されたのは、私と弾の二人だけ。

 

「えーと……山代さん?」

「……何?」

「ごめんなさい。あなたの言うように、ちょっと厳しくしすぎたみたいです」

「……謝る相手が違う」

 

 それは、私じゃなくて蘭に言うべきセリフでしょ?

 

「そ、そうですよね。

 ……あの、山代さん。一夏とはどういう関係で?」

 

 ……またか。

 どうもこの兄妹は、一夏が気になるらしい。

 

「ただの友達。……それだけ」

「そ、そうですか。よかった~」

 

 ?

 二度目になるけど、何がよかったんだろう?

 

「いやぁ、前に街で見かけたときは一夏と楽しそうに話してたんで、てっきり付き合ってるのかと……」

「――前?」

「はい。8月の初めころだったかな?」

 

 8月?

 一夏と一緒に出かけたのは、今月ではこれが初めてだったはず……。

 

「……それは、私だったのかしら?」

「え?どういう……」

「お兄!」

 

 蘭が戻ってきた。

 どうやら、帰ることには納得したようだ。

 

「では、俺は蘭を送っていくので。またいつか会いましょう!」

「……うん」

「さようなら、葵さん」

「……またね」

 

 この場でこれ以上追及することはできず、私は二人を見送るしかなかった。

 

 ――このとき問いただしておかなかったことを、私はひどく後悔することになる。

 

 

 

 

 

 

「……待った?」

「いや、そんなに時間経ってないぞ」

「は、花火までの時間はまだある。大丈夫だ」

 

 あれからしばらくして、私達三人は神社裏の林で合流していた。

 ……ちょっと不用心じゃない?こんなところで襲撃されたりしたら、IS奪われるわよ?

 

「……で。何でこんなところで花火?」

 

 虫がいっぱいいる……。気持ち悪い……。

 

「ああ、この先にいい場所があるんだ。俺達しか知らない秘密の場所が、な」

「……まあ、葵ならいいだろう」

 

 一夏は得意げに、そして箒はどこか申し訳なさそうにそう言う。

 そんな対照的な二人に連れられて向かった先は、林の中に存在する、自然が作った広場だった。

 延々と空を覆い尽くしていた針葉樹林も、この場所だけは木が生えておらず、まるで空を円形にくりぬいたかのように見ることができる場所。

 ……なるほど。たしかに、これはいい。

 

「おー、変わってないな。ここも」

 

 一夏はそう言いながら、懐かしそうに周りを見渡す。

 一方、箒は……黙ったまま空を見ている。

 

 ――今が、チャンスかな?

 

「箒」

 

 一夏に聞かれないようにしながら、私は小声で箒に呼びかける。

 その声に気付いて振り返る箒の目の前に、私は例のだるまをかざしてみた。

 

「……これ、欲しかったんでしょ?」

「あ、ああ。確かに狙っていたのはそれだが……」

「……あげる」

「! いいのか?」

 

 それを聞いた箒は、だるまへ向けてばっと手を伸ばすが……私はそれを制した。

 

「ただし、こっちの質問に答えて欲しい」

「な、なんだ!?そんなに改まって……」

 

 ――箒の空気が変わった。

 なんていうか……ひどく焦ってるような気がする。

 

 じゃあ。

 やっぱり。

 箒は……!

 

「……紅也のこと、どこまで知ってる?」

 

 ドーーーーーーン!!

 

「……え?」

「おおっ?はじまったな、花火!」

 

 無邪気にはしゃぐ一夏をよそに、私は箒に話しかけ続ける。

 

「答えて。紅也に何があったのか、気付いたんでしょ?」

「……ああ」

「……箒の口から、聞きたい」

 

 私は箒の目をじっと見つめる。

 箒は、もはや隠しきれないほどに動揺していた。

 このときばかりは、一夏の鈍感さに感謝したい。もしここにいたのが一夏以外の人物だったら、すぐに異変に気付いてしまっただろうから。

 

「知ってしまったんだ、全部……。

 入院のことも、怪我のことも、それから……腕のことも」

 

 花火に照らされた箒の表情は、具現化した「闇」そのものだった。

 強い後悔、懺悔、憐憫、そして自身に対する憎しみが凝縮されたかのような、暗い顔。

 

「……だから、私に対して申し訳なくて、あんな態度を?」

「そうだ。私は――」

「ふざけないで、箒」

 

 ピシャリ、と言い放つ。

 花火が発する轟音を切り裂くかのような冷たく、鋭い声。

 それを受けた箒の瞳が、さきほどよりもはるかに大きく揺れ動く。

 

「同情も、憐憫も、謝罪もいらない。きっとお兄ちゃんは、すべての結果に納得してる。

 ――あなたはただ、誰かに叱ってもらいたいだけなんじゃないの?」

「…………!」

「代償行為で罪を償いたいの?それこそ馬鹿よ。

 お兄ちゃんならこう言うわ。『今まで通りにしててくれ』って。……貴女が後悔して足踏みすることなんて、決して望まないわ」

「……ははは。紅也にも同じことを言われたよ」

 

 そう言って箒は、乾いた笑いをもらす。

 その表情は、今にも壊れてしまいそうなほど儚くて――

 

「でも、無理なんだ。私は、自分を責めることを止められない。きっと……ずっと……」

 

 ――壊してしまいたいほど、悲しかった。

 

「お~い、すげえぞ、花火」

「……同感。

 ……話は終わり。じゃあ、今を楽しみましょう」

 

 そして私はだるまを箒に渡し、一夏のそばへ歩いていく。

 紅也の守りたかった日常は、もう元には戻らない。

 そんな予感を、胸に秘めたまま――




まあ、知ってしまった以上「知らんぷり」はできないでしょう。

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