ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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HEAD:KAGERO mdl.1
CORE:CA-309(ジャック)
ARMS:Ar-P-K17(道鬼斎)
LEGS:SAWARABI mdl.1
R ARM UNIT:blade(MURAKUMO)
L ARM UNIT:blade(MURAKUMO)
HUNGER UNIT:heat pile(Au-R-F19)
HUNGER UNIT:handgun(AM/HGA-304)

……防御?白夜の前では無いに等しいから良いんだよ


06ー02 ごめんね

終業式後 第一アリーナ

SIDE:一夏

『バトル、スタート!』

 

『システム、スキャンモード』

 

NAME:Byakusiki

KE:1253

CE:1111

TE:833

R ARM UNIT:blade(KE)

L ARM UNIT:

HUNGER UNIT:flash grenade(−−)

ONEOFF ABILITY:reirakubyakuya

 

開始早々にスキャンモードに切り替え、右方に移動。

 

ビュンッ

 

瞬間、さっきまでいた場所に白い光筋が瞬く。

 

(早い…でも!)

 

『システム、戦闘モード』

 

この斬撃なら、想定の範囲内だ。

両手にブレード(MURAKUMO)を携え千冬姉に突撃を仕掛けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

終業式後 第一アリーナ管制室

SIDE:楯無

『こ、これはぁ⁉︎』

「ええっ⁉︎」

「どうして⁉︎」

 

実況と虚と簪ちゃんが驚愕する。

それはそうだろう。触れられたらアウトの織斑千冬に対し、近接戦を仕掛けているのだから。

 

「お姉ちゃん!これどういうこと⁉︎」

「落ち着いて簪ちゃん。be koolよ」

 

とはいえ、私も織斑君も考え無しにこんな真似はしない。

 

確かに近接戦に強く、一撃で相手を屠れる刀『雪片弐型』を持つ織斑千冬に対し遠距離戦に徹するのは定石(セオリー)だろう。

だが考えて欲しい。

はたして、世界最強(ブリュンヒルデ)はそんなテンプレ戦法で倒せる相手かどうかを。

 

現に対策を立てる為に現役時代の織斑千冬の映像を見てみたが、遠距離戦を選んだ対戦相手は弾を切られ、防がれ、避けられと散々なものだった。

だが逆に、織斑千冬に近接戦を挑む相手はいなかった。

 

織斑君はここを突こうと言った。

無論、あのVTシステムの時でわかるように織斑千冬は対近接が苦手な訳ではない。

だけども織斑千冬に対近接戦のノウハウ自体は少ないはずだ。

動きを全て頭に叩き込み、斬り方を予測しきれば倒せると。

 

その為の特訓はこうだ。

まず、現役時代の織斑千冬の映像から『どう動くか』『どう動けばいいか』のシミュレーションを行う。

その後、武道の心得がある私がシミュレーション通りに動き避けて捌く練習をする。

後はこれの繰り返しだ。

 

『これは凄まじい!織斑千冬、まさかの一方的な守勢だぁー!』

 

だが、この作戦は言って仕舞えば一発芸と同じだ。

今でこそ一方的にダメージを与えているが、対応されれば瞬く間に逆転されるだろう。

これは織斑千冬との勝負ではない。時間との勝負だ。

 

「織斑君…焦らずに急いで…」

 

アリーナの中で前に後ろに、右に左に、上に下に『雪片弐型』を避けて両肘の刃で捌く織斑君に呟く。

……頑張って。

 

「……ねぇ。ホントにお姉ちゃんって織斑一夏の事が好きじゃないの?」コソコソ

「なんでも、『可愛い弟分』だそうですよ。後、織斑君用のアルバムもあるとか…」コソコソ

「シスコンと〜ブラコンを〜併発してる〜」コソコソ

 

そこ、聞こえてるわよ。

てか、それは生徒会用のアルバムよ!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

終業式後 第一アリーナ

SIDE:千冬

『これは凄まじい!織斑千冬、まさかの一方的な守勢だぁー!』

 

(さすがだ…一夏……)

 

鍔迫り合いを強引に弾き、距離を取る。

 

てっきり銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)戦で見せた射撃の腕で勝負してくるか思ったら、まさか自分の得意な距離に入ってくるとは思いもしなかった。

 

『私』に対する戦法研究を重ねてきたのは動きでよくわかる。

放つ斬撃は全て空を斬る。交えたフェイントは全て看破される。罠として作った隙には徹底して踏み込まない。逆に意図せずに作ってしまった隙には容赦無く斬り込む。

 

どれもこれも『私』を理解し切らなければ出来ない芸当ばかりだ。

それだけ、あの世界に対しての思いが強いのだろう。

 

(だがな…一夏…)

 

今からお前は負ける。それは決定事項だ。

 

理由は簡単だ。

昔から一夏は調子に乗ると左手を握っては開く癖がある。

そして、今武器を握っている左手をグッパーしているのだ。

 

この時に不意を打てば勝てるだろう。

普段こそしないが今日の私はなりふり構う気など無い。

 

(横暴と言えばいい、傲慢と罵ればいい、だが、私はここでお前を戦場から引きずり出す!)

 

ヒュン カッ!

 

『‼︎』

 

懐に隠しておいた閃光手榴弾を放る。

放たれた強烈な閃光は辺りを包み込んだ。

 

(止めだ!)

 

固まっているであろう一夏のいる場所に『雪片弐型』を振るう。

 

これで、決着した

 

ビュン

 

…………筈だった。

 

「な…⁉︎」

 

刀を振り抜き驚愕する。

そこにいる筈の一夏がいないのだ。

 

ガシュン

「⁉︎」

 

着弾音。

自分から見て右後方で、一夏が銃口を向けていたのだ。

 

そのまま右手のパイルと共に一夏が突っ込んでくる。

だが、ハンドガンの衝撃が私に回避を許さない。

 

『ごめんね』

 

その言葉と同時にパイルが私に突き刺さる。

パイルは、一撃でSE(シールドエネルギー)を消し飛ばした。

 

『けっちゃぁーく!織斑千冬シールドエネルギーエンプティ!

勝者、織斑一夏!』

 

「負け……た…?」

 

『なんということでしょうか!

伝説のブリュンヒルデが、まさかの敗北ゥー!』

 

アナウンスを聞くも、感覚は未だに何処か浮いたままだ。

 

『大丈夫?千冬姉』

「……ああ」

 

一夏の手を取り地上に降りる。

漠然と残っていた浮遊感は、徐々に消えていった。

 

「……ハァ」

 

ため息と共に理解する。

始めから、一夏に嵌められていたのだ。

 

近接戦で私に触れれば倒せると思わせ、焦らした所に私が知っている癖で私に大振りな攻撃をさせる。

 

ただそれだけの策。それに一夏は引っ掛けたのだ。

 

(結局、私は一夏の事を理解しきれてなかったということか…)

 

今思えば、あちらの世界で殺し合いをしてきた一夏が、そんな癖を直さずに放置する訳無い。

『一夏はずっと変わって無い』その思い込みが私を敗北に追い込んだのだ。

 

『千冬姉…』

「一夏、私の負けだ。だがな、戦死はするn––––」

『ごめんね』ギュッ

「⁉︎」

 

自分の負けを認めて去ろうとすると一夏が私を抱き締めた。

 

「い、いち…か…?」

『ごめんね。千冬姉を一人にしちゃって、寂しかったよね。悲しかったよね』

「……」

 

唖然とする私をそのままに一夏は言葉を続ける。

 

『でもね。俺は自分で決めた道に行く。絶対に戦死したりしない。

だから……安心して』

「……ああ、行ってこい」

 

ギュッと一夏を抱き返す。

前みたいに離さないようにではなく、優しく包むように。

 

きっと大丈夫。このぬくもりが、確かに『私』にあるから。




今回の補足

今回の一夏君の無茶な戦法は、千冬のデータがあってこそです。
普段はやりません。

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