IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第28話 リッスン!レッスン!IS実習

 気が付いたら、アリーナにいた。

 ……いや、どうして?俺は、更衣室の入り口で……限界を迎えたはずなのに。

 

「……お。意識が戻ったぞ」

「大丈夫、山代君?」

「一夏……と、デュノアか……」

「シャルル、でいいよ。一夏もそう呼んでるし」

「……俺、は」

 

 体を起こそうとするが、なかなかうまくいかない。

 

「おい、無理すんなよ。ISの飛行時のGをモロに受けたんだ。少し休んでろ」

「……え?」

「山田先生が、君を運んできたんだよ」

 

 そうか……。

 あの後、俺は山田先生に起こされて……。その、あのスンゴイ胸で……。

 

 ブハッ!

 

「おい、ホントにどうしたんだ!?」

「しっかりして!」

 

 ……やばい!今思えば、恥ずかしすぎる!

 

「だ…大丈夫だ、問題ない……」

「……そう言ったときは大丈夫じゃない、って葵も言ってたz……」

「貴様ぁ!いつの間に葵を呼び捨てにするようになった!!」

「ええ!?復活した!?」

 

 おっと、シャルルが驚いてる。……いけないいけない。

 

「目が覚めたようだな、山代。動けるか?」

「ええ、まあ」

「では、八人グループになって実習を行う。各グループリーダーは専用機持ちがやること。いいな?では分かれろ」

 

 

 

 

 

 

「あの……。私の活躍は……?」

 

 割愛しました。

 

「うう……ひどいです。どこぞの番組の不定期ミニコーナーじゃないんですから……」

 

 あるいは、錆白兵VS鑢七花。そんなもんです。

 

 

 

 

 

 

 ……予想はしていた。

 俺達は、世界でも珍しい男性IS操縦者。

 

 ――ワイルド系、織斑一夏

 ――守ってあげたい系、シャルル・デュノア

 ――そして、非常に不本意だが、「かまってほしい系」こと俺、山代紅也

 

 そんな3人に人気が集中するのは、ある意味予想通りで……。

 

「織斑君、一緒にがんばろう!」

「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」

「山代君、私の専用機を作って~」

 

 ……いや、最後の奴。実習関係ないだろ。

 

「ん~、作ってもいいけど、その代わりにこの契約書にサインを……」

 

 取り出したのは、モルゲンレーテの専属契約書(常に5枚は持ち歩いてる)。

 いつでも、「僕と契約して~」を実行できるように。

 

「ほら、ここにサインするだけだから。え、印鑑持ってないの?しょうがないなぁ。じゃあ、拇印でも……」

 

 スパァン!

 

「この馬鹿者どもが……。出席番号順に一人ずつ各グループに入れ!順番はさっき言った通り。次にもたつくようなら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!

 それから山代!学園内での契約は禁止だ!契約書は全て没収する!!」

「そ、そんな!? 今月中に5件以上の契約取らないと、俺、クビになっちゃいます!」

「貴様はどこのセールスマンだ!」

 

 とかなんとかやってる間に、班ができていた。

 

「最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

 

 ため息をつく織斑先生。

 ……いや、自由な班決めなんかやったら、だいたい人気者のとこに集まるから。修学旅行の班決めとか、特に悲惨じゃないか。ホント、「最初から、こーすれば良かったんだぁぁぁ!」って感じだな。この虫野郎!!

 あ、誤解しないでくださいね。決して、織斑先生に暴言を吐いたわけではありませんから。

 

「……やったあ。織斑君と同じ班っ。名字のおかげねっ……」

「……うー、セシリアかぁ……。さっきボロ負けしてたし。はぁ……」

「……凰さん、よろしくね。あとで織斑君と山代君のお話聞かせてよっ……」

「……デュノア君!分からないことがあったら何でも聞いてね!ちなみに私はフリーだよ!……」

「……山代君、技術者なんでしょ。ISの裏話とか聞きたいから、放課後、私の部屋に……」

「……………………………」

 

 一部(ボーデヴィッヒ)の班を除き、どこもにぎやかだ。これが女子の会話力か。

 あと、君。悪いけど、今日は部活があるんだ。また今度な。

 

「ええと、いいですかーみなさん。これから訓練機を一班一体取りに来て下さい。数は『打鉄』と『リヴァイヴ』が三機ずつです。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー」

 

 今日の山田先生は、いつもと違う。なんだか堂々としていて、いつもより大人びている。

 さっきの模擬戦で、自信を持ったのか。

 そ、それとも……俺との一件で、ヒ○テリアモードになったとか!?

 嫌過ぎるぞ、そんな設定。

 

「……で、みんなはどの機体がいいんだ?」

「んー、そだねー」

「山代君って、刀得意だよね」

「ああ。でも、今日の実習じゃ武装展開はしないぜ」

「じゃ、どっちでも同じかなぁ」

「……とかなんとか言ってる間に、もう残り一機になってるけどな」

「あー、ホントだー」

 

 残っているのはラファールが一機。残念、時間切れだ。

 それを取ってきて、さてどうするかと考える。周りを見ると、どの班もISの装着を始めていた。――オープンチャンネルで指示を受けたのかな?こういうとき、レッドフレームは少し不便だ。

 

「じゃ、とりあえず番号順に並んでくれ。これから、一人ずつ装着作業に入るぜ」

「「「「「はーい!!」」」」」

 

 そう言うと、みんな一列になり、元気よく返事をする。

 はっはっは……。元気良すぎだろ。耳きーん、だ!

 

「山代君山代君、どうやればいいの?」

「ああ。まずISに座るように……って、これ前の授業でやってるよな?」

「えー、いいじゃんいいじゃん。手とり足とり教えてよ!」

「あ、ミヨずるい!山代君、私も!!」

「わたしもー」

 

 ……参ったな、すごい熱気だ。

 シャルルと一夏の所も、似たり寄ったりの状況で――あ、鬼神に叩かれた。

 

「……怒られる前に、さっさとやろうぜ」

「「「「「り、りょうかーい!!」」」」」

 

 圧倒的な力を前にした班員の団結力は、半端なく強かった。

 

「はい、じゃあ装着したら起動!そしたら歩いてみて!」

 

 一人目、飯田さんがISを起動。何事もなく立ち上がる。

 

「コイツ、動くぞ!!」

「立った!クララが立った!!」

「いいぞ、ジョー!!」

 

 皆さん、ノリがいいことで。

 

 歩行、しゃがんでから装着解除。こうしないと、ISに乗れなくなっちまう。

 一夏の班みたいにな。

 

「じゃあ次、グローリーさん。同じようにやってみてくれ」

「はーい。こんなの、お茶の子前よ!」

「いみわからん」

 

 起動、装着、そして歩行。ここまでは良かった。

 

「あー、織斑君がお姫様だっこしてるー!」

「いいないいなー」

 

 騒ぎがしたので一夏の班を見ると、立ったままのISに乗せるため、クラスメイトを白式で運ぶ一夏の姿が。

 

「……フフン!」

 

 なにやら、ラファールから妙な声が。嫌な予感がする。

 

「おっと!うっかりISをしゃがませるのを忘れちまいました!」

 

 そう言って、立ったまま装着解除したISから飛び降りるグローリーさん。……俺にも、あんな恥ずかしいことをやれと?だが断る!

 ISの脚部に接近。8を使って制御系に干渉し、停止中のISをしゃがませる。

 

「ああー!ニコの努力がー!」

「山代君、ひどいよひどいよ!」

「空気?読みませんが何かぁ?ハイ次ぃ!」

 

 

 

 

 

 

〈side:篠ノ之 箒〉

 

 何をやっているのだ、あいつは!

 山田先生の胸を見たり、女子と密着したり……デレデレしすぎではないか!

 

 と……とはいえ、次に……その、一夏に抱いてもらえるのは、順番的には私だ。

 そこだけは、あいつに感謝してやってもいいな。

 

「あー……また俺が運ばないといけないのか。えーと、次は誰?」

「私だ」

「え……。お、おう」

 

 ……なんだろうか?どこか、ひっかかる反応だったな。

 と、唐突に一夏は私に背を向け、白式をしゃがませた。

 

「……何だ?」

「いや…。箒は、俺が踏み台になったほうがいいんだろ?ほら、早く乗れよ」

 

 う……。た、確かにそう言ったが、あれは、一夏が他の女を抱くのが嫌だっただけで、決して踏み台になってほしかったわけでは……。

 とか思っていると、一夏はさらに続けた。

 

「ほら、早くしろよ。俺のことなんか、踏み台程度にしか思ってないんだろ」

 

 ――昨日の食堂でのことは、ただの照れ隠しだった。

 今の一夏の発言も、おそらくは売り言葉に買い言葉の状態だからだろう。

 

 でも。

 

 それでも。

 

 この一言は、私には相当こたえた。

 

「…………………」

 

 無言のまま、思わずうつむく。

 この馬鹿は、本当に、どこまで、私の心をかき乱せば気が済むのだ!?

 

 感情に任せて一夏を踏み台にし、私はISへと乗り込む。

 とにかく今は、なにか行動していないと、どうにかなってしまいそうだった。

 




食堂でのやりとりのせいで、原作よりも二人が険悪です。
そんな状態だと……。

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