ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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なんかすごく長くなった…
あ、シャル編ラストです。


03ー04 あからさまな思惑

夕方 屋上

SIDE:シャルロット

「社長令嬢でありながら、妾の子として蔑まれる男装女子のお話です」

「⁉︎」

 

イッピーの言葉に思考がフリーズする。

 

「…知ってた…の?」

「……」

 

自分の質問にイッピーは笑顔のままだ。

これは肯定と言うことだろう。

 

(そっか…知ってたんだ…)

 

その事実を知っても絶望は無かった。

むしろ、もう誰も騙さなくてもいいと言う安心感が自分を包み込んでいた。

 

「うん、そうだよ。僕は女。男装してこの学園に来たんだ」

 

これからの自分の未来は、良くて監獄、悪くて射殺だろう。

いや、母さんの元に行けるなら射殺の方がいいかもしれない。

 

「ごめんね、騙してて。でも、もう消えるから「シャル」…え?」

「私の話はまだ終わってませんよ」

 

自分の謝罪がイッピーに遮られる。

これ以上何を話すと言うのだ?

 

「え〜コホン。彼女はとある田舎で生まれました。

彼女は片親ながらも心優しき母親の元でスクスク育ちました」

 

それは僕の生い立ちだ。

そんなものよくわかっている。

 

「しかも彼女は国家代表候補クラスの適性があり、又、ついでと言ってはなんですが非常にお美しい。

正に、大いなる物語のヒロインそのものではありませんか」

「そ、そうかな…」

 

自分の事をこうもべた褒めされるとなんだかムズッ痒い。

 

「ですが」

 

彼の言葉に照れていると急にトーンが変わる。

 

「デュノア社の業績低迷を受けて貴女は男装してこの学園に来る羽目になってしまった。

それでも、貴女は健気に耐えて耐えて。

…耐えた処で、行く先はどこも地獄なのをわかった上で」

「!」

 

確かにそうだ。でも、覚悟は出来てる。

自分の未来に天国は無いのだから。

 

「そうだね…」

「嘆かないでください。これは貴女の責任ではないのですから」

「…え?」

 

何を言ってるんだ?

 

「だってそうでしょう?

業績が低迷したのは社長が無能な所為で、貴女が妾の子なのも社長の浮気性の所為で、

一体、貴女の、どこに、責任があるというのですか?」

「ち、違…」

「嘘はいけません。言ったでしょう?貴女は何も悪く無いと。

貴女は、何も選べなかっただけなのです」

 

彼の言葉にゾワリと鳥肌が立つ。

これ以上聞いちゃダメだと脳が警鐘を鳴らすのに足は一歩も動かない。

 

「だから、選べ」

 

今迄丁寧だった口調が一変する。

 

「ロシアに亡命する準備は整えてもらった。後は、テメェの意思次第だ」

「……」

「あー、言っておくが。良い待遇受ける保証もあるぜ。

なんたって、テメェの存在自体がフランスの命綱だからなぁ」

「どうして…?」

「あ?」

「どうして、僕を助けるの?」

 

だって、イッピーに僕を助けるメリットはない。

そんな彼がどうして僕を助ける手筈を整えた?

 

「決まってんだろ。お前に手駒(ともだち)になってもらうためだ。勿論、俺じゃなくて会長のな。

代表候補生レベルの実力の手駒(ともだち)が欲しかったんだとよ」

 

到底話して良くなさそうなことをサラリと話すイチカ。

その言葉に僕は惹かれ始めていた。

 

「無論、ここで楽に死ぬのもありだ。

俺だって人間だ、慈悲を持ってテメェを殺してやる」

「ううん」

 

もう心は決まった。

僕の人生は、何も選べずに利用されて終わる筈だったのに、彼は選択肢を用意してくれた。

なら生きよう。母さんの分まで。

 

「わかった。僕はロシアに亡命するよ」

「……ふーん。じゃ、生徒会室に行きな」

「…またね。イッピー」

「おう」

 

彼はニヤニヤと僕を送り出した。

ありがとうイッピー。僕を生かしてくれて。

 

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夕方 屋上

SIDE:一夏

「……如月さん。出てきなよ」

「わかってたのね…」

 

物陰から出てきた如月さんに一礼する。

彼女が偶然にも屋上に居たのは誤算だったが止める訳にもいかなかったので、今の内に口止めしておこう。

 

「あー、えっとさ…」

「この件は私は何も見ていない。これでいいのでしょう?」

「ありがとう」

 

どうやら如月さんは察してくれたようだ。

ほっと胸を撫で下ろす。

 

「ちょっと聞きたいのだけど」

「?」

「特記事項第21は使えなかったの?」

「…如月さん。デュノアは企業戦士だよ。企業の介入無しは無理だって」

「……そうね」

 

大人は嘘をつきません。間違えてしまうだけなのです。

 

「……最後にもう一つ。丁寧な貴方にチンピラな貴方、そして今の貴方、どれが本当の貴方なのかしら?」

「今の」

 

どれも自分だ。なんて厨二発言は演技で充分だ。

 

さて、後は頼みますよ。会長。

 

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翌朝 一年一組

SIDE:セシリア

「え、えっと…デュノアくんは家庭の事情で帰国しました…」

「「「え〜⁉︎」」」

 

クラスメイトの叫び声に耳を塞ぐ。

 

(お早いお帰りなことですわねぇ。

ああ、『三日以内にフランスに帰る』に賭けた鈴さんの勝ちですか)

 

とはいえ、遅くて四日でついた勝負だ。

ちなみに私は彼女の奮戦に期待して『四日以降、七日以内にフランスに帰る』に賭けた。

 

(まぁスパイの事なんてどうでもいいですわ。今は…)

 

チラリと織斑さんを見やる。

周囲がデュノアの事で騒ぐ最中彼の口はほくそ笑んでいた。

……成る程、デュノアさんはまだ奮戦した方でしたか。

 

「……SHRはここまでだ。各々、次の授業に遅れるなよ」

 

クラスの様子を見かねて織斑先生が強制的にストップをかける。お疲れ様ですわ。

 

「織斑さん。ちょっとよろしくて?」

「何?オルコット」

「生徒会所属の貴方ならば知ってる思いますが、今月末の学年別トーナメントがタッグ制になりましたわ」

 

理由?勿論、自分達三人で撃破したあの無人機のせいだ。

 

「知ってる知ってる。…で?」

「そのトーナメント。是非私と組んで欲しいのですの」

 

 

SIDE:セシリア

「ふーん。俺と組んでトーナメントで優勝しないと代表候補生としての地位が危ない…と?ピンチだな」

「ええ、ピンチですわ」

 

説明を終え相槌を打つ。

彼は変に言葉で取り繕われるよりは正直に話してくれる方を好んでいるのは知っている。

 

「…割と自業自得だよな、お前」

「笑ってもよろしくてよ?」

 

理由は簡単。

入学式当日にかました問題発言で、自分の首を絞めただけだ。

 

『オルコット、絶対に織斑一夏と組んでトーナメントで優勝なさい。

その手柄さえあれば貴女を代表候補生の地位に残せるわ。

貴女のお母さんの、セリカ・オルコットの家を守る為にも…お願い』

 

教導官のレイシェルさんの言葉が頭に蘇る。

 

「誰が笑うか。それに、俺も優勝しなきゃいけないんだ。代表候補生としての力、頼りにしてるぜ」

「礼を言いますわ。…ところで、優勝しなきゃいけない理由はもしかして()()()ですの?」

 

あの噂、『優勝したら織斑一夏と付き合える』という下らない噂だ。

なんでも、号外として張り出された物らしく大半の人が本当だと信じてしまっているのだ。

 

「あー、あれね…。何で、皆して俺を狙うかね」

「世界でたった一匹の珍獣を手に入れられるチャンスですの。それはそれは欲しいでしょう?」

「…人権寄越せ」

「無理ですわね」

 

適当な雑談を交わしているとそろそろ時間が危なくなる。

 

「では、放課後。第四アリーナで待ってますわ」

「アイアイ」

 

先ずは、タッグを組めた。後は優勝するだけだ。




シャルが、まさかの?退場。

だって、どう考えてもいずれバレますしね〜。
あ、きちんと戻って来ます。

ちなみに初期の構想ではここでシャルが亡国堕ちしました。

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