IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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校正を始めてから、なんとなく筆が進みやすい気がします。キャラの特徴とか、思い出してきた感じです。
完結目指して頑張ります!


第17話 同情するなら愛をくれ

 ―――朝。

 まだ外が暗い時間に、凰鈴音(ファン・リンイン)は目覚めた。

 

(うーん……あれ、あたし、いつの間に寝てたんだろう)

 

 寝ぼけた頭で、そんなことを考えながら起きあがる。そして、自分が制服のまま眠っていたのだと気づいた。

 

(あー、シワになっちゃうわね、コレ。とりあえず、着替えを……)

 

 まだ薄暗い部屋を見渡す。ハンガーにかかっていたのは、自分のものではない、男物の制服が二着……。

 

(……ってあれ、男物!?……そうだ、昨日は一夏の部屋に行ったんだっけ)

 

 だんだんと目が覚めてくる。だが、恋する乙女の頭は、誤作動を起こしていた。

 

(じゃああたし、あの暴力剣道娘を追い出して、一夏と同室になったんだ!!)

 

 まるで夢の中にいるような感覚。それを不安に感じつつも、頬をつねってみる。……痛い。

 その痛みが、これはまぎれもなく現実なのだと教えてくれた。

 

「ふふっ♪」

 

 十人中十人が上機嫌だと判断する顔で、凰は小躍りを始める。気分はthe・有頂天。我が世の春が来た~!とでも言いたげな様子だ。

 ……が、その笑顔は、すぐに不機嫌なものに変わる。

 自分が寝ていた、その隣。もう一つのベッドには、不自然なふくらみが二つもあったのだ!

 

(もしかして、あの女、戻ってきた挙句同じベッドに……!!)

 

 許せない。憤怒の表情にトランスフォームし、デストロイモードを発動させた凰は、ずかずかと布団に歩み寄り、勢いよく布団をはがす。

 そこで寝ていたのは――

 

 

 

 目を開けたまま天井を向き、まったく同じ姿勢で眠る、赤と青の男女だった。

 まったくの予想外。凰は、フリーズしたかのように止まっている。

 ……と、不意に男の目が動いた。上下左右に激しく、高速で。ギョロギョロと、辺りを見回すかのように……

 

「ひっ………ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 1017室に、甲高い悲鳴が響き渡った―――

 

 

 

 

 

 

「うるせぇ、ブチ殺すぞ、クソ虫が!!……ってあれ、俺、起きてるのか。

 お、おはよう、凰。どうした?まだ気分が悪いのか?」

 

 見たことのない機体でセシリアをフルボッコにする夢をみていたら、大声によって目が覚めた。そして目の前にいたのは、青い顔をした凰。……状況がよく分からないな。

 

「な……なんでアンタがこの部屋にいるのよ!!」

「……うるさい」

 

 再び大声を上げる凰の頭に、目ざまし時計が直撃する。葵も今ので起きたようだ。

 

「……にしても、凰っていつもこんなに早起きなのか?代表候補生ってのはスゲェな。」

 

 時刻は午前四時。葵の普段の起床時間の一時間も前だ。

 見ろ。生活リズムを崩された葵が、超不機嫌な顔してる。……ふつうに感情が出てるじゃねぇか。昨日の話は何だったんだろうな?

 

「あ、これは、たまたま目が覚めて――

 じゃ、なくて!どうしてあんたがこの部屋にいるのよ!」

「そりゃ、ここが俺達の部屋だからだ。何言ってんだ、お前?」

「え、嘘?じゃあ、一夏と同室になったのは……」

「夢。もしくは妄想。悔しかったらリアルブートしてみろ」

 

 葵、まだ不機嫌だ。正直、俺でも見たことがないくらいに。

 で、当の凰はというと……混乱してる。ブツブツと、なにやら呟きながら。正直、どん引きするほど不気味だ。

 

「と、とりあえず凰。お前、昨日一夏の部屋に行ったのは覚えてるな?」

「え!?あ、うん。行ったわよ」

「……で、泣きながら部屋から出て、葵に保護されたのは?」

「……あ、そうだ!一夏の奴……!!」

 

 うわあ、怒りが再燃したようだ。哀れ一夏。だけど助けない。

 

「で、俺達の部屋に来て、愚痴を言いまくって、疲れて眠っちまったんだ」

「……ガキ」

「ちょ、葵!?その言い方はヒドイわね!」

「事実」

「ぐっ……」

 

 そういえば、二人ともいつの間に名前で呼び合うようになったんだ?部屋で話してた時か。

 

「……で、何であんなに大声出したんだ。近所迷惑だ」

「……寝不足」

「し、しょうがないじゃない!アンタたち二人とも、目を開けて寝てて、しかも(ホン)なんか、ギョロギョロ目を動かして!すごく怖かったんだから!!」

 

 夢の中だったからな。レム睡眠中の急速眼球運動が起ったんだろう。

 ……しかしあの夢。俺、セシリアに恨みでもあるんだろうか?あるいは、ただのストレス?

 

「じゃあ、現状は理解したな?部屋に戻れよ」

「え?でも、同室の子もまだ寝てるし、あたしもヒマだから、この部屋に……」

「あー、別にいいが、俺も葵もすぐいなくなるぞ?」

「え!?何でよ?」

「鍛練」

「そゆこと。まあ、もう習慣化してるし、目も覚めちまったからな。

幸い時間も早いから、久々に本物を振ってくるぜ」

 

 俺はジャージ片手に洗面所へ。すぐに着替えて戻り、ベッド脇に置いた刀――菊一文字を手に取る。そのころには葵も運動着に着替えており、外へ出る準備を終えていた。

 

「ど、どこへ行くのよ!」

「俺は剣道場。葵は……」

「射撃場」

「……ってわけだ。またな」

「ま、待ちなさいよ!!あ、あたしも……」

「来るの?シワだらけの制服で?」

「う……た、確かに……」

 

 凰も、ようやく自分の格好を理解したようだ。

 

「……一夏にだらしないとこ、見られるかも」

「そ、それはイヤね……。うん、わかった。とりあえず部屋に戻るわ」

 

 葵の説得(?)により、凰も分かってくれたようだ。

 

「じゃ、行くぞ」

「……また、学校で」

 

 凰に別れを告げ、俺達は互いの目的地へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 朝。

 刀を振って、弓を射り、ついでに手の空いてた葵とハデに戦闘訓練(ただし一方的)をした俺が玄関前廊下に行くと、なにやら張り紙がしてあった。

 

「んーと……クラス対抗戦(リーグマッチ)日程表……一回戦は一組対二組……ってことは」

「一夏対鈴音……」

「……で、お前は四組と対戦か」

「そう。二回戦は二人のうち、どちらかと戦う……」

「珍しく饒舌だな……。楽しみか?」

「うん」

 

 即答かよ。この間は雑魚扱いしてたのに。

 

「……ようやく、デビュー」

「あ、そういうことか」

 

 俺もセシリア戦では、同じことを考えたなぁ……とか思い出した。

 

「あ、おはよう紅、葵」

「お、凰。おはよう」

「……おはよう」

 

 制服を着替えた凰がやってきた。その顔には、覇気が戻っているように見える。一晩休んだおかげで、だいぶ元に戻ったようだ。

 

「あ、一回戦の相手、一夏じゃん。ちょうどいわ!ボッコボコにしてやるんだから!!」

 

 ……訂正。戻ったどころかパワーアップしている。瀕死から回復すると強くなる野菜人みたいだ。ガンバレ、一夏。でも、応援はしないぞ?インガオーホーっぽいから。

 

「……二回戦、楽しみ」

「葵……。そうね!そのときは、思いっきりやりましょ!言っておくけど、昨日の発言、必ず後悔させてやるから!じゃあね!」

 

 言いたいことだけ言って去っていった。元気な奴だ。

 

「……嵐」

「ま、まあ……元気があっていいんじゃねぇか?……にしても、ずいぶんと気に入られたな」

「紅也のおかげ」

「……?俺、何かしたか?」

「直接的には、何も」

 

 まあ、何にせよ、うまくやっているなら何よりだ。うん。

 

「お、紅也、山代。おはよう」

「お前たち、ずいぶんと早いな」

 

 今度は一夏と箒、二人揃って登場だ。凰、いなくてよかったな。いや、いた方が面白いことになってたと思うけどよ。

 ……と、不意に葵が一夏の前に立ち――

 一夏の(すね)を蹴り飛ばした!

 

「痛ったぁ!?いきなり何だ!?」

「……女の敵」

 

 そう言い捨て、葵は去っていった。あえて言おう……よくやった。

 見ると、箒もなにやらうなずいている。そういや、昨日の騒ぎの当事者なんだよな、こいつも。

 

「なあ、紅也?」

「ん、一夏。どうしたんだ?」

「どうしたも何も……俺、何か山代に嫌われることしたか?」

 

 知らぬは本人ばかり。……こいつ、昨日何で凰が怒ったのか、泣いたのか、理解してないな?

 

「葵本人には何もしてない、とだけ言っとくぜ。後は自分で考えてくれ」

「………?」

 

 本気で考え始める一夏。こいつは、死ななきゃ……いや、死んでも治らないな。

 

「なあ、箒?分かるか?」

「自分で考えろ」

 

 ……どうやら箒も、葵と同意見らしいな。え、俺?俺が葵の敵になると思うか?

 

「……ハア。それより二人とも、これを見ろ」

「……ん?ああ。ってこれは……」

「クラス対抗戦……日程表……」

「そうだ。ちなみに一夏の相手は凰だ。むこうは、昨日の復讐するって、気合い入れてたぜ」

「え?昨日って……ていうかお前、鈴と会ったのか?」

 

 ああ、そう言えば話してなかったな。

 

「ああ。葵が連れてきた。アイツ……泣いてたってよ。女の子泣かせちゃダメだろ?」

「……やっぱり、か。……でも俺、泣かせることは一つも……!!」

「で、箒。本当のところは?」

 

 まあ、全部知ってるけどな。

 

「こいつは死ななきゃ治らん」

「まったく完全100%同意見だ。じゃ、教室行こうぜ」

「うむ。……一夏、お前はもう少し敏感になれ」

 

 革新したって鈍いヤツはいるけどな。いっそのこと白式を、フル・サイコフレームにすればいいんじゃないか?篠ノ之博士、サイコフレームとか作れないかなぁ?

 

 

 

 

 

 

 時は進んで放課後。

 

「さあ、どっからでもかかってきなさい、紅!!」

 

 俺と凰は、第二アリーナでISを展開し、向かい合っていた。

 

 ……どうしてこうなった!?

 




世の中には危険がいっぱいじゃ!

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