ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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そろそろ一日更新も止まります。

そこから不定期ですが、頑張ります。


07-10 鴉は仇を忘れない

「はい、それでは皆さーん。今日はキャノンボール・ファストに向けて、高速機動についての授業をしますよ!」

 

第六アリーナに一組副担任、山田真耶の声が響き渡る。

 

「この第六アリーナでは中央タワーと繋がっていて――――」

 

そんな説明を聞き流し、一夏は自分の機体の確認をする。

 

HEAD:HF-132

CORE:CB-402

ARMS:UTSUSEMI mdl.2

LEGS:Le2L-B-V15

 

(一応高速機動に組んでみたが…)

 

KE:1323

CE:216

TE:415

 

死ぬなぁ。しかも周りのISはこれに合わせて武装すると来た。

 

当然だが、黒い鳥(ダークレイヴン)に追加パッケージなんてない。

『ガレージ』にあるものを組み合わせ、やりくりし、相手の弱点を突く事で一夏は勝ってきた。

 

無論、相手の得意なアセンならば簡単に勝つ事は出来ないだろうし、勝率は大きく下がるだろう。

だからこそのスキャンモードで、観察眼なのだ。

 

(高速機動パッケージ、ね…)

 

ふと、ACに該当するそれはないかと記憶を辿る。

 

検索結果は一件。

 

『J、調子はどうだい?』

 

『良好だ』

 

評決の日(ヴァーディクトデイ)が起こったあの日の戦い。一夏と財団の決着の一戦。

そこで用いられた財団が復元し、Jが操作したあの黒い機体。超高速で飛来するそれを運んでいたロケットのようなパーツ。

 

(あれ、つけれないかな)

 

(『Gで死ぬ気ならいいんじゃないかな?』)

 

超火力攻撃を搭載したアレをつけれれば、レースで大いに優位となるかと思ったのだが、現実とはそうは上手くはいかないものだ。

 

「それじゃあ、まずは専用機持ちの2人に実演してもらいましょう!……織斑くーん、機体を展開してもらえませんかー?」

 

「…!あっすみません」

 

「まったく、なにを呆けている一夏」

 

考え事が過ぎたと一夏はISを機動、組んだアセンを呼び出す。

既に紅椿を纏った箒は腰に両手をつき呆れている。

 

箒の機体『紅椿(あかつばき)』は第4世代の機体。

攻撃・防御・機動の全てに切替、即時対応できる即時万能対応機(リアルタイム・マルチロール・アクトレス)であり、それを実現するのが機体を構成する展開装甲である。

 

この装甲を状況に合わせて開放・停止させることによりあらゆる戦況に合わせる事が出来る。

今回の場合で言えば背部と脚部のそれを開放すれば高速機動仕様だ。

 

「悪いな。第2世代機で第3、第4世代機とどう張り合うかに必死でよ」

 

そういう意味では黒い鳥も第4世代ではないかと思われがちだが、黒い鳥が切り替えられるのは通常モード(非戦闘)時のみ、戦闘モードとスキャンモードという戦闘中に使用する状態では使えないのだ。

 

故に、第2世代。

 

通常のそれとは違い、武装だけでなく装甲も変えられるが第2世代なのである。

 

「……その台詞は私のものだと思うのだがな。一度も模擬戦で勝てないとはどういうことだ、姉さんめ」

 

「なんでもありなら、紅椿じゃなくって篠ノ之箒をつけばいいからな。……今回みたいな制限だと、流石に負けるぜ」

 

「あのー2人ともー?そろそろ始めて貰っていいかなー?」

 

「「はーい」」

 

会話を切り上げ、一夏と箒はスタート位置についた。

 

「コースは表示されたグリッドを目印に一周して戻ってきてください。では、……3・2・1・ゴー!」

 

その合図と共に機体のバーニアに火が灯り、生まれた推進力により一瞬で加速する。

 

「行くぞ一夏ァ!」

 

「来い箒ィ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

パァンパァン

 

そうして訪れたキャノンボール・ファスト当日。

花火が上がり、超満員となった会場を一夏はボォっと遠所から眺めていた。

 

「あら織斑くん」

 

「会長」

 

そしてそこに近づく人影一つ。

 

楯無は『調子はどう?』と書かれた扇子を広げて、ニコニコと笑顔を見せた。

どんなに苦労があろうと文字通りの面子はしっかり保っている彼女に一夏は「まぁそれなりに」と返す。

 

「それで…貴方の準備は出来てるのよね?」

 

ヒソリ

 

辺りを確認した楯無は一夏に耳打ちする。

 

「ま、この準備が無駄になった方がいいんですけどね」

 

ボソリ

 

呟くように一夏は返事する。

 

「そういえば、亡国の奴ら何人炙り出せました?」

 

「30人…頭痛くなるわねまったく。しかもコレでもまだ()()()()()()()()()()()()()()()……。レース頑張ってね」

 

そのまま一言二言交わし、一夏は会場に足を運んだ。

 

その最中、暗いオーラを撒き散らす簪を見つける。

 

「どうしたよ?」

 

「フッ…」

 

一夏の存在に気づいた簪は自嘲するように笑い――――

 

「――――いいアイデアだったけど、流石に一週間で完成は無理だったよ…」

 

「バカかな?」

 

「バカだよ」

 

ハァァァと大きくため息をついて、先程までのシリアスな顔を消し、一夏は曖昧な表情で曖昧な言葉を送り別れた。

 

『ハハハ…流石に一週間そこらで新規に作るのは無理だろうさ。ま、僕達の準備は一週間どころか今これからのアドリブだけどね』

 

「さぁて来るなら来いよ亡国機業(ファントムタスク)。やられっぱなしは性に合わないからな」




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