北方の白き少女 Heart of the admiral   作:ハルバーの懐刀

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このホッポは数か月前から考えていました。
こんなドタバタがどうしても見たかったのでw



No. 17 ジュース?

闇夜が訪れたある鎮守府の食堂内。

 

 

 

「んむぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 

 

少女らしき悶える声が、真っ暗な部屋全体に響き渡る。

調理場へ入るためのドア付近に、2つの影が床の方で蠢いていた。

 

 

1つは、小柄でセーラー服を着込み、茶色の長髪を後ろだけ上げるように束ねた少女。

 

 

もう1つは、彼女と同じくらいの体格で、白いワンピースと雪のように白い肌と長髪をした少女。

 

 

白い方はセーラー服の少女に覆い被さり、ミトン手袋の両手で彼女の顔を掴んでいた。

そして、お互いに顔をくっ付けて、何かが吸い取られる音を立てる。

 

「チュウウウウウウ・・・」

「んんぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

白い方の少女が相手の唇に吸い付いていたのだ。

しばらくそれが続いた後、白い方の彼女がゆらりと立ち上がる。

 

「ら、らめ・・・なの、れ・・・す・・・」

「ペロッ♪」

 

目の焦点が合わず、倒れて痙攣する少女がそう呟いた。

それを眺める上気した顔の白い少女が舌なめずりをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約30分前。

 

トラック鎮守府の司令部にある大広間。

 

 

 

「「「「「ホッポちゃん、提督での着任おめでと~!!」」」」」

 

多数の艦娘たちの声と共に拍手が沸き起こる。

白い軍帽を被る白き少女が彼女たちにミトン手袋の右手で手を振った。

 

「アリガト~♪」

 

ハマグリ鎮守府が稼働してから3日後に、トラック鎮守府内で白き少女のお祝いパーティーが開催された。

彼女以外に、秘書艦の大和と戦艦である陸奥、駆逐艦の五月雨が一緒にやって来る。

その他の不知火や日向たちはハマグリ島の防衛任務で残っていた。

 

司令部の大広間には、多数のテーブルの上に出来立ての料理が並べられている。

 

 

 

大量に作られた揚げ物である天ぷらや唐揚げ。

 

数十枚ある鉄板皿に乗るジューシーな牛肉や豚肉のステーキ。

 

純白に輝くお米の入った大型炊飯器。

 

濃厚なソースで味付けされた焼きそばやお好み焼き。

 

おおきなタライに入れられた山盛りのざる蕎麦。

 

各テーブルに用意されたグツグツと煮える鍋料理。

 

果物やアイス、甘味である饅頭、羊羹などに占領された大テーブル。

 

お茶やジュースだけでなく、日本酒などのアルコール類もテーブルに用意された。

 

 

 

「いくらなんでも多過ぎるわ・・・」

 

苦笑する山岸提督がそう呟いた。

この大量の料理の元手は、彼女の叔父である米満大将から送られたものである。

おかげで料理人の宮島だけでは手が足らず、明石や工廠の妖精たちまで手伝うこととなった。

 

「まぁ、今日はホッポちゃんのお祝いだし、皆で好きに食べることを許可するわ」

「一航戦“赤城”!! 食います!!!」

 

山岸の言葉を聞いた赤い空母が我先にと食べに向かう。

それに釣られて、他の艦娘たちも取り皿を手に取り、料理のあるテーブルへと歩いていった。

 

「ホッポちゃん、私達も行きましょう」

「ウン♪」

 

白き少女も大和に連れられて、山岸や暁姉妹たちと一緒に食事をし始める。

 

「ん~! デリシャスな羊羹デース!」

「金剛姉さま、先に甘味を食されては・・・」

「榛名、甘いネー。こういうスイーツなどは、先に食べないとすぐに無くなるデース!」

「えっ? そうな・・・えっ!? 私の前にあったアイスが消えた!?」

 

驚く榛名の後ろにステーキ肉を頬張る赤城がアイスを器ごと持って行く。

 

「まずはこの鍋をいただきます」

「加賀さん、赤城さんは・・・」

「赤城さんには譲れません。私と二航戦の3人でいきます」

「は、はぁ・・・」

「ほら! 蒼龍、早くしないと無くなるわよ!」

 

お椀と箸を持つ3人の空母たちが鍋の1つを食べ始める。

その傍らには赤城が俊敏な速さで鍋の具を取り去っていった。

 

「さぁ、山城。このざる蕎麦を食べましょう」

「は、はい、姉さま・・・あれ?」

「どうしたの? 山城」

「麺つゆに入れた蕎麦が・・・あっ、あれ? また・・・・・・不幸だわ」

 

山城の持つ麺つゆの器に入れられた蕎麦は、全て赤城の素早い箸捌きで取られていく。

それに気付かない姉の扶桑は黙々と蕎麦を啜っていた。

 

「モグモグ・・・やっぱりご飯とこの匂いは一番だわ!」

「ね、姉さん。ご飯を食べながら匂いを嗅ぐのは・・・」

「時雨姉さん、春雨、助けて・・・」

「白露姉さん、五月雨が困ってますよ」

 

白露がお米を口に入れてから、妹たちの匂いを嗅ぎ回る。

4人がそうしている間に、赤城が2つの茶碗を合わせて、振り作る即席のおにぎりを生産していった。

 

「かぁ~! やっぱりお好み焼きとビールは美味すぎやわ!」

「はい、天龍ちゃん♪ ビールのお代わり♪」

「おぅ! 龍田、サンキュ!」

「この焼きそば、中々の味だわ・・・流石ね!」

 

龍驤を中心に、軽巡の天龍、龍田、矢矧がビールと料理を堪能する。

彼女らの隙をついて、赤城が調理器具のコテを取り出し、掬い飛ばしたお好み焼きを口に入れた。

 

「ぬっふっふっふ・・・遂にこの時が来た!」

「?」

「そこの白いちびっこ! この島風と早食い勝負よ!」

「ヤダ」

「・・・はっ?」

 

島風の誘いを無視して、白き少女は暁姉妹たちと一緒に揚げ物を食べ始める。

呆ける彼女の取り皿に乗っていた天ぷらが赤城に全て奪われていった。

 

「響、これなんかいけるんじゃない?」

「スパシィーバ♪」

「この海老天、美味しいわ!」

「ホッポちゃん、これも食べるのです」

「イモテン? モグモグ・・・ンッ♪」

 

電から受け取った天ぷらを美味しそうに食べる白き少女。

彼女は食べて味わうことを楽しんでいた。

大和と山岸も取り皿のかしわ天を食べながら、少女の楽しそうな顔を見ている。

 

「ハマグリ島の方も問題なさそうね?」

「はい。今のところは出撃、工廠、入渠、どれも通常通りに行えます」

「もし、何かあればこちらに連絡しなさい。必要なものも揃えるわ」

「ありがとうございます」

 

彼女らが食事を楽しんでいると、唐突に白き少女がドラム缶を取り出し、豪快なラッパ飲みを始めた。

慌てた大和がすぐにその行動を制止する。

 

「ホッポちゃん! 燃料飲んじゃダメ!!」

「ングッ!?」

「もう・・・また、勝手に資材を持ち出しちゃって・・・あっちの飲み物にしましょう?」

「アウ・・・」

 

白き少女は戦艦の艦娘に引っ張られて、飲み物が置かれたテーブルへとやってくる。

 

そこには、ヤカンに入った麦茶、『大和ラムネ』と書かれたガラス瓶、蜜柑や林檎といった果汁ジュースのガラス瓶が置いてあった。

 

大和がラムネの瓶を1本手に取り、開封したそれを少女に手渡す。

 

「はい、どうぞ♪」

「ハムッ・・・ンクッ、ンクッ・・・プフゥ~♪」

 

喉全体に広がる冷たくてシュワシュワする爽快感。

それを最後まで飲み干した後、彼女は隣に設置されたものへ目を向けた。

 

「ンゥ?」

 

見慣れたドラム缶に椅子のような鉄製の4つ足と、正面の下部辺りに蛇口のようなものが設置されている。

それらは2つ置かれてあり、ドラム缶の色は黄緑と桃色に塗装されていた。

白き少女が目をぱちくりさせて見ていると、工作艦である明石が話し掛けてくる。

 

「これは燃料にある味付けをしたものなの」

「アジツケ?」

「そう。緑色はメロン味で、こっちのピンクはイチゴ味よ。試しに飲んでみる?」

 

工作艦の彼女から紙コップに入るピンク色の飲み物が手渡された。

白き少女が恐る恐る口を付けると、イチゴの風味が漂ってくる。

彼女は迷わず飲み干すと、その味に目を輝かせた。

 

「オイシイ!」

「どうやらお気に召したようね」

「明石さん! 私にも頂戴!」

「私も・・・」

「雷にも!」

「電にもくださいなのです!」

 

暁姉妹だけでなく、白露たちもその燃料を飲みに集まってくる。

艦娘たちは果物の風味がある2種類の燃料を味見した。

 

「凄いですね」

「そうでしょう。これが各鎮守府で普及できれば、艦娘の疲労がさらにグッと減ります!」

 

明石が自慢げに話している最中に、白き少女がイチゴ味のドラム缶をじっと見つめる。

しばらく見つめた後、彼女はそれに近付き、蛇口の先端を口に咥えた。

 

「ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ・・・・・・」

「ちょっ!?」

「ホッポちゃん!! 何やってるの!?」

 

白き少女が咥えた状態で蛇口を捻り、イチゴ味の燃料を飲み始める。

大和が明石の驚きでそのことに気付き、急いで止めに入った。

彼女は蛇口の栓を閉めてから、少女の身体を持ち上げる。

 

「アッ・・・」

「そんなに飲むとお腹冷やしちゃいますよ?」

「ムゥゥゥ・・・モット~」

「駄目です!」

 

戦艦の艦娘に抑えられる白き少女。

そんな彼女らを見て笑う艦娘たちの中で、ある人影がメロン味のドラム缶に向かった。

 

「・・・はぁ!?」

 

山岸の声でその存在が全員に注目される。

白き少女が咥えて飲んでいた蛇口に、一航戦の赤城が同じ行動をしていたからだ。

 

「ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ・・・」

 

妙な体勢で飲み続ける赤い空母。

呆れる山岸が指を鳴らし、その音に反応した加賀が動き出す。

青い空母は素早い動きで蛇口の栓を閉め、後ろ腰辺りから取り出したハリセンで相方の頭を叩き落とした。

 

「へぶぅぅぅっ!?」

 

叩かれた彼女は床へ顔面をぶつける。

 

「いくらなんでもやり過ぎよ、赤城・・・・・・って、そこっ!」

「ビクッ!」

 

山岸はこっそりと中腰で忍び歩く秘書艦“長門”を指差した。

指摘の声を聞いた戦艦が身体を震わせて静止する。

 

「何を、するつもりなの?」

「その・・・か、かんせ・・・」

「許可しないわ」

「ぐはぁっ!!」

 

提督の禁止命令により、ビッグ7である艦娘がその場で崩れ落ちた。

 

「陸奥、貴方もよ」

「あら。あらあら・・・」

 

妹の方も呼び止められ、姉と同様に同じ体勢で項垂れた。

見物する他の艦娘たちは、山岸のように呆れてしまい、笑いを堪えるものまで現れる。

 

「全く・・・秘書艦を変えようかしら?」

「相変わらずです・・・ん? ホッポちゃん、どうしたの?」

 

大和が白き少女に目をやると、股をくねらせるようにモジモジしていた。

彼女は小さな声であることを呟く。

 

「・・・オシッコ」

「ああ、やっぱり・・・」

 

かなりの水分を摂取したせいで、少女の身体が尿意を催してしまった。

彼女が大広間の出入り口である両扉へ向かうと、山岸があることを伝える。

 

「ホッポちゃん、今、司令部のトイレは水が止まっているから、近くの食堂にあるトイレを使ってね」

「ワカッタ」

「寂しいならレディーも付いていくわよ?」

「レディー・・・ぷっ」

「ちょっとぉ! 響ぃぃ!!」

「私がいるじゃない!」

「ホッポちゃん、電が付いていっ・・・」

「ヒ、ヒトリデ、イケルカラ!」

 

白き少女は4姉妹から振り切るように、そそくさと大広間から出て行った。

 

 

 

 

 

トラック鎮守府の食堂内。

 

 

 

本日は宴会のため、テーブル席のある広間の電灯は消され、調理場と左奥にあるトイレのみ明かりが点いている。

 

水の流れる音がし、それと同時に白き少女がトイレの出入り口から出てきた。

 

「フゥ・・・ヒモパンハ、ツライ・・・・・・ン?」

 

彼女は調理場の方へ目を向ける。

本来は料理人の宮島が居るはずだが、出来上がった料理の運搬で居ないようだ。

少女はゆっくりと厨房の中へと入っていく。

 

「ナニカ、ナイカナ?」

 

ついさっきまで燃料をがぶ飲みしていたにも拘らず、彼女は喉の渇きを癒す飲み物を探し始めた。

 

「ウ~ン」

 

大型冷蔵庫などを開けて、冷えた物が無いか探るが、ほとんどの飲み物は運ばれた後だった。

 

「・・・オッ?」

 

そんな時、白き少女は勝手口の近くにあった包みを見つける。

 

縄紐で括られた茶色の包み。

 

彼女はそれを躊躇なく破り開けた。

その中身は四角い木箱に入ったビール瓶のようなものだった。

 

「ジュース?」

 

ラベルには『でらっくちゅじゅーちゅ』と書かれていた。

首を傾げる白き少女がその瓶の蓋をタマの歯で開ける。

続けて愛用する金属製コップを取り出し、瓶に入っていた透明な液体を注いでいった。

 

「ン♪ ゴクッ・・・オイ・・・シ?・・・・・・・・・」

 

彼女がその液体を一口飲んだ直後に、持っていたコップが床に落ちる。

そして、少女の小さな身体がその場で崩れるように倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

「ホッポちゃん、何処なのです~?」

 

暗い食堂の扉を開けてやって来たのは、暁型4姉妹の末っ子である電である。

彼女は帰りの遅い北方棲姫を探しにやってきたのだ。

暗い食堂内を見渡しながら歩いていく。

 

「まだ、トイレなのですか?」

 

駆逐の少女がトイレに入ろうとした時、厨房の出入り口付近で落ちている物に目がいった。

 

「あれは・・・」

 

彼女は早足でその場所へ向かい、落ちている物を右手で拾い上げる。

 

 

それは世の提督たちの象徴でもある“白い軍帽”だった。

 

 

しかも、それは見覚えのあるサイズの帽子である。

 

「ホッポちゃんの・・・どうして・・・っ!?」

 

不意に、彼女の左腕が何者かに掴まれて、引き寄せられるように床へ倒れた。

 

「痛っ!・・・えっ?」

 

仰向きに倒れた駆逐の少女は、自身の左側で立っている存在を目にする。

 

「ホ、ホッポちゃん?」

 

探していた白き少女がそこに居た。

彼女は安堵する電の身体へゆっくりと覆い被さっていく。

 

「えっ、はわっ!?・・・」

 

困惑する駆逐艦は白き少女の異常な様子に気付いた。

白く可愛らしい顔の頬が赤くなり、赤い目が蕩けた状態になっている。

そんな彼女の顔が電の顔へと近付いていった。

 

「はわわ!? ホッポちゃん、待つの・・・んむっ!?」

「ハムッ」

 

白き少女がその小さな口で駆逐艦の唇を咥えた。

余りの出来事に、駆逐の少女は目を見開く。

 

「んむぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

(は、はにゃあ―っ!? 電は、ホ、ホッポちゃんと・・・き、き、き・・・)

 

彼女がそう考えていると、密着している白き少女の口が動き出した。

 

「チュウウウウウウ・・・」

「んんぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

突如、全てを吸い取られそうな勢いのある吸引が始まった。

その吸い込みによって、駆逐艦の小柄な身体が激しく震え出す。

やがて、その震えが小さくなっていくと、白き少女がその場で立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後。

 

明かりの付けられた食堂内に、山岸を含めた艦娘たちが集まっていた。

彼女らは変わり果てた電の姿を発見したことで、今起きている事を確認し始める。

 

「さて、これは何なのかしら? 龍驤・・・」

「そ、それは・・・その・・・」

 

山岸はテーブルに置いた瓶を指差し、目を逸らす軽空母の少女に尋ねた。

 

「し、知り合いから、送ってもらったもんでな・・・その・・・」

「これ・・・お酒なのね?」

「は、はい・・・」

「度数は?」

「・・・・・・ご・・・」

「五?」

「・・・50度や・・・」

 

彼女の答えを聞いた山岸は頭を抱えるようにため息をつく。

 

「つまり・・・ホッポちゃんはそれを飲んで・・・」

「酔っ払った状態になり、電を襲ったのね」

 

大和と山岸が現場で起きた出来事を想定した。

並べた椅子に寝かせた駆逐の少女はまだ放心したままである。

 

龍驤の話によると、今朝届いたものを厨房へ置きっ放しにしていたのだ。

中身はある艦娘からの贈り物で、本来は水で割ってから飲むものらしい。

 

「電・・・我が妹がこんなに変わり果てるなんて・・・」

「ハ、ハラショー・・・・・・暁、このアヘ顔やってみて」

「やらないわよ!!」

「私がやるじゃない!!」

「あんたがやったらもっと駄目でしょうがぁぁぁ!!!」

 

末っ子が寝ている周りで騒ぐ3人の姉たち。

そんな彼女たちを余所に、山岸がその場に居る全員へ指示を与えた。

 

「取り敢えず、各自で鎮守府内を捜索するわ。大和は私と一緒に、それと空母全員はのどかちゃんと一緒に後片付けをして頂戴」

「分かりました」

「「「了解!」」」

「了解や!」

「ひょうはい!」

「赤城、飲み込んでから返事しなさい」

「ごっくん・・・もぐもぐ、わはりました!」

「はぁ・・・・・・それと、龍驤・・・後で話があるから・・・」

「え゛っ・・・・・・・・・そんなせっしょうな~!」

 

軽空母の少女はその話の意味を理解し、その場で泣き崩れてしまう。

 

「暁たちは、電を宿舎へ運んでから捜索しなさい。それ以外は自由に・・・以上よ」

 

山岸がそう言い終えた後、ある戦艦の2人が食堂の扉へ走り出した。

 

「うおおおおおっ!! ホッポちゃんは何処だあああああっ!!」

「出ておいでえええっ!! お姉さんといいことしましょおおおっ!!」

「「「「「・・・」」」」」

 

秘書艦とその妹が目の色を変えて、消えた白き少女の捜索に向かった。

残された艦娘たちもそれぞれ行動を開始する。

山岸と一緒に歩く大和は、白き少女の軍帽を抱き締めた。

 

「ホッポちゃん・・・」

 

 

 

 

 

薄暗い司令部内の廊下を3人の艦娘が歩き回っていた。

 

「この辺りは居ないのかしら?」

「一応は見て回ろうぜ」

「何処に居るのかしらね~?」

 

軽巡組の矢矧、天龍、龍田が司令部の捜索を行っていた。

ある廊下の側面にある部屋のドア付近で、3人が分かれて行動しようとする。

 

「私はこの部屋を見るわ」

「じゃ、オレはこっちだな」

「私も天龍ちゃんと・・・」

「龍田はあっちだ!」

「やだ~いけず~♪」

「いいから行けよ!」

 

眼帯の軽巡がしつこい妹を反対側に行かせた後、自身は向かった先の部屋の引き戸を開けた。

中は教室のような場所で、多数の机と椅子が置かれている。

 

「居なさそうだな・・・」

 

彼女はそう呟いてから、矢矧の居る部屋の前へと戻っていった。

 

「矢矧、そっちはどうだ?」

 

天龍がそう問いかけるも、部屋に入った阿賀野型から返事はなかった。

彼女は開いた引き戸型の出入り口を覗いてみる。

 

「矢矧?・・・っ!?」

 

ドアから少し離れた位置に、床へ倒れた軽巡の姿があった。

 

仰向けに倒れる彼女の顔は上気し、電のように放心した状態である。

 

「はぁ、はぁ・・・わ、たし、から・・・はなれ、て・・・」

「マジかよ・・・」

 

彼女はもう1人の妹の安否を確かめるため、走り出そうと廊下の方へ振り返る。

その瞬間、彼女の目の前に真っ白な物体が飛び掛かって来た。

 

「ぐうっ!?」

「カプッ♪」

「んんぅ!?」

 

己の唇に柔らかいものが張り付いた感覚。

よく見れば、それは捜索されていた白き少女で、彼女に接吻をされていたのだ。

飛び付かれた反動でゆっくりと後ろへ倒れる。

 

「チュウウウウウウ・・・」

「んぐぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

眼帯の女性は床へ叩きつけられる前に、その強烈な吸い付きで意識を失った。

 

 

 

 

 

「天龍ちゃ~ん、そっちはどう~?」

 

目的の部屋を見終えた天龍型の妹がやってくる。

ついさっき別れた場所へ戻ってくると、そこには姉のあられもない姿があった。

 

「は、はひっ!・・・あっ・・・う・・・・・・」

「・・・こっちだったのね」

 

右目はいつもの凛々しさが無くなり、上向いたまま涙を流している。

口からは光る唾液が一筋だけ垂れていき、僅かな声だけが発せられた。

また、服はそれほど乱れてはいないが、黒いスカートの股辺りが少し湿り始める。

 

 

 

「あら~。天龍ちゃん・・・こんなに出来上がっちゃって♪」

 

 

 

その姿を観察する妹が妖艶な表情で舌なめずりをする。

 




前半終了!
次の後半戦も飛ばしますよ・・・。
ちなみに物語に出てくるお酒は架空です。
もう少し調査してから凄いお酒も出したかったのですが、控えめということにしますw
次回の更新予定が明日ですが、間に合うかな?

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