徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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ワンパンマン転生 魔法少女が逝く2

 私の名前は魔法少女ハロウィン☆エリザ!

 皆に夢と希望を魅せるヒーロー協会のアイドルよ!

 

 まぁ本体が人嫌いの気があるから、あんまり誰にでも甘い顔してるって訳じゃないけどね…。

 と言うか、根本的に根暗な本体の影響をガッツリ受けている身としては、魔法少女として明るく振る舞うのは正直きついわ、マジで。

 一応、モデルとなった英霊の人格や技能面のみを召喚して憑依させてる訳だけど、この肉体に関してはマジで本来のものよりもチートスペックなのよね。

 英霊、っていうかサーヴァントにおけるステータスが幸運を除いて殆どA、しかも本体の影響もあって魔法に関してはメディアとかのガチ優秀な魔術師にも負けないくらいだし。

 まぁこの世界じゃスペックだけなら探せばいる程度なんだけどね!

 それは兎も角として、本体がサイタマさんと戦ってから一週間が過ぎた。

 その間、私達分体は殆ど動けなかった。

 と言うのも、本体が生命維持に支障が出る位に魔力が枯渇したものだから、逆に私達の方から供給していたからだ。

 その間、私と金策担当の分体は魔法の使用を控え、ずっと待機していた。

 それは魔力の消費を抑え、少しでも多く供給するためのものだが、それ以前に本体のやらかしを咎めるためでもあった。

 少なくとも、本体が死ねば分体である私達は問答無用で死ぬのだから、怒るのは正当な権利だ。

 んで、本体が目を覚ましたのを感知した同時、すっ飛んでいった。

 

 「それでさー」

 「そうなんですか?」

 

 「」

 

 私が何を目撃したと思う?

 病室のベッドの上で包帯であちこちを固定した本体(悔しいが、本当にスタイルの良い美少女で羨ましい)が、この世界で紛れもない最強の男と親しげに話している場面。

 この世全てを蔑んでいた様な目をしていた本体が恋する乙女の様な、否、真実恋する乙女となって禿頭の男と病室で会話してる所よ!

 

 (おうちょっと本体、話聞かせなさいよ。)

 (ん?あぁエリザじゃない。ごめんなさいね、今手が離せなくて。)

 

 知ってるよ!

 っていうか病室の外で待機してるよ!

 ほら、今お前の事監視してるもう一人の分体も呆れてるよ。

 

 (ニハハハハ、まさか本体がこんな事になるとは…このウィル子の目をry)

 (節穴ネタは置いといて…で、何があったのよ?)

 (じゃぁ記憶共有するから、二人とも見ててね。)

 

 そして、本体からのフィードバックを受け………ウエェェェェェェェェェェェェェェ!?

 

 (あんた、何ワンパンマンに喧嘩売ってんのよ!?しかもZ市壊滅してるし!)

 (いやー薄々予想してましたけど、これは酷いですねー。)

 

 いや、本当に酷い。

 ストレスがっつり溜まってるからって、何でサイタマさんにそれをぶつけて解消するって斜め上の答えに至る訳!?

 それじゃあの傍迷惑な宇宙人の親玉と一緒じゃない!

 

 (いやぁ)

 ((いやぁじゃない!))

 

 そして何でサイタマさんとそんな親しそうなのよ!

 こっちが毎日仕事で死ぬ思いしてんのに、ストレス溜める位ならあんたもこっち来て手伝いなさいよマジで!

 

 (でも、収穫はあったよ?)

 ((だろうね!))

 

 何せサイタマさんと凄い親しくなってるしね!

 正直、原作ファンとしてはそこ代われと言いたくもある!

 

 (で、何処まで行ったんですか~?)

 

 ウィル子がニヤニヤと擬音が聞こえそうな声音で念話してくる。

 しかし私も少女、他人の恋バナは是非とも聞いてみたい。

 

 (えと、その、そういうのはまだ早いかなって…)

 ((子供か!?))

 

 って、そういや前世含めてこいつ恋愛経験無いんだった!

 経験値的に見れば完全に子供だった!

 

 (まぁ取り敢えず理由は解りましたから、本体はゆっくり養生するとよいのですよー。)

 (そうね、それじゃあ二人は通常業務に戻ってもらうわ。ただ、私が本調子に成り次第、分体をもう二人作るから、それは覚悟しててね。)

 

 驚いた。

 現状、分体の作成はこれ以上するつもりはない予定だったのだが、どんな心境の変化があったのだろうか?

 いや、恋心を覚えるとか、本体にとっては驚天動地なのだろうけど。

 

 (分かったわ。こっちは取り敢えず通常業務に戻るから、そっちは安静にしてなさい。)

 (了解なのですよ~。でもでも、何時かは私達も紹介してほしいのですよー。)

 (分かってる。退院して時間が出来てからね。)

 

 そう告げて、その場は解散した。

 

 「ん?あの二人、知り合いだったのか?」

 「あ、気付いちゃいました?すみません、仕事の関係で…。」

 「良いって良いって。お前が何か大変そうなのは分かってるし。」

 「サイタマさん…。」

 

 気づかれてた事に驚けば良いのか、早速イチャイチャが始まっている事に驚けば良いのか、本当にこの二人と来たら……。

 

 

 なお、本体は退院までの一週間、見舞いに来てくれるサイタマさんとイチャイチャし続けた事を此処に明記しておく。

 

 

 ……………

 

 

 Z市壊滅から二か月後、引き続き調査に当たっていたSランクヒーローの一人である魔法少女ハロウィン☆エリザから一つの報告書が提出された。

 内容は簡単なもので、「名も知れぬ科学者がZ市のゴーストタウンで反物質に関する研究を行っていた」と言う内容だった。

 当初、これに対してヒーロー協会上層部は信憑性が薄いとして調査の続行か打ち切りかを考えたが、続く報告に度肝を抜かれる事となる。

 

 「私の師匠が簡単に魔法少女になれるアイテムを作れる人材を連れてきたんだけど…配って良い?」

 

 人材の確保に四苦八苦していたヒーロー協会上層部は、心臓が止まる程の驚きに包まれた。

 一部の職員は本当に止まりかけたが、それでも気合で復活して渡された資料に目を通す辺りは流石と言える。

 内容はハロウィン☆エリザの師匠が育てた魔法の道具、礼装の作成に特化した人材が作成した専用礼装についてだった。

 この礼装は簡易ながらもAIの様な人工知能としての機能を持ち、同時に持ち主の魔法の才能を引き出し、持ち主に最適な魔法を行使する補助を行う。

 その結果、持ち主はその補助礼装の恩恵により、適正さえあれば、簡単に魔法を使う事が出来ると言うものだった。

 この補助礼装の存在に、上層部も流石に頭を抱えた。

 ヒーロー協会としては是が非でも人材は確保したい。

 そのため、本音で言えば手っ取り早く人材を確保できる手段は諸手を上げて受け入れたい。

 同時に、適正さえあれば「誰でも」と言うのが癖者だ。

 文字通りの意味なら、犯罪者や悪党、怪人にも補助礼装は反応してしまうと言う事だ。

 また、適正が高いからと言って、年少者や傷病者、高齢者に殆ど荒事と言うヒーローの仕事を任せるには不安が大きいと言う声もあった。

 そのため、ヒーロー協会はこの補助礼装の作成者と師匠を協会所属のヒーローへの勧誘と同時に、補助礼装を渡す相手はヒーロー協会へと試験を受けにやってきた満16歳以上60歳以下の女性への適性検査を実施し、本人の希望があった場合のみ補助礼装を貸与する事を条件に決定した。

 これに対し、ハロウィン☆エリザは条件付きで承諾した。

 それは師匠と礼装作成者、更にもう二人をSランク待遇でヒーロー協会で迎える事だった。

 師匠と礼装作成者ならまだ分かるが、もう二人の実力に関して疑問を掲げる上層部に対し、エリザは「師匠と同等の実力者。単体戦闘能力のみ抜き出せば、確実に師匠よりも上。後、師匠の良い人。おまけに私の妹弟子。」と言う発言に、大体の事情を察した上層部は色々とツッコミたいのを飲み込んで、その条件を全て了承した。

 

 結果、翌月のヒーロー協会主催のヒーロー採用試験はハロウィン☆エリザの人気にあやかり、満16歳の少女達の記念受験者が大量に溢れ、各支部の職員が連日デスマーチを熱唱する羽目になった。

 

 

 ……………

 

 

 「ヴィータさん!また追加発注です!」

 「またか!?えぇい何時まで経っても終わらねーじゃねーか!」

 

 師匠と言われる女魔法使いの派遣した三人目の分体、礼装作成に特化した三体目の分体であるヴィータは汗だくになって工具を振るいながら職員へと叫び返した。

 

 (作られてからこっち、休む暇がない!)

 

 給料が高いのも、仕事がたくさんあるのも良い。

 しかし、多すぎるのは良くない。

 魔法少女希望者の書類選考で地獄を見ている事務方と共に絶賛デスマーチ中のヴィータは顔を引き攣らせた。

 それが役目であり、やりがいのある仕事だとしても、ブラック労働環境は今すぐ止めてほしかった。

 

 (とは言え、こちらの想定以上の量だな。これなら本体も満足するだろ。)

 

 現在作成している補助礼装、外見は掌サイズのガラス玉だが、通常の才能開花や防具形成、形態変化を始めとした機能がある。

 特に重要なのが何重にも設けられた安全機構だ。

 一つ、分体及び本体に対しての敵対行動の禁止。

 二つ、分体及び本体の任意で機能を停止可能。

 三つ、心身に重度の支障がある場合、機能の停止、或は緊急帰還機能の強制発動。

 代表的なものとしてはこれらであり、他にも所有者の体調管理に魔法行使時の演算補助等が挙げられる。

 そして、本体と分体達しか知らない機能として、魔力及び魔法の徴収が存在する。

 前者は使用した魔法の0.1%を常に礼装を通じて集められ、一度ヴィータを通して「毒見」した後に本体へと供給されていく。

 これにより、本体は更なる魔力源を得た訳だが…

 

 (あんまり意味がないんだよなぁ…。)

 

 これは本体が利益を得るためのものではない。

 寧ろ、緊急時には本体の方から逆に魔力を送り込むための機能なのだ。

 元々、第二魔法とか言う並行世界から魔力を持ってくる事も、第二種永久機関ばりに自身の放った魔力をまた集める事も可能な本体に、この程度の些細な魔力供給源は必要性が薄いのだ。

 だが、後者は違う。

 前世で見た各作品の魔法や超能力、或はそれらを組み合わせたものを魔法で再現して使用する本体だが、その想像力には限界がある。

 となれば、若く柔軟な発想を持つ者達からアイデアを拝借した方が遥かに多様な魔法を生み出す事が出来ると考えたのだ。

 これには補助礼装、暫定呼称「デバイス」が使用者の才能と適正から、最適な固有の魔法を生み出すと言う性質もあり、大いに役立っている。

 実際、既に100人近い魔法少女が誕生しているが、彼女達の持つデバイスに登録された固有魔法は次々と本体のライブラリに登録されている。

 魔力と魔法、唯でさえチート級に強いのに今なお上を目指し続ける。

 その研鑚には敬意を表するが、動機が不純…否、或る意味純粋過ぎるのがヴィータには困りものだった。

 

 (『サイタマさんに失望されたくないから…』とか言われてもさぁ…。)

 

 すっかり恋する乙女となった本体の言動に、ヴィータは口の中が甘くなる錯覚を味わってしまう。

 自己鍛錬だけでなく、こうした点でサイタマとの実力差を埋めようとするのは感心なのだが、理由が余りにもアレ過ぎる。

 

 「よし、第27発注分はこれで完了だ。次の材料を持ってきな!」

 

 それは兎も角、自分は自分の役目をすべきだと槌を振るった。

 

 「ヴィータさん、また追加発注です!」

 「…ちょっと待て…少し休憩する…。」

 

 でもこれは無いんじゃね?とヴィータは思った。

 

 

 ……………

 

 

 「はいそこ!魔法使用時はちゃんと周囲の安全確認!射線上に民間人がいるわよ!」

 

 ヒーロー協会の支部の一つ、その訓練用設備でハロウィン☆エリザは成り立ての魔法少女達へと訓練を課していた。

 

 「は、はいぃ!」

 「よし、そのまま射線がぶれない様に、しっかりと標的を意識しなさい!細かい照準は礼装がしてくれるから!」

 

 体力面は時間をかけて鍛えていくしかないが、戦闘における心構え等は直ぐにでも鍛えるしかない。

 戦闘時、体力も魔力も武器も技術もあっても、精神面が伴っていなければ、そいつは戦場で役に立つ事は無い。

 某白い魔王の様なメンタルを持てとは言わないが、もしもの時に民間人を守れる程度には精神面が成長してほしい。

 そう考えたエリザは持ち前の汎用性を生かして、特化型の多い魔法少女の教導役に就いていた。

 とは言え、彼女自身には教導の才能なんて無いので、専ら本体が幼少期に培った魔法使いとしての基礎訓練のみなのだが。

 だが、それでも魔法少女の卵達にとっては自分は憧れの相手であり、訓練内容もまた初めてのものであり、戸惑う姿が多く見られる。

 

 (ま、それも今の内だけよね。)

 

 未だ精神が熟していない16歳と言う多感な時期に魔法と言う自分の思うままに出来る超常の力を手にする事。

 それがどれほどの中毒性を彼女達に与えるのか、それを考えると少々頭が痛くなる。

 

 (中毒になるのは仕方ない。でも、それに溺れてもらうのは困るのよ。)

 

 調子に乗って犯罪行為に走る様なら、その時点で補助礼装から警告が本体と分体に届き、別命あるまで強制停止される。

 それにより、各種魔法の使用も不可能になるので、簡単にお縄に出来る。

 なお、犯罪行為の規定に関してはこの国の法律と地域の行政がほぼそのままである。

 

 「よし、次は模擬戦行くわよ!ターゲットの召喚獣を出すから、皆頑張って捕まえて!」

 「「「「「はーい!」」」」」

 

 

 ……………

 

 

 その日、ヒーロー協会職員一同は新たにSランクに入る三人を見た時、一様に言葉を失った。

 否、三人ではなく、エリザを加えたその一行に、その一行の中心にいる黒い魔女の姿に言葉を失う程に見惚れていたのだ。

 黒い装束に身を包み、その右手に水晶の様な穂先を持った杖を携え、腰には重厚な革の装丁の魔道書の嵌まったブックホルダーを提げている。

 外見年齢は20代前半、しかしあのエリザの師匠と言うからにはその外見すら当てにならない。

 黒い艶やかな長髪に同色の瞳、白磁の肌に女性らしい凹凸と柔らかさに富んだ肢体。

 口元に施された真紅のルージュは薄目の唇を華麗に彩り、強固な意思を感じさせる瞳は見る者すべてを魅了する妖艶さを放っていた。

 無論、本人に周囲を誘惑するつもりは一切ない。

 ただ(サイタマさんに私の頑張ってる所を見てもらいたい!)と言う乙女思考の下、色々と気合を入れて化粧しただけだった。

 まぁその時使ったものに魅了効果を持つものが多数含まれていたため、職員らが目を奪われるのも致し方なかった。

 

 「失礼、アポイントを取っていた者ですが…」

 「は、はい!たたた只今ご案内致しますです!」

 

 直々に声を掛けられた職員は慌てふためき、時々躓きながら何とか案内していった。

 それを咎める者はいない。

 何せ、自分が声を掛けられても魂消て何の反応も返せないだろうからだ。

 

 

 ……………

 

 

 「サイタマさーん、ご飯できましたよー。」

 「おーう、今行くー。」

 

 Z市の外れにある高級賃貸住宅の一室にて、同居人の作った夕飯の香りを感じながらサイタマは思う。

 どうしてこうなった、と。

 

 『すみません、私の我が儘に付き合わせてしまって…。』

 『いや、良いよ。オレだって楽しかったし。』

 

 あの戦いの後、満身創痍のまま疲労困憊で気絶した女魔法使いを病院へと連れていき、自分もそのまま入院した。

 しかし、自分はものの三日で全回復したが、一緒に入院した女、否、寝顔を見るに少女の方は一月も昏々と眠り続けた果てに漸く目を覚ました。

 彼女は一方的に戦いを仕掛けた事、そして家財の一切合切及び街を破壊してしまった事を詫びた。

 そんな彼女にサイタマは問うた、どうしてあんな事をしたのかと。

 

 『私は…自分が一番強いんだなって思ってました。だから、この世界にはもう私と楽しく戦ってくれる人はいないんだって。これからは戦っても何も得られないんだって、そう思ってました。』

 『そんな時に、貴方の事を見つけたんです。』

 『初めて見た時はびっくりしました。私よりも強いんじゃないかって人に、初めて会いましたから。』

 『この人なら私と楽しく戦ってくれるんじゃないかって、そう思ったんです。』

 『そこからはもう止まれませんでした。貴方と戦う事ばかり頭に浮かんで消えなくて…もう我慢できませんでした。』

 

 その感情には、自分も身に覚えがあった。

 自分は強くなった。

 弛まぬ鍛錬の果て、自分は強く成り過ぎた。

 それこそ誰も敵わず、虚しさを覚える程に。

 嘗て目指した理想すら、霞んでしまう程に。

 サイタマはすとんと納得した。

 彼女の抱く悩みは、自分も抱えるものだった。

 成程、あの戦いがあんなにも楽しかったのは、互いに互いの虚しさを解消できた故だったのだ。

 

 『そっか。』

 

 一度納得したと頷き、

 

 『でも、悪い事は悪い事だ。これからは償いをしろよ。』

 『はい!』

 

 しかし、ヒーローとしての言葉を口にした。

 それが大人として、自分で課したヒーローとしての在り方だったから。

 そして、彼女もまた肯定した通りに行動した。

 実際、退院後の彼女の動きは迅速であり、部下?の少女二人に命じてZ市の復興費用を捻出したり、焼け出された被害者へと迅速に支援物資を送り届けたり等、如才なく償いを行っていった。

 

 『あ、そう言えば名前。』

 『名前…あぁ!そう言えば名乗ってませんでしたね!』

 『オレばっか知られてちゃ不公平だろ。』

 『そうですね。私の名前は倉土灯です。よろしくお願いしますね、サイタマさん!』

 『おう、よろしく。』

 

 そして、あれよあれよと言う間に、彼女は自分がフロアごと借りている高級マンションの一室にサイタマを住まわせてしまった。

 巧みな話術に乗せられてしまったサイタマであったが、相手が卒業間近の高校生と言う事もあり、何とか一線を保ったまま生活をしていた。

 まぁ衣食住を世話になっている時点で、かなり浸食されているのだが…。

 

 (リアル女子高生に手ぇ出すとか洒落にならねぇぞ…。)

 

 サイタマの悩みはこれに尽きた。

 マンション内では学校に行く時と同様の三つ編みに眼鏡だが、学校の制服ではなくラフな私服の上に可愛らしいエプロンを纏い、すれ違うと何かよく分からない良い香りをさせている美少女。

 どう考えても二十代半ばの成人男性と一緒に暮らすべき存在ではない。

 況してや相手はこちらに純粋ながらも熱烈な好意を向けている、限りなくOKに近い存在だ。

 正直、何時理性が敗北するか気が気じゃない。

 

 「はい、今日は肉じゃがと揚げ出し豆腐ですよ。」

 

 満開の笑顔で自分を迎えてくれる彼女を見ると、どうしても今の生活を壊したくない、そう思ってしまった。

 

 

 

 自分並に強く、美しく、気立ての良い家庭的な女性。

 この世界の何所を探してもいないであろう女性に、恋愛事に耐性のないサイタマは早々に絆されていった。

 

 

 

 

 

 




サイタマがちょろい?
いや、自分の悩みを理解してくれる気立ての良い家庭的な女性がこっちを好意全開で見てるんだよ?
こんな据え膳どころかフルコース、どんな草食系だってぐらぐらきますがな。

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