ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
このタイトルの元ネタ大好きでした。
というか、なんで千冬がラウラを娘として引き取る二次少ないん?私見かけた事ないよ?叔父一夏と姪ラウラなんだよ?
それでは最新話です。どうぞ。
「重たいなぁ……」
品川駅高輪口近く。少女のボヤく声が溢れて消える。
少女の名は、『織斑ラウラ』。『ラウラ・ボーデヴィッヒ』ではない。
そして、そんな彼女が何故大量の荷物と共に途方に暮れてるのかというと2日前に遡る。
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「織斑!開発タイムだ、行くぞ!」
「飯ぐらいゆっくり食わせろよ畜生!」
それは、一夏と簪の機体開発が行われていた時期。
食堂では簪によってドナドナされる一夏の姿があった。
「……」
ラウラは美少女に首根っこを掴まれて連れてかれる、人によってはご褒美な処遇な叔父を見ながら黙々と箸を進めていた。
「隣いーいー?」
そう言うが早いか、ラウラと同じ一組のクラスメイト『谷本癒子』は煮付け定食を載せたお盆を置く。
「……構わん」
「ありがとー。……それにしても、織斑くんったら浮気者だねー。アレじゃオルコットさんに愛想つかされちゃうよ」
「叔……織斑一夏とセシリアは付き合ってはないぞ」
ラウラは思わず“叔父”と言いそうになったのを堪え、「一切れ!チキン南蛮を後一切れ!それで俺は戦える」と抵抗する一夏とそれを冷めた目で見るセシリアの仲への誤解を訂正する。
「ええ〜それはないよぉ〜。だってよく2人でいるじゃん。……それに」
「…それに?」
「最初は男性操縦者なんて認められなかったお嬢様と、それをハイハイと受け流しながらもほっとけない少年のロマンスって…燃えない?」
「……」
目をキラキラと輝かせる谷本に、ラウラは不思議そうな、或いは可哀想なものを見るような目を送った。
(あの2人、そんなドラマチックな友情の築き方してたか?)
「…ごちそうさま。ま、どう思うのも勝手だが本人達に言うなよ?……可哀想な人を見る目で見られるからな」
そう言って、お盆と食器を回収ボックスに入れようとするラウラは……途中で哀れにも連れ出された叔父の残飯を見つけてそれも捨てた。
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「たはー疲れたぜー」
そして放課後。
生徒会も開発も終わり疲れ果てた一夏が寮に戻る。
「……叔父か」
「お、ラウラ…そうだ、お前明後日用事ある?」
「いや、無いが…」
「そりゃよかった、ほらお前…前に言ってたろ、『外で欲しいものがあったら私に言ってくれ』って」
「ああ、そういえば言ったな……で、何を買えばいいんだ?」
ラウラの了承に、一夏はいそいそとメモ帳を取り出して走り書きする。
一夏はビリっとページを破き、財布から数枚の紙幣を出してラウラに渡した。
「秋葉原のこの店でメモのパーツを買って来て欲しいんだよ。コレだけあれば交通費含めて足りると思うからよろしく」
「了解…「ちょっと待って」…ん?」
一夏から必要なものを受け取ったラウラは、一夏の背後から聞こえる小声に怪訝そうな顔を見せる。
「お前は…更識簪?」
声の主は簪。ラウラとは初対面故にかなり緊張している。
『最強はディケイドよ!』
『いいや、RXだ!』
訂正。夏休みテンションで馬鹿みたいな事で言い争っていた。
「織斑さん……明後日東京に出かけるんだよね……?」
「ああ…それがどうかしたか?」
その言葉に、簪はバッグから一枚のチケットを引っ張り差し出す。
「お願い…!本音といっしょにこのショーに行ってきて!」
「……え?」
ぽかんとした顔をラウラは晒す。
「あのね…このチケット、一か月前に取ったものなの」
「一か月前…そうか、確かISテロの前か」
2週間前のテロ事件を受けて一夏や簪と言った、専用機組は認められた事態以外での外出を禁じられた。
それで一か月前に取ったチケットが使えなくなってしまった為、代わりにラウラに行って欲しいと簪は言っているのだ。
「それでね…行ってくれるならショーの動画撮影と、サインを貰って来て欲しいの…!もちろん、手間賃や交通費諸々は全部私が負担するから…!」
「いや……大丈夫なのか、撮影って?」
「そこは大丈夫。個人使用の範囲だから…!」
簪の目当てのヒーローショーで行われる内容が配信されたり円盤化される事は無いようで、そこをなんとかする為に動画撮影を頼んでいるのだ。
ちなみに、SNSに流さなければ決められた範囲での撮影はオッケーだったりする。守らないマナーの悪い特撮ファンもいるのだが。
「…なぁ」
「ダメ」
本音に頼め?ダメだ、のほほん過ぎて忘れる。
そんな本音への熱い負の信頼が、簪にあった。
「…わかった。行こう」
「ありがとう……!このお礼は必ずするね…」
まぁ、ショーを見た後に秋葉で買えばいいか。
そう思ってラウラはチケットを受け取る。
スタッ
するとそこへ、階段の2階から誰かが飛び降りてくる。
「話は聞かせてもらいましたわ!」
ヒーロー着地で現れたのはハイパーウルトラパーフェクト美少女英国代表候補生――――セシリアであった。
「……何の用だ、部屋に帰れ」
「つれないですわねぇ。私も貴女に頼み事をしたいだけですのに」
「貴様もか!?なんなんだ、貴様も私に頼むのか!?友達いないのか!?」
「……貴女と如月さんしか頼める人がいないんですのよ…断られましたし」
親しいクラスメートが特にいない、そんな
「はぁ……仕方ない。やってやる」
そうしてやれやれとラウラが承っていると更に2人……鈴と箒がやってくる。
「そう言う事なら私もラウラに頼みたい事があるんだが…」
「頼んでいい、ラウラ?」
「ええい!まとめてやってやる!」
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「重たいなぁ……」
そして、冒頭に戻る。
一夏、セシリア、簪、鈴、箒…5人の頼まれごとを順繰りにこなしたラウラは、手に持った荷物の量と重さに辟易する。
(どうしたものか…)
ラウラの持つ筋力は高い。元軍人、元代表候補として鍛えられたその力は今なお健在だ。
しかし彼女の体格は小柄で、その荷物を全て抱えて帰るには物理的に手が足りないのだ。
「やぁ。お困りのようだね…ラウラ」
「貴様は…」
そんなラウラに、スーツを着た金髪の女が近寄る。
彼女の名は……
「……シャルロット・デュノア…!」
驚いた顔のラウラに、シャルロットはクックツと笑う。
誰もが見惚れる美貌から出でるその微笑みは、ラウラにとっては視線を厳しくさせるものでしかなかった。
「警戒心MAX…って感じだね。僕なにかしたかなぁ?」
「…いや。以前出会った、性別偽称者に貴様がよく似ててつい、な」
「奇遇だねぇ、僕も以前、君によく似た可愛らしいドイツ軍人に出会ってね。……実を言うと僕が君にお近づきになりたいのはその娘の顔が忘れられないと言うのもあるんだよ」
「……そうか、是非そのドイツ軍人と会って見たいものだな」
他愛のない、それでいてお互いの過去を刺すような会話が繰り広げられる。
ラウラの口は固いへの字に、シャルロットの口は三日月を模す。
「……で、どうしてデュノアの若き社長が、こんな所にいるんだ?」
「懐かしいね、その言葉。2週間前だっけ?」
「そうだ、2週間前だ。……その時に起きたテロ事件で、貴様のような専用機持ちはあまり出歩かない方がいいと思うのだがな」
問答の間でもラウラの身体に負担をかけ続ける荷物の主達のように、シャルロット・デュノアもまた専用機持ちとしてフランスで襲われた。
本来ならば、彼女も余程のことがない限りあまり動けない筈だが…。
「…ま、そこは社長として動かなきゃいけないからね。厚遇させて貰ってるよ」
「これでいいかい?」と言いたげな眼差しで、シャルロットは返す。
そう言われてしまえば、ラウラに切れる
「……さて、こんなピリピリした会話はここまでにして…君達!」
言葉に詰まったラウラをチラリと見て、シャルロットはパンパンと手を鳴らす。
合図と共に数人の黒服が現れ、シャルロットを守るように囲む。
「彼女の荷物をIS学園に運んであげて。傷1つなく、丁寧にね」
「……どういうつもりだ」
柔和な笑みと共に突如差し伸べられた助けの手に、鋭い視線を投げる。
「袖振り合うのも他生の縁さ、言ったでしょ『僕は君の敵じゃない』って」
「……」
「そんな怖い顔しないでよ。……そうだ、じゃあ僕の仕事を手伝ってくれない?」
「なに…?」
更に続く、意図不明な言葉にラウラは懐疑の表情を強める。
「敵かどうかを君自身の目で確かめるって事だよ。働いた分の給料は払うし、ちょっとしたバイト程度に思ってさ」
「……」
『キャノンボール・ファスト』の一件でシャルロット・デュノアは亡国機業に通じる何かを持っているとラウラは確信していた。
だからこそ、この依頼を軽率に受ける事は出来ない。
もしも罠で、千冬や一夏への人質にされたりなどすれば目も当てられない。
(どうする…?)
正直、人質になったとして
だけど、
「……話を、聞かせてもらおうか」
「やったぁ♪じゃあ、荷物よろしくね!」
熟孝した末のラウラの返事に、シャルロット年頃の女子の様な(実際年頃だが)可愛い笑顔でるんとし、荷物をお付きの人に持たせる。
「話は歩きながらしよっか」
「……言っとくが、内容によっては断るぞ」
悪役系シャル増えろ(願望)
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