ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
そして第三章開幕!
03ー01 イライラする
放課後 生徒会室
SIDE:楯無
「いや〜身勝手と言いますか、自分勝手と言いますか、ここまでくると感心しますよ」
一枚の書類をピラピラ揺らしながら、織斑君が呟く。
表情も態度も口調も笑っていたが、眼には苛立ちがありありと見えた。
無理もない。
彼自身、この学園に来てから何度も
ロッカーの中の物が盗られ
ざっと挙げてもこんな調子である。全部
無論、危害を加えようとした生徒や教諭には、見せしめの意味も込めて退学や懲戒免職など重い処分を下しているし、事件数自体も減少傾向だ。
学園外の大半は私が付けた護衛がどうにかしているが、それは計画性を持った集団相手で、思いつきの個人相手は護衛対象たる彼がどうにかするというなんとも情けないのが現状だ。
そもそも、ISに携わるのなら女尊男卑などといった思想は捨てなくてはならないのだ。
『開発』『整備』『補給』『運用』etcetc…『操縦』以外のすべてに(織斑君を除き)”男”は関わっているのだから。
そんなこんなで先日の六月頭、織斑君はついに反撃した。
「すいません!我慢の限界でつい…」と彼は電話口で後始末をするこちらに謝罪していたが、こちらとしてはむしろ好都合だった。
『織斑一夏はただ殺られるだけの木偶ではない』。それを女尊男卑派に示したのだから。
話を戻そう。
最初に出てきた書類。それは、女性権利団体、通称『女権団』からの書類だ。
本来なら弾かれる筈のそれは、なんらかの手違いで生徒会室に届き、織斑君の手に渡ったという訳だ。
内容は簡単。「織斑一夏は本当はISを動かせないという事実を公表しろ」との事だ。
……織斑君のIS適性を証明したのは公的機関なので国に喧嘩を売る発言だと気づかないのだろうか?
「ハァ…捨てていいわよソレ……」
「ハーイ……ポイっと」
思わずため息が出る。
別に織斑君の素行に問題がある訳ではない。むしろ彼は優等生だ。
授業態度は熱心そのもの、力仕事を率先して引き受ける、生徒会業務はそつなくこなす、教えた事はすぐに理解する。
正直なことを言うと男性操縦者じゃなくって部下として欲しい人材だ。
「ね〜オリムー。対戦しよ〜」
「
だからこそ気が重い。
ここまで苦労してきた彼に、一度限界を迎えた彼に、さらなる苦労をもたらす事態を伝えなければいけないのだから。
「む〜。オリムーのラファールが強すぎるんだよ〜。ホントに弱体化したの〜?」
「のほほんさんのテンペスタが弱いだけだよ。あと弱体化してるから、Cループを返して」
「ちょっといいかしら?」
「「?」」
だからと言って伝えない訳にはいけない。
織斑一夏の護衛役として、彼の先輩として、放っておく訳にはいかないのだから。
「明日、貴方達のクラスに転校生が二人来るのだけどーー」
「「……!」」
何かを察してか真面目モードに切り替える二人。
まったく、なんていい子達なのだろうか。
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翌日 一年一組
SIDE:一夏
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れな事も多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
「お、男……?」
(どう見ても女です。本当にありがとうございます)
目の前の金髪女子を睨みながら妙ちきりんなことをほざいた誰かさんに心中でツッコむ。
『明日、貴方達のクラスに転校生が二人来るのだけどね。そのうちの一人が”二人目の男性操縦者”なの』
『おかしいと思うでしょう?そんな人物の存在がニュースにもならないなんて』
『とにかく、そのシャルル・デュノアには警戒してちょうだい』
昨日、会長に忠告された通り目の前の男子は”男子”ではなく”男装女子”だった。
サンキュー会長
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入をー」
(まぁ、粗製ではないな)
とはいえ、事前情報が無ければもしかしたら男と勘違いするかもしれないレベルには様になっている。
だが流石に、この男装を勘付かない程、目が節穴な奴がそうそういる訳が––––
「「「きゃあああああ––––––––––––––っ!」」」
いたよ、大量に。
「男子!二人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形!守ってあげたくなる系の!」
「地球に生まれて良かった〜〜!」
今の流行は
しかし、クラスを見渡すとポツポツ勘付いているのが数人いる。
聞かされているのほほんさんは当然として、箒もおかしいと感じているようだし、オルコットに至っては「やっぱりねぇ」といった調子だ。
「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介は終わってませんから〜!」
喧しい生徒に注意が飛ぶ。お疲れ様です山田先生。
そしてもう一人の小柄で銀髪な転校生に全員の視線が移る。
「……………………」
まさかの自己紹介をしない転校生である。
新しいな、オイ。
「……挨拶しろ。ボーデヴィッヒ」
「はい、教官」
教官…ねぇ。
織斑先生をそう呼ぶと言うことはドイツ軍関係者か。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「「「…………」」」
何か話せ。
「あ、あの、以上……ですか?」
「以上だ」
山田先生が泣きそうになっている。
まったく、自己紹介も満足に出来ないのか?そんな奴に俺はならないぞ?
「! 貴様が–––––」
ふと目があった瞬間にボーデヴィッヒはつかつかとこちらに近寄ってきた。
何をするかの察しはつくよ?あんなに殺気を出してるのだもの。
バシィッ
「なっ⁉︎」
殺気全開で出されたビンタを右腕で防ぐ。
「何?」
ボーデヴィッヒに問う。
理由はわからないけど、ドイツ軍人にビンタをされる筋合いは無いはずだ。
「私は認めない。貴様があの人の弟などと、認めるものか」
「お前に認められる筋合いは無いよ?」
いきなり何を言うかねコイツ。
つーか、質問に答えろよ。
「「……」」
「……戻れ、ボーデヴィッヒ」
「…ハイ」
「フン」
互いにメンチを切りあっていると織斑先生から静止の声がかかる。
……あのアマいつかブッコロバス。
「織斑、デュノアの面倒を見てやれ」
「ハーイ」
まったく、二人の転校生がどちらも要注意人物だなんてねぇ。
あーイライラする。
おまけ シャルを見たお三方の心中。
箒(あの歩き方に体型…男のフリをした女か?)
本音(意識して見ると女にしか見えないね〜)
セシリア(なるほど、本国から警戒しろと言われるわけですわねぇ)