ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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どうしてこの作品の幼馴染以外の原作ヒロイン(セシリア ラウラ シャル 簪)は総じておかしなことになっているのだろうか。高二病は簪を書いてて思った。

というか、エイプリルフール用の小話用意できなくてごめんね!

それでは最新話です。どうぞ


08ー05 作る、形成するという意味

(ねえ財団。――――って可能かな?)

 

(『ふむ、理論上可能だとは思うよ。具体的には―――』)

 

テロ事件から2週間後の放課後。

今なお朝のニュースのトップを飾っており、その渦中の人物である一夏は生徒会室で業務を行いながら並行して財団と心の中で会話する。

 

(『―――と、こんな感じだね。……でも実際にはやらないでほしいね。僕とコアに負担がかかる』)

 

(そこをなんとか)

 

(『やだね。やると決めた以上は君のオペレーターはこなすけど、暇つぶしレベルだという事を忘れないでくれ』)

 

心で雑談、体は業務。

小器用な曲芸をしてるのも、一応戦闘時での連携用訓練の一つなので問題はない。

 

(はいはい…そういえば。ISコアで思ったけど、結局擬似ISコアとモノホンの違いってなんなんだ?)

 

(『そうだね。まず共通するのはISを動かすエネルギー源となる事、拡張領域(バズスロット)が存在する事、コアの無い無人機を遠隔操作できるという事)

 

あの時、無人機から無人機が出て来たのも拡張領域にしまっていたんだろうねと補足し、財団は続ける。

 

(『で、質問の答えなんだけど二つあってね。一つ目は絶対防御が無いということ、もう一つは《コア人格が無い》ということさ』)

 

(……ラファールとか打鉄に乗った事はあるけどさ。正直、ここまでペチャクチャ喋るコア人格ってお前ぐらいじゃない?)

 

(『ハハハハ…確かに、僕程饒舌なコア人格も無いだろうね。ま、()()()()君のISも寡黙だったんだよ。僕がその人格を消去して乗っ取っただけで』)

 

(……そうかい。あ、名前間違えた)

 

既に亡き者となった元のコア人格を一応程度を死を惜しみながら、一夏は書類に訂正印を押す。

大きく深く伸びをし、ふと周りを見てみると楯無と虚が黙々と書類を片付けてるのが見える。

 

(……コア人格が無い、ね)

 

(『それがどうかしたのかい?』)

 

(なぁ財団。アウトモールで無人機にお前のUNACと同じものを感じたって言ったよな?)

 

有人機程の人間味は感じず、かといって純機械程の無機質さも感じない、人と機械の中途半端な所にあるような…例えとしては『不気味の谷』のような感覚。

その感覚は財団製のUNACにだけ感じ、一夏が自分で作ったりあるいは他のアーキテクトが作ったものには感じなかったものだ。

そして、嫌な感覚を感じたUNACだけが暴走し、感じなかったものは暴走せずに従来の想定通りの挙動を行った。

財団製のUNACが暴走したのは、マギーの情報曰く財団が仕込んだ時限式のウィルスという事だったようで、あの嫌な感覚はそのウィルスを捉えたものだったのだとその時の一夏は納得したが、まさかあの無人機達にそのウィルスが入っている訳でもあるまい。

 

(なぁ、あのUNACに何が入ってたんだ…財団?)

 

(『……』)

 

故に、問う。

 

ウィルスが答えでは無いのなら、何が答えなのかを。

 

(『…僕もそれについては気になっててね。無人機のデータを分析した結果と僕のUNACを照らし合わせての仮説だが…構わないかい?』)

 

(いいぜ、お前の頭脳は信頼できる)

 

(『その前に、まず臨海学校で僕がした『ファンタズマ・ビーイング』の説明を思い出してくれ』)

 

(『ファンタズマ・ビーイング』って……)

 

『2つのプロジェクトを踏まえ、両者の手法を組み合わせて立案された手法さ。

クローニングによって生み出されたもののうち、理想に近い試験体の意識・思考を完全に電子化するという計画だよ。

電子化により、外部からの観察と修正を容易にすると共に、安定した複製の生産の実現を理論の完成に置いた、 いわば自我を完全にプログラムへと置き換えることを目指した計画さ。

ただ、その実現は困難を極めたみたいでねぇ。かろうじて実現にこぎつけて、汚染の原因となった戦争の末期には、実戦への投入が行われたと言われてるけど、ほぼロボット同然な状態にまで個性を消滅させてしまうと著しい戦闘性能の低下がみられるなどの問題も生じていたよ』

 

(これか?)

 

(『うん、それだよ。というかもう勘付かない?……()()()()()()()()()()()()()()感覚なんだよね?』)

 

そのヒントに、一夏は全てが繋がった感覚を得る。

作業を再開した手が、驚きによって止まる。

 

『ほぼロボット同然な状態にまで個性を消滅させてしまうと著しい戦闘性能の低下がみられるなどの問題も生じていたよ』

 

(まさか…!お前のUNACの中のフォーミュラ・ブレインって…!)

 

(『正解。『ファンタズマ・ビーイング』の失敗した個性なき被験体…それが僕のUNACの正体さ』)

 

(……それじゃあ、なんだ?あの無人機…UNACならぬUNIS(ユーニッス)とも呼ぶべき奴らにも元人間の機械が積んであるのか?)

 

(そのまんま、という訳じゃ無いと思うよ。あるとするなら、そう……)

 

――――戦闘用に教育培養したクローンの脳を載せている、とか。

 

「……おいおい」

 

世紀末極まってんなァ…。

一夏のそんな感想を込めた呟きが思わず溢れる。

ペンと紙の音しかない部屋に漏れ出たそれに楯無は不思議そうな顔をする。

 

「どうしたの、織斑くん」

 

「あ、いや…ごめんなさい。ちょっと外の空気を吸って来ます」

 

一夏は楯無の言葉に気恥ずかしそうに頭を掻きながら、いそいそとドアノブに手をかける。

 

バァン!

 

そして次の瞬間弾けるように開いたドアに吹っ飛ばされた。

 

「ぶべらっ!?」

 

「織斑、いる?……し、死んでる…!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「織斑、ほんとごめんね。鼻血止まった?」

 

「止まったなぁ…」

 

一夏はそう言って、鼻からティッシュを抜いてゴミ箱に放る。

 

一夏が簪のドアオープンに顔面強打して十分後、2人は整備室にジュースを片手に向かっていた。

勿論、謝罪の意を込めた奢りである。

 

「しかし、なんでまた機体開発に俺を呼んだの?……正直役立たんよ?」

 

「そんな事ない。織斑が持つ技術はきっと役立つ」

 

「でも俺が提供出来るのは以前言った通り……」

 

「……『見合った素質無しには使用できない』…わかってるよ、そんな事。でもね、それで諦める気は無いんだよ…」

 

消極的な一夏の言葉を、先取りする形で簪は語気を強める。

 

ダウングレードすれば使えるかもしれないのに。

局所的な技術応用ならば可能かもしれないのに。

使えずとも着想を得られるかもしれないのに。

 

それをせずに彼女は諦めたくはないのだ。

 

「机上の空論を理論上可能にして、それを更に現状に映し出すのが開発者だよ…素質がないなら補うものを作ればいい」

 

「……ザ・開発者な事を言うな。そんな燃えるものかね」

 

「当然だよ……私は元々、姉さんを超えるためにこの学園にやってきた……当初の目的は姉さんとの和解で無くなったけどその過程で生まれた私の中の開発者魂は無くなりはしない……!」

 

普段の簪から考えられないほど饒舌に己を語って行く。

簪はグイッとマックスコーヒーを飲みきり、振りかぶって一投。弧を描き缶はゴミ箱に吸い込まれる。

 

B(ブルー)ティアーズ・D-Nx(ディーネクスト)、あれは凄かった。……でも、凄いと言ってるだけでいたくない」

 

ギュゥゥッ

 

「『協力して欲しい』……じゃない。『協力してもらう』よ…織斑」

 

「……ハイハイ。できる限りはやらせてもらうよ」

 

音を立てて握られた拳と共に告げる簪の決意に、一夏はヤレヤレとジェスチャーすると同時に満更でもない顔で頷く。

 

そもそも、断らずについてきてる時点で暗に協力すると言ってるようなものだが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……で、どんな風に打鉄弐式(コイツ)を改造するんだ?」

 

そうして、整備室についた2人は打鉄弐式(うちがねにしき)を前に話し合いを始める。

 

「織斑。以前私の魂から溢れた言葉の共通点…覚えてる?」

 

「エグゼイド 、エックス、ゴースト、そして鎧武……『素体に被せるアーマーで性能を変える』点か?」

 

「そう、その通り。私が目指す機体はね…言うなれば『擬似第4世代』と呼べる機体なんだ」

 

装備の換装無しでの全領域・全局面展開運用能力の獲得を目指したのが第4世代。

ならば、後付武装(イコライザ)で戦闘用途の多様化を主眼にした第2世代と、操縦者のイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器の搭載を目標とした第3世代の技術を合わせて使う事で『戦闘中に換装して、全てに対応する』擬似第4世代を作ろうではないか。

 

簪はそう言っているのだ。

 

「…で、そのモデルに外付装甲でフォームチェンジやタイプチェンジを持つ特撮ヒーローを使うって事か」

 

「そう、だから私が作るべきなのは4つ」

 

・ある程度のリソースを余らせた器用貧乏でも状況を見れる基本形態となる素体

・そしてそのリソースを用いて特定の機能に特化させる追加装甲

・基本形態や派生形態で使用する武装

・カッコいい必殺技

 

「……最後いる?」

 

一夏の訝しげな声に、簪はバァン!と机を強く叩く。

 

「いるよ!……というか、オルコットに『ヴォルカニックコメット(ライダーキック)』なんてつけた織斑がそれ言える?」

 

「アレは……その、深夜テンションでつい…うん、必殺技は必要だな。ロマンだもんな」

 

財団としでかした悪ノリの結果を思い出して、一夏は閉口する。

彼もまた、カッコよくて強いものが好きな男の子である。

 

「わかってればいいんだよ。……さぁ織斑、『ひとっ走り、付き合えよ』!」

 

「……ハァ。なら、こう返してやるよ。『OK、FIRE All ENGINE』!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「出来た――――!!!」」

 

そうして、更に6日後。

授業、特訓、部活、生徒会。その中の暇を見つけては、アイデアと技術の折衷を詰めていた2人はパソコンを前に叫ぶ。

 

「落ち着け2人とも。うるさい」

 

「「すみませーん」」

 

整備科の2年生、マーキュリーの注意に謝りつつ2人は出来たデータを念入りにセーブする。

 

「よし…バックアップ完了。それにしてもアレだな、うん」

 

「そうだね。鎧武とかゴーストとかエックスとかエグゼイドとか言ってたけど…」

 

データを見ながら2人は、声を揃える。

 

「「仮面ライダービルドだコレ……」」




財団の技術に求められる素養に関しての、鈴と簪の捉え方の違いは、唯の操縦者かそれとも開発者も兼ねてるかの違いと思ってください。

そしてマーキュリー先輩21話から46話ぶりの登場。
今後も考え無しに出したモブを使ってゆきたい。

誤字脱字は遠慮なくどうぞ。

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