IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第11話 VS白式!うなれ、ガーベラストレート!

 第三アリーナ、Bピット。

 次の試合に備え、俺はここまでやってきた。

 

「――試合終了。勝者、セシリア・オルコット」

 

 アナウンスが響く。ああ、一夏のやつ、負けたのか。『零落白夜』を使って負けたとしたら、きっと原因はエネルギー切れだろう。あれは、PS装甲以上に燃費が悪かったはずだ。実体ダメージは回復しても、今まで消耗したエネルギーまでは戻らないから、長時間の展開はできなかったはず。

 

 キイィィィィン……

 

 音が大きくなっていく。オルコットがピットに戻ってきたのだろう。

 アリーナの方を向き、エルメス――もとい、ブルー・ティアーズに手を振る。すると、それに気付いたのだろうか?オルコットは速度を落とし、俺のそばに着地した。

 

「よう、オルコット。これで一勝一引き分けだな」

「あんなの、勝ちとは――って、あ、あら、紅也さん。どういたしましたの?……まさか、わたくしを出迎えるために!?」

「『紅也さん』?」

「え!?いえ、あの、別に……」

「そうか……。ようやく、俺が俺だと認めてくれたか。染めた甲斐があったかな?」

「え?か、髪は関係ありません。その……昨日は、ありがとうございましたわ。目が覚めるまで、看病をしていただいたようですし……」

 

 そう言って、顔をそむけるオルコット。……ああ、アレか。敵に情けをかけられて恥ずかしいってか。

 

「気にするな。あれは、俺がやりたくてやったことだ。それによ、元々俺のせいであんなことになったんだ。人の厚意は、素直に受け取るもんだぜ?」

「こ……好意!?」

「そう、厚意だ。代表候補生だからって、変に肩肘張らずに、たまには人を頼ってもいいんだぜ?俺に出来ることなら、出来る限りやってやるからな」

「で、では!わた、わたくしのことも、その……名前で呼んでいただいてもよろしいですか?」

 

 そんなことでいいのか?「名前で呼んで」って、友達いなかったのかお前。

 

「……セシリア。これでいいのか?」

「ええ。今は十分です。これで……」

 

 目を閉じ、うつむくセシリア。今のやりとりで何か、感じ取ったものがあったのだろうか。だとすれば、俺が会いに行った意味もあったのだろう。

 

「じゃあ、俺はそろそろ行くぜ」

「あら、どちらへ行かれますの?」

「決まってんだろ。第三試合だよ。互いに近接型の機体だ、面白い試合になるぜ」

 

 レッドフレームを展開。ガーベラ・ストレートを抜き放ち、両手で正眼に構える。

 

「では、わたくしも応援しますわ。がんばってくださいね、紅也さん」

「さんきゅ。じゃあ、行ってくるぜ!」

《MBF-P02 レッドフレーム、スタンバイ!!》

 

 機体が浮く。昨日徹夜でメンテしたため、状態は十全だ。

 ゲート開放まで、後、3、2、1……

 

「レッドフレーム、行くぜ!!」

 

 フライトユニットに点火……はせず、そのままアリーナへと降り立つ。

 対して一夏は、飛び上がって来ない俺に対し、けげんな表情を浮かべている。

 

「一夏。連戦だが、大丈夫か?」

「安心しろ、そんなにヤワじゃねぇよ。そっちこそ、早く来いよ。トラブルか?」

「いや。お前の装備はブレオンだって分かってるんだ。だったら、地上の方が断然戦いやすいぜ。近づいてきたら、コイツで一刀両断だ!」

 

 ビシッ、とガーベラを一夏に向ける。そして、試合開始の合図が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 ………。

 

「どうした、来ないのか?」

「へっ、カウンター狙いの奴に、好き好んで近づくやつがいるかっての!」

「じゃあ、俺からいかせてもらうぜ!!」

 

 ガーベラを右手一本で持ち、地面に刃を向ける。そして、一夏へ向け、切り上げを放つ。

 当然、刃は届かない。しかし……

 

「なっ!?エネルギーが減った!?」

 

 そう、斬撃は届く。それが俺の空破斬だ。そういえば、一夏は初見だったな。おお、何でダメージを受けたか理解できなくて、かなり動揺してるぜ。

 

「続けていくぜ!その名も、無限・空破斬!!」

 

 連続で空破斬を放つ。不可視の斬撃の群れが一夏を襲い、シールドを食い荒らす。

 しかし、やがて斬撃はかわされ、あるいは防御されていく。斬撃そのものは不可視でも、刀は実体であるため、刀を見れば方向が分かるのだ。もし、刀自体が不可視ならば見切りに時間がかかるだろうが、あいにく俺に風王結界は無い。約束された勝利の剣も持ってないし、全て遠き理想郷の代わりはチャチなシールドだ。

 

「うぉぉおお!!」

 

 一夏が迫る。雪片弐型を構え……レーザー刃を形成。零落白夜だ!

 あれはヤバい。シールドエネルギーを奪われた俺を守るのは、この脆弱な装甲のみだ。食らったら、俺は文字通り真っ二つになって死ぬだろう。

 ……当たれば、な。

 

(8、フライトユニット分離(パージ)だ。独立飛行させて一夏を牽制する)

《了解。ついでに、燃料タンクも排出、爆破しておこう》

(ああ、それでいい。じゃあ、スタート!)

 

 バクン!!

 背から離れたフライトユニットは、一夏の頭の上へと飛んでいく。

 そちらに注意を向ける一夏。降ってきた燃料タンクを、反射的に切り裂いた。

 ……計画通り。

 閃光、爆発。相当なダメージを負い、おそらく視界も失っているであろう一夏を追撃するため、脚部バーニアを点火。ガーベラを上段に構え、一気に振りおろす!!

 

「これが俺の……」

「何、正面ッ……」

赤い一撃(レッドフレイム)だ!!」

 

 遅い。刀が一夏の体に当たり、度を越えたダメージにより絶対防御が発動する。

 白式が地に墜ちた。そして無数の白い粒子となって、姿を消していく。

 

「白式、シールドエネルギーゼロ。試合終了、勝者、山代紅也」

 

 着地し、刀を鞘に納める。フライトユニットを背に戻してから、俺はピットへと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

「見事な試合でしたわ、紅也さん」

「………」

 

 俺を出迎えたのは、まだ残っていたセシリアと、無言でサムズアップする葵だった。

 

「よう、葵、セシリア。今度は、納得のいく試合をしてきたぜ」

「……『セシリア』?何で、名前?」

「ああ。そう頼まれたし、そっちの方が仲良さげで、いいだろ」

 

 むすっ、と不機嫌な表情になる葵。あれか?嫉妬か?……かわいいやつめ。

 

「……セシリア・オルコット。表に出ろ」

「なっ、なんですの、いきなり!?山代さん?」

 

 やばい。嫉妬なんてかわいいものじゃないぜ、あれ。目が本気(マジ)だ。

 このまま第四回戦を始めかねない勢いだ。

 

「葵。いいじゃないか、名前で呼ぶくらい。そんなことで怒らないでくれよ。お前は、笑顔の方がかわいいんだからよ」

「……。うん、わかった」

 

 自分でも言ってて恥ずかしかったが、これで無用な争いは避けられた。

 葵とセシリアに、必要以上の溝を作ってほしくは無い。セシリアも、根はいいやつだからな。葵とも、きっと仲良くできるはずなんだ。

 

「……妹って、得ですわね」

 

 ぼそっと、セシリアが呟く。こいつも構って欲しかったのか?

 

「悪いな、セシリア。俺にとって、葵はやっぱり特別なんだよ。でも安心してくれ。俺は、お前のこと、嫌いじゃないぜ」

「へ?え、ええ!ありがとうございますわ!!わたくしも、あなたのことは、その……

 ま、前ほど嫌いではありませんわよ」

 

 ぱあっと、笑顔になるセシリア。なにこの可愛い生き物。思わず抱きしめたくなるが……おっと、妹の目線が怖いし、セクハラだし、自重。

 

「……このお人よし」

 

 言うな、葵。やっぱり、みんな笑顔でいてほしいんだよ。

 

 

 

 

 

 

「で……山代さん」

「……何?」

「さっきの話ですけど、わたくしはいつでも挑戦を受けますわよ?わたくしも、あなたとはもう一度勝負したかったんですの」

「……もう一度?初対面なのに?」

「なっ、初対面!?アナタ、前に一度会ってますでしょう?イギリスで!!」

「あー、葵。ジンの評価試験の時だと」

「……忘れた。雑魚に興味は無い」

「な、なんですってえぇぇぇぇぇ!!!!!」

 




前はこの直後に過去編「ジン評価試験」を投稿しましたが、今回はどうしようか?外伝は3本まとめて1章終了後に投稿してもいいような気がする。

そういえば、今日からはまた12時更新です。

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