ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
セッシーはヒロインにはなりません。
そして、今日のいっくんはいつもの主任アセンです。
放課後 整備室
SIDE:一夏
「……」
ドスッベキッドゴォ
「落ち着けオルコット。壁に罪は無い」
無言で壁ドンを繰り返すオルコットに制止の言葉を投げる。
「愛機をバカにされて怒るのはわかるが、そろそろ落ち着け。作業の邪魔だ」
「ほら、マーキュリー先輩も言っているし。…ね?」
「……わかりましたわ、織斑さん…」
拗ねた表情で椅子に座るオルコット。
彼女がこうなってしまったのは第四アリーナでの一件が原因だ。
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放課後(回想) 第四アリーナ
SIDE:一夏
「んじゃ、何から始める?」
「失礼ですが、織斑さんの射撃の腕を見たいですわ」
「俺の?」
「ええ、止まった状態の狙撃の腕はあの時見ましたが、動きながらの腕は見ておりませんの」
「あ、なーる」
あの時の俺たち二人は、早速コンビネーションの訓練をしようと計画を立てていた。
「よーし、見てろよ。……ん?」
「……」
「あれは…ドイツの第三世代機ですわね」
そんな時、ラウラ・ボーデヴィッヒは現れた。
「おい、織斑一夏」
「えーと…何?」
「貴様、専用機持ちらしいな。ちょうどいい、私と戦え」
有無を言わさない口調でこちらに勝負を挑んできたボーデヴィッヒ。
「嫌だ。戦う理由が無い」
「貴様に無くとも私にはある」
ちなみに俺はドイツという国が嫌いだ。
理由は第二回IS世界大会『モンド・グロッソ』の決勝戦の日のことだ。
何度か回想で出たけど俺はあの日、謎の組織に誘拐された。
誘拐犯達の隙をつき、命からがら逃げだし主任の所為であの世界に行ったが、問題は俺ではなく千冬姉の方だ。
ドイツは、『織斑一夏を捜索した代償』として千冬姉にドイツでの教導を求めたが、別にそこはいい。
重要なのは俺が誘拐されてから犯人達の居場所を見つけるまでの時間が一時間半と異常に早いのだ。
どこをどう考えてもこの誘拐事件はドイツのマッチポンプなのだ。
そんな訳で俺はドイツが嫌いだ。
超偏見に溢れてるのは自覚してるけど。
「貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。
だから、私は貴様を――――貴様の存在を認めない」
「どうぞご勝手に、気に入らないのならお互いのためにも来るな」
【システム、スキャンモード】
「ふん。ならば――――戦わざるを得ないようにしてやる」
話を回想に戻そう。
言うが早いか、ボーデヴィッヒは俺に銃口を向け発砲してきた。
ギャウッ
「何をやってますの?」
「邪魔をするな。セシリア・オルコット」
オルコットが弾を相殺してくれたので俺に被害は無かったが、この後が問題だった。
「イギリスの『ブルー・ティアーズ』か。……ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな」
「……ドイツでは弾を撃ってから罵倒するのが挨拶のトレンドなのですの?」
「ふん、下らん」
ボーデヴィッヒの暴言を火蓋に言い争いが始まりそうになったのだ。
「皮肉もわからないだなんて、残念な頭ですわね。貴女、友達いないでしょう?」
はい今ここでブーメランと思った奴。
先生怒らないから謝りなさい。
「はっ……。二人がかりで量産機を圧倒できん専用機持ちとはな。古い誇りに囚われた国はよほど人材不足と見える」
「な…」
「その上、下らん種馬に媚を売らざるを得ないとはな。なんなら貴様が来るか?私が勝つに決まってるがな」
なんかサラサラと俺まで罵倒された。
オルコットといい、デュノアといい、ボーデヴィッヒといい、欧州の代表候補生は問題行為をしなきゃいけない義務でもあるのだろうか。
「……本気で行きますわよ…」
「やってみろ。メスが…」
「あーストップストップ。止まれオルコット」
とりあえず、これ以上はマズイと思い俺は制止をかけた。
「お、織斑さん…」
(どうどう。今のお前、入学当日に戻ってたぞ)
(ッ!)
(アリーナ出るぞ。頭冷やせ)
(…わかりましたわ)
コア・ネットワーク通信で俺はオルコットを説得し、ボーデヴィッヒから離れるように促した。
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放課後 整備室
SIDE:一夏
「やっぱり、納得いきませんわ…」
「優勝したら、俺が甘い物を作ってやるよ。だから機嫌直せ」
「…美味しくないと許しませんわよ」
「任せろ、俺を誰だと思ってる」
「女子を騙すのに抵抗のないクズ」
「正答な評価、ありがとう」
そんなこんなで現在に至る。
やっぱりドイツってクソだわ。
「…決めましたわ。織斑さん」
「ん?なーに?」
回想に浸りながらパソコンを操作しているとシリアスな口調でオルコットが話しかけてきた。
…絶対決め台詞だよな、コレ。
「わたくし、『勝たなきゃいけない理由』で貴方を誘いましたわ」
知ってますがな。
「でも、ついさっき、『勝ちたい理由』ができましたわ」
「……」
「改めてお願いしますわ…わたくしと優勝…いえ、ラウラ・ボーデヴィッヒをぶっ飛ばしてくださいまし、
俺だって『勝たなきゃいけない理由』と『勝ちたい理由』がある。
『勝たなきゃいけない理由』は箒を含めた噂に踊る女子を優勝させないため。
『勝ちたい理由』は自分の実力を女尊男卑の連中に知らしめるため。
「おう…やってやろうぜ。
そして、俺の
目的ついでに協力できるのなら俺は喜んで力を貸そう。
「ありがとうございますわ。……ところで、これは一体?」
「これ? これね…フフッ」
セシリアが俺のパソコンを覗き込んで質問する。
その興味津々な様子に思わず笑いが漏れる。
「…キモチワルイ笑いをしないでくださる?」
「ゴメンゴメン。これはね…」
自分の様子を察してか照れ顏を誤魔化すように罵倒するセシリア。
…別に痛くも痒くも無いよ?心に針が刺さるだけで。
「ブルー・ティアーズをもっと強くするものさ」
名付けてAEOS(
……まんまだな、コレ。
そんなこんなで、イッピーとセッシーが互いに名前呼びになりました。
セシリアの改心経緯は大会終了後に描写する予定です。