ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
村橋が残した情報を元に、4機のISによる
先に向かう一夏に、スプリングは意味深な言葉を残す。
「空…
その高さに至ることが出来れば、お前達が亡国を打ち倒す可能性はグッと上がる」
『結構潰したね。残りは構わずに行った方がいい』
「ああ」
スケルトンの大軍を歯牙にかける事なく一夏は地下基地内部に侵入する。
未だ潜んでいたスケルトンや、攻撃トラップを壊しながら地下1階、2階、3階。
戦いの余波で床に空いた穴を使って4階、5階と、合流を目指して順調に降りて行く。
『…レイヴン? 着いたのね。あのISは…』
地下6階に降り立った時、今まで通じなかった楯無との連絡がつき、一夏はスプリングを退け地下基地に侵攻したと報告する。
「それにしても広いですね…ここは地下何階まであるんですか?」
『先程掴んだ情報曰く、地下30階まであるわよ』
「……それは広い」
『レイヴンは今どこにいるの?』
「地下6階、近くにA606と書かれた部屋があります」
『…! 丁度よかったわ、ルート情報を送信するからその通りに進んでちょうだい」
ピピッ
ヘッドパーツの内部バイザーにマーカーがセットされ、行くべき道が表示される。
『ティアは別のBブロックを調査してるから、Aブロックはレイヴンに任せるわ。オーバー』
それを最後に通信は切れた。
『ふむ…どうやら地下15階から研究エリアで、更に25階から極秘研究を行う箇所みたいだね』
「地下5階の直通エレベーターで20階まで降りて、極秘研究エリアを調査…ってことかな」
『だろうね。そこまでをスルーしていいということは、アチラもそう判断できるだけの情報を掴めたんだろうさ』
「やっぱり一流だよな…会…レイディは」
『
さ、確認も終わったし……早く進むとしよう』
「……なんか、このミッションについてはやる気だよなお前」
妙にウキウキとしたテンションの財団に、一夏はハテナマークを浮かべる。
『まぁね。僕も科学者さ。他所様の技術には興味が湧く。
ここはそんな技術が詰まった宝箱なのさ。
そういう君だって、あるかないかと言えばあるんだろう?』
「当然あるぜ…と、言いたいんだが」
『……だが?』
「地下から、あの嫌な気配がする。
スケルトン達を動かしているのとはまた別の、ゴーレムに積まれた擬似コアとは何か違う、そう……
…………凄く、大きい気配が」
敵を蹴散らしながら地下6階から5階に上がり、地下20階までの直通エレベーターに向かう。
当然ながら停止していた為、ドアとゴンドラを破壊して一気に降りる。
そうして地下20階に着いた一夏は顔ををしかめた。
「更に気配が強くなってる…」
『……僕としては摩訶不思議としか言いようがないんだよね。
その人と機械の融合に対しての感知能力』
俺だってよくわからない。
そんな叫びをグッと堪え、慎重に歩き出す。
地下6階までとは違い、セシリア達はここに踏み込んではおらず、ここから先の障害は一夏1人で請け負うことになるからだ。
『……お出ましだ。気を引き締めていきなよ』
「そっちも、解析トチんなよ」
その言葉と共に銃を抜き、スケルトンの群れを先頭から駆逐する。
【右腕 残弾30%】
撃ち抜き、切り裂き、蹴り潰し、その数をゼロにする。
「いたぞ!」
22階に差し掛かった時、廊下の先から声が響く。
そこには5人の“男”の兵士が、一夏の行く手を阻まんと立っていた。
(勇気があることで…)
当然ながら、一夏という例外を除いてISに対して男性が抗う術は無い。
故に手早く殺して進もうと思った一夏の思考はなんらおかしくはない。
――――男達が、手元に銃型のアイテムを構えるまでは。
「「「レギオライズ!」」」
その言葉と共に光に包まれた男達は、姿を変える。
胸部・腹部・両肩・両腰・両腕・両脚・背部の装甲。
バックパックに装備された翼状のユニット。
身体にピッタリとフィットした漆黒のスーツ。
そう、それはまるで――――
「IS……!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねぇ見た? あのニュース!」
「見た見た。 一昨日品川の▲●ビルの屋上で起こった謎の怪光と爆発だよね」
「違うよ。 同じ日に雀荘にテロリストが乗り込んで、1人撃ち殺したって方だよ」
「……」
市立高校のとある1教室。
五反田弾はクラスの女子の話を耳に入れて、少し苦い顔をした。
「弾、一昨日は大変なことが起きたみたいだな。
確か、ISが使われたんじゃないかって噂も出てるし」
「数馬…。ああ、多分それは、噂じゃないぜ。
一夏から『この日は品川には絶対寄るな』と連絡されたしな」
「だよなー。……アイツ、なにに巻き込まれてんだろうな」
「ロクでもないのは、確かだろうな」
ハァーと大きく息を吐いて、弾は背を伸ばす。
「元気ないな。蘭ちゃんか?」
「……そうだよ。アイツも一夏から連絡を受けたからな。
想い人である一夏が近寄るなと言った品川で危険な事件が起きた。
危険な事件が起こるとわかるぐらい、一夏が危険な場所にいると実感して、落ち込んでんだよ」
兄妹揃ってそっくりだな。
数馬は弾の優しさにそう思う。
「……早く、一夏以外の男性操縦者でも見つからないものかな。
見つかればアイツの負担も軽くなるかもしれねぇのに」
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数馬のそんな願望はある種の形で叶い。
しかしそれは進行形で一夏に牙を剥いていた。
「構え…撃てーい!」
「チッ!」
本来ありえない筈の、男性のISと思わしきものに驚きながらも、一夏は斉射される弾丸を曲がり角に隠れる形で防ぐ。
【システム スキャンモード】
隠れる際に忘れずにリコンを射出しておき、変身した男達の解析を開始する。
NAME:Legiorooper
KE:200
CE:200
TE:200
R ARM UNIT:plasma gun(TE)
L HUNGER UNIT:blade(KE)
(……レギオルーパー?)
(『スキャン結果分析完了。
……へぇ、これは凄い』)
ヒュー!と口笛を吹く財団。
やはり今日はテンションが高い。
(なんだよ)
(『いやいやいや。君も気づいてるんだろう?
あの銃には擬似コアが、それも培養された人の脳の内IS展開に必要な分だけ摘出して搭載されている。
その所為か、無人機の遠隔操作機能とPICはオミットされてしまっているが、万人が着込めるパワードスーツとしては破格の性能だね』)
(……ごめん。デカイ方の気配に気を取られてて気づかなかった)
(『 ば か だ ね そんなだからアラクネに殺されかけるのさ。
……まぁ、肝心要の戦闘力は雑魚なんだ。とっとと片付けなよ』)
言われて当然の煽りを一身に受けて、一夏はレギオルーパー達を倒す方法を考える。
スプリング戦からの連戦で、右手のヒートマシンガンとライフルの残弾は少なく、手早く仕留めなければならない。
(財団、コイツら以外の敵はいるか?)
(『確認できる限りだと、いないね』)
(ならいい…よし)
今は敵がレギオルーパーだけだが、チンタラやっていては他の奴らも来るだろう。
そう判断して、ヒートマシンガンの一部を分解して内部を露出させる。
仕掛けは重々とばかりにシールドを前面に押し出して、角からレギオルーパー達の前に姿を表す。
放たれる光弾をシールドで防ぎながら、相手の位置を見極める。
【パージします】
そして右手のヒートマシンガンを放り投げ――――
ズ…ドォォォォン!!!
――――
5人中4人は爆発を受けて変身解除。
絶対防御なんて便利なものはない為そのまま死亡した。
そして残った1人は…
ガィィン!
ブーストチャージを喰らい、悲鳴をあげる事なくその命を終えた。
「……ホントに雑魚だったな。まさかコレで死ぬとは」
『絶対防御は地味に便利だと思い知るね。
あ、ブーストチャージした奴の変身アイテムが無事だから回収お願い』
「はいはい……」
【システム 通常モードに移行します】
何故、敵陣たるここで一夏がISを解除したのかというと、
バカみたいな容量を誇る『ガレージ』から部品や武装を取っ替え引っ替えして、機体を作り上げるという
しかし再度述べるが戦闘中には『ガレージ』から引き出したり取り出したりすることは出来ず、何か仕舞う際にはこうやって変身を解除する必要があるのだ。
なので手早く量子化を済ませてレギオルーパーの変身アイテム…『レギオトリガー』を『ガレージ』に放り込む。
「変身」
【メインシステム 戦闘モードを起動します】
積み込みが完了すると再び同じアセンに変身する。
粉々に弾けたヒートマシンガンも右手に戻り、ボロボロになっていた左手のシールドも綺麗なものだった。
別に何も、
『ガレージ』で組み立てて出すという事は、壊れたパーツは直ぐに同じのに交換できるという事。
言うなれば変身する度にコアだけが一緒な別の機体に乗っているようなものだ。
コアに蓄えられているシールドエネルギーまではそうといかないが、武器の残弾や盾の耐久度を回復可能という利点を、
『…各部問題無し。いつでもいけるよ』
「ああ……それにしても」
――――是非ともお前さんには、地下基地にあるオレの作品を味わってほしい。
「……心の底から認めるよ。コレは、いい兵器だな」
『AC世界でISは需要無いだろうけど、このレギオルーパーは需要高いだろうね』
一夏は相対したレギオルーパーの性能に戦慄する。
たしかにその性能はACやISのそれに大きく劣る。
しかしACのようにヘリやトラックで持ち運ばなければいけない訳でも、ISのように操縦者の性別も数も制限される訳では無いというのはかなり大きいのだ。
歩兵がコレを携行していけば、途端に超人の兵士となれるという現実は、これから重くのしかかる事が想定された。
だが、なによりも心配なのは――――
「俺は当然として、セシリアや会長も…後多分風子さんもそこは割り切れる。
……箒に簪お嬢様、そして鈴はこいつらを倒せるかな」
命無き無人機ではない、絶対防御で守られてもいない、そんな敵に親しい彼女達が武器を向ける事が出来るかどうかであった。
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『敵機確認。いや多いねホント』
それはさて置いて、探索を続行する。
極秘エリアには入らせないとばかりにスケルトンの量も増えるが、その尽くが潰される。
弾切れを恐れてか、やや蹴りとレーザーブレード偏重となってはいたが、それでも雑魚は一夏の敵ではなかった。
「こっから下に行けるみたいだな」
警邏の機械をガラクタに変えて、ようやくたどり着いた地下25階の入り口。
簡単には壊せない分厚い鉄の扉で閉ざされており、横についたコンソールが限られた者しか入れないという事を語っていた。
『3秒くれるかい? ……はい、ちょちょいのちょいと』
財団は言うが早いか、ドアロックシステムにハッキングを仕掛けてこじ開ける。
伊達や酔狂で三大勢力全てを敵に回した男では無いとよくわかる。
ドアが開くと同時に一夏は鎧の下の肌が、更に強まったあの嫌な感覚を感じる。
「さて…一体何が出るのやら」
ゴクリと唾を飲み込み、一歩踏み出した。
[極秘エリアを調査せよ]
誤字脱字、わからないところは遠慮なくどうぞ。
次回『黒い雨』は6月16日です。