ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
HEAD:HD-307
CORE:MATSUKAZE mdl.3
ARMS:AC-129
LEGS:L2MA-227
R ARM UNIT:rifle(Au-B- A04)
L ARM UNIT:gatling gun(AM/GGA-206)
SHOULDER UNIT:sub computer(MONONOFU mdl.2)
R HUNGER UNIT:heat pile(Au-R-F19)
L HUNGER UNIT:shield(AMAGOROMO mdl.1)
とりあえず、連載再開のための構想はここまです。
ここからそろそろ不定期となります。
それでは最新話です。どうぞ。
【システム スキャンモード】
「オラこいよ!」
ゴーレムに声を飛ばしながら、一夏は崩れたアウトモールで
地上の人々に被害が出ないように、ターゲットを上空の自分にズラす。
NAME:GolemⅡ
KE:500
CE:500
TE:500
R ARM UNIT:
L ARM UNIT:
W ARM UNIT:GolemⅡ(TE)
「やっぱ前と、変わってないな……」
『しぶといけれど、それこそなんでも貫通する装甲。素早い動きと特大レーザーが主軸…そうだね。君やブルー・ティアーズ、
「……確か、あの海の奴にも紛れてたよ…なッ!」
ギュューン!
会話中でも御構い無しに殺人光線を放つゴーレム。
止まった相手だろうと容赦なく撃つのは、クラス代表戦と違うところである。
『その通りだよ。尤も、君は意に介さずに司令船を潰した訳だけど…』
「……」
『どうしたんだい?ゴーレムを見てから様子がおかしいよ?』
「…向こうの世界で、お前のUNACに感じていた嫌な感覚。前回までには無かったそれが、今のアイツにある」
【エネルギー 残り30%】
ハイブーストでレーザーを避けながら会話しつつ、お互いがお互いの方法でゴーレムのロジックパターンの解析をして行く。
『ふむ…僕のUNACに感じていた感覚に、反応のないISコア。気になるところは目白押しだね』
「コアの反応がない?なら…」
『前回の司令船にあたるものが無いかどうかは、君が蒔いたリコンでスキャン済みさ。まぁ無いから、大人しくアレを潰したまえ。……だとすると、やはりこの波動は』
『一夏さん…!やはり貴方もそちらで交戦してましたか!』
財団と会話しているとセシリアから通信が入る。
彼女もまた、上空に陣取り地上の人の避難時間を稼いでいた。
「…お前の所にも
『それはいいんですが…これらはおそらく…』
「わかってる!」
おそらく、文化祭の時に奪われた機体なのだろうという事は直接戦った一夏が1番よくわかっている。
(
学園から強奪したのも、この襲撃を仄めかしたのも
たったの二週間で奪った機体の改造、修復、制御を終えた現実と技術力は認めるが、この行動に一体何の意味があるのかが一夏には理解不能だった。
『……』
【
そんな一夏を確認して、セシリアも自分が担当するゴーレムを見据えた。
そうだ、なにが目的だろうと今は目の前の敵を倒すしかない。
【システム 戦闘モード】
地上の人の避難が済んだ事を確認した、2人は両手の銃を構えて応戦を開始する。
肩の
だがライフルは本命では無く、あくまで最後の一撃を避けられないために起動パターンの解析を行う為だ。
『アイツ、まだ動くの!?』
以前のクラス対抗戦ではゴーレムの意識外の一夏が狙い撃つ事で動きを止めたが、タイマンの現状でそれは望めない。
ならば、しぶといアイツにやることは1つ。避けられない状況に追い込み、ハンガーに積んだパイルによる一撃必殺。
ライフル、ガトリングに対しての回避、防御行動。
ハイブースト、急落下に対しての攻撃行動。
(右…左……砲撃に…急接近……)
(『ロジック解析率93%…95…98……』)
データを揃えて動きを見極めていく。そして……
「…いまだ!」
『…いまだね』
――――一夏と財団の声が重なった。
ゴーレムの真上に上がった一夏は右手を
ギュューン!
ガァン!
放たれたビームを展開したシールドで防ぎ、砲撃に夢中なゴーレムにシールドチャージ。
そのまま上から押し潰すように一夏はゴーレムごと地面めがけて加速する。
「……終わりだ」
ドゴォォォォン!
無人のアウトモールに落下すると同時に密着させたパイルのトリガーを引く。
2連装の成形炸薬弾がゴーレムの装甲に当たり起爆、鋼鉄の鎧を吹き飛ばし内部の奥まで破壊力が伝わる。
チュドォォォン!
そして次の瞬間―――ゴーレムは盛大に爆発した。
[ENEMY DESTROYED]
「……よし!」
爆煙の中で一夏は小さくガッツポーズ。
そして、一夏とゴーレムの決着とほぼ同時に、他の戦いも終わりを迎えようとしていた。
まずは、同じくレゾナンスで戦っていたセシリア―――
「以前よりパワーアップしたこの機体で、あなたに苦戦するわけにはいきませんのよ!」
【
ビットでゴーレムの動きを制限し、ソードモードのヴォルカライザーのナックルガードを3回スライド。
その瞬間、光で出来た刀身が熱せられた飴の様に曲がり、振るわれたそれは鞭の様にゴーレムを捕らえる。
微動だに出来ないゴーレム目掛けて、ブレードモードとなったビット6基がまるで黒ひげ危機一発の様に刺さって行き……ゴーレムは爆発した。
次に、神社近くの箒―――
「あの時は一夏を置いて逃げる事しか出来なかったが、今は違う!“
【絢爛舞踏、始動】
背部と脚部の展開装甲を展開し、“絢爛舞踏”によって増幅された膨大なエネルギーを注ぎ込む。
それにより紅椿は『速く動いて撃つ』事に特化したゴーレムの速度を、遥かに増したスピードに至る。
交差地点を予測した箒は、背部の展開装甲を閉じ、腕部の装甲を展開。二振りの刀『雨月』『空裂』にエネルギーを充填し、一閃。ゴーレムを爆散させる。
そして、旧凰家跡近くの鈴―――
「セシリアも一夏もいないけど!あたしの思い出を壊されてたまるかァー!」
『龍砲』を巧みに用いてレーザー砲撃を相殺せずに、逸らす事で鈴はゴーレムに接近する。
懐に飛び込んだ彼女が放つ『双天牙月』の乱舞は、ただ滅茶苦茶に振り回しているのではなく、肩に肘に膝に首に脚の付け根……装甲の薄い関節を的確に狙っていた。
道路にゴーレムを叩き落とし、右、左、そしてX字に切り抜ける。直後、鈴の背後から爆炎が上がった。
最後は、秋葉のホコ天の簪―――
「みんなを傷つけることは…私が許さない……!…ロックオン完了!『打鉄爆烈シュート』!!」
簪は打鉄弐式の最大武装『山嵐』を
6機×8門から放たれる48の独立誘導ミサイルは、単純にゴーレムを狙うのではなく、ビームを吐く銃口を標的として飛んで行く。
内部に直結した武器腕を破壊したダメージは、腕から胴体にまで伝播し、ゴーレムの身体を粉々のガラクタに変えた。
そして、視点は破壊されたアウトモールに戻る。
「一夏さん!お怪我は!?」
ゴーレムと共に地上に落ちた一夏の元に、セシリアが降りてくる。
「セシリア、俺は大丈夫だ。それよりお前は?」
「この通り、傷1つありませんわ…では後は……」
セシリアの目線の先には、ベンチに座りコーラとポテチでくつろぐマドカの姿があった。
そんなマドカに、2人は構える。
「クク……お見事お見事。いいものを見させて貰ったぞ」
2機のISが自身に武器を向けているにもかかわらず、マドカは拍手と上辺の賞賛を送る。
「見世物でも芸人でもないんだぞ俺らは。……見物料、支払ってもらうぜ」
「無辜の人々を傷つけた罪。贖いなさい」
一夏とセシリアの怒りの言葉に、マドカは空になったコーラのボトルを放り投げながら答える。
「焦るな…今日はお前らと戦いに来た訳じゃないと言ったはずだ。それにどうせ幾らでも戦う機会は来る。……そして、その時に―――」
奇跡的に無事だったゴミ箱にペットボトルが入ると同時に、マドカは先程までのにやけ笑いを消した。
「―――
一夏を見据え、殺意と共に告げる宣言。
「……はっ、ははは。なんだよ、お前随分と千冬姉にご執心だな。……その、
その言葉を、今度は一夏が笑い飛ばした。
それに真顔のマドカは、ピクリと眉を上げた。
「……お前が私の何を知っていると言うんだ。織斑一夏」
「カマかけただけなんだがな。ま、お前が織斑千冬の贋作の類だとわかったのは収穫だな」
「言ってくれるじゃないか……!」
憎悪を深め、苛立ちを増して行くマドカ。一夏の観察眼が、意外な形で活きたパターンである。
睨み合う両者に、セシリアが叫ぶ。
「一夏さん、後方からIS1機!私達が知らない反応ですわ!」
「……次から次へと、千客万来だなオイ」
10秒後、1つの黒い影が舞い降りる。
「迎えに来たわよ、エム」
くぐもった声と共に現れたのは、今では珍しい
赤と黒を基調としたカラーリングに特徴的な三つ目のカメラアイ。
頭部から伸びた2つのアンテナはエジプトのアヌビス神の様な印象を与え、両肩には速度を上げる為かウィングが付いている。
よく見るとスラスターが各部にあり高速度、高機動であることが伺える。腰のホルスターは、メイン武装であろうパイルバンカーがあった。
通常のISならば、脚部の機械は人間のそれよりもかなり大きいが、それの脚はスマートであり、シルエットで言えばセシリアのそれに近い。
【システム スキャンモード】
NAME:Gruxeon
KE:1253
CE:1100
TE:700
R ARM UNIT:pile(KE)
L ARM UNIT:pile(KE)
HUNGER UNIT:add magazine
HUNGER UNIT:golem
(グルゼオン…?いや……それよりも、なんだこの
突如現れた謎のIS…グルゼオンはゆっくりとマドカに近づいて行く。
「…“T”か…何故来た。お前は呼んでない筈だ」
「織斑一夏がいる場所に行ってるもの。要らぬ争いを起こすと思ったけど、やっぱりね。さ、帰りましょう」
「……チッ」
舌打ちをして一夏達にマドカは背を向ける。
「……逃がすか!」
【システム 戦闘モード】
なにサラッと逃げようとしてんだと言わんばかりに一夏はライフルを放つ。
しかし、マドカに向かう徹甲弾の前に、“T”と呼ばれた女は素早く立ちはだかり……
パシパシィ!
―――
「……は?」
『……え?』
「嘘……?」
一夏、財団、セシリア。
呆気にとられる3人に、“T”は弾を地面に捨て、深々と頭を下げた。
「無人機…ゴーレムについては私達のミッションだから謝らないわ。でも、エムがやらかした無礼については彼女に代わってごめんなさい……じゃあね、また会うこともあるでしょう」
そう言うと、既にサイレント・ゼフィルスを展開したマドカと共に“T”は去ろうとする。
弾丸をキャッチされた事に驚きはしても、立ち止まらずに2人は追おうとするが、グルゼオンの
「ゴーレム!?」
呼び出されたのは、ゴーレム。
先程までのとは少し違い、どっしり構える高装甲型だ。
「…さっきスキャンで見えたゴーレムってこの事かよ!セシリア、ここは俺に任せて―――なァ!?」
新出現のゴーレムを自分が引き受けて、セシリアを行かせようとした一夏から驚愕の声が上がる。
ゴーレムのカメラアイが光ったかと思えば、人型の黒い機械が10体程その周囲から現れたのだ。
【システム スキャンモード】
NAME:GolemⅡ
KE:1200
CE:1200
TE:1000
R ARM UNIT:
L ARM UNIT:
W ARM UNIT:GolemⅡ(KE)
NAME:Skeleton
KE:100
CE:100
TE:100
R ARM UNIT:
L ARM UNIT:
W ARM UNIT:Skeleton(KE)
『スキャンした、どうやら避難所に向かう気のようだね』
「んっ…のぉーっ!」
財団の言葉を受けて一夏とセシリアは、最優先対象をゴーレムとスケルトンに変更、殲滅を開始。
ガトリング、ライフル、ビームマグナム、ビットの掃射が辺りの無人機達を塵に変えた時にはもう、
「畜生……!」
――悔恨の叫びが、虚しく空に吸い込まれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜
長いようで短いような、そんな1日の終わりに学園にモノレールで帰る2人の間の空気は重い。
「……」
「……」
当然ながら、楽しく談笑する気にはならないため互いに無言。
車窓を流れる暗い景色を、一夏はぼんやりと見る。
『戦闘中は忙しかったけど、こうして落ち着いてみれば解析できるものだね。あの無人機にはISコアは無かったけど、代わりとなる動力源……“擬似ISコア”とも呼べる反応が確認できたよ』
その後、セシリアと救助活動に勤しんでいた一夏に財団が告げた言葉は、耳が痛くなるものだった。
・二週間ちょっとで、強奪した機体を動かす擬似ISコア取り付け
・ISの
・更に、無人機に無人機を搭載する技術
それらを持ってして成された今回の無差別テロとも呼ぶべき事件。
死傷者の数は膨大で、近くの医者・病院はどこもかしこもてんてこ舞いになっていた。
そんな中でも、否、そんな時だからこそ元気なマスコミもおり。
巻き込まれて、戦闘して、救助した2人に詰め寄る報道関係者を振り切るのは楽ではなかった。
(
セシリアの新機体祝いに何か買おうと思っていた気分は台無しで、いつかの思い出の場所はグチャグチャで、一夏は拳をギュゥっと握りしめる。
(このツケは…高くつくぞ……!)
織斑一夏は基本的にはお人好しな性格である。
それこそ、無秩序なAC世界でも強姦魔や盗賊に襲われた人を見ると助けに行こうと思うぐらいには、だ。
戦いの中でしか生きられない性分だが、この平穏な世界は平穏なままでいいと思うぐらいには、平和も嫌いではないのだ。
『次に来た奴は殺す』
しかし、自身に害をなす時は別だ。
それは自分の命や財産に危機が及ぶ時だけでなく、千冬やセシリアといった身の回りの他者に対しても同じだ。
もちろん、その感情を抑えて行動できるからこそ彼は傭兵として名を馳せた訳だし、例えばセシリアが望んで戦争に参加して死ぬのであれば彼はただ見送るだけだろう。
ここまで来たら
今までは情報を集めるために生かそうとしたが、こっからその手の容赦は減少させるだろう。無論捕獲任務の際は別だが。
「……」
ピ、ポ、パ
プルルルル
『もしもし…』
「……もしもし、俺だ。一夏だ」
『織斑くん!?ニュース見たけど大丈夫!?』
「無事だよ、如月さん。……もうニュースになってんだな」
『ISによるテロよ!当たり前じゃない…セシリアさんは?』
「無事だよ。ま、専用機持ちがそう簡単に死ぬ訳でもないし、ノープロブレムってね」
『…強がり』
「……」
電話の相手は、如月。
心配そうな彼女の声に、一夏は前置きもそこそこに本題に入る。
「……さぁて、ね。まぁうん。そんな楽しくもない俺の1日の話は、これでお終い!…そういや如月さんは今日はどんな1日だったんだ?」
『楽しくないって…うん、そうよね。私の1日はね、パーティだったわ』
急な話題転換に如月は戸惑うが、確かに目の前で起きたテロの事などあまり話したくはないだろうと察したのか、声のトーンを切り替えて明るく答える。
「パーティ?」
『あら、言ってなかった?私のお父さんは“如月生体研究所”の所長……所謂ご令嬢なのよ私は』
「…ああ、そういえば。なるほど、そういう付き合いでパーティなのか。誰か有名人来てた?」
『そうね……うん、IS委員会の
「……へぇ」
思い出す為の少しの間の後に出された名前に、一夏は眉を寄せた。
その後、一言二言交わし一夏は電話を切る。
携帯をポケットにしまう彼の顔には形容できない妙な表情が浮かんでいた。
「……あんな事件の後とはいえ、レディの前で他の女と話すのはどうかと思いますわよ」
「…悪いな。ちょっと、戦いに関係ない人の声を聞きたくってさ」
「……そういう事に、しておきますわよ」
モノレールを降り、出口に向かう。
校舎は、もうすぐだ。
グルゼオンについては機体の見た目がそうなだけで他に深い意味はありません。かっこいいよねグルゼオン。
誤字脱字は遠慮なくどうぞ。