ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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今回かなりめちゃくちゃです。


04ー02 直る関係

夕方 夕焼けの河川敷

SIDE:一夏

「……」

 

夕方、俺の家からそう遠くない河原の土手で俺は救急箱と頭を抱えていた。

 

まさか自分の軽率な発言で、

 

ベキィ ドゴォ

 

会長と会長の妹が殴り合う事態が起こるなんて。

 

原因?

それは、昨日に遡る。

 

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昨日の放課後(回想) 生徒会室

SIDE:一夏

「えーと…会長と妹さんの関係を総括すると…」

 

・日本の暗部、更識家に生まれたとても優秀な姉の会長とそこそこ優秀な妹の簪さんはつねに比較されてきた。

 

・妹さんは比較されるのを嫌い、会長に対して悪感情を抱く。

 

・会長は会長で、妹さんを裏社会から守ろうと何もさせないように手を回してしまい、その件で姉妹仲が険悪になる。

 

・そして、俺の登場で『白式(びゃくしき)』の開発に人を取られ妹さんの専用機の開発は中止になってしまい、妹さんは会長を越してみせると自力で専用機開発に勤しんでいる。

 

「つまり、俺が姉妹仲にトドメを刺したってことでFA?」

「ええ…」

「うん…」

 

あの時の俺は、のほほんさんと虚さんに会長の事情を聞いていた。

 

しかし、こうも振り返るとあれだけお世話になった会長に、こんな所で迷惑をかけてたなんて思いもよらなかった。

 

それに妹さんにもだ。

自分の人材を奪われてまで作られた物が、事実上の凍結状態だなんて、そりゃ許せない。

ビンタはまだ有情だ。

 

「倉敷に連絡して、本格的に解体してもらおう…」

 

確か、白式は『どうして無銘(ノーネーム)に拒絶されたのか?』という名目で調査されていたはずだったので、これを止めれば、妹さんの開発計画も再開するだろう。

 

「とりあえず、メールで千冬姉に…」

「ねぇ〜オリムー、お姉ちゃん〜」

「「?」」

 

そう思い、倉敷技研に中止してもらおうと千冬姉にメールを送ろうとしていると、のほほんさんが口を開いたのだ。

 

「私ね〜もうかんちゃんとたっちゃんが〜ギスギスしているのが嫌なの〜」

「本音…」

「のほほんさん…」

 

確かに、友達が友達の姉との仲が悪いのは嫌だろう。

 

「だから〜仲直りさせよ〜」

「そうね…織斑君。協力してくれない?」

「ハイ」

 

俺としては、当人同士で解決すべきだと思ったが、俺も原因の一つだ。

ここは一肌脱ごうと俺は思った。

 

ここまでならまだ良かった。

 

だが、この後が問題なのだ。

 

この後、二人を和解させる為にはどうすればいいか、三人で案を出し合い議論していた。

しかし、これといったアイディアが浮かばず、半ば冗談で俺はある意見を出してしまったのだ。

 

『もう古い青春物みたいに川原で殴り合えばいいんじゃない?』

 

すぐに冗談だと訂正しようとしたら二人が『『それだ!』』となり。

どういう手を使ったのかはわからないけど、こうして二人を決闘に臨ませたのだ。

 

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夕方 夕焼けの河川敷

SIDE:一夏

「お姉ちゃんはいつもそう!

私をお人形かナニカみたいに!」

 

ガスッ

 

「私は!簪ちゃんを!危険に近づけたくないだけなの!」

 

ドカッ

 

んで、現在に至る。

まぁ本音は言い合えているので、成功は成功だろう。

この二人の間の問題は、いわば膿みたいなものなので、出し切ればスッキリするタイプなのは確かだ。

 

「ハァ…ハァ…」

「…ハァ…フゥ…」

 

だが、ここまで続けて止めないのはどうかと思う。

最初の内は暗部の家らしく、技巧を凝らした体術での組み合いだったが、今や唯のテレフォンパンチの応酬だ。

 

「おーい、一夏ーッ!」

「弾⁉︎」

 

キャットファイトをボーッと眺めていると、弾がこちらに声をかけ、走り寄ってくる。

俺の家に近ければ、そりゃ弾の家も近いはずだ。

 

「女の子同士が殴り合ってるって噂があったから、来てみたらどういうことだよ!」

「……決闘」

「決闘⁉︎」

 

ええい。耳元で叫ぶな。

 

「と、止めねーのかよ!」

「…主宰者が、お前で言う蘭ちゃんだもん…」

「…悪い」

 

そんなことを話していると、二人がグッと構えた。

 

「はあああぁぁぁぁ!」

「やあああぁぁぁぁ!」

 

バキッッッ

 

全力の右ストレート。

互いの頬に決まったそれは意識を完全に刈り取った。

 

ドサッ

 

「お嬢様!」

「かんちゃん!」

「弾!お前は眼鏡の人を手伝って!」

「お、おう!」

 

更識簪の側に救急箱を置き、中の物を使って止血や消毒を行う。

 

「お、織斑いち、痛っ」

「口ん中切ってんじゃねーか。えーと、口内用の軟膏は…」

「これだよ〜」

「サンキュ」

 

とりあえず、身体の方はこれで大丈夫だろう。

精神的な方は本人達で解決してもらうしかない。

 

(さて…会長の方は…?)

「あ、あの…私…布仏虚です…」

「え、えっと俺…五反田弾って言います…」

「……」←会長

「……」←俺

 

弾よ。俺の事をモテ男と言う割には、随分な堕とし神っぷりじゃないか。

とはいえ会長も、糖分を鬱陶しがれるだけの元気はあるようだ。良かった。良かった。

 

……良かったのか、コレ?

 

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夜 IS学園寮

SIDE:楯無

「ただいま…」ガチャ

「お帰り…ってどうしたのその顔⁉︎」

「大丈夫…心配しないで…」

 

ルームメイトの心配に生返事して、ベッドに倒れ込む。

 

学園に帰る車の中で久しぶりに簪ちゃんとお話が出来た。

簪ちゃんの話を聞くと自分がいかに過保護だったのかがわかった。

あれでは嫌われて当たり前だ。

 

『あなたは何もしなくていいの。私が守ってあげるんだから』

 

今思えばなんて傲慢な発言なのだろう。

これでは簪ちゃんの全てを信じていないのと同義だ。

 

いや、本当に信じていなかったのだろう。

妹を守ろう守ろうと考えている内に、私は鳥籠に無理矢理入れるような真似をしていた。

 

「ホントに大丈夫?」

「大丈…夫」

 

意識が闇に沈む。

全身がズキズキ痛むのに、心はこれ以上ない程に晴れ渡っている。

 

今夜は良い夢が見られそうだ。


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