ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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申し訳ありません、この様な遅れぶりで(^U^)

……冗談はともかく遅くなりました。リアルが落ち着き次第定期投稿に戻れると思いますのでご勘弁を。


06ー07 夏休みの過ごし方(完結編)

夏休み 篠ノ之神社

SIDE:一夏

「最強はディケイドよ!」

「いいや、RXだ!」

 

(平和だなぁ…)

 

串を片手に言い争う更識さんとラウラを眺めて、神社の縁側で肉を齧る。

 

今日は篠ノ之神社を借り切って箒主催のバーベキュー大会だ。

 

「ほう。お前も来ていたとはな、ジェニー」

「だ〜れかと思えば、お前さんかい技術主任。ハンサムボーイに招待されたのか?」

「まあ、そういうことだな。あいつは中々に興味深い」

 

右を見ればジェリーフィッシュ剣道部長がクローバー技術主任と話しており、

 

「へぇ、来年IS学園に入学する気なんだですの」

「は、はい!」

「緊張しなくていいですわよ。私はセシリア・オルコット。よろしくお願いしますわ」

 

左を見れば、蘭がセシリアに挨拶している。

 

…うん。箒主催と言ったけど大半の人は俺が呼びました。

 

「元気ないわね。織斑君」

「如月さん…」

 

ヌボーッとしていると紙皿に幾つかの野菜を乗せた如月さんが隣に座る。

 

「なにかあったのかしら?」

「……うーん」

 

なにかあったと言われればそれこそ色々あった。

シャルロット・デュノアが社長になっていたり、零落白夜が施設破壊に使われてたり、俺に似た誰かがいるという噂が聞いたり、ガーダイン委員と会談する事になっていたり、銀の福音とその操縦者が行方不明になっていたり、シュヴァルツェア・レーゲンが強奪されていたり……。

 

ただ、一つピックアップするとすれば…

 

「……蘭が口を滑らしたことかな」

 

「あら?そんなに私に知られたくなかったのかしら?」

 

何を滅相な。

 

「別に如月さんに聞かれるのはいいんだよ。どうせ話すつもりだったし。問題は『漏らしちゃった』ってことだよ」

「……意外と細かい事を気にするのね」

 

意外ってなんですか。俺はそれなりに神経質だよ。

 

「細かい事って言うけどさ。この話は国の方には聞かれたらダメなんだよ」

「…まぁ、聞かれた瞬間に男性操縦者を逃さない為に監禁エンドでしょうね」

 

ヤンデレのマギーに愛されて夜も眠れないエンドならそれはそれで歓迎なのだが、むさ苦しい男に取り押さえられるエンドなんて嫌だ。

俺の機体はダークレイヴンだけどダークゲイヴンじゃない。

 

ぶっちゃけ人生にセーブポイントもコンティニューも無いのでハッピーエンドを目指したいのだが。

 

「その件について私からも質問いいかしら?」

「何?」

「どうして、彼方に行こうと思っているのかしら?」

 

……?

 

「いや、お仕事の報酬だし…「そこじゃないわ」……?」

 

「傭兵だとか、好きな人がいたとか、そんな理由を全部抜きにした理由よ。……貴方、他に理由があるのでしょう?」

 

……流石っす。如月さん。

デュノアの時のように、その洞察眼は凄い的中率だ。

 

「まぁ、くだらない厨二病みたいな理由だよ」

 

「厨二病?」

 

「ほら、今の俺って百人中百人が”特別”と述べる環境にいるじゃないか」

 

「女性にしか動かせないISを起動させ、女の園でのたった一人の男。……確かに、ライトノベルの主人公みたいな特別な環境ね。それもハーレム系の」

 

正直、こんな所でハーレム出来る主人公が居たら見てみたいが。

 

「この環境になる前から、俺の居た環境って普通とは言えるものじゃ無かったんだよ」

 

「……」

 

「ちょっと、暗い話になるけどさ。俺の親って俺が小一の時に蒸発らしいんだ」

 

「らしい?」

 

「小一よりも前の事を思い出せないんだよ。とにかく、そこからが俺の”特別”の始まりだった」

「いつまでも親の残した金で生活が出来る訳でも無いし、千冬姉は高校生ながらバイトで稼いでいたんだ。働ける年齢でもない俺はそんな千冬姉に負担をかけない為に家事全てを受け持った」

 

「……いい話ね」

 

「そうだね。確かにいい話だ。感動的だよ。でも無意味だ」

「世の中には俗に言う『スピーカー』っていう人間がいてさ、そういう人間はどこからともなく噂を嗅ぎつけて吹聴するんだ」

 

「吹いて回られたのね。『善意』の皮を被って」

 

「そうだよ。一週間もしない内に『両親のいない哀れな姉弟』が出来上がった。

まぁ、商店街でオマケしてもらえたからそこはメリットかな?……あの日が来るまでは」

 

「あの日?」

 

「第一回モンド・グロッソ。……ISが周知の『世界最強の兵器』となったと同時に俺が『ブリュンヒルデの弟』になった日だよ」

 

「……成る程、その日は確か『女尊男卑』が『力』を持ち始めた日ね」

 

「…そ。近所も商店街も、みんなそれにやられちゃってね。前の日まではオマケをくれた八百屋のおじさんが次の日には恨みの視線をくれたよ」

 

「うわぁ……」

 

「それに学校での生活も変わってね。成績優秀で文武両道でなければ『千冬様の弟なのに』と陰口を叩かれるようになってさ。新しい友達は鈴を除けば一人もできなかったよ」

 

「よく平気だったわね。この世を相当恨んだんじゃないかしら?」

 

「ぶっちゃけその辺は五反田家や、数馬、鈴の存在がでかかった。それに……恨むと言うよりも叫びたかった」

 

「叫びたかった?」

 

「『俺は好きで”特別”になったんじゃない。俺の立場が羨ましいならなってみろ』てさ」

 

「……」

 

「芸能人や政治家みたいに”特別”になりたくてなった人とは違う、俺の”特別”のなり方は『凶悪犯罪者の家族A』に似たものだよ」

「実際に凶悪犯罪者なら恨むこともできたよ。でも、千冬姉は若い身で安定した生活を得る為にIS関連への道に進んだんだ。感謝こそすれ、恨むなんでできないよ」

 

「それと彼方の世界がどう繋がるのかしら?」

 

「あの世界に行って、ファットマンに拾われてから生活の基盤を整えている内に気づいたんだよ。俺は”特別”じゃないって」

 

「”特別”……じゃない?」

 

「『ブリュンヒルデ』の栄光はあの世界には無いし、『親なき子』なんて珍しくも無かった。あの世界の俺はどこまでいっても『唯の身元不明者』で『傭兵』だったんだよ」

「ハリボテを見ずに俺を見るあの世界の人達に俺は嬉しくなった。……そして、同時に元の世界に帰るのが怖くなった」

 

「……」

 

「せっかく”普通”になれたのに元の世界に戻れば途端に”特別”に逆戻り。だけど、千冬姉に自分の生存を知らせておきたい。二つの感情が自分の中でひしめき合った」

「そう思いながら傭兵稼業を続けていたらいきなり元の世界にカムバック。『世界唯一の男性IS操縦者』と云う”特別”を手に入れてしまった……という訳さ」

 

話を終えてすっかり冷めた肉を齧る。

硬くて不味い。

 

「織斑先生に自分の生存を知らせ、そして彼方の世界に行く。貴方にして見れば万々歳な状況ね。……あら、ありがとう」

 

「まぁ、まとめるなら特別扱いに嫌気がさしたから逃げだしたいっていうお痛たしい厨二病さ。……礼はこっちの台詞だよ」

 

自分の長々しい退屈な話を聞いてくれた如月さんのコップにお茶を注ぎ礼を述べる。

 

「……ねぇ、織斑君」

 

お茶を一口啜り、如月さんが口を開く。

 

「ISが無ければ、この世界はどうなってたのかしら?」

 

「……さあ?」

 

別にその事を考えたことが無いわけではない。

唯、考えれば考えるほどISがこの世に貢献したか否かに疑問が生じるのだ。

 

学園で言われているように宇宙開発に使われている話は聞いた事が無いし、ACのように戦争に使われている話も聞かない。そしてそもそもISの技術が他に転用されたという話も聞かない。

確実に起こしているのは偏った思想を世の中にばらまいているだけ。

 

「今よりは……平和かもね」

 

「そうね……」

 

「「……」」

 

沈黙。凄く気まずい。

 

「ねぇ」

 

暗い空気の中、如月さんが再度口を開く。

 

「何?」

 

「織斑君は自分を”特別”だと思われるのが嫌だと思っているかもしれないけど、織斑君は”普通”の高校生よ。……私が保証するわ」

 

「え?」

 

次の瞬間。如月さんはとんでもないことを口にした。

 

「だって、コスプレ物好きなんて珍しくも無いでしょう?」

 

「ちょっと待って、なんで如月さんが俺のベッドの下のラインナップを知っているの?」

 

「……オルコットさんからの情報よ。大会の件で部屋に上がった時に見たって」

 

「……セシリアァ!」

 

話を聞くや否や、既に何も刺さっていない串を放り投げて俺はセシリアへ走った。

 

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夏休み 篠ノ之神社

SIDE:如月

『タカ、ギン!トラ、ギン!バッタ、ギン!トリプル!スキャニングチャージ!』

 

「セイヤーッ!」

 

『EXCEED CHARGE』

 

「ディヤアアァ!」

 

「なにをやっているバカどもォ!」

 

ドゴォッ

 

「「ギャアアアァァァ!!」」

 

メダジャリバーとカイザブレイガン(共に更識簪の私物)を構えて、互いに切りあおうとする織斑一夏とセシリア・オルコットに織斑千冬の二連蹴りが炸裂する。

 

「あーっと!叔父とセシリアに強烈なキックが炸裂!」

 

「これは痛い!さあ、どう立て直すのか!?」

 

さっきまで最強のライダーは誰かという議論に夢中になっていた筈のラウラ・ボーデヴィッヒと更識簪がいつの間にか実況に回っており、周りの人たちもヤレヤレとはやしだてる。

 

「やれやれ…」

 

野菜を口に入れながらため息。

 

つい先程まで自分の異常性を忌んでいた悲劇の主人公は何処へやら、今の彼には笑顔があった。

 

「織斑一夏」

 

境内の騒ぎにかき消されそうな大きさの声がふと、口をつく。

 

「異常であろうと、普通であろうと君はまっすぐな人間だ」

 

「だからこそ、そのまっすぐさ利用されないでくれ」

 

「亡国機業や篠ノ之束に」


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