ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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この二学期が最終章前の最後の日常エリアだから出来る限りやりたいなぁ。
というか最終章の予定がめちゃくちゃ過ぎて悪い意味でヤバい。何考えてたんだ2015年の自分。

……というかこの小説書き始めたの3年前かよ。

最新話ですどうぞ。


08ー03 身体は闘争を求める/欲する平和に心を寄せて

レゾナンスでの無差別テロ騒動の翌日。

一夏は起きて身支度を整えると、朝食もとらずに生徒会室へと向かう。

 

コンコンコン

 

「一夏です」

 

「入りなさい」

 

中から届く楯無の声に従いドアを開ける。

 

室内では千冬、箒、セシリア、鈴、簪がこのために出された大テーブルに着席しており、楯無だけは虚を近くに立たせながらいつもの会長席に腰掛けていた。

普段ならば4人で広々と使っていた生徒会室は、その人数を8人と倍にした事でやや手狭さを感じさせている。

 

虚は空いている鈴の隣の席を引き、一夏を座るように促す。

それは、今の一夏を副会長ではなく他と同じ専用機持ちとして扱う事を言外に示していた。

 

「さて、まずは皆さんおはよう。朝食もまだでしょうし、今本音が持ってくるから、それを食べながらでいいので聞いてちょうだい」

 

楯無の挨拶と同時に、先程一夏が入った扉からサービスワゴンを押した本音が入ってくる。

本音は料理を載せたそれを止め、虚と共に普段ののほほんっぷりを感じさせないテキパキとした手つきで料理を並べていく。

 

「今日は月曜日よ。昨日の件はどうであろうと、貴方達に授業はある事を忘れないでね」

 

全員が食器を手に持ち食事を開始する。

重苦しい雰囲気は、負の調味料となり朝食の彩りを色褪せさせた。

 

『織斑くん、オルコットさん。……お帰りなさい』

 

昨晩、そう言って彼らを迎えたのも楯無だった。

彼女は2人にまず夕食を取らせ、起こった事を聞くと『情報が今は錯綜してるから、明日の朝6時に生徒会室で集合よ』と伝え去った。

ちなみに、“T”と呼ばれた謎の操縦者については知らせたが、マドカの顔については一夏とセシリアは知らせていない。

 

そして今は、説明用のプリントを見ながらどう説明するかを組み立てている。

状況を考えると確実に徹夜、もしくはそれに近い筈なのにこうして情報を纏めて伝える手筈を整える準備の良さから、彼女の手腕の高さをうかがわせる。

 

「説明を始めるわ。ここにいる私以外の専用機持ちーー織斑一夏、篠ノ之箒、更識簪、セシリア・オルコット、凰鈴音の5人は昨日の3時頃に亡国機業(ファントムタスク)操る無人機によって襲撃を受けた」

 

そして彼女は昨日のテロ騒動の詳細説明を開始した。

 

 

1.襲撃を受けたのは5人だけではない。

 

標的となった専用機持ちは一夏達5人だけでなく、世界中他の国にいる専用機持ち13人もまた、被害を受けていた。

無論、専用機持ちだけあり全員無人機をその場で討伐出来る実力があったのは不幸中の幸いと言えるだろう。

 

2.襲撃を受けた専用機持ちに共通したのは『一般人がいる場所』にいた事。

 

一夏とセシリアのレゾナンス、簪の秋葉ホコ天のように沢山の人が訪れる場所や、箒や鈴のような住宅街といった人が住んでいる場所に無人機は現れた。

しかし、楯無のようにIS学園や軍事基地といった警備がしっかりとした一般の人が立ち入れない場所には現れなかった。

 

3.基本的に、専用機持ち1人に対して1機の無人機が襲撃した。

 

これに関しては文字通りであり、箒に鈴に簪もこの例に当たる。

しかし例外が一件存在しており、一夏とセシリアが遭遇した『無人機を呼び出す無人機』はここでしか確認できていない。

加えて亡国の者と思われるISが確認できたのも、レゾナンスでの一件しかない。

 

 

「……と、いうわけよ。何か質問があるかしら?」

 

「…では1つ。よろしいでしょうか?」

 

説明を終えた楯無は、全員に疑問がないかを問う。

それにセシリアは手を挙げて、気になる場所を口にする。

 

「この襲撃事件について、以前私達が捕獲した構成員からなにか聞き出せましたか?」

 

セシリアの問いは2週間前の『キャノンボール・ファスト』で楯無やセシリアが捕らえたエドワースやボタン、なぜか埠頭の倉庫街で倒れていたナオミからテロ計画の情報を調べられたのかというものである。

捕らえられた彼女達は、観念したのか従順で模範的な捕虜生活を送っていた。

 

「むしろあっちが驚いてたわ。『研究用じゃなかったのか』って……正直同感ね。頭がアレか、もしくは念入りな準備がなければ奪ったばかりの代物を使おうとは思わないもの」

 

「なるほど、わかりましたわ」

 

聞くことは終わったとばかりにセシリアは食事に戻る。

 

「質問はもうないようだな。では、私から伝えることがある。まずは―――」

 

そして、今までずっと黙っていた千冬が口を開いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ホームルーム開始30分前の一年一組の教室。

既に大半の生徒が準備を済ませて談笑や自習に励んでいた。

 

「おはよう」

 

「おはよう」

 

「おはようございますわ」

 

ざわっ……

 

扉を開けて専用機持ち(一夏 セシリア 箒)が入ってくると途端に彼女達はざわつく。

なにせなんらISと関わりの無い人ですら騒いでいる事件だ。ISを使う為にここにいる彼女達からすればその当事者が現れたのであれば騒々しくもなるだろう。

 

「ねぇ……聞きに行きなさいよ…」

 

「ええ〜アンタが行きなさいよ……」

 

ヒソヒソ話を尻目に、3人は自分の席に着こうとする。

そんな冷めた表情の彼らに1人の少女……『神崎コヨミ』が近寄っていく。

 

「あ、あの……一夏さん、セシリアさん、箒さん…」

 

「…どしたの神崎さん?」

 

「えっと。昨日は、ありがとう!」

 

礼の言葉と共に神崎は深く頭を下げる。

突如、礼を述べられた3人は目をパチクリさせて顔を見合わせる。

 

「失礼ですが、神崎さん。昨日私達と会いましたっけ?」

 

「ううん…実はね、昨日の事件が起きた場所に私の彼氏や家族…大事な人がいたの」

 

聞くとレゾナンスに父と母が、神社に彼氏がいたらしく、不幸にもテロに巻き込まれたようだ。

 

「でもね、お父さんは一夏さんが不審なISの注意を引いてくれたから逃げられたし、お母さんは逃げてる時にした怪我をセシリアが手当てしてくれたし、彼に至っては紅のIS…多分箒さんが直接ビームから庇ってくれたって言ってたの」

 

「庇った……?もしかして、五分刈りのあの人か?」

 

「うん、きっとそう!その人が私の彼氏!」

 

箒だけではなく、一夏とセシリアも心当たりがあるようで納得した素振りを見せた。

そして神崎は再び深々と頭を下げる。

 

「本当にありがとう!……グスッ、みんながいなかったら、エグッ私は大切な人を無くしちゃってた…」

 

その未来を想像したのか、感謝の言葉が嗚咽混じりになっていく神崎。

顔を涙と鼻水で濡らす彼女を、セシリアは優しく抱きしめあやすように背中を叩く。

 

「……そういってもらえるのであれば、貴族として、貴女のクラス代表として、これほど嬉しいものはありませんわ」

 

「俺も同じだな。貴族でもクラス代表でも無いけど、生徒会の一員として学園の生徒を守れたなら誇らしいぜ」

 

「……別に私に何か役職があるわけではないが…だが、そうやって喜んでもらえたなら頑張った甲斐はあったさ」

 

セシリアの言葉に一夏と箒は続き、それを受けて神崎は更に「うわーん!」と泣いた。

 

……ちなみに余談だが、この件以降『孤高のクラス代表』としてクラスメートから避けられていたセシリアは、徐々に受け入れられ始めた。

そして何故か―――神崎のセシリアを見る目が艶めかしいそれになった。

 

「私は男でも女でもホイホイいける女なんですよ?」by神崎

 

「なーんか妙に寒気が……」byセシリア

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「色々ありましたが、ああ言ってもらえるなら報われるってものですわねぇ…」

 

「そうだな。だがこれから、窮屈になるな」

 

「む、窮屈になるとはどういう事だ?」

 

ちょっと経って、泣き止んだ神崎が席に向かった後。

セシリアと箒の会話を聞いたラウラの疑問に、一夏は先程の千冬の話を耳打ちする。

 

『まずは、お前達が学園外で無許可でISを展開した事については、事態が事態なので不問とする』

 

千冬のその言葉に専用機持ち達は『当然だな』と言わんばかりの面持ちであった。

寧ろこういう事態に使わずに、なにが世界のパワーバランスを揺るがす兵器か。

 

『そしてもう1つ……お前達専用機持ちは、特例を除き今後一切の学園から出る事を禁ずる』

 

続く言葉へのリアクションは様々で、知ってたという顔のセシリア、一瞬驚いたが直ぐに察した一夏と簪、どういう事だと目を見開く箒と鈴と別れていた。

 

『先程、楯無が言ったように無人機は一般人が多数いる場所にいる専用機持ちを狙って来た。……つまり、今後貴様らがそういう所に出歩くと事件が起きるかもしれないという懸念が上から出てな…』

 

説明された事情に、文句を言おうとした箒と鈴は渋々頷く。

自分が動く事で無辜の人々が傷つくのは、良しとできなかった。

 

「……という訳だ」

 

説明を終えると同時に、教科書やノートの準備も済ませる。

理由を聞いたラウラはフムと一瞬何かを考えた。

 

「なるほど、では叔父よ。今後なにか学園の外で欲しいものがあったら私に言ってくれ、買ってこよう」

 

「お、サンキュ」

 

「気にするな。しかし、専用機がある故に狙われるとはツイてないな」

 

「今のお前は持ってないもんな、と。そろそろ授業だ戻っとけ」

 

例え一昨日が熱気溢れるレースだとしても。

例え昨日が地獄変たるISテロだとしても。

このIS学園ではいつものように1時間目が始まり、昼休みを経て、放課後になる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、お待ちかねの放課後ですわね。どうしましょう一夏さん。セシリアと特訓します?オルコットと特訓します?それとも…わ・た・く・し?」

 

「……昨日一昨日と、亡国と殺りあっといてそのガッツはなんなんだお前」

 

「やはり特訓ね。いつ行くのかしら?あたしも同行するわ」

 

「「凰鈴院(ふぁんりんいん)」」

 

今日の授業が終わり、参考書をカバンにしまう一夏。そしてそれに絡むセシリアと、なぜか別のクラスなのにいつの間にかいる鈴。

 

「……今日は生徒会の仕事があってな」

 

「……そうでしたか、まぁアリーナとってなかったのでどうせ出来ませんでしたが」

 

「新機体貰ってハッチャケ過ぎだろ」

 

基本的に、殺し合いやそれに準じた戦闘というのは非常に精神を削る。

一夏もまた、直接戦ったのは昨日だけとはいえ2日連続の索敵含む戦闘でかなり負担が来ていた。

もちろんそれで音を上げる程彼等はヤワでも無いが、休める時に休んでおくのがいい筈……というか一夏は実際にそれを視線で訴えているがセシリアは笑顔で一蹴。

 

そんな一夏の台詞に、ピクッと鈴が反応する。

 

「……新機体」

 

「……?鈴、今なにか言った?」

 

「ううん、なんでもない」

 

誰にも聞かれることなく、鈴の独り言は空に消えた




鈴の機体「シェンロン」の強化案が決まらない!
活動報告でこんな強化はどうだろうかっていうのをアンケートするので是非ともお願いします!

誤字脱字は遠慮なくどうぞ。

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