ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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ここから不定期更新となります。
3月中の毎日更新にお付き合いくださりありがとうございました。
ゆっくりながら進めていきたいと思います。

それでは最新話です。どうぞ。


08ー04 你来这所学校是为了什么?

放課後の廊下を、鈴は目的地も定めぬまま歩く。

 

『以前私達が捕獲した構成員から―――』

 

『新機体貰って―――』

 

脳裏に浮かぶ、今日の記憶に下唇を噛む。

 

(羨ましいなぁ……)

 

心を占めるこの感情の名は『嫉妬』

 

新型の専用機と開花した才能で先に行くセシリア(ライバル)への羨望が、胸にチクリとした痛みを残す。

 

昨日の戦いで、己が操縦者として成長した事は実感している。

だが、セシリアは……もっと成長している。

 

『そりゃその機体のデータを作ったの俺と財団だし』

 

彼女がこの感情を抱き始めたのはいつからかと言われれば、2週間前のこの一夏の台詞だろう。

 

一夏がセシリアの為に誂えた、あちらの世界のテクノロジーを込めた機体『B(ブルー)ティアーズ・D-Nx(ディーネクスト)』の事を聞き妬ましく思ってしまう。

 

『悪いけど、君用の機体は用意できないよ。ブルー・ティアーズのパイロットにはBT適性という面白いものがあったけど、君にその手のは無いからね。まぁ、地道に強くなった方が身のためじゃないかな?』

 

あの時は話の展開で流れてしまったが、その後専用機を改めて求めて見たものの返ってきたのはこの答えであった。

 

別に鈴の才能が低いという訳ではない。

中学2年生の時に中国へ帰国しその後、わずか1年弱で国の候補生まで登りつめた才能の持ち主だ。

だがしかし、それは何か一つに突出したものではなく、レーダーチャートで表した際に綺麗な図形を描くタイプの素質である。

 

財団曰く『そもそもISとACの両特性を持つ黒い鳥(ダークレイヴン)がおかしいだけで、ACの武装技術をISのそれに転用する為には使用者に対して色々と条件を求める』らしく、セシリアは持ち前のBT適性をより強化する事でその条件をクリアした。

 

(あたしがダメな子って訳じゃない……)

 

頭ではそんな事はわかっている。

 

だが、その機体は……財団だけではなく一夏(嘗ての想い人)も作ったものだ。

そしてその彼は、卒業してしまえば永久にこの世界を去ってしまう。

その後に残るものはなんだ?……今のところは、自分の失恋しかないではないか。

そもそもセシリアはずっと一夏の側に居て、仲が良くって、機体も貰って……

 

『友達の貴女が一夏さんのことが好きなのに、それを裏切る訳無いでしょう?』

 

(浅ましいなぁ……)

 

そうだ。なにを考えてるんだあたしは。セシリアは大事な友達でライバルだ。

別に臨海学校で高速パッケージが無かったから出れなかった事も、セシリア1人で亡国機業を倒して居た事も気にして―――

 

「――――るわよ。ハァ…「ジーッとしてても」…ん?」

 

ため息をついた鈴は、周りを見渡す。

 

(なにか聞こえたような)

 

「ドーにもならねぇ!」

 

微かだが、今度こそ確かに鈴の耳はその声を捉える。

聞こえた方向に向かってそろりそろりと忍び足で近づき覗いてみる。

 

「ユーゴー!アイゴー!ヒアウィーゴー!」

 

【フュージョンライズ!】

 

「決めるぜ、覚悟!ハァ〜ハッ!ジィィィド!」

 

【ウルトラマン!ウルトラマンベリアル!ウルトラマンジード!プリミティブ!】

 

そこではなにやら赤い機械……鈴は名を知らないが『ジードライザー』を手に俗に言う『なりきり遊び』をする簪がいた。

 

「フッ……ハァァァ……」

 

そして、身体の前で手を交差、そして振り上げジード必殺の光線『レッキングバースト』のなりきりを放とうとした簪は―――不思議そうな目で自身を見る鈴に気づいた。

 

「……」

 

「……」

 

目と目があい、時間が止まる。

 

簪の顔はその水色の髪とは対照的に羞恥で赤く染まり……窓に向かって駆け出した。

それになにかを察した鈴も続く。

 

「ちょっと!ここ5階よ!?」

 

「放して!今の私はデュワっと飛べるから!」

 

「なに言ってんのよ!純地球人!」

 

「貴女もでしょ純地球人!」

 

「そもそも宇宙人なんてあたし達が会った中にいないでしょ!」

 

「……篠ノ之束」

 

「……そうね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……落ち着いた?」

 

「……うん」

 

10分後、場所をカフェテリアに移した鈴は、目の前の簪を見やる。

 

『大丈夫。主武装が無いだけ』

 

(そういえば…)

 

鈴は、簪の機体が以前開発途中だった事を思い出す。

キャノンボール・ファストや昨日のテロ事件で戦えていた以上ある程度はなんとかなっているのだろうが、今はどうなっているのだろうか。

 

「……そういえば、あんたの専用機ってどうなってるのよ。臨海学校の時は武装ないとか言ってたけど…」

 

「……」

 

そんな機密情報とか言われそうなのにど直球に聞く、鈴の良くも悪くも真っ直ぐな所に簪は少し黙る。

 

「あ、ごめん。中々話せないわよねそういうのは」

 

「……別にいいよ。…完成とは言えるし、そうじゃないとも言えるよ」

 

「なぁにそれ?」

 

謎かけか何かかと鈴は腕を組み、考え込む。

そんな鈴が予想外だったのか、すぐさま訂正をする。

 

「当初の予定の『打鉄弐式』は完成したけど、その先の場所はまだまだって事」

 

「……新型機、か」

 

「イギリスが新型機を開発したっていうのに、こっちの開発部が燃え出したよ。……私も、対抗心はあるけど」

 

「モテモテね。あたしのライバルは」

 

白けた表情でハッと言い放つ鈴。

しかし、目の前のそんな彼女に気づかずに、簪の顔は新たな開発に燃える開発者のそれになっていた。

 

「一昨日導入したばっかって聞いたけど、早く見てみたいなぁ…。どんな機体なんだろう?ブルー・ティアーズの進化系ならビット100機ぐらいあるとかな…」

 

「……セシリアが死ぬわよそれ」

 

放つ内容に、流石に纏った暗いオーラを消してツッコミに回る鈴。

こういう所で常識人だからこそ苦労が絶えないタイプだということは自覚はしてるらしいのだが、中々人間変わる事は出来ない。

 

「……でも、あの人見てると……正直、死ぬ手前ぐらいなら平気で踏み込みそうというか……」

 

「……」

 

その言葉に対して親友(ライバル)を擁護する事は出来なかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ハァ……」

 

ため息の多い1日だな。幸せがどれだけ逃げただろう。

 

そんな事を思いながら寮への道を歩く鈴は、手に持ったメモを見る。

 

『更識簪 ○○○-△△△△』と書かれたそれは先程簪に別れ際に渡されたものだ。

 

『電話番号…交換しない……?ほら、同じ代表候補とクラス代表だし』

 

『別にいいわよ。断る理由も無いし』

 

『ありがとう…!よし、これで始めて本音以外の同級生のアドレス貰えた』

 

「……」

 

貰った時の事を回想し、ポケットにしまう。

 

「…ま、あんな可愛い笑顔を見れただけで収穫はあったかな」

 

そんな事を言う鈴の顔は、少し寂しそうではあったが笑っていた。

 

機体の事も、セシリアの事も今は置いておこう。

 

そう思い、彼女は寮に向かって駆け出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「……うーん」

 

ザクザクバリボリムシャムシャ

 

寮の一室。

 

金髪碧眼の少女『ティナ・ハミルトン』は辺りに大量の空のお菓子の箱を作りながら悩んでいた。

 

悩みの内容は最近元気のない同居人『凰鈴音』をどう元気つけようかというもの。

 

(昨日の事件…すっごい死傷者が出たらしいしなぁ……)

 

ただでさえ、空元気気味だった彼女の元に起こったISによるテロ事件。

鈴自身が解決したそれに対して、『専用機持ちをテロリストが標的にしたのではないか』と朝のニュースは報道し、ティナは拳を震わせた。

 

確かに鈴達の事を狙ってテロリスト達は襲ったのかもしれない。

だけど、それで鈴達を悪し様にいうのは何か違うのではないだろうか。

 

そんな怒りが胸を占め、彼女がなにか気にしてはいないだろうかと思い声をかけようと思っていたが、結局かける事なく1日が終わりそうになっている。

 

そうだ。鈴は自分のルームメイトなのだからここで会わざるを得ない訳だし、教室で話せなくってもここで話せる訳だし、というか人死にを見た人への対応なんて知らないんだけどあれこれ一体どうすればいいんだ刑事ドラマでも見た事ガチャねぇよ

 

「……ティナ。太るわよ」

 

「うォッヒょイ!?いいいいいつの間に帰ってたの鈴!?」

 

いつ間にか部屋に戻っていた(ルームメイト)にティナはワタワタと狼狽える。

そんな調子のティナ(ルームメイト)に鈴はポリポリと頭を掻く。

 

「……さっきよ。あーもう菓子カスがほっぺについてるわよ、ほら動かないで」

 

「あ、いや…自分でできるわよ…」

 

ポケットティッシュを取り出してティナは急いで自分の顔を拭う。流石に同級生に顔を拭いてもらうのは恥ずかしいにも程がある。

 

「……しっかし、今日は驚きの連続ならぬ、驚かれの連続ね」

 

「……?」

 

「なんでもない。こっちの話よ」

 

鈴の呟きに、ティナは疑問符を浮かべながら先程まで逡巡していた事を思い出す。

 

「…え、えっと……よし!鈴!」

 

「…?なによ改まって」

 

スゥハァとゆっくり大きく深く呼吸し、決心。

バチンと頬を叩いて口を開く。

 

「えっとね。あたし、鈴が最近元気ないと思うの」

 

「……あーなんか気遣わせちゃった?」

 

「うん。あたしは代表候補とか専用機持ちとかじゃないけど、もしよければ……力になりたい」

 

「……」

 

その言葉に、鈴は驚いてきょとんとする。

 

「…だめ……かな…?」

 

「ううん。ありがとう…じゃあちょっとごめん」

 

そう言って鈴は、ベッドの上に女の子座りで座るティナの胸に顔を埋めた。

そんな鈴の行動に今度はティナが目をパチクリさせるが、直ぐにポンポンと鈴の背を優しく叩く。

 

「……結構限界だったんだね」

 

「うん」

 

「……前に言ってた失恋?」

 

「うん」

 

「……友達?」

 

「うん」

 

「…他のもある?」

 

「うん」

 

「大変だったね」

 

「う~」

 

ティナの慰める様な問いに、鈴は吐露するように答えていく。

昨日の事件が、元々それなりに負担が溜まっていた精神を一気に追い詰めていたのか普段の強気さが嘘のように消えていた。

 

(あたし……なんのためにこの学校に来たんだっけ…)




皆さんの協力のおかげで、鈴の機体が固まってきました。本当にありがとうございます。

不定期となりますが、ここから最終章に向けて頑張って纏めて行きたいと思います。

誤字脱字は遠慮なくどうぞ。

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