ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜   作:高二病真っ盛り

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ちょいと病院にお世話になったりで遅れました。

ようやく鈴音の登場です。


02ー07 華人娘襲来(前編)

夜 IS学園正面ゲート前

SIDE:鈴音

「ふうん、ここがそうなんだ……」

 

ボストンバッグを肩に背負い、私『鳳鈴音(ファイリンイン)』は呟いた。

 

「えーと、受付ってどこにあるんだっけ」

 

今日ここに来た理由はIS学園への編入手続きのためだ。

上の人から渡された紙を上着のポケットから取り出した。

 

「本校舎一階総合事務受付……って、だからどこにあるのよ」

 

字だけ書かれたクシャクシャの紙に思わず愚痴る。

 

「自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」

 

考えるよりも前に足を動かす。こういうのは考えたって仕方ないのだ。

 

(誰かいないかなぁ、先生とか生徒とか案内できそうな人)

 

時刻はとうに八時、こんな時間に生徒が外にいる訳がーー

 

「だから……のこが……」

 

あった。IS関連施設の入口から人の声が聞こえたのだ。

 

(ちょうどいいや。場所聞こっと)

 

受付の場所を聞くために小走りして近寄ろうとする。

 

「あのさぁ、どうしてわかんないかなぁ」

 

聞き覚えのある「声」が、聞こえた。ドクンと胸が高鳴る。

三年前から二度と聞けなくなった幼なじみの声が。

 

(あたしってわかるかな。たった三年間……わかるよ…ね?)

 

記憶に思い出すは三年前の彼との最後の会話。

 

『鈴!今度俺モンド・グロッソでドイツに行くんだ‼︎』

『ドイツ⁉︎……そっか、世界大会だもんね。気をつけてね一夏』

『お土産、楽しみにしてろよ』

 

その会話の後、一夏は消えた。

じんわりと目頭が熱くなる。慌てて涙を拭った。

 

(大丈夫、大丈夫。わかんなくってもあたしが美人になっただけだし‼︎)

 

ポジティブ思考に切り替え、深呼吸。

覚悟を決めて声をかける。

 

「いちーー」

「だからな箒。きのこは負け組なんだ」

「きのこを愚弄して悦ぶか、たけのこ派が!」

「黙れよ。茶番は終わりだ。ケリをつけようじゃねえか」

「認めない。たけのこ派など私は認めない」

 

そこにいたのは自分の知らない女子と仲良く話す一夏の姿だった。

 

(誰? あの女の子。なんで嬉しそうなの?っていうかなんで名前で呼んでんの?)

 

さっきまでの胸の高鳴りは嘘のように消え、ひどく冷たい感情と苛立ちが雪崩れ込んでくる。

 

「らちがあかん!寮で決着をつける!」

「上等だ。まずは寮まで競走するぞ!」

「ハッ、生徒会が剣道部に敵うものか!」

 

そう言い幼なじみと見知らぬ女は走り去る。

 

 

夜 本校舎一階総合事務受付

SIDE:鈴音

本校舎一階総合事務受付はその後すぐ見つかった。

 

「ええと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ、鳳鈴音さん」

 

愛想のいい事務員の言葉もどこか遠くにあって意識に届かない。

あたしはその事務員に聞いた。

 

「織斑一夏って、何組ですか?」

「ああ、噂の子? 一組よ。鳳さんは二組だから、お隣ね。そうそう、あの子生徒会長にスカウトされて副会長になったんですって。やっぱり織斑先生の弟さんなだけはあるわね」

 

噂好きは女性の性。聞いてもいない事をペラペラと話す事務員を冷ややかに見ながら、あたしは質問を続ける。

 

「二組のクラス代表って、もう決まってますか?」

「決まってるわよ」

 

丁度いい。本当に、丁度いい。

 

「名前は?」

「え?ええと……聞いてどうするの?」

 

あたしの様子のおかしさに気づいたらしく、事務員が戸惑う。それもこれもあいつが悪い。

 

「お願いをしようかと思って。代表、あたしに譲ってってーー」

 

散々心配かけておいて…お灸を据えてやるわ!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌日 一年一組

SIDE:一夏

「フワァ〜ア」

「見っともないわよ織斑君。そういえば、今日二組に転校生が来るらしいわ」

「ンンッおはよう如月さん。……転校生?」

 

白式(びゃくしき)無銘(ノーネーム)に拒絶されてから早六日、教室で大あくびをかいていた俺は、如月さんこと如月奨美(きさらぎすすみ)に指摘され慌てて口を閉じる。

寝不足の原因は間違いなく昨夜の箒との不毛な論争(きのこたけのこ戦争)だ。

 

「転校生……?この時期にか? フワァ〜」

 

どうやら箒も眠いらしい。ちなみに論争の結果は「どちらも美味しい」という甘さもサクサクさも無い結果だった。

 

「知ってる〜確か中国の代表候補生で〜無理矢理二組のクラス代表の座を奪ったんだって〜」

 

会話に俺と同じく生徒会の布仏本音(のほとけほんね)(通称のほほんさん)が混ざる。

しかし、中国ねぇ……なんかひっかかる。

 

「まぁ心配はいらないわよ。なんたって、()()()に自身満々な代表候補生様がいるんですもの」

 

如月さんが皮肉を込めた言い回しをしながらオルコットを見やる。クラスの半数以上を占める日本人生徒を敵に回す発言で、セシリア・オルコットはクラス代表でありながらクラスの鼻つまみ者だった。

まぁ自業自得だな。いじめが起こってないだけまだマシだろう。

 

「如月さんの言うとうり心配無いと思うよ。専用機持ちのクラス代表、一組(ウチ)と四組だけだしーー」

「その情報、古いよ」

「「「「⁉︎」」」」

 

俺の言葉が誰かに遮られる。誰だろうかと四人で振り返る。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単に優勝できないから」

「誰〜?」

「誰かしら?」

「誰だ貴様?」

「鈴⁉︎なんでここに⁉︎」

 

(こちら基準で)約三年ぶりの再会となる幼なじみ、鳳鈴音(ファイリンイン)がドアにもたれ、片膝を上げ、腕を組むというなんとも似合わぬポーズで立っていた。




続きます。


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