IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

19 / 196
今回はほぼ無修正です。

……無修正って言葉は、なんかえ(ry


第18話 紅也VS鈴!赤い機体はダテじゃない!?

―――前回までの、IS~RED&BLUE~

 

「……女の敵」

「犬に噛まれて死ね!」

「馬に蹴られて死ね」

「こいつは死ななきゃ治らん」

 

「さあ、どっからでもかかってきなさい!」

 

 

 

 

 

 

はい、脳内モノローグ終了。

目の前には、相変わらず凰が立っている。しかもISを展開して、臨戦態勢だ。

そして横。俺の横には、ISを展開した葵が立っている。……ん、通信?

 

(早くやれ……)

(……ホント、どうしてこうなった……)

 

 

 

 

 

 

―――今よりちょっと前

 

放課後、第二アリーナ。

今日は、一夏との特訓はナシだ。箒が怒ってた上に、昨日の顛末を聞いたセシリアも機嫌を悪くし、一夏には指導者がいなくなっていまった……。

じゃあ、今日は久々に休みにしようぜ、と提案したら、全員が了承。放課後の予定が空いた俺は、葵とISのトレーニングをすることにした。

そして今。

 

「はっ、ふっ、どりゃあ!!」

「甘い。落とす!!」

 

目で見る前に刃を受け、気付かれぬ間に振り下ろす。

アリーナの上空で、俺達は接近戦をしていた。俺はガーベラで、葵はビームサーベルで。

もちろん、出力は装甲が切れない程度まで下げてある。……戦闘モードの出力なら、レッドフレームなどたやすく両断されてしまうからだ。

しかし……互いに得物は一本のみだが、こちらは両手、相手は片手。葵の素早い攻めに、俺は翻弄されている。重さのないビームサーベルならではの戦い方だ。そして……

 

葵が、唐突にビームサーベルの刃を消した。

 

宙を斬るガーベラストレート。葵はその峰を蹴り、俺の懐に飛び込む。そして取りだしたのは二本のナイフ――アーマーシュナイダーだ。

 

絶え間ない格闘攻撃。気が付いたら俺のシールドエネルギーはゼロになっていた。

 

「……私の勝ち」

「ああ……。ちくしょう、完敗だ」

《やはり、私のサポートを切ると、勝負にならないな》

「でも、最初の居合は、直撃した」

「あれは俺の必殺だからな……。最初に使うもんじゃねぇんだよ、本来は」

 

地上に下り、先程までの反省点を話し合う。

今回俺は、8のサポートを切った状態で練習していた。そして結果は惨敗。俺自身の強さは、まだまだであることが証明された。

 

《……まあ、この機体では永遠に葵には勝てまい。一応、追加装備は発注しておいたが、完成はまだ先だ》

「そうかい……。ああくそっ、情けねぇなぁ……」

「何が、情けない、よ!!」

 

唐突に響いた第三者の声。俺達がそちらに意識を向けると、そこには凰の姿があった。

 

「葵は葵で化け物じみた強さだったし、それを持ちこたえてる時点でアンタも十分強いわよ!!」

「……でもよ、俺は師匠や老師に比べると、まだまだ……」

「あーもう!謙虚すぎるとそれはそれでムカツクのよ!!」

 

がーっ、とうなり、ツインテールを逆立たせる凰。……どうなってるんだろうな、コレ(怒髪天)

 

「鈴音、どうしたの?」

「アンタがこっちに向かったって聞いたから、訓練見てたんだけど……。スゴイわね。

あたしも格闘戦向きの機体だけど、あんなに接近されたら勝てないわ」

「……当然」

 

褒める凰に対し、葵は……照れてる。珍しいこともあるもんだ。凰は人を褒めるタイプには見えなかったし、葵もクールキャラが定着してたのに。

 

「……で、紅!そういうわけだからアタシと戦いなさい!!」

「……何故?」

 

いきなり飛び火してきたうえに、話が全く繋がっていない。

 

「だって、今のあたしじゃ葵には勝てなそうだし、紅になら勝てるかな?って思ったんだけど」

「……そうかい」

 

 

 

 

 

 

そして、現在に戻る。

 

けっこう疲れてるんだけどな、俺。

まあ、コイツとは一度戦ってみたかった。そう考えると、これは悪い申し出じゃあない。

 

「いいぜ。シールドエネルギーを補給したら、すぐにでも始めようか。」

「……じゃあ私は、立会人になる」

 

ピットへ引き返す俺。そしてシールドエネルギーと燃料を補給し、戦闘準備を整える。

相手は格闘型の機体らしい――武器はガーベラでいいだろう。

ガーベラストレートの状態をチェック。ビーム(低出力)と切りあったが、刃こぼれ一つない。熱によるダメージもゼロ。戦闘に支障はないようだ。

 

(よし……いくぜ、8!)

《今回はサポートするぞ》

 

フライトユニットに点火、空へと機体を押し上げる。

凰は、すでに上空にいた。赤紫(マゼンタ)の機体に、肩の横に浮いた棘付き装甲。そして、何よりも目を引くのが連結した巨大な青竜刀だ。それを片手で構えている様子を見ると、なるほど、確かにパワータイプの機体だ。

 ……このレッドフレームでは、力負けする。

 

「来たわね、紅!!さあ……行くわよ!!」

「異論はないぜ!!」

 

 正面から激突。振り下ろされる青竜刀を、俺はガーベラで受け流す。

 ……が、刃は一つじゃない。回転した青竜刀の、反対側の刃が、レッドフレームを掠める。

 

《実体ダメージ小……が、あれはなかなかキツイぞ》

(ああ……。まともに打ち合うわけにはいかねぇな)

《……ビーム兵器を使うか?》

(いや、あれはギリギリまで隠したい。こんな遊びで使うもんじゃないからな)

 

 ラッシュはなおも続く。俺はバレルロールやAMBACを駆使して回避し、どうにか距離を取る。

 しかし、それは悪手だったようだ。

 

《空間に異常圧力を確認!何か来るぞ!!》

(何かって……どわあ!?)

《シールドエネルギーにダメージ!何らかのエネルギー兵器と推定!》

(くっそ、不可視の砲弾か?まるでミラージュコロイドだな!)

《……どうする?》

(なら、こっちも不可視の斬撃だ!!)

 

 姿勢を崩したふりをして、地上に下りる。そして地面に刀を突き立て、放つのは俺の得意技――

 

「空破斬!空破斬!無限・空破斬!!」

 

 ズガガガガン!!

 

「えっ?まさか、衝激砲!?この甲龍(シェンロン)以外にもあるなんて……」

「シェンロン!?……の、割には全然龍っぽくないな。」

 

 ドラゴンハングもトライデントスピアも、火炎放射も無さそうだ。

 

「うるさいわね!じゃあ……こっちも容赦しないわよ!!」

 

 不可視の砲弾の数が二倍になる。おそらく、両肩から撃ってきているのだろう。

 発泡金属の装甲が削られ、操縦者である俺にダメージが通っている。……このままでは、少しばかしマズいな。空破斬は、ただの技。対するミラージュコロイド砲(仮)は兵器。威力は相手の方が上で、しかもだんだんと空破斬が見切られている。

 

(8……煙幕弾をバズーカに装填、具現化準備だ)

《ずいぶんと急だな。2秒で済ませる》

 

 普段は使わない兵装。そのため、自力での展開は難しいのだ。

 その間にも不可視砲(仮)は俺を撃ち続ける。回避はするも、かわせない部分が少しずつ被弾していく。

 

「くっ……この、ちょこまかと!!」

 

 凰はいい感じで焦ってきたようだ。これなら、勝機が見えてくる。

 

《セット完了!》

(サンキュー!!)

 

 右手を前に突き出し、バズーカを展開。

 スラスターを使って反転した後、砲弾をばらまく。

 

「何よ、遠距離武器もあるじゃない!……でも、そんなの効かないわよ!」

 

 ドオン!ドオン!

 

 直撃コースだった二発を迎撃される。すると、弾頭から煙があふれ、凰の視界を覆い尽くした。

 遅れて、外れるコースの弾頭も起爆する。アリーナは、黒煙に包まれた……。

 

「ケホッ、ケホッ……。これ、ただの煙じゃ、ない……?」

「そうだ!煙幕にチャフを混ぜた、特性撹乱弾だ!……欠陥兵器だから、実戦じゃ使えないけどな」

「欠陥兵器……?」

「……こっちからも見えねぇんだよ。

 つーわけで、ここは一つ引き分けってことで……」

「納得、するかぁ!!」

 

 無差別にインビジブル・バレット(仮)を撃ち始める凰。……奴め、まだエネルギーが残っているとは。第三世代のくせに、ずいぶんと燃費がいいな。

 このままでは、凰のエネルギー切れよりも先に、煙が晴れてしまう。

 ……じゃあ、当初のプラン通りにやるか。

 

「……展開」

 

 レッドフレームの両腕の間に、武装が出現する。

 それは、いつもの日本刀(ガーベラストレート)ではない。とてつもなく巨大で、とてつもなく長い、鉄塊のような―――

 

 

 

 

 

 

「鈴音、シールドエネルギー、ゼロ。勝者、紅也」

 

 アリーナに、葵の声が響く。

 煙は両断(・・)され、その中心で凰のIS、甲龍(シェンロン)があおむけに倒れていた。

 

「はあ、負けちゃった」

「いや、俺も正直ギリギリだった。いい試合だったぜ」

 

 互いにISを解除する。わずかに感じる腕の痛みを抑えつつ、倒れたままの凰に手を伸ばし握手をした後、引っ張り上げる。

 

「……にしても、紅!あんた、一体どんな手品を使ったの?あれだけあった甲龍のエネルギーが、一瞬でゼロになるなんて」

 

 興味津々、といった様子の凰。それに対し俺は、いつもの言葉ではぐらかす。

 

「企業秘密、って奴だ。一つ言うとすれば……俺の機体もパワータイプだった、ってとこかな?」

「何よそれ!答えになってないじゃないの!!」

「悪いな、答えられなくて。お詫びといっちゃあ何だが、ISのメンテをしてやるよ。多分今ので、結構ガタが来てるハズだからな」

「う……なんかはぐらかされた気がするけど、もういいわ。企業所属なら、そういうこともあるでしょ。じゃ、お願いするわ」

 

 ISは兵器として利用もされているが、スポーツでもある。俺たちは別に憎み合ったり、相手を倒したいから戦ったわけじゃない。

 いいじゃないか、兵器だとしても、スポーツとして使ったって。メカはメカだし、使い方を決めるのは人間なんだから。

 こうして俺達3人は、仲良くピットへ戻っていった……。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。