死神教室≒暗殺教室   作:黒兎可

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大変長らく・・・なんとなく期末は2,3話予定です


第31話:邁進と慢心の時間

 

 

 

 

 

「あら、吉良八先生。何やってるんですか?」

「いえ、今年の『殺たん』の準備をしているところでして」

 

 妙に道具が地面に散らかっている、ころせんせーこと吉良八湖録の自室。ノートパソコンに向き合いカタカタタイピングしている彼を、洗濯物をハンガーにかけながら雪村あぐりは覗いた。お互い、ほっぺたがくっつくくらいには近かったが、さして気にして居ないようである。自然体と言うか、割と慣れている風だった。

 

「せっかく『去年も』作ったので、今年は更にバージョンアップさせようかと」

「あら、これって……」

「ヌルフフフ、一年分のアドバンテージですねぇ。お気に召して頂けましたか?」

「……はいっ」

「にゅっ!?」

 

 画面に映し出されていたある部分を見て、あぐりは嬉しそうな顔を浮かべ、思わずといった風に抱きついた。これにはさしものころせんせーも、普通に照れる。珍しく固まり、反応出来なくなっていた。

 

「お夕飯、どうしますか?」

「……あ、ああ。もうしばらく作業させて頂けると助かりますかねぇ」

「じゃあ何か簡単に作るんで……、死神さんは、机の裏に隠したえっちな本について申し開きでも考えておいてください」

「にゅや!?」

 

 さらりとちょっとした死刑宣告を突きつけた上で、あぐりはくすくす笑いながら部屋を後にした。

 殺せんせーはため息を付きながらも、カレンダーをちらりと見る。

 

「……おっと、そういえばそろそろ期末でしたね」

 

 そっちもいよいよ大詰めですが、さて何を条件にしたものか。そんな風に呟きながら、ころせんせーは自分のこめかみの辺りを軽く叩いた。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 期末テスト――椚ヶ丘中学においては、成績こそ全てである!

 

 最下位クラスであるE組を、誰にも恥じる事のないクラスに教え育む。

 それを目標にしている約二名にとって、この期末はまさに、決戦の場であった――!

 

『さて、皆さん一学期の間に基礎はしっかりしてきました。この分だと、期末の成績もジャンプアップが期待できます』

 

「……雪村先生、ころせんせーは?」

「あー ……、吉良八先生はちょっと、防衛省から呼び出しがあって、そっちに行ってるわね」

 

 困ったように頬をかきながら、あぐりは生徒達を見回す。各自の机の上には、以前のようにころせんせーが作った問題集が置かれている。その一ページ目の前書き(!)に書かれている内容をあぐりが読んだのに、思わず渚が突っ込みを入れた形だ。肝心のころせんせーが居ないではないか、という当たり前の突っ込みだが、しかして防衛省というフレーズにはそれ以上の追及を許さない重さがあった。

 特に彼らの担任の場合、その正体がいまいちわからない部分も含め冗談なのか、冗談じゃないのか判別が全くつかないため。

 

「じゃ、じゃあ続けるわね?」

 

 生徒達も、視線を手元の資料に落とす。……寺坂さえもが資料に目を通しているのは、心境の変化の表れか、あぐり単体に対する苦手意識か。

 

『さて前回は総合点を先生は条件として気にしていましたが、そればかりでは駄目だと気づきました。基礎がしっかりしてきた今だからこそ、それぞれの伸びしろを更に伸ばしていけないか、と思い、今回の条件を考え付きました』

 

(ぴったりな条件か)

 

『だ、大丈夫ですからね! 寺坂君にもチャンスはありますから!』

(((((紙の資料にも突っ込みどころ作るんか!?)))))

 

 媒体が何であれ、ころせんせーはころせんせーであった。あぐりもあぐりで律儀に読んでいた。ものすごい形相になる寺坂だが、カルマが隣でニヤリと馬鹿にしている。

 そしてやはり、何故か寺坂の資料の表紙だけはNARUT○の模様である。

 

『さて前にイトナくんが言っていて覚えている生徒もいるかもしれませんが、改めて言いましょう。

 先生は、皆さんの持つ訓練弾やナイフを受けると、その分活動能力が低下して行きます。大体10発を超えたあたりで、普通の大人と大差ないくらいに低下していく訳ですね』

 

 これについては試すまでもなく、以前のイトナとの戦闘を思い出せばまさしくその通りだった。前半戦において、明らかにイトナに追い詰められていたころせんせーであるからして、その理由がこれであるならば確かに納得は出来る。あぐりからも訂正が入らないあたり、おそらく嘘はないのだろう。

 

『さて、そこでテストについて本題です。

 前回は総合点のみで評価しましたが、今回は皆さんの最も得意とする科目を評価に含めましょう。

 教科ごとに一位をとった生徒には、無条件で私に弾を当てる権利を進呈します』

 

(このアドバンテージは、大きい……!)

 

 渚のみならず、この記述に生徒達は緊張感を高めた。

 

『この意味の大きさがわかりますね? それぞれ一人ずつでも六発まで、私に無条件に当てる事が出来るわけです。ま、その程度でやられる私ではありませんが、逆に言えば能力を落とすことで、これまででは不可能だった作戦も可能になる訳です。おそらく、今の君達の動体視力なら追える生徒も出てくることでしょう。

 これが、今回の期末テストです。自由な学校生活に近づけるかは、皆さんの頑張りにかかっているのです』

 

 ヌルフフフ、と記述されていない例の不気味な笑いをあぐりが言う。いや、確かに言いそうだけども、と思いながらも生徒達はそこに突っ込みは入れなかった。

 

「今回も誓約書はもらって来てるから、皆、ちゃんとサインしてね」

「「「「「はい!」」」」」

 

(全く何というか)

(……先生たちは、やる気にさせるのが上手い)

 

 席から立ち上がり、生徒達が教卓に向かう。目の前の前原に続き、渚もボールペンを持って立ち上がった。

 

 なお近くで見ると、あぐりの本日のインナーには「先手必勝」「油断大敵」の四字熟語を無理やりヒトガタにしたようなキャラクターが、相撲をとりあっている絵が描かれていた。

 

 

 

   ※

 

 

 

「E組の成績を落とすためなら何でもすると、そう思われてますかね? お二人とも」

 

 さてここは理事長室。校庭を見下ろしながら、支配者たる浅野學峯は3-Eから来訪した二人にそう問いかけた。

 イリーナは腕を組んだまま。そして「あぐり」は、肩をすくめながら確認した。

 

「流石に二回連続、というのも芸がないとは思いませんか?」

「確かにそうですね。ですが、まぁご安心を。

 成績を決めるのは我々ではなく生徒ですから。――育むべきは彼らの自主性。違いますか?」

「今回は必要ない、という認識でも?」

「ええ、結構です。

 では是非頑張ってください。貴女と『彼』には、それなりに期待していますから」

 

 礼をして退室するあぐりとイリーナ。「微妙な言い回しだったわね」と言う彼女に、あぐりはまた何とも言えない表情になった。

 

「でも、今回そういった不正っぽいことはしないって約束してくれましたし、後は生徒側の方かしらね」

「あれ、そうなの?」

「嘘は付かないんですよ、理事長って。そこだけは変わらないって奥様が言ってらっしゃいました」

「子供まで居るのね、あの男……」

「一応雇い主なんですから、そういう言い方は駄目ですよイリーナ先生。

 ……根は悪いヒトじゃないはずなんですけど、色々大変みたい」

 

 多くは語らないあぐりに、イリーナは不可思議そうな表情を浮かべた。

 

「そういえば、烏間とあの男はどこ行ったのよ。今朝からずっとメッセージ送ってるのに、返信来ないのよ」

「それ、いつものことじゃありませんか?」

「……」

「ま、まぁそれは置いておいて。二人とも、今日は防衛省で会議だって言ってました」

「ちゃんとメッセージ来るのね。相変わらずお熱い事で」

「あ、熱くないです」

「っていうか、会議って……、ああ、例の」

「ええ、例のです」

 

 具体的な名前こそ挙げないが、それが指し示しているのが「月を破壊した」らしい超生物に関係することであろうことは、イリーナもなんとなく予想が付いた。

 

「ま、烏間たちが手を出せないって言うのなら、私達で頑張ってやろうじゃないの一肌脱いで上げるわよ? 保健体育とか――」

「外国語はどこに行きましたか?」

「そりゃまぁ、肉体言語ってやつよ」

「慰撫は相手と時間帯とを見てやってくださいね」

 

 す、とハリセンを構えたあぐりに、イリーナもそれ以上の下ネタは自重した。

 

 

 

   ※

  

 

 

「一教科ごとに一発か。やっぱり教科を絞ってやった方が良いのか?」

「いや杉野、落第点を取るのも駄目らしい。ある程度全体的にとった上で、ってことみたいだよ」

「マジか渚」

 

 メモ帳片手にそういう渚に、杉野は頭を押さえた。

 渚、杉野、茅野の三人で、とりあえず席が近いからという具合にまとまって話していた。杉野のリアクションに茅野が「まぁ落ちたら落ちたで問題だしね」と茅野が一言。フォローでも何でもなく、杉野的にはどうしようもないという事実を突きつけられただけだったようだ。

 

「80点くらいとっても上位に入れないから、厳しいよなぁここって」

「でも、頑張りましょう!」

「あ、奥田さん」

 

 後ろの方からそう言ったのは奥田愛美である。今日も今日とて相変わらずの三つ編みだったが、しかし少し、いつもよりも眼鏡の奥の目にはやる気が灯っていた。

 さらにその斜め後ろから、カルマが半笑いで話しかけた。

 

「すごくやる気じゃん、奥田さん」

「はい! 理科だけなら大の得意ですから。こういう面でも皆で協力できるなら、頑張りたいです!」

「あー、そだね。うちにも結構、上位ランカーそこそこ居るから、一教科だけならトップも夢じゃないかも!」

 

 そんな話をしていると、不意にバイブレーション音が鳴る。杉野のスマホだ。

 表示されていた名前は。

 

「あれ、進藤? ……はい、もしもし。球技大会ぶりだな」

『ああ。あの時は世話になった。高校で借りを返すとは言ったが、お前がまともに進学できるか心配になってきてな』

「あはは、相変わらずの上から目線で」

『いや、そうじゃなくってな。今会議室の前に居るんだが……。

 ここに今、A組が全員集結してるんだ』

「A組? ……ちょっと待ってろ、ハンドフリー良いか?」

 

 進藤側からの許可をもらって、音声を渚たちにも聞こえるようにした杉野。それに何かを察したのか、いち早くメモ帳を構える渚だ。

 

『いつもならこんなことゼッタイないんだが、A組が全員で自主勉強会をしてるんだ』

「べ、勉強会?」

『言うまでもないが、うちの学校のクラス学力はEが最下層、BCDが横並びで、特進のAがトップに居る。

 それがこんな風にしてるのがまず変だと思うんだが……、音頭を取る中心メンバーが、五英傑、我が校率いる五人の天才たちだ』

 

(何だか聞き覚えがあるな)

 

 不意に渚の脳裏に過ぎったのは前原の時の一件だが、最後に振り下ろされたハリセンの痛みを思いだして、回想はしなかった。

 

 

――中間テスト総合六位! 何を差し置いても本物の語学力、瀬尾智也!

――中間テスト総合五位! 四位を奪った赤羽への雪辱を誓う暗記の鬼、小山夏彦!

――中間テスト総合三位! 人文系コンクール常連、榊原蓮!

――中間テスト総合二位! 他を圧倒する社会知識によく回る弁舌でお馴染み、荒木鉄平!

 

 

「……ん、ちょっと待て進藤、そのナレーションってお前が言ってるんだよな」

『へ? あ、ああ、なんかそういうノリだと思って……』

「こう言うと変だけど、お前結構面白いよな」

『そ、そうか……?』

 

 ちょっと照れた様子の進藤だが、気を取り直して続けた。

 

『そして何より、中間テスト総合一位にして、全国模試一位! 俺達の世代で頂点に君臨するのがこの男。

 ――支配者の遺伝子、浅野学秀!』

「あー、理事長の息子さんか」

 

 茅野の言葉に、クラス中に緊張が走った。

 

 

 

   ※

 

 

 

「浅野君、この問3なんだけど――」

「嗚呼、ちょっと分かりづらいよね。一度平方根の方から解きなおしてみようか。X=aだから、まず一番最初に割るのは――」

 

 進藤の見ている教室の中で、読み上げられた浅野学秀が目の前の女生徒に教えている。一目で分かる、かなり余裕がありそうだと。

 

「人望厚く成績トップ。プライドの高いA組を纏め上げるカリスマ性はまさに支配者!

 それに加えて補佐する四人も馬鹿に出来ない。全教科パーフェクトな浅野と、国語、理科、社会、英語のスペシャリストの四人だ。五人総合すりゃ、下手な教師よりも教え上手だ。ただでさえ優秀なこいつらが更に全力を出してるんだ。確実にお前らを本校舎に復帰させないつもりだぞ」

 

 進藤の心配をよそに、しかし杉野は頷いた。

 

『心配してくれてサンキューな進藤。でも、大丈夫だ。

 今の俺らの目標は、今のチームで勝つことなんだ』

「……」

『だからこそ、目標のためにはA組に負けないようになんなきゃいけない。見ててくれよ、頑張るからさ!』

「……ふっ、勝手にしておけ!」

 

 鼻を鳴らしながら、思わず口元に笑みを浮かべて通話を切る進藤。

 憎まれ口こそ外れる事はないが、その表情は以前よりはるかに、彼に対して親しみを抱いたそれだった。

 

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 放課後、夕暮れ時。

 

「各教科一位かぁ……キガオモイ」

「茅野、なんで某読み?」

「某読みにもなるでしょ、メランコリメランコリ」

 

 眼鏡が半分ずり落ちかけている茅野あかりである。

 それに苦笑いを浮かべる渚に、何処吹く風のカルマだ。

 

「渚、茅野!」

「あれ、磯貝君?」「ほえ?」

「明日の放課後、本校舎の図書室で勉強しないか? 

 期末狙いで、随分前から準備してあったんだ。ちょっとしたプラチナチケットだぜ」

 

 さらりと図書館利用予約、五人分のチケットを取り出す磯貝。

 基本的にこういった申請が後回しにされるE組であるからして、まさにこれはうって付けと言えた。

 

 それに興味なさそうに背を向けて足を進めるカルマだったが――。

 

 突如目の前で、口の中をぱちぱちさせながら現れたころせんせーに、思わず後ずさった。珍しく黒いスーツ姿で、どこか烏間が着ているようなそれを連想させる。

 

「ヌルフフフ。皆懸命で何よりです。先生にハンデを課しただけありましたかね。

 それはそうとカルマ君。そんな様子で大丈夫ですか?」

「んー? まぁ何とかなるでしょ。今までのそれからして」

「勝って兜の緒を締めろ、というような言葉もあります。慢心は時に――」

「あー、ならころせんせーも自分の懐は大事にねー」

「にゅ、にゅや!? い、いつの間に先生のわ○ぱち(コーラ味)を取ったんですか! あ、こら待ちなさい!」

 

 走り去るカルマを、割と真顔で追いかけるころせんせー。

 その後ろで、スクーターを置いてきた烏間がため息をついていた。

 

 

 

   ※

 

 

 

 

「……『理事長』。あなたの意向通り、A組全体の底上げに着手しました。これで満足ですか?」

「満足するのは私ではないよ、『浅野君』。結果が伴わなければ、というのが我が校の原則だ」

 

 理事長室にて親子の会話とは思えないほどのギスギスっぷりを発揮してるのは、当たり前のように浅野親子である。もっとも息子はどこか不機嫌そうな表情であり、父親は微笑を絶やさない。

 

「具体的にはそうだね、トップ10の名前をA組のみで埋め尽くし、各教科のトップを独占することだ」

「……条件が軽いのでは? 僕達なら、上位50位にA組全員の名前を躍らせることも――」

「勘違いしてはいけないよ。私は『出来ない』条件を付きつける事はない」

 

 無論努力や運も必要だがね、と言う理事長は「お茶でも飲むかい?」と微笑みながら急須をすすめる。結構ですと言う学秀だったが、何かその態度に違和感のようなものを感じていた。

 

「E組に僕らが敗れ去る、と?」

「去年の後期を省みるとね。私は、決して仮想敵(ライバル)を甘く見る事はない」

「ライバル、ですか?」

「ええ。そういう意味では、君はまだ競うということの本質を理解していない。浅野君」

 

 サッカーボールのリフティングを始める息子に、しかし父親は教師然とした物腰を崩さない。

 

「E組の成績がいくら上がったところで限界がある。そう思ってはいないかい?」

「違うのですか?」

「君達と彼らの違いは三つ。一つは環境。一つは向き不向き。そしてもう一つは――動機付けだ」

「動機付け?」

「強者が強者の座に居座り続けることと、弱者が強者を打ち果たすために立ち向かうこと。大変なのはどちらだと思う?」

「無論、後者でしょう」

「だから甘いのです」

 

「――両者の立場は、時に簡単に逆転するものです。であるならば、強者が強者として振舞い続けることの方が本質的には難しい」

 

 安寧は、精神の刃を鈍らせるのですからね。

 

 無言の学秀。だがしばらくヘディングを繰り返した後、ふっと微笑んだ。

 

「……理事長。その条件、僕の力でクリアさせてみましょう。

 そしたら生徒ではなく、息子として一つおねだりしたいのですが」

「ほぅ、父親に甘えたいとでも?

 今すぐ提示できるものといったら、駄菓子セットか椚ヶ丘学園名物『くぬどんまんじゅう』くら――」

「いえそんなものは求めません」

 

 本気なのか天然なのか、判別が難しいような声音でのたまう父親に、学秀は身体のバランスが崩れた。軽く転びかけながらもリフティングを続けるのは執念めいたものを感じるが、しかしやはり父親のイメージが、どこか違うような印象を受けている。

 

「僕はただ、知りたいだけです――」

 

 ――E組のことで、貴方は何か隠し事をしていませんか?

 

 それに答えが来る前に、学秀は理事長の顔面にボールをシュートした。

 もっとも、それさえ片手で軽々受け止めるあたりは流石親子といったところか。

 

「今年度に入ってから、E組への介入も度が過ぎる。

 それに加え、つい先月もヘリコプターが飛んできただとか、爆発があっただとか、時折裏山で狙撃音が聞こえるとか。それにあの吉良八とかいう担任。簡単に過去のプロフィールを探してみても、てんで見つかる事はない。聞けば今年、面接をして即採用だったそうじゃないですか。

 ……まさかとは思いますけど、教育以外にヤバいことに手を出していらっしゃるとか?」

「……知ってどうする? それをネタに私を脅すのか?」

「当たり前じゃないですか。僕は――そう教わってこの場に居ますから」

 

 それでは、と退室する息子の姿を見送り、理事長は茶を一口。

 そして、ため息とまではいかないまでも少し気落ちした様子だった。

 

「……やれやれ、これでは本当に面接の時に、彼から指摘された通りになる。

 増長や慢心こそあれど、決して転落しない土壌ではもはやないと言うのに」

 

 既に色々、そういったヒントは色々教えてあるというのに、と。どこか嘆かわしいという風に、彼はもう一度湯飲みに手を付けた。

 

 

 

 




ころせんせーが超生物じゃないだけで、浅野親子のやりとりがあーらシリアスにw

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