……無修正って言葉は、なんかえ(ry
―――前回までの、IS~RED&BLUE~
「……女の敵」
「犬に噛まれて死ね!」
「馬に蹴られて死ね」
「こいつは死ななきゃ治らん」
「さあ、どっからでもかかってきなさい!」
◆
はい、脳内モノローグ終了。
目の前には、相変わらず凰が立っている。しかもISを展開して、臨戦態勢だ。
そして横。俺の横には、ISを展開した葵が立っている。……ん、通信?
(早くやれ……)
(……ホント、どうしてこうなった……)
◆
―――今よりちょっと前
放課後、第二アリーナ。
今日は、一夏との特訓はナシだ。箒が怒ってた上に、昨日の顛末を聞いたセシリアも機嫌を悪くし、一夏には指導者がいなくなっていまった……。
じゃあ、今日は久々に休みにしようぜ、と提案したら、全員が了承。放課後の予定が空いた俺は、葵とISのトレーニングをすることにした。
そして今。
「はっ、ふっ、どりゃあ!!」
「甘い。落とす!!」
目で見る前に刃を受け、気付かれぬ間に振り下ろす。
アリーナの上空で、俺達は接近戦をしていた。俺はガーベラで、葵はビームサーベルで。
もちろん、出力は装甲が切れない程度まで下げてある。……戦闘モードの出力なら、レッドフレームなどたやすく両断されてしまうからだ。
しかし……互いに得物は一本のみだが、こちらは両手、相手は片手。葵の素早い攻めに、俺は翻弄されている。重さのないビームサーベルならではの戦い方だ。そして……
葵が、唐突にビームサーベルの刃を消した。
宙を斬るガーベラストレート。葵はその峰を蹴り、俺の懐に飛び込む。そして取りだしたのは二本のナイフ――アーマーシュナイダーだ。
絶え間ない格闘攻撃。気が付いたら俺のシールドエネルギーはゼロになっていた。
「……私の勝ち」
「ああ……。ちくしょう、完敗だ」
《やはり、私のサポートを切ると、勝負にならないな》
「でも、最初の居合は、直撃した」
「あれは俺の必殺だからな……。最初に使うもんじゃねぇんだよ、本来は」
地上に下り、先程までの反省点を話し合う。
今回俺は、8のサポートを切った状態で練習していた。そして結果は惨敗。俺自身の強さは、まだまだであることが証明された。
《……まあ、この機体では永遠に葵には勝てまい。一応、追加装備は発注しておいたが、完成はまだ先だ》
「そうかい……。ああくそっ、情けねぇなぁ……」
「何が、情けない、よ!!」
唐突に響いた第三者の声。俺達がそちらに意識を向けると、そこには凰の姿があった。
「葵は葵で化け物じみた強さだったし、それを持ちこたえてる時点でアンタも十分強いわよ!!」
「……でもよ、俺は師匠や老師に比べると、まだまだ……」
「あーもう!謙虚すぎるとそれはそれでムカツクのよ!!」
がーっ、とうなり、ツインテールを逆立たせる凰。……どうなってるんだろうな、
「鈴音、どうしたの?」
「アンタがこっちに向かったって聞いたから、訓練見てたんだけど……。スゴイわね。
あたしも格闘戦向きの機体だけど、あんなに接近されたら勝てないわ」
「……当然」
褒める凰に対し、葵は……照れてる。珍しいこともあるもんだ。凰は人を褒めるタイプには見えなかったし、葵もクールキャラが定着してたのに。
「……で、紅!そういうわけだからアタシと戦いなさい!!」
「……何故?」
いきなり飛び火してきたうえに、話が全く繋がっていない。
「だって、今のあたしじゃ葵には勝てなそうだし、紅になら勝てるかな?って思ったんだけど」
「……そうかい」
◆
そして、現在に戻る。
けっこう疲れてるんだけどな、俺。
まあ、コイツとは一度戦ってみたかった。そう考えると、これは悪い申し出じゃあない。
「いいぜ。シールドエネルギーを補給したら、すぐにでも始めようか。」
「……じゃあ私は、立会人になる」
ピットへ引き返す俺。そしてシールドエネルギーと燃料を補給し、戦闘準備を整える。
相手は格闘型の機体らしい――武器はガーベラでいいだろう。
ガーベラストレートの状態をチェック。ビーム(低出力)と切りあったが、刃こぼれ一つない。熱によるダメージもゼロ。戦闘に支障はないようだ。
(よし……いくぜ、8!)
《今回はサポートするぞ》
フライトユニットに点火、空へと機体を押し上げる。
凰は、すでに上空にいた。
……このレッドフレームでは、力負けする。
「来たわね、紅!!さあ……行くわよ!!」
「異論はないぜ!!」
正面から激突。振り下ろされる青竜刀を、俺はガーベラで受け流す。
……が、刃は一つじゃない。回転した青竜刀の、反対側の刃が、レッドフレームを掠める。
《実体ダメージ小……が、あれはなかなかキツイぞ》
(ああ……。まともに打ち合うわけにはいかねぇな)
《……ビーム兵器を使うか?》
(いや、あれはギリギリまで隠したい。こんな遊びで使うもんじゃないからな)
ラッシュはなおも続く。俺はバレルロールやAMBACを駆使して回避し、どうにか距離を取る。
しかし、それは悪手だったようだ。
《空間に異常圧力を確認!何か来るぞ!!》
(何かって……どわあ!?)
《シールドエネルギーにダメージ!何らかのエネルギー兵器と推定!》
(くっそ、不可視の砲弾か?まるでミラージュコロイドだな!)
《……どうする?》
(なら、こっちも不可視の斬撃だ!!)
姿勢を崩したふりをして、地上に下りる。そして地面に刀を突き立て、放つのは俺の得意技――
「空破斬!空破斬!無限・空破斬!!」
ズガガガガン!!
「えっ?まさか、衝激砲!?この
「シェンロン!?……の、割には全然龍っぽくないな。」
ドラゴンハングもトライデントスピアも、火炎放射も無さそうだ。
「うるさいわね!じゃあ……こっちも容赦しないわよ!!」
不可視の砲弾の数が二倍になる。おそらく、両肩から撃ってきているのだろう。
発泡金属の装甲が削られ、操縦者である俺にダメージが通っている。……このままでは、少しばかしマズいな。空破斬は、ただの技。対するミラージュコロイド砲(仮)は兵器。威力は相手の方が上で、しかもだんだんと空破斬が見切られている。
(8……煙幕弾をバズーカに装填、具現化準備だ)
《ずいぶんと急だな。2秒で済ませる》
普段は使わない兵装。そのため、自力での展開は難しいのだ。
その間にも不可視砲(仮)は俺を撃ち続ける。回避はするも、かわせない部分が少しずつ被弾していく。
「くっ……この、ちょこまかと!!」
凰はいい感じで焦ってきたようだ。これなら、勝機が見えてくる。
《セット完了!》
(サンキュー!!)
右手を前に突き出し、バズーカを展開。
スラスターを使って反転した後、砲弾をばらまく。
「何よ、遠距離武器もあるじゃない!……でも、そんなの効かないわよ!」
ドオン!ドオン!
直撃コースだった二発を迎撃される。すると、弾頭から煙があふれ、凰の視界を覆い尽くした。
遅れて、外れるコースの弾頭も起爆する。アリーナは、黒煙に包まれた……。
「ケホッ、ケホッ……。これ、ただの煙じゃ、ない……?」
「そうだ!煙幕にチャフを混ぜた、特性撹乱弾だ!……欠陥兵器だから、実戦じゃ使えないけどな」
「欠陥兵器……?」
「……こっちからも見えねぇんだよ。
つーわけで、ここは一つ引き分けってことで……」
「納得、するかぁ!!」
無差別にインビジブル・バレット(仮)を撃ち始める凰。……奴め、まだエネルギーが残っているとは。第三世代のくせに、ずいぶんと燃費がいいな。
このままでは、凰のエネルギー切れよりも先に、煙が晴れてしまう。
……じゃあ、当初のプラン通りにやるか。
「……展開」
レッドフレームの両腕の間に、武装が出現する。
それは、いつもの
◆
「鈴音、シールドエネルギー、ゼロ。勝者、紅也」
アリーナに、葵の声が響く。
煙は
「はあ、負けちゃった」
「いや、俺も正直ギリギリだった。いい試合だったぜ」
互いにISを解除する。わずかに感じる腕の痛みを抑えつつ、倒れたままの凰に手を伸ばし握手をした後、引っ張り上げる。
「……にしても、紅!あんた、一体どんな手品を使ったの?あれだけあった甲龍のエネルギーが、一瞬でゼロになるなんて」
興味津々、といった様子の凰。それに対し俺は、いつもの言葉ではぐらかす。
「企業秘密、って奴だ。一つ言うとすれば……俺の機体もパワータイプだった、ってとこかな?」
「何よそれ!答えになってないじゃないの!!」
「悪いな、答えられなくて。お詫びといっちゃあ何だが、ISのメンテをしてやるよ。多分今ので、結構ガタが来てるハズだからな」
「う……なんかはぐらかされた気がするけど、もういいわ。企業所属なら、そういうこともあるでしょ。じゃ、お願いするわ」
ISは兵器として利用もされているが、スポーツでもある。俺たちは別に憎み合ったり、相手を倒したいから戦ったわけじゃない。
いいじゃないか、兵器だとしても、スポーツとして使ったって。メカはメカだし、使い方を決めるのは人間なんだから。
こうして俺達3人は、仲良くピットへ戻っていった……。