ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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正直、シャルがこんな意味深な立ち位置になるなんて予想外だった。

最新話です。どうぞ。


07ー11 疾風の主は妖しく笑って

『英国代表候補、サラ・ウェルキンが追い上げるー!1人…2人…3人を追い抜いたぁぁぁ!!!!』

 

わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

放送部二年生のアルテミスの実況と、盛大な歓声が響き渡る。

現在は2年生のレースが行われており、セシリアの先輩であるサラが凄まじい追い上げを見せているようだ。

 

「……」

 

とはいえ控え室の一夏の関心はそこにはなく、

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

どころか箒、鈴、簪の関心もそこにはない。

 

興味があるのは己が勝利のみと言わんばかりの沈黙が場を支配する。

 

「……ちょっと出るぜ」

 

静寂を破り、一夏が席を立つ。

 

「……一夏、どこへ行く気だ貴様」

 

「レースまでには戻る。じゃあな」

 

「待て、なら何故…」

 

箒が言い切る前に、ドアが閉まる。

その様を3人は不思議な目で見るしかなかった。

 

「……何故、()()()I()S()()()()()()()()なんだ?」

 

まさか一夏が忘れたというわけでもあるまいに。

 

そんな疑問を箒は解消できぬままだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方その頃、アリーナの通路は人によって川ができていた。

 

「うわっととと…人が多いな」

 

人が殺到する混雑の中、ラウラは揉まれに揉まれ、規定の席に戻れずにいた。

 

トイレに行こうとしたら、巻き込まれて、そのまま迷ってしまったが故の悲劇だ。

 

「こっちだよ」

 

そんな中、彼女の手を引く手があった。

 

その手は流れから離れた所に一引きでラウラを引きずり出し、そのままベンチにエスコートしようとした。

 

「すまな……い…!?」

 

その手をの主を見て、ラウラは目を見開く。

 

「シャルル・デュノア……!」

 

その仰天した言葉に、目の前の“女”はクスリと答えた。

 

「誰かなその人は。僕の、名前は、()()()()()()()()()()()さ」

 

クックッと笑うシャルロットの手を振り払い、ラウラは再度キッと見据える。

 

「そうだったな。“はじめまして、困っている所をありがとう”。これでいいか?」

 

「あはは、その通り。僕と君は今日が初対面さ」

 

シャルルなんて男は、君のドイツ軍籍のように消えてしまったからねぇとシャルロットの発言にラウラはムッと顔をしかめる。

確かに『ラウラ・ボーデヴィッヒ』としての軍籍は抹消されたが、そんな軽く言われる筋合いはない。その時に築いた黒ウサギ隊との絆は今なお確かにある。

 

「……で、どうしてデュノアの若き社長が、こんな所にいるんだ?」

 

「デュノアの社長だからだよ。このレースの訓練機部門は、ラファールリヴァイブの舞台だからね」

 

なるほど、ラファールリヴァイブといえば世界第3位のシェアを誇るデュノア社の看板商品だ。

特筆すべきはその操縦の簡易性で、それによって操縦者を選ばない事と多様性役割切り替えを両立しているその機体を、レースの相棒に選ぶ生徒は少なくない。

 

その宣伝の為に社長自ら来るというのはおかしくないだろう、だが……

 

「――――違う。なぜ、貴様のようなVIP待遇の者が、こんな一般の場所にいるのかと聞いているんだ」

 

「……」

 

ラウラの質問に対し、口角を上げるのみで何も答えないシャルロット。

やがて視線をラウラからずらし、とある方向を見つめる。

 

「こちらF班。目標確認できず」

 

『F班了解。次に移れ』

 

そこでは警備部隊と思われるものたちが忙しく動く風景があった。

ラウラが自分と同じ方向を向いたことを察知したシャルロットは、ニヤついた口を開く。

 

「忙しそうだね」

 

「貴様を探しているのではないか?」

 

「それはないさ、僕がここにいる事はちゃんと知らせてあるから、さ」

 

だからなんでこんな所にいるんだ。

 

そんな視線をサラリと受け流し、シャルロットは指差した。

 

「アレ?あの人は……?」

 

「…あ?」

 

またか。

 

指を指した先を、ラウラはイライラ顔で見る。そこには――――

 

「……更識、楯無?」

 

警備部隊の制止を無視してひた走る楯無の姿があった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「悪りぃ悪りぃ、待たしたな」

 

「遅いわよ、一体どこにいってたのよ」

 

「秘密だ」

 

レース開始直前のピット内に一夏が飛び込んで来る。

 

既に紅椿、甲龍(シェンロン)、打鉄弐式は展開されており、今か今かとその時を待っていた。

 

「ま、待たした事は悪かったが…こっから先は俺の独壇場だ!」

 

「ハン!優勝するのはあたしよ!」

 

「模擬戦での雪辱、ここで果たす!」

 

「織斑、容赦はしないよ。今の私は……負ける気がしない!」

 

「来い!黒い鳥(ダークレイヴン)!」

 

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