ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
8月 亡国機業トレーニングルーム
SIDE:マドカ
「1245…1246…1247…」
息を乱さずにカウントしながら腕立て伏せを続ける。
「やっはろーえ〜む〜♪」
「……1248」
「……え〜む〜?」
なにやら幻聴が聞こえる。
おかしい。この程度で疲れる身体ではないのだが。
「えーむー!えーむー!えーーむーー‼︎フッフー!」
「……うるさいぞ、スプリング」
「Mったら、聞こえてんじゃん。ひどいな〜」
「…ハァ」
この見るからに脳内が年中春真っ盛りの女はスプリング。
クルクルパーな言動を除けば優秀な同僚だ。
「…で?何の用だ」
「んふふふふふーん。良い知らせとーよくわかんないお知らせがあるんだー♪どっちからにする?」
「……良い方」
「えっとねー
「ほう…」
吉報ではあるが、よく考えると既に専用機持ちの私には関係無い事だ。
「もう一つは?」
「んー?
「そうか…」
まぁ自国の専用機が他国の代表を殺しかねない状況が作られたのだ。
一人に責任を押しつけ暗殺などはありふれているだろう。
「ところでさー。なんで腕立てしてたの?将来の夢はボティビルダー?」
「違う。日々の日課だ」
「真面目だよねー。Tみたいに夏休みを取ればいいのに」
「あのなぁ」
まったく、どうしてこいつの話題はコロコロ変わるのやら。
これで『シーズン』の中でも二番目の常識人なのだから恐ろしい。
そもそも”T”はIS学園に潜入しているから、あちらの予定に合わせているだけだ。
「でもおかしいよね〜。”T”って名前に一つも”T”要素が無いのに”T”だもん。それに”T”なのに『アルファベッツ』じゃないし」
「……そうだな」
そういやそうだ。だが、あのお方の事だ。私には予想も出来ない理由でつけたに違いない。
「まだ、なにか用があるか?」
「んー?後は…今度の文化祭襲撃だと『シーズン』からはサマーとオータムが出て、『ウェザー』からスコールが出るってことぐらいかな」
「オータムにスコールか…」
恋人なのはいいが職場でイチャつくのはやめてほしい。
おかげで大好きなココアが飲めなくなる。
「ねーねー。『アルファベッツ』からは誰が行くのー?」
「”B”に”N”だ。正直、期待はしてない」
「んふふふふふ。Mったらひっどーい♪」
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夏休み 五反田家
SIDE:蘭
「はぁ……」
ベッドの中で一人ため息を吐く。
『行きます。あの世界に』
脳裏に響くは
『今日は俺の奢りだ。あっちに行くのを後悔するぐれぇの飯食わしてやる』
お爺ちゃんのあの言葉で私が口を出せる雰囲気では無くなったが、私個人は一夏さんが異世界に行くなんて嫌だ。
それも、殺し合いが日常の世界なんかに。
『お兄!今からでも一夏さんを説得しよう!』
だから、例え確率が低かろうと一夏さんを説得するために一夏さんの親友のお兄に協力を求めたのだが、
『……わりぃ。俺はあいつを送り出す』
返ってきたのは、拒否だった。
『最初は俺も説得しようと思ったさ。でもさ、この世界にいてあいつは幸せになれるのかって思ったらさ……』
『どういう……こと…?』
『あいつの、一夏のいる環境って羨ましく見えるけど実際はかなりヤバイんだ。
あいつは今、世界唯一の男性IS操縦者として世界中から注目されてる。他の男性IS操縦者が現われない限りずっとだ。
世の男性からは女尊男卑に対しての切り札として、世の女性からは女尊男卑を脅かす不穏分子として、研究者からは貴重なサンプルとして、政治家からは外交の交渉材料として、
どこに通うのも、どこに勤めるのも、誰と付き合うのも、誰と話すのも、いつ休むのも、何かを言うのも、全部監視される。そこに
スラスラとお兄の口から出てきたのは筋立った反論。私はそれに何も言えなかった。
「……」
結局、何が正しいのかがわからない。
自分のこの気持ちはもしかしたらただの余計なお世話なのかと、思考がループする。
〜〜♪
メールだ。ゴロリと寝返りスマホを取る。
From 如月譲子
To 五反田蘭
題 今度の日曜日
本文 一緒にプールに行かない?ウォーターワールドのプレオープンチケットが二人分取れたの。
「如月…さん……?」
◇
夏休み 帰り道
SIDE:蘭
「あー気持ち良かったー!」
「そうですね。今日はありがとうございます」
スレンダーな身体を攻め気味なワンピースで包み濡れたロングの茶髪をたなびかせながら背伸びする隣の彼女に相槌をうつ。
如月譲子。
一夏さんの元に行くために私に勉強を教えてくれる人。
そして––––––
『IS学園での交友関係?うーん…新しい親友は如月さんとセシリアかな。……えっ⁉︎如月さんここの常連⁉︎』
–––––––––あの人の、親友。
「……如月さん」
「なにかしら?」
「どうして、私を誘ったんですか?」
「……心配だったからよ」
「心配?」
「ええ、貴女、7月の終わりあたりから急に元気を無くしてたじゃない。なにか、励ましになればって思ってね」
「……如月さん」
『今日は俺の奢りだ』
『俺はあいつを送り出す』
「如月…さん……」グスッ
「!? 蘭ちゃん⁉︎どうしたの⁉︎」
ごめんなさい。一夏さん。
こんな気持ち、もう限界です。
「実は……」
「実は?」
「一夏さんが、異世界に行くって」
お待たせしてすみませんでした。
このISVDも二カ月で50話近くなるという私自身が困惑する更新スピードでした。
話としては後二話程で『起承転結』の『承』が終わります。
ですが、リアルの忙しさ増してきて一ヶ月も更新を遅らせるという情けない事態を招いてしまいました。
この先しばらくもかなり遅れるので、キャラ達の現状のまとめを置いておきます。
織斑一夏
・原作、今作共に主人公。その割には主人公らしくない。
・クラスでの評判は『いい人だけど厄介』理由としては一夏に関わると過激派に目をつけられるため。
・本番に強いが、データがあれば最強に近い。事実、事前データがある戦いは全てノーダメージで勝利している。
セシリア・オルコット
・原作ではヒロイン、今作では相棒枠。
・クラスでの評判は『高慢だが、口だけの実力ではない』なんだかんだ初日の事はクラスメートの根に持たれてる模様。
・原作では幾つかあった弱点が無くなっており、BT兵器稼働率も原作より高い。現在唯一の後継機フラグ有り。
篠ノ之箒
・原作ではメイン?ヒロイン、今作では振られヒロイン&成長枠。
・クラスでの評判は『コネで専用機を貰った卑怯者』あの臨海学校で、かなりの確執が生まれてしまった。
・実力は原作と同じく発展途上。ただし、千冬が直接剣の師になっている。
鳳鈴音
・原作ではヒロイン、今作では箒と同じく振られヒロイン。
・クラスでの評判は『頼れるクラス代表』鈴は二組。ギスギスしない二組。
・実力は原作より高い。でも、作者は甲龍の強化案が思い浮かばない。
織斑ラウラ(旧名:ラウラ・ボーデヴィッヒ)
・原作ではヒロイン、今作では姪っ子。どうしてこうなった。
・クラスでの評判は『クラスのマスコット』だが、一夏やセシリアなどの問題視されている人物との関わりで一部からの目が厳しい。
・実力はあるのだが、原作専用機持ちの中で唯一没収されている為、見せることはない。
シャルロット・デュノア
・原作ではヒロイン、今作では…なんだろう。
・クラスでの評判は『居たなそんな奴』人の噂は七十五日。
・実力はまだ不明。『彼』と呼ぶ人物となにやら連絡を取っているようだが……。