ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
最新話です。どうぞ。
(さて…『
品川駅高輪口に戻ったラウラは考え込む。
今日、ここに来た理由は一夏達に頼まれたという訳で、彼女にここいら一帯の土地勘は無い。
道行く人に尋ねるにしても『村橋』という名前だけでは全く絞り込めないだろう。
(亡国構成員を探してみるか…)
そもそも『村橋』を探そうと思い至った理由は、謎多き
現在ここら周辺で亡国構成員が活動してる事は確かなので、『村橋』ではなく直接亡国に向かうのも手かもしれない。
そう思い、ラウラはそこら辺を地理探索と兼ねて歩くことにした。
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「う…うウ……」
そうしてラウラが探索を始めて5分。
耳にした呻き声に辺りを見回すと、足から血を流したホームレスが倒れていた。
周囲の人々は厄介ごとには関わりたく無いとばかりに、スルーして去って行く。
ラウラもまた、それに倣って無視しようとしたが――――
「……」
――――彼女の足は、微動だにしなかった。
『ここ最近の成績は振るわないようだが、なに心配するな。一カ月で部隊内最強の地位へと戻れるだろう。なにせ、私が教えるのだからな』
胸中に浮かぶは、絶望から救われた今は亡き『ラウラ・ボーデヴィッヒ』としての記憶。
全てから見捨てられいた中に投げれらた蜘蛛の糸の思い出は、倒れているホームレスから目を背けることを非難する。
「…チッ」
漸く動いたラウラの目的地は、亡国ではなく先程通り過ぎたドラッグストアであった。
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「ほら、後は安静していれば治る筈だ」
「アイテテテ……ありがとうナ、お嬢チャン」
レジ袋に包帯や傷薬などを詰めてホームレスの元へ戻ったラウラは、元軍人の知識を活かして治療を施した。
「傷を癒すにも栄養は必須だ。ほら、これも」
「……女神様ダ」
ラウラが袋からスパウトパウチのヨーグルトを取り出して渡すと、ホームレスは目を潤ませてそれを受け取る。
「……そんな大層な者じゃ無い」
「嫌々、これで女神様じゃなけりゃ天使様しかあるめぇヨ。ついに世界から見捨てられたと思ったが、神様ってのはいるもんだネェ」
『見捨てられた』
その言葉に、ラウラは赤らめた顔を戻す。
「……まぁなんだ。私も嘗て世界の全てから見捨てられた感覚に陥ってな。その時にある人に救われたから、貴様みたいな奴がほっとけないだけだ」
「そうカァ…天使様には天使長がおったんだナァ…」
ホームレスの例えに、白いケープと白い羽の千冬を想像してしまい、ラウラは「ンッフ」と笑う。
それを慌てて咳き込みで誤魔化し、そういえばと質問をする。
「どうして、そんな怪我したんだ?」
「あー天使様、聞いておくれヨ。この街に急に現れた怪しい集団が、俺を突き飛ばしやがってサ……それであの切れたパイプでザックリしちまったんダ」
そういって、ホームレスが指差す先には彼のものであろう血が付着した、折れて尖った雨水排水パイプがあった。
しかしながら、ラウラの関心はそこにはない。ホームレスが発した言葉から気になるワードを反復する。
「……怪しい集団?」
「ああ…黒いジャケットの集団でサ。『
「……村橋…だと…!」
『村橋』
ラウラが追おうとしていた情報が、思わぬところから出てきた。
「ん、天使様は知ってるのかイ?アイツらが言っていた『村橋和則』ってのはサ」
「……いや。私も、ソイツの居場所を追っているんだ」
「なんデェ。天使様に追いかけられるなんてフテェ野郎ダ」
カーッと吐き捨てるホームレスに、ラウラは更に問う。
「……貴様はなにか、『村橋和則』について知らないのか?」
「知らねぇナァ……いや、もしかしたら“
「……
突如出てきた、新しい人物にラウラは首を傾げる。
「ああ、
「なるほど、確かにそんな人なら知ってそうだな。……で、その人はどこに行けば会えるんだ?」
「うーん…
腕を組み、ウンウンと悩んでいたホームレスはパンと無事な両の手で己が頰を叩き、ラウラに向き直る。
「よし、天使様!」
「なんだ」
「手間を増やしちまうが、駅前からホームレスを2人ほど呼んできてくれねぇカ?『“雑誌集めのテツ”が怪我してる』と言えば来てくれる筈ダ」
「え?」
どういう事かをラウラが問うと、ホームレス…テツは
ラウラが自ら交渉するよりも、名と顔の知れたテツが直接頼んだ方が早いのだそうだ。
「わかった。少し待っていろ」
それを承諾したラウラは、テツを置いて駅に向かった。
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「連れてきたぞ」
それから少し経って、ラウラは2人のホームレスを連れてテツの元に戻ってきた。
「おおテツ、平気か?」
「無事サァ。なにせ天使様が助けてくれたんだからナ」
「…天使様?」
助けに来たホームレスは、怪訝な顔でラウラを見やる。
「……私はラウラ。天使の様な高尚な者じゃない」
ラウラは気恥ずかしそうに名乗りながら、テツに目配せして促す。
「来てくれたとこ悪りぃんだが、オレは1人助けてくれりゃあ歩けるんダ。……マツ、お前天使様を
「
「ああ、天使様は人を探してるらしくてナ。その為に
その言葉を聞いたマツと呼ばれたホームレスは一回頷くと、ラウラの方を向く。
「銀の嬢ちゃん、ついてきな。案内したる」
「ああ、頼むぞ」
もう1人のホームレスがテツを支えて移動すると同時に、マツとラウラも移動を開始した。
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「……織斑一夏に、更識楯無?」
視点はグルゼオンと、彼女と対峙する一夏と楯無がいるビルの屋上に戻る。
「覚えていてくれて嬉しいぜ。……社員研修の監督か?」
街中で友達と会ったような調子で話しながら、一夏は手すりに手をかけ街下を見下ろす。
「…奇特な文句ね。なにを見てそう言うのかしら?」
「いやほら…普段のエリートさんらとは思えない粗製っぷりだからさ」
彼の視線の先には慌ただしく動き回る亡国構成員と思われる集団があった。
彼らは知る由もないが、テツを突き飛ばした奴もシャルロットの部下に気づかれた奴もその集団にいたりする。
「ハァー…功を焦るばかりに仕事が杜撰になってるのよね。嫌になるわ」
「ま、あの『村橋和則』を捜しているのなら、それを見つける為に張り切るわよねぇ。……
ヤレヤレと頭に手をつき、呆れるグルゼオン。そんな彼女に敵ながら楯無は同情を見せる。
「……村橋が
「質問に質問で返すけど…そのお願い、逆の立場で私が言ったらどう答えるの?」
「嫌よ」
「でしょう?」
亡国機業に更識家。これらの組織がその行方を捜す『村橋和則』とはかなりの人物のようだ。
「それで、何しに来たのかしら。まさか世間話という訳ではないでしょう?」
グルゼオンは茶番はもういいとばかりに、和かな雰囲気をかき消す。
それに対して一夏もまた張り詰めた空気を出して、ゆっくりと楯無と並んでグルゼオンと対峙する。
「ハッ……決まってんだろ、お前を捕まえに来たんだぜ。……その為に、俺が学園から出る許可が降りたんだからな」
【メインシステム 戦闘モードを起動します】
HEAD:HF-227
CORE:CA-215
ARMS:AB-107D
LEGS:Le2M-D-F24(リンネ)
R ARM UNIT:SHIOBUNE mdl.1
L ARM UNIT:AM/SHA-302
SHOULDER UNIT:YAMASUGE mdl.2
R HUNGER UNIT:KAGIROI mdl.1
そう言って一夏は姿を
全身を兵器にした2人を見て、グルゼオンは右腰のホルスターからハンドパイルバンカーを抜く。
「……」カチャリ
「……」ジャコッ
一夏とグルゼオンが互いの得物を構え、先程までとは打って変わり沈黙が支配する。
「そこまでよ、“T”」
殺気と殺気がぶつかり合い、音1つ無き闘争の凱歌が唄い出されようとしたその時、無粋な来訪者が現れた。
「……スコール」
隣のビルから飛び移り、現れたのは
「正面から来た相手には正面から当たる。……律儀なのは貴女の美点だけども、時としてそれは欠点となるわよ」
突如現れたスコールは、スタスタとグルゼオンに近寄り……
「だから…この子達にはこれでいいのよ」
……彼女の愛機。金のボディカラーと巨大な尾を持つIS『ゴールデン・ドーン』を展開し、その掌をあらぬ方向に向けた。
「スコール…貴女……!」
敵がいない方向に差し向けられた手が持つ意味は、この場の全員が即座に看取する。
それは人質。品川にいる無辜の人々への謂れなき死へのカウントダウン。
ゴールデン・ドーンから放たれる破壊を街中に撃つという脅迫。
「ねぇ“T”。あなたがミッションの埒外での、不要な犠牲や確執は望まないのは知っているけれどもね」
――――私は、別にどうでもいいの
人の命をなんとも思っていない発言と共に、スコールは視線を相対する一夏と楯無に向ける。
向けられた2人のうち、一夏に対しては貼り付けられた笑みとは裏腹の濃厚な敵意を晒す。
「織斑一夏、 ISを解除して渡しなさい。…言うことを聞けば、嬲る時に手心を加えてあげる」
その言葉に一夏は眉を曇らせる。
「断ると言えば?」
「そうね、あそこの仲の良さそうな姉弟でも狙い撃ちしようかしら」
スコールはわざわざ姉弟という、一夏に合わせたターゲッティングをする。
しかし、当の本人はその言葉にクククと笑った。
「……その前に、テメェが狙い撃ちされるみたいだがな」
ドゴォォォォン!
次の瞬間、スコールがいた場所は爆炎と化した。
「……っ!アレは……」
ゴールデン・ドーンの熱性バリア『プロミネンス・コート』の中から、スコールのハイパーセンサーが捉えたのは1機のIS『ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ』
それが指し示す人物とは1人しかあり得ない。
「シャルロット・デュノア……!」
ビルを見下ろす形で空に浮かぶオレンジの鎧を纏ったシャルロットは、スコールの驚きと怒りの混じった声に口角を三日月にあげる。
「僕を見てていいのかい?」
シャルロットの言葉にスコールが反応する間も無く、楯無の蛇腹剣『ラスティー・ネイル』が襲いかかる。
それを3本目の腕となる尻尾で防いでスコールが振り返ると、蛇腹剣ではなく大型ランス『
ブォン!
ジュアッ!
スコールは両肩から炎の鞭『プロミネンス』を繰り出し、楯無のランスとぶつける。
ゴールデン・ドーンの高熱と
「
「あら、言うわけないじゃない」
「無理矢理にでも聞き出してみせるわ」
「それができるかしら? 更識楯無さん」
「やると言ったわ、『
楯無とスコールの戦いが始まると同時に、グルゼオンは横に跳ぶ。
一瞬遅れて
「行きなさい!」
体勢を素早く直し
召喚されたゴーレムは更に自身の
「3対2とはいかないみたいだね」
それに対してシャルロットもアサルトライフル『ヴェント』と連装ショットガン『レイン・オブ・サタディ』を構えた。
「行くわよ…織斑一夏!」
グルゼオンのバーニアが火を噴き、急加速で一夏へと駆け寄る。
「来いよ…グルゼオン!」
一夏の右手から放たれたレーザーはスライディングの形で躱して、下から突き上げるようにパイルの引き金を引く。
一夏は放たれる質量と速さの暴力を背を反らして避け、レーザーライフルを突きつける。
バジュゥ!
しかし、銃口から飛び出た一筋の光は屋上の床を焼き抉るに終わる。
一夏が
「読めるのよ、そのぐらい!」
ガキィン!
だが近接はグルゼオンが上手―――ハンドパイルの銃身でレーザーライフルを叩き、一夏の手から上に弾き飛ばす。
ガァン!
それに動じる事なく一夏はシールドで殴りつける。その勢いで5メートル程吹っ飛んだグルゼオンは、ジャンプして上から一夏へ襲いかかる。
【パージします】
一夏は殴り抜けた左手で、グルゼオン目掛けてバックハンドでシールドを投げる。
「……なんですって!?」
空中でシールドを蹴り飛ばしたグルゼオンの目に、シールドが目隠しとなっていた光景が飛び込む。
ついさっき弾き飛ばした筈のレーザーライフルをいつの間にキャッチしていたのか、右手でグルゼオンを狙う一夏がいた。
バジュゥ!
今度こそ光線はグルゼオンに当たり、無防備を晒していた彼女は火花をあげて大きく吹っ飛んだ。
グルゼオンが立ち上がった時には一夏は投げ飛ばしたシールドも回収し、右手にレーザーライフルと左手にシールドの開戦当初の武装に戻っていた。
楯無、一夏、シャルロット
スコール、グルゼオン、ゴーレム
3対3のISの殺し合いが、東京の一画で始まった。
Q こんなにホームレスいんの?
A 数はともかくホームレスはいたと思う
この一夏君、ゲームじゃできない事をやりまくってるなぁ>>シールドチャージ、武装を投げつける、パージした武装の再利用
というか信じられるか…これこの小説最初のシャルと会長の戦闘シーンなんだぜ…?
会長6話目から登場して退場してないのに70話目で初戦闘シーンって…
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