ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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こいつらIS使ってんのに地上戦しかしねぇな。

最新話です。どうぞ。


07ー14 星のワルツを踊りましょう(後編)

「さぁて、第2幕と行きましょう!」

 

その言葉と共にマドカに向かって駆け出すセシリア。

挑むは前回同様の接近戦。盾を前面に押し出し、銃を連射する。

 

「フン…」

 

マドカは鼻を鳴らして、弾丸を横に躱しながら右手の銃剣ライフルからビームを放つ。

 

それに対して、セシリアは盾を構え、衝撃に備える。しかし……

 

「!?…これは!」

 

迫る光はグニャリと曲がり、同時にサイレント・ゼフィルスのビットから放たれたビームと共に予想外の方向からセシリアの盾に力を加え弾き飛ばす。

 

「〜っ!」

 

衝撃の走る左手を誤魔化すように振りながらセシリアは「やってくれますわね」と視線で語る。

 

「クク…」

 

それにマドカは「偏光制御(フレキシブル)にはこんな使い方もあるんだよ新兵(ルーキー)?」とにやけ笑いで言外に答えた。

 

SLASH RISE(スラッシュライズ)

BLAZE TUNE(ブレイチューン)

 

再び銃口が自身に向くのと同時にセシリアは再度駆け出す。

今度はヴォルカライザーをソードモードに、更に一回スライドする。

ガンモードでの銃口に当たる部分からビームの刃が形成される。

 

青い基部を中心に、出来上がるのは双刃の翡翠『ヴォルカライザー ナギナタモード』

手に携えたそれを巧みに振るい、ライフルから放たれたビームを切り落とす。

 

それを見たマドカはライフルをセシリア目掛けてぶん投げた。

流石にそれは想定の範囲外だったのか、セシリアは思わずそれをキャッチしてしまう。

 

「クハッ!」

 

その隙にマドカは前回の時には所持してなかった金属ブレード『インターセプターⅡ』を展開(コール)し、鋭い切り込みで振るう。

 

慌ててライフルを捨て、セシリアはステップと体勢を変えて上段から振るわれるそれを躱す。

避けた勢いでクルリと回りナギナタを振るう。甲高い金属音が2度3度鳴り、2人の少女の華麗なる剣戟を彩る。

 

ガードした刃をしなやかに動かし、セシリアから少し距離を取ったマドカに、光弾が飛来する。

ボタンが処分されない様に配置されたビットが、一時その防護を解きマドカ目掛けて攻撃したのだ。

 

「…!」

 

マドカはそれを腕を交差にして防ぐ。それを見てセシリアは上を見上げた。

 

なにもビットを持っているのはセシリアだけではない、こうして防御にビットを回さないのならおそらくは―――

 

「来ましたわね…!」

 

やはり。とばかりに声を上げる。

 

セシリアの上空にサイレント・ゼフィルスのビットが並び、その殺意の光を浴びせんとばかりに斉射する。

 

冷静にそれを見極めながら、右、左と舞うような足捌きで躱していくセシリア。無論、やられるだけでなく彼女もまた反撃の一手を打つ。

 

VOLCARISER(ヴォルカライザー)!】

SLASH RISE(スラッシュライズ)

BLAZE TUNE(ブレイチューン)

 

もう一挺のヴォルカライザーを取り出(コール)して、二挺となったそれをどちらもソードモードにし、二刀流となり突っ込んでいく。

 

「ハァァァ!」

 

逆袈裟に右手の刃を振るい、続けて左手の刃を横に薙ぐ。

一撃目は防ぎ、二撃目を回転で避けたマドカはそのままセシリアと鋼音(はがね)の旋律を奏でる。

 

「フッ!」

 

セシリアの二刀が同時に下、上に振るわれガードを揺さぶる。

次に放つ双刃の左斬り上げはマドカの防御を砕き、更に鋭い突きを叩き込む。

 

「ッ!」

 

【【SHOOT RISE(シュートライズ)】】

 

タタラを踏んだマドカに、両手のヴォルカライザーをマグナムモードに切り替え、勝負を決めんと打ち込んでゆく。

 

スダダダダン!

 

「グッ――――嘗めるな!」

 

その言葉と共にマドカは右脚を振り上げる。

 

マドカが立っていたのは、先程セシリアが銃剣ライフル『星を砕く者(スターブレイカー)』が捨てた場所。

スターブレイカーを蹴り上げ、右手でキャッチし、セシリアに駆ける。

 

SLASH RISE(スラッシュライズ)

 

それに合わせてセシリアもまた構える。

左手のヴォルカライザーをソードモードにし、逆手持ちに切り替えると同時にマドカに向かって疾駆する。

 

ズダァン!

 

キィン!

 

互いに右から光を放ち、左で相手の光を振り払う。

逸らされた光弾は埠頭のコンクリートに当たり粉塵を上げて粉砕する。

 

「セイッ!」

 

「ツァッ!!」

 

剣と剣で取っ組み合い、鍔迫り合う。

ギチギチと光刃と金属ブレードが音を鳴らし、セシリアとマドカは互いに睨み合う。

 

「……ホント、強いですわね。イギリス国内に…いえ、世界中見渡しても貴女ほどのサイレント・ゼフィルスの使い手はいませんわ」

 

「フン、当然だ。ぬるま湯の中のゴミ共に私が越せるか」

 

「褒め言葉ぐらい素直に受け取れば、可愛いと思いますのに」

 

「…?まるで()()()を知ってるかのような口ぶりだな」

 

「見たことなんてありませんわよ。なんとなく美少女の類だと思っただけで」

 

「なんだそれは?…よくわからんなお前は……フン!」

 

「ハッ!」

 

まるで喫茶店で茶を飲み交わしているかのような会話を、文字通りに切り上げる。

互いの銃口がピッタリと向き合い同時に引き金が引かれる。

 

カッ

 

セシリアから放たれた翡翠色の輝きと、マドカから放たれた柘榴色の煌きが混ざり、小爆発。

そこから発生する波動によって強制的に2人の距離が離れる。

 

素早く戦闘態勢に戻ったマドカは、何かに満足したかのようにフンと鼻を鳴らす。

 

ボタン(そいつ)はくれてやる。ではな」

 

「…!させるとお思いで!?」

 

IGNI UP(イグニアップ)

 

マドカの離脱宣言に、セシリアはマグナムモードのヴォルカライザーの銃身上部を2度スライドし、エネルギーを収束させる。

 

BOMBER(ボンバー)!】

 

放たれた特大の球状の弾丸が、マドカに迫る。

しかし彼女は慌てることなく、既に引き寄せたビットからエネルギーアンブレラを展開した。

 

ドゴォォォォン!

 

そしてエネルギーの衝突で巻き起こる火焔、轟音、爆煙。

 

「逃しましたか…!」

 

煙の向こうに人影は無く、セシリアは苦い顔で小さく地団駄した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

時刻は、セシリアとマドカが戦い始めた頃に戻る。

 

「ハァ……ハァ……」

 

倉庫街の一角、ナオミはフラフラとISを装着したまま歩く。

敗北の悔恨を噛み締める彼女の表情は芳しくない。

 

(ボタン……!)

 

脳裏に浮かぶは幼馴染でもある同僚の生死。

自分もまたエドワースを処分しようとしたし、あの場で気絶した彼女の未来は死か捕獲の二択とはいえそれでも気にせざるを得ないのは感情が故か。

 

なんとか隙をつき、ボタンを取り戻せないだろうか。

 

そんな事を思案したナオミに、ISのハイパーセンサーが情報を表示する。

 

(ISが1機、こちらに接近……!?……どっち?……エム?…それとも……)

 

意識を向け、注視する。そして――――

 

「……え?」

 

――――現れたのは“白”だった。

 

バジュゥゥウ!

 

呆気にとられたナオミの身体を“白”は手に持った輝く刀で一閃。

その一撃は、ラファールのシールドエネルギーを0に追い込んだ。

 

(あれ…は……)

 

倒れ伏したナオミは、薄れゆく意識の中で“白”を見る。

 

(あれは……確か…)

 

そう。あれは確か。織斑一夏の関連資料に載っていたIS―――

 

「……(びゃく)(しき)……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それではキャノンボール・ファストの無事の終了と…ついでに織斑君の誕生日を祝って〜!かんぱーい!!」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

「かんぱーい……その扱いはあんまりじゃありませんか会長」

 

キャノンボール・ファストの夜。

今回の戦いはIS学園側の勝利であり、生徒会によるささやかな打ち上げが行われ、部外者だがラウラとセシリアも功労者としてお呼ばれした。

 

「いや〜裏での戦いは完勝だし、表の大会は平穏無事に終わったし、胃が痛くならないっていいわね!」

 

コップに注がれたサイダーを一息で飲み干した楯無が叫ぶ。

勿論、裏だろうが表だろうがISによる戦闘が発生した以上面倒な書類は確実に出てくるので虚勢だが。

 

それをなんとなく察したのか、楯無のハッチャケに全員が生温い目を送った。

 

「……んんっ!」

 

その視線に気づいたのか大きく咳払い。

そしていつもの余裕の雰囲気を出して、セシリアに、次にラウラに向き合う。

 

「ありがとうね、オルコットさん。伏兵が隠れていたし、私も確実に逃げきれたかはわからなかったもの」

 

「礼には及びませんわ生徒会長。貴族として、そして生徒として当然の事。なにより代表候補生同士ですもの、手を差し伸べることは義務といって差し支えないですわ」

 

胸に手を置き、誇らしげなセシリア。

 

逃したとはいえ、前回の時に負けた相手への雪辱を晴らし、目標であった敵の捕獲も果たせたのだから彼女は気分はとても良い。

 

「そして、織斑さんもありがとう。貴女が助けに行ってくれたおかげで、虚も怪我なく相手を制圧できたわ」

 

「会長には以前手間をかけたからな。これで礼になるのならよかった。……後、叔父とややこしいだろうしラウラでいい」

 

ドイツ軍関係で、という事を暗に示すように敬礼をするラウラ。

 

虚1人でも制圧可能だったが、彼女も加わる事で安定して亡国構成員を捕獲出来たのだ。

 

そして、最後に一夏の方を向き、ニッコリと微笑んだ。

 

「…そして、織斑君。貴方が見つけてくれなけば、この大会は酷い事になっていたでしょう……ありがとう」

 

「……いえ…会長は、貴女は俺の雇い主です。俺に報酬がある限り、会長のために動きます」

 

「じゃあ、卒業までずっとついてきてね♡」

 

楯無のウインク混じりの言葉。

それに対して、一夏は笑みを返す。

 

「ついていきますよ、貴女が俺を雇い続ける限り」

 

[MISSION7 COMPLETE]




セシリアの機体の武装はオリ要素強いにも程があるので追加解説。

ヴォルカライザーの特殊操作説明。
ガンモード時には銃身上部、ブレードモード時にはナックルガードとなる箇所をスライドする事で使えます。

ガンモード
FLAME UP(フレイアップ)
銃身上部を1回スライド。
マシンガンモードとマグナムモードの切り替えを行います。仮面ライダースナイプのガシャコンマグナムのモード切替と思えばいいと思う。
IGNI UP(イグニアップ)

BOMBER(ボンバー)
銃身上部を2回スライド。
エネルギーをチャージして特大の光弾を放ちます。弾速を低下させ停滞させる事も可能です。仮面ライダー電王ガンフォームのワイルドショットと思えばいいと思う。
MAGNI UP(マグニアップ)
銃身上部を3回スライド。
追尾する拡散光弾を放ちます。光弾の軌道は操作可能です。仮面ライダーWルナトリガーのトリガーフルバーストと思えばいいと思う。

ブレイドモード
BLAZE TUNE(ブレイチューン)
ナックルガードを1回スライド。
ソードモードとナギナタモードを切り替えを行います。
IGNI TUNE(イグニチューン)

BURNING(バーニング)
ナックルガードを2回スライド。
刀身を一時的に強化します。強化に使ったエネルギーを光刃として飛ばすことも可能です。仮面ライダーキバのザンバットソードとかそんな感じに使える。
MAGNI TUNE(マグニチューン)
ナックルガードを3回スライド。
刀身の形状を変化させます。主に光の鞭に成ったりします。

誤字脱字は遠慮なくどうぞ。わからないところもどうぞ。

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