ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

30 / 88
03ー14 姉という存在

トーナメント七日目 第三アリーナ

 

その日、その場所、その時間を見た人は全員固まった。

 

方や、明らかに全盛期の最強(ブリュンヒルデ)の再現、

方や、全盛期の最強から衰えた教師(織斑千冬)

機体差を含めれば余りにも絶望的な状況が、

 

『はあああぁぁぁぁ!』

 

ひっくり返されてた。

 

 

SIDE:千冬

「はあああぁぁぁぁ!」

 

振られた一撃をいなし、カウンターを決める。

 

「甘い!」

 

自分の斬撃だ。

どこから、どうやって、どのタイミングで振るのはわかっている。

 

「無駄だッ!」

 

『雪片』を弾き、偽暮桜を守勢に追い込む。

これで終わりだ。

 

「私の!」

 

偽暮桜のガードを上から強引に押し潰す。

 

「生徒から!」

 

体勢が崩れた所を狙い、『雪片』を弾き飛ばす。

 

「出ていけぇぇーっ!」

 

偽暮桜に唐竹割りを決める。

すると、

 

「ラウラ⁉︎」

 

黒い闇の中からラウラの身体が見えた。

刀を放り、その身体を掴む。

 

「ラウラ!しっかりしろ!」

 

身体の方に傷はなさそうだが、早く医務室に運ばなければ!

 

ドロォ…

「クッ…」

 

しかし、ラウラを取り込んでいた闇が、再度取り込もうとこちらを取り囲む。

マズイ。武器はさっき捨ててしまったし、そもそも両手が塞がっている。

 

ドロォ…

「……」

 

ギャウッ

カァオッ

 

『早く逃げて!』

『千冬姉ぇ!』

 

どうしようかと思っていた時、二本のレーザーが闇を貫いた。

穴の中からは、一夏とオルコットがレーザーライフルを構え、避難を促す。

 

「すまない!」

 

二人が作った穴から脱出し、ラウラを教師部隊の一人に渡す。

向き直ると教師部隊の一斉射によって崩れていく闇があった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

トーナメント七日目 医務室

SIDE:ラウラ

「う、ぁ………」

 

ぼやっとした光が降りているのを感じて目を覚ます。

 

「気がついたか」

 

敬愛してやまない教官の声を聞き、思わず飛び起きようとする。

 

「グッ…」

「全身に無理な負荷がかかったことで筋肉疲労と打撲がある。

しばらくは動けん。無理をするな」

 

どうして私はここに…

 

『より強い力を欲するか……?』

 

思い出した。

あの声に全てをくれてやったのと同時に意識を失ったのだ。

 

「何が……起きたのですか……?」

 

痛みを堪え上半身を起こし、教官を見つめる。

 

「重要機密なのだが…VTシステムは知ってるな?」

「はい…」

 

VTシステム。

正式名称はヴァルキリー・トレース・システム。

過去のモンド・グロッソの部門受賞者(ヴァルキリー)の動きトレースするシステムだ。

 

だが、VTシステムはIS条約で現在どの国家、組織、企業において研究、開発、使用の全てが禁止されていたはずだ。

 

「そのVTシステムがお前のISに積まれていた。巧妙に隠されてな」

「…………」

 

言葉が出ない。

自分に語りかけて来たのはそのシステムだったとは。

 

「操縦者の精神状態、機体の蓄積ダメージ、そして何より操縦者の意志……いや、願望か。

それらが揃うと発動するようになっていたらしい」

 

ああなるほど。

あの時の私は織斑一夏を潰すことを心から望んだ。その結果か。

 

「…ボーデヴィッヒ」

「…はい」

 

教官が神妙な表情で口を開く。

 

「すまなかった」

「え……?」

 

出てきたのは、謝罪だった。

 

「今回のお前の一件は、お前に”暴力”だけを教え込んだ私の責任だ。

謝らせてくれ」

 

目に涙を浮かべながら私に頭を下げる教官。

違う。私は、あなたを、

 

「ち、ちが…」

「ボーデヴィッヒ」

「教官…」

 

自分の否定も呼びかけに遮られる。

 

「”教官”として最後の命令だ」

 

「……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

「教…官…」

 

()()()…頼む…」

 

「はい…ごめん……なさい…()()

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

トーナメント七日目 医務室前

SIDE:一夏

「はい…ごめん……なさい…()()

「……」

 

医務室の中の様子を見てドアを閉める。

この場に自分が行くと言うのは、余りにも無粋だ。

 

「入らないの?」

「あ、会長」

 

時間を持て余し、ボーッとしていると前から会長がやってきた。

 

「それで、どうでした?」

「…『ラウラ・ボーデヴィッヒなる者は我がドイツに存在しない。

VTシステム?それはボーデヴィッヒが勝手につけたものだろう』ですって…」

「ふーむ」

 

トカゲの尻尾切りか。まぁ珍しい事でもあるまい。

 

「……その割には随分と嬉しそうな顔じゃない」

「…あれ見てくださいよ。いい顔してるじゃないですか」カララ

「…そうね」

 

医務室の中には互いに泣きながら笑う千冬姉とボーデヴィッヒがいた。

 

「姉が成長して嬉しくない訳ありませんよ」

「ッ!……そう、ね」

「……?」

 

『姉』と言う単語を聞いた瞬間、会長の声が震えるの感じた。

 

『織斑一夏…私はあなたを許さない…』

 

(もしかして…)

 

なにかが、繋がった気がする。

後で、のほほんさんに聞いてみよう。

 

 

[MISSON03 COMPLETE]




次回、新章突入

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。