ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
HEAD:Hd-R-E06
CORE:CB-209(法界坊)
ARMS:AE-118
LEGS:L2MB-122
R ARM UNIT:hand gun(AM/HGA-121)
L ARM UNIT:battle rifle(Au-C-B07)
SHOULDER UNIT:KE missile(SL/KMB-118H)
R HUNGER UNIT:pulse machinegun(HATSUKARI mdl.1)
L HUNGER UNIT:laser blade(KAGIROI mdl.3)
【メインシステム 戦闘モードを起動します】
【システム スキャンモード】
NAME:Arachne
KE:1318
CE:1226
TE:987
R ARM UNIT:gatling gun(KE)
L ARM UNIT:
UNIQUE UNIT:armored legs(KE)
UNIQUE UNIT:laser net(TE)
(……右腕の武装はどちらも弾かれるか、幸い肩も左腕も貫通するな)
先程までのふやけた頭を一気にバトルモードに切り替え、一夏は目の前のアラクネを見据える。
(『しかし、ここまで近づかれるまでISコアに気づかなかった僕も僕だけど、君も平和ボケしすぎたんじゃないかい?』)
(返す言葉もねぇよ……グウッ!?)
財団の言葉に反応しながら、一夏は右腕を走る痛みに顔を歪める。
(財団、バイタルチェック)
(『さっき抑え込まれた時と、反撃する時で無茶な動かし方をしたせいか捻っているね。癖になるかもしれないから早めに医者にかかるのが、まぁ賢明かな』)
少なくとも今は右手武装は役立たずと。なら、早めにケリをつけないとな。
財団の分析に一夏はそう判断し、目の前のアラクネを見据える。
(クソがァァァ!このクソガキがァァァ!!!)
向かい合う
本来ならば抑えつけ、あの装置をつけた時点で彼女の目的はほぼ達成したようなものだ。
先程の抑え込みの際に彼女が使った装置。
ISを強制的に解除させてコアのみの状態に剥離させてしまう対ISの恐るべき兵器だ。
それを使い
それどころかISの展開、反撃を許し左腕を奪われる事態。
以前に女権団の刺客に対し力による反撃を行った事を鑑みてISの
今はISの操縦者保護機能により大量出血を抑えているがそれも時間の問題。
彼女が今やるべき事はここから一刻も早く脱出する事。
「ぶっ殺してやる…!」
理性ではそうとわかっているが、感情の方はここまでの事をしてくれた一夏への殺意で溢れている。
プライドが高く、直情的な彼女にとっては許せない状況だった。
「おい、巻紙さんよ」
「……あ"?」
怒り心頭のオータムに左手の銃を向けながら一夏が語りかける。
「一応だから言ってやる…投降しろ。そして洗いざらい吐け。そうすりゃ命の保証はしてやるよ、その左腕とかな」
「……ハッ」
一夏の投降勧告にオータムは笑い吐き捨てる。
そして――――
「この私をナメ腐ってんじゃねぇぞクソガキャァ――――ッ!!!!」
――憤怒の形相と共に怒りの言葉を叫んだ。
【システム 戦闘モード】
(『スキャン結果分析完了、あの装甲脚はそれ自体が近接武器であると同時に実弾兵装。加えてレーザーネットは威力よりも捕縛性に重きを置いている。注意したまえ』)
(右手の銃は?)
(『数が当たれば痛いと思うけど、そこまで気にするほどでも無いと思うよ』)
財団の言葉を耳に入れながら左腕の
激情に駆られ八本の脚のうち二本の銃口を向け突っ込んでくるオータムに対し、一夏は後ろへブーストしながら肩の
その挙動を見て、オータムは高速で接近するミサイルに狙いを合わせ発砲。撃ち落とされたミサイルは空中で閃光と共に轟音を上げ爆発。
それを囮に一夏はアラクネの左手に回る、わざわざマシンガンを持っている右手に回る必要はないからだ。
無論それはオータムも承知。予め向けておいた装甲脚の銃口から実弾が放たれる。
同時に一夏も再度持ち直した左手のバトルライフルのトリガーを引く。
キンと高い音が響き、黒い鳥の装甲に実弾が跳弾する。
ズガンと鈍い音が鳴り、アラクネの装甲を弾丸が貫通する。
「!」
「ハ、どうしたァ!そっちも片腕使えねーかよォ!ヒャーハハハ!」
一度、距離を取り直そうと思った一夏に、被弾も恐れずオータムが装甲脚を振り上げ突っ込んで行く。
時間をあまりかけられないのはお互い同じ、しかしその度合いはオータムの方が上だ。
既に重傷を負わされてるオータムからすれば最早多少のダメージは関係がないらしく、捨て身にも近い戦法となっていた。
「…なら乗ってやるよ」
そう呟くと同時に後方にブーストをふかし、こちらもまた突っ込む一夏。
ニタァと狂暴な笑みを浮かべ、オータムは装甲脚を思い切り振り下ろした。
ガキィン!
「なんだと!?」
しかしその笑みはすぐに驚愕の表情へと変わる。
振り下ろされた装甲脚を、一夏は右手の
関節を極めた時の様子を見るに右手は動かないか、少なくとも咄嗟に動かせるものではないと思っていたオータムには予想外の行動だった。
「一緒にするなよ。オバさんに比べれば元気で頑丈な若者なんでな!」
勿論、強がりである。
捻られた際に痛みで動かなくなった右腕を、一夏はパワーアシストで無理矢理動かしたのだ。
だがそれでも虚をつければ、隙は出来る。一夏はガラ空きのアラクネの胴体にバトルライフルの銃口を密着させる。そして――――
「ガァァァァァッ!!」
――――連射!連射連射連射!
眩いマズルフラッシュと共に放たれる成形炸薬弾はアラクネの装甲を貫き、機体とオータムに悲鳴を上げさせる。
【左腕 残弾30%】
「グ…ガ……ァ……」
撃たれた衝撃でフラフラと後退りするオータムに一夏は斉射を行うべく、バトルライフルとミサイルを再度構える。
構えた一夏の目線の先にいたオータムには、未だ燃え盛る怒りと共に悔しさがにじみ出ていた。
「今回は引いてやる…次は殺す、絶対になァ……!」
その言葉と共にプシュッ!とアラクネから圧縮空気の音が響く。
光を放ち始めたそれは、数瞬後に大爆発を起こした。
「グァッ!?」
【機体が深刻なダメージを受けています 回避してください】
バイザーに【STAGGER】と表示され、衝撃で一夏は身動きが取れなくなる。
光が収まり、硬直も抜けた後にオータムの姿は無く、一夏のみが残っていた。
「…今のは」
『ISのコアを取り出して、装備と装甲だけ自爆させたみたいだね』
「んな芸当できんのかよ…」
『まぁ、ACには出来ない芸当だねぇ』
ま、見ての通りの奥の手だけどさ。と財団は付け加え、周囲の分析を行う。
『スキャン完了。周辺に敵影は無いよ』
「巻紙は?」
『IS無しで君に挑むほど考え無しでは無いようだね』
「そうか…解除」
【作戦目標クリア システム 通常モードに移行します】
ISを解除し地面に降りる一夏。
「…
左腕で右腕を抑え、痛みを堪えながら先程地面に転がった妙な装置を拾いに行く。
「しかし、コイツは一体なんなんだ?スタンガンなら巻紙があんなリアクションする訳ないし…」
『詳しくは調べて見るまでわからないけど、どうやらそのへんなのはISコアを摘出する装置みたいだね。ま、軽く抵抗させてもらったけど、さ』
「…サンキュ」
敵にすれば厄介で手強いことこの上ないが、味方となればこれほど頼れる存在もいまい。そう思い一夏は礼を述べる。
『別に礼はいいさ。それより、回収し忘れてるものが有るんじゃないかい?』
「……アレ、か」
一夏の視線の先に転がっていたのは巻紙…オータムの左腕の肘から先である。
ACを操る傭兵と違い、ISを操る操縦者は乗れる者が限られている。そして限られた中から国や企業の後見を受けて初めて操縦者足り得るのだ。少なくともそこらで拾った機体で参戦できる傭兵業界とは違う。
そして、乗りこなす為の専門的な教育をなされているなら、ほぼ確実にメディカルチェックを受けている。IS学園にしろそうじゃないにしろだ。
ならば、この腕から採取できる情報はでかいはずだ。
『それにしても左腕を奪うとはね…まさに、君は彼女にとってのJというわけだ』
「なるほど、じゃあアイツのことが好きな奴が俺を殺しに来ると」
『彼女の方から殺しに来そうだけどね…というか、君は僕とJとの戦いでそういう気持ちがあったのかい?』
「……2割ほどはな」
そんな気持ち。持つだけでも烏滸がましい。そう一夏は自嘲する。
マギーの気持ちはよくわかっていたし、それを叶える手段は財団でなければなし得なかった、なにより彼女を戦場に舞い戻らせたのは己の強さだ。
そんな事は委細承知だ。だがそれでも、俺はマギーを殺したくはなかった。
ファットマンが運び、マギーが指示し、俺が戦う。そんな日常が俺は好きだった。
依頼主から騙されて多数の未確認兵器との追いかけっこから生還した際に、ファットマンが今日は生き残った記念日だなと笑ったあの日が好きだった。
レイフやハワードと共にちょっとしたパーティーを開いた際にお酒が入って楽しそうなマギーに無理矢理お酒を飲まされたあの日が好きだった。
その日常を崩したのはマギーだ。
だがその原因となったのは……まごう事なく俺、織斑一夏だ。
わかっている。マギーにとって、戦場こそ魂の場所たる彼女にとって一番幸せな結末がアレなのだと。
だからこそ俺は、本気で挑み、殺した。
だがその結末に水を差したのは財団だ。あの時、あの場所で財団は踏みにじった。
俺は怒った。マギーとの戦いの疲労など、心労など一気に吹き飛んだ。怒りに任せて財団が持ち込んだ多数の兵器やスカベンジャーを叩き潰した。
しかし、ああまで怒りを抱いた相手である財団と今こうやって談笑し、協力しあうとは人生とは不思議なものだと思う。
そんな事を考えながら一夏は左手だけで器用に携帯を取り出し、プッシュ。
宛先は勿論、生徒会長の楯無だ。彼女はこの学園の警備に精通しているし、一夏からすれば直属の上司だ。
(平和ボケ、か……)
耳元で響くコール音を聞きながら、先程の戦闘時に放たれた財団の言葉を思い出す。
確かに自分は、少し緩んでいたのかもしれない。こんなんであの世界に帰ったら一発でお陀仏だ。
(そういえば。これが初の、互いにISを使った殺し合いか…)
しかし、出るのが遅い。まさか会長の身にもなにかあったのだろうか――――
『ハイ、もしもし』
「あ、よかった。もしもし織斑です……あれ?その声は…虚さん?」
『ええ、今会長は手を離せないの。丁度よかった、織斑くんにも伝えるわ』
「……」
『以前貴方を襲った大量の無人ISを狙ってる奴等が出てきて、今警備と交戦しているの!』
「…なんだって!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ターゲットは搬入ドックに向かって逃走中!……ダメです!抵抗が激しく追跡できません!』
「最低限交戦できる人数を残して別ルートで周りなさい!」
生徒会室では楯無が緊急事態に対し、指示を飛ばしていた。
その様子に普段の余裕は無く、焦りのみが表れていた。
「会長」
「何!今忙しいの!」
「織斑君から連絡です。第3アリーナ近くの休憩所で所属不明のISと交戦したと…」
「ああもう次から次に!……織斑君は無事?」
「はい、ISを撃退し相手の左腕を…」
「ならいいわ、怪我してるようなら医務室に行くように伝えてちょうだい!」
虚による一夏からの連絡を切り、再び指揮に専念する楯無。彼女の使命として学園の生徒の命は絶対に守る為にも、まずは今学園内で暴れている組織…
(全く、最近平和ボケしてたかしら……!)
ISまでもがこの学園に潜入し、騒ぎを起こしていることが判明した以上何が起こっても不思議ではない。
楯無は事態の大きさに思わず歯噛みした。
次回 セシリア対マドカ BT兵器同士の対決(BT兵器がぶつかるとはいってない)
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