ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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05ー02 予測不能

臨海学校二日目 海上

SIDE:千冬

ギュィィン

 

アメリカの第三世代機『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』の攻撃をスレスレで躱す。

 

『織斑先生!次は右から!』

 

ギュィィン

 

織斑の警告通り右から追撃が襲いかかる。

避けながら近寄ろうと加速するが、左腿に攻撃が掠る。

 

(『白式』が私についてこれてない…!)

 

思わず歯噛みするが、それで事実は変わらない。

 

『千冬さん!大丈夫ですか!?』

「篠ノ之!お前は下がってろ!オルコット!」

『はい!』

「何秒いける?」

『3秒!』

「頼む!」

 

二人に指示を出した後、『雪片二式』を構え、福音を見据える。

まったく…どうしてこんなことに…。

 

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回想

SIDE:千冬

「ちーーーーちゃーーん」

 

事の始まりは(アイツ)だった。

 

臨海学校の二日前、『臨海学校中に篠ノ之箒に専用機を渡す』と言う一方的な連絡のとうりアイツはやってきた。

 

専用機の名は『紅椿』。

アイツは、未だどこの国も開発に成功してない第四世代機を惜しげもなく妹に与えた。

ここまでならまだいい。

 

「お、織斑先生!!大変です!!」

 

そんな時だった。山田君が血相を変えて走ってきたのは。

話を聞くとハワイ沖で試験運用をしていたアメリカ・イスラエルによる共同開発第三世代軍用IS、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が原因不明の暴走、制御を受け付けずに日本に急速接近中とのことだ。

これに対しIS委員会はIS学園に対処を要請。日本政府及び学園上層部がこれを承諾したそうだ。

 

福音は広域殲滅を目的とした特殊射撃型。しかもオールレンジ攻撃を可能とし、機動力もある故に移動しながら広範囲に攻撃することを得意としており、偵察は不可能。

幸いにも、オルコットが高速戦闘用の換装パッケージをもっていたことで一撃は攻撃可能になったが一撃で福音を仕留められる機体が無かった。

 

一番火力があるのは織斑のパイルだが、近接専門ではない奴に当てろと言うのは苦だ。

 

「せめて、暮桜があれば––––」

「暮桜は無くても、同じ物はあるよ。ちーちゃん」

 

全員がそれで悩んでいると、どこからか入り込んだ束が口を開いた。

 

「『白式』にちーちゃんが乗れば、墜とせるよ。それに『紅椿』は、高速戦闘にも対応できるからバックアップ要員としていっくんもいけるし」

「待て、『白式』は––––」

「あるよ、今ここに」

「……」

 

私は絶句した。

だが、迷っている暇は無かった。

 

「よし!織斑とオルコット、私と篠ノ之で出撃。

織斑とオルコットは私の援護、篠ノ之は私の運搬が済み次第退避だ!」

 

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臨海学校二日目 海上

SIDE:千冬

ギュィィン

「ぐっ…」

『キャッ…』

 

別に強襲作戦は失敗した訳ではない。

初期状態の白式を束が手を加え、使用可能になった『零落白夜』で私は銀の福音を墜とした。

 

『…!。織斑先生。密漁船が!』

「何⁉︎」

 

だが、墜としたはずの福音は二次以降(セカンド・シフト)を行い、再び立ち上がった。

ご丁寧に私を第一に警戒し、私を近づけない事を優先しており、初期状態の白式では追いつけないのだ。

 

「織斑。お前は密漁船の避難に当たれ」

『了解』

『待て一夏! そんな犯罪者など見捨てればいい!』

 

攻撃を受け、吹き飛ばされかけたところから復帰すると、福音の照準が篠ノ之に向かった。

 

『! 箒、前!』

『え…?』

『篠ノ之さん!』

 

ギュィィン

 

『ぐあっ…』

 

『オルコット⁉︎』

 

身を呈してオルコットが庇う。

シールドエネルギーを失ったのか、オルコットは海に落ちていく。

 

「オルコッ『千冬姉‼︎』…!」

 

一夏の言葉に福音が隙だらけだと気付く。

好機!

 

「落ちろぉぉぉぉ!」

 

ザンッ!

 

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臨海学校二日目 海上

SIDE:一夏

『……篠ノ之、後で話がある』

『…はい』

 

福音の操縦者とセシリアを抱えた織斑先生が厳しい目つきを箒に向ける。

 

『一夏…』

「……悪りぃが、擁護はできねーよ」

 

結果的に隙を作れたとはいえ、今回の箒の行動は危険そのものだ。

退避しろと言う命令の無視に周りへの不注意、あまつさえ同隊の俺に身勝手な指示。これが軍隊なら処罰物だ。

 

『まぁいい。帰るぞ』

『はい…』

「はーい」

【システム、スキャンモード】

 

帰るために省エネしようとスキャンモードに切り替えた時、リコンがあるものを捉えた。

 

「……織斑先生。箒。急いで逃げて、時間稼ぐから」

『『?……⁉︎』』

 

俺の向いた方向にハイパーセンサーを使った二人の顔が驚愕に染まる。

 

『なんだ…あれは…?』

 

俺たちの目の前の海。そこから、無数の無人機がこちらに向かっていた。

 

『〜っ! 織斑、倒れるなよ⁉︎』

『一夏…』

「……了解」

 

箒が織斑先生を乗せ、高速で飛んでいく。

さて、時間稼ぎでいいらしいが––––

 

––––別に倒してしまってもかまわんのだろう?

 

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「うんうん、これでよーやく実行できるね!」

「いっくんたら、あんな無銘(名無しのゴンベェ)に取り憑かれちゃって」

「でも安心して!そんな物、この束さんが壊してあげるから」

「そしたらいっくんは束さん特製の白式を使うんだ……うん、想像しただけで似合いそう!」

「これで、箒ちゃんもいっくんと並び立てるね!」

「さぁ、やっちゃえ、ゴーレムⅡ!」


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