ジェス・レポート2
IS学園を襲撃したXナンバー(※1)の一機、ブリッツ。
N.G.Iから強奪されたその機体は、モルゲンレーテの双子、「コウヤ・ヤマシロ」と「アオイ・ヤマシロ」の手によって撃破され、回収された。
この事件については諸説あるが、情報提供者によると真実はこういうことらしい。
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コウヤとアオイは、一夏を追ってIS学園に入学した者たちの一人だった。
しかし、彼らの目的は一夏の身柄そのものではなく、彼を狙う組織――ひいては、組織が強奪した4機のXナンバーであったのだ。
モルゲンレーテ(※2)とN.G.I(※3)はXナンバーの開発において途中まで協力関係にあった。しかし最初の一機、デュエルのロールアウトの2カ月ほど前に、突如として協力関係は解消され、プロジェクトに関わった大きく技術者がモルゲンレーテから引き抜かれた(この件に関してだけみればモルゲンレーテに同情すべきかもしれないが、当時の資料を調べてみると、モルゲンレーテも影では相当あくどい手段を使っていたらしい。自業自得というか、因果応報というか……)。
さて、最初の強奪事件は、このデュエルのロールアウト時に起こった。
Xナンバーの兵装開発・研究が行われていたカルフォルニアの研究所に、少なくとも2人が潜入。ビームライフルの心臓とも言える『ビーム発信器』と、第二世代量産機『ジン』の奪取を試みたのだ。
幸い、当時『ソードストライカー』の調整のために研究所に滞在していたエイミー・バートレットとその専用機ストライクがすぐに対応したため強奪は未遂に終わったが、事件そのものがN.G.Iが内通者を抱えている証明となってしまったのである。
結果、研究所の人員は刷新され、多くの失業者が生まれた。しかもその際、さらに多くの人員が『亡国機業』から送り込まれたとも言われる。そしてその4カ月後に、二度目の強奪事件――Xナンバー強奪事件が起こったのだ(つまり、全ては亡国機業の陰謀だったのだ!と情報提供者は語る。でも、ときおり目線が泳いでいたのが妙に気になった)。
話が逸れてしまったが、決して無駄話をしたわけではない。こういった経緯があるからこそ、N.G.Iの技術の一部はモルゲンレーテにも伝わっている、という事実を知って欲しかったのだ。GATシリーズとASTRAYシリーズを見比べてみれば、それは火を見るよりも明らかだろう。
技術の一部が漏れているからこそ、N.G.Iはモルゲンレーテを頼った。何も知らない他国の他企業に最新技術を奪われるよりも、いくらか事情も技術も知っている相手に協力を頼んだ方がリスクが少ないという判断であった。
その際にどんな取引があったのかは定かではないが、結果として協力関係は締結された。
モルゲンレーテの双子と、アメリカの代表候補生2名がIS学園に網を張り、残されたXナンバー、ストライクの操縦者であるエイミーが亡国機業の関係施設を叩いて回ることになった。
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つまりこの戦いこそが、長きにわたる“彼ら”と亡国機業との因縁の、最初の一戦であったのだ。偶然か必然か、彼らの在学中、IS学園を中心に様々な事件が巻き起こる。
時期外れの転校生と、学年別トーナメントにおける専用機の暴走。
校外特別実習で巻き起こる、三つ巴の戦い。
学園祭での白式強奪と、突然の別れ。
キャノンボール・ファスト中に起こった、未確認機の襲撃。
タッグマッチトーナメントへの狂人乱入と、日常の終わり。
これら全ての影には、何らかの形で亡国機業が関わっていたと考えられている。
では、そろそろ次の事件について記すとしよう。
※1 N.G.Iが開発していた、5機のPS装甲搭載機のこと。GATシリーズの試作機であり、型番に「X」がつくためXナンバーと呼ばれていた
※2 当時存在した、オーストラリアの国営企業
※3 現在は吸収・合併により「ラーズグリーズ」と名を変えている