ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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新章開幕。

日常描写入れたいし、早くバトルもしたいこのジレンマ。


07-08 生徒会長は胃が痛い

「……え?じゃあ『キャノンボール・ファスト』結局行うんですか?」

 

「ええ、結局行うわよ『キャノンボール・ファスト』」

 

時刻は9時を過ぎた頃。

 

一夏は生徒会室にて、楯無の手伝いをしながら驚きの声を上げる。

 

そんな一夏に、楯無はハァァァと疲れ切った声を上げながら返した。

 

「まぁ…色々あったのよ。面子とか、秘匿とか、風評とか、ね……」

 

「……お疲れ様です」

 

げっそりと、たった1日でやつれた楯無を見て一夏は先程の可能性を信じるという無責任極まる発言を悔いた。

 

そもそも虚に聞く限りでは、急な事態にIS学園側から死人が出なかったのは楯無の指揮があったが故らしい。

彼女は、学園を襲う敵の殲滅、捕獲よりも、生徒が襲われないように、職員が死なないように命を優先した指揮を執り表沙汰にならずに収めたのだ。

 

「しかし、まぁ。行うんなら私は参加ですよねぇ」

 

ペラリ。

 

一夏は印刷されたプリントを一枚取り、内容を見てボヤく。

 

キャノンボール・ファスト。

 

一言で表すならば、ISによる高速機動バトルレース。

 

本来ならば国際大会として催されるそれは、IS学園では少々異なり市の特別イベントとして開かれる形となる。

 

学園外での実習となる為、臨海地区に作られたISアリーナを使用。

例年ならば2万人を収容可能なそれを埋め尽くす程の観客が来る祭りらしい。

 

「当たり前よ。……花形たる専用機持ちがドンドンこの学園から消えていくもの」

 

「……今頃、飛行機の中でしょうね」

 

機体のカスタムが如実に現れるこの大会では、当然だが専用機が圧倒的に有利である。故に一般生徒用の訓練機部門と専用機持ち用の専用機部門が設けられる。

 

(個人的には訓練機部門に出たいなぁ)

 

一夏は叶わぬ願いを夢見る。言うだけタダっていいよね。

 

黒い鳥(ダークレイヴン)は基本的に機動性で他のISに劣る。高速仕様に変えて来るであろうレースでは尚更のこと。

ならば純然な腕の競い合いを出来る訓練機部門の方が一夏個人としてはそちらの方がやる気も湧くというものだ。

 

話を戻そう。

 

思考を切り替え、一夏は一年生に今どれだけ専用機持ちがいるかを思い出す。

 

第2世代 黒い鳥(ダークレイヴン):織斑一夏

第3世代 甲龍(シェンロン):鳳鈴音(ファンリンイン)

第3世代 打鉄弐式(うちがねにしき):更識簪

第4世代 紅椿(あかつばき):篠ノ之箒

 

(んで、さっき旅立ったセシリアを含めた今はいない奴ら(ヨーロッパ組)を入れれば7人と…7人中5人が同クラスってオイ)

 

なるほど、専用機7機がトップを目指して凌ぎ合えば、それはさぞかし話題性に富んだものとなったろう。

というか楯無としてはそれを目玉に今年の生徒会の執行したかった。

 

(ホント厄介ごとが多い年ね……)

 

イギリスは許そう。だが、ドイツとフランス、てめーらはダメだ。

 

楯無の超個人的な意見を言わせて貰えばこれだ。

 

楯無も機体のカスタムや調整の件で急にロシアに飛ばなくてはいけない時もあった。

だから、セシリアが今日突発的に帰ることはしょうがない。それが代表候補生の務めだ。

 

だが、フランスは男装させた潜入員を、ドイツは条約違反の禁断の(VT)システムをこの学園に持ち込んだ。

 

前者は恩を売り、弱みを握る形で解決できたが、後者はよりによって生徒達がいる前で暴走した。

しかも持っていたのは零落白夜(れいらくびゃくや)。アリーナのバリアをバターのように切るそれは、最悪生徒をそのバターのようにしていただろう。

 

会長も当主も忙しくてナンボだが、わざわざ持ち込んで来るようなところを好きにはなれないのは、また事実であった。

 

そういう意味で一番大嫌いなのは亡国機業(ファントムタスク)なのだが。

 

「会長」

 

「んー?」

 

そんなことを思いながら書類を次から次へと片付ける楯無に、一夏は語りかける。

 

「次の、キャノンボールでの事なんですが…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

プルルルル

 

「……もしもし、五反田です」

 

『俺だ。一夏だ』

 

時刻は12時半を少し過ぎた頃。

文化祭を行ったIS学園は振り替え休日であるが、五反田弾の学校はそんな事関係なく通常のカリキュラムが行われていた。

四時間目の授業が終わり、さぁて昼飯だと弾が弁当を取り出した時に一夏から電話がかかる。

 

「一夏!?……よかった。何かあったかと思ったぜ」

 

『ソイツァこっちのセリフだな。着歴に何件も残しやがって…何かあったのか?』

 

「あ、いやー…よし!」

 

意を決し、口を開く。

 

「昨日の文化祭さ、俺、虚さんに入れてもらったじゃん?それでまぁ…その……デートしてた…じゃん?」

 

『ああ、爆ぜろと思ったよ。……ん?あーなるほど、虚さんに急用が出来たことか』

 

「そう!それだ!虚さん、携帯でどこかから連絡受けたら血相変えて『急用が出来た』って……まさか、何かあったのか?」

 

ここでの急用は、おわかりの通り亡国機業(ファントムタスク)の事である。

 

人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んでしまえと言うが、一夏は蹴られるだけでなく踏み潰されちまえとも思った。

 

『逆に聞くけど…なんで聞きたいんだ?』

 

「それは…その。心配だったからな…虚さんも、一夏も」

 

俺は無力なのかもしれねぇけどさ…と弾の言葉に、フゥーとスピーカーの向こうで一夏の溜息が返る。

 

『…予想通りだよ。そのとおり、何か起きたよ。でもそれが何かまでは言えない』

 

俺の立場もあるしね。と一夏は付け加え続ける。

 

『今回電話したのはそれも含めてな、今月末のキャノンボールファスト。お前は()()()()()()、勿論蘭ちゃんもだ』

 

「ハァァァ!?」

 

ガターン

 

椅子と机でけたたましい音を立てながら思わず弾は叫びながら立ってしまう。

教室中の視線が彼に集中し、思わず赤面して着席。

 

電話口の一夏からも『うるせぇよ』と告げられ、「悪りぃ」と返す。

 

「…なぁ、それはキャノンボールで昨日のような何かが起こるってことか?」

 

『起こるかもしれない。だからだよ、俺はお前らを危険に合わせたくない』

 

真剣な一夏の言葉。それは、嘗て異世界の事を話した時と同じものを感じるものだった。

その様に、弾は関わるのを諦め、一夏に全て任せることにした。

 

「……ハッ、わーったよ。俺は行かない。蘭も、数馬もな」

 

『サンキュー弾。助かったわ』

 

「人のデートチャンスを奪うんだ。虚さんに傷一つつけんなよ」

 

『ああ、その依頼。確かに承ったぜ…またな』

 

「んじゃな」

 

ピッと電話を切り、弾は弁当箱に向かい合う。

そこへ数馬が近寄り声をかける。右手には『サルでもできるギターの弾き方』があり、あいも変わらずかっこよくギターを弾きたいようだ。

 

「一夏か?」

 

「ああ、キャノンボールには行くなってよ。悪いが、聞いてやってくんねぇか?」

 

「別にそれはいいが――――」

 

――――お前、彼女いたんだな。

 

ピシリ

 

音を立てて弾の動きが止まる。

 

ギギギ

 

錆が入ったロボットのように辺りを見回すと、いつの間に彼女持ち(リア充)に対しての猛獣の如き視線を持ったモテない男達が立ち上がっていた。

 

「……よし」

 

パタンと弁当箱を閉じ、駆ける。

 

「戦略的撤退ィィィ!!!」

 

「「「逃すなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「そうか、では後は入力して、調整するだけということか」

 

アメリカ、ロサンゼルス。

夜景が一望できる一室にて、男は妖しげに嗤う。

 

「期間は?……なるほど、優秀な君達で助かるよ」

 

ペラリ

 

男は印刷されたプリントを一枚取り、内容を見てふむ、と声を出す。

 

「『キャノンボール・ファスト』にも手をまわして置いてくれ、刺激は常に与えておきたい」

 

男の発言は一夏の予想が正解だという事を告げていた。




さてどこまでいけるかな…

誤字脱字は遠慮なくどうぞ。

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