>>CE71.06.15 本島@オーブ/OTHER
CE71年6月13日。原作同様、この世界においても大西洋連邦軍第4洋上艦隊が南下。オーブに対し、ウズミ・ナラ・アスハ代表首長の解任と議会の即時解散、武力放棄と査察受け入れを要求。回答に48時間の猶予を与えるという、事実上の宣戦布告を行った。
オーブ首長会議は即座にこれを拒否。だが大西洋連邦海軍は猶予時間まで動かず、その間にオーブ軍は臨戦態勢に移行した。
斯くしてCE71年6月15日。ついに大西洋連邦軍第4洋上艦隊はオーブ連合首長国の排他的経済水域に侵入。オーブ解放作戦を実施に移すと共に、後世、オーブ防衛戦と呼ばれることになる戦いが幕を上げることになった。
>>SIDE END
>>CE71.06.15 本島近海@オーブ/カガリ・ユラ・アスハ
〈いいな、カガリ。おまえの役目は標的と砲台だ。一定距離に近づいた敵を、とにかく撃ちまくれ。それでどうにかなる〉
「わかってる! 何度も言うな!」
パイロットスーツどころか、式典で身につけるドレスにティアラまで付けている私は、球状の内面全てに外部の映像が映しだされている操縦席──全天周囲モニター・リニアシートと言うらしい──に収まったまま、両手をレバー、両足をフットペダルにそっと添えただけにした上で、首の後ろに付けたニューロリンカーを経由して視覚神経に送り込まれる様々な情報に目を走らせていった。
<ORB-01 アカツキ>。
今、私が搭乗しているのは、オーブ軍のフラグシップとして作られたMSだ。見た目は<ストライク>に近いが、全身が熱光学兵器を反射する黄金の装甲に覆われ、背中には両肩上と両脇下から四門のプラズマ収束ビーム砲が突き出ている。また環状のデュートリオンビーム受光器兼モノフェーズ球状光波防御シールド装置を背負い、両手に高エネルギービームライフルを持った上で空を飛んでいるという常識をあざ笑うかのようなMSだった。
製作者は、あの“哲学者”ユウナ・ロマ・セイラン。
今現在の通信相手もそう。
それに許嫁でもある。だが、父様は破談にすると言っていた。なんでもユウナは、今の戦争が終わったあとは木星の開発事業に関わり、オーブを離れるのでアスハ家の跡取りである私の婿にするわけにいかないんだとか……
それもそうだと、今なら納得できる。
ユウナは天才だ。それも歴史に名を残すような、途方もない天才だ。ただ、あまりにも天才すぎて、ずっと自分の才能を隠してきた。コーディネイターとナチュラルの確執が戦争にまで発展した現状を思えば、仕方のないことだと思う。
もしオーブが平和なままなら、きっとユウナは“哲学者”と馬鹿にされたままでいただろう。ユウナ自身、それを望んでいたと思う。
でも、そうもいかなくなった。
G事件。機械相の独断でモルゲンレーテ社と大西洋連邦軍とのMS共同開発を進めたという事件。そのせいでオーブは、資源小惑星コロニー“ヘリオポリス”を失うことになった。ユウナも、オーブが国難に見舞われることをそれで察したんだと思う。
だからユウナは<アストレイ>、いや<アストレイア>の開発に手を出した。
自分の秘密がバレてしまうことも厭わず。
自分の才能というパンドラの箱を開けることも厭わず。
……水くさいと思う。でも、わかる気もする。
私も小さい頃から、自分の身体能力の高さに後ろめたさを覚えていた。アスハ家の跡取り娘という立場もそうだ。養女なのに、自分はこんなにも身体能力が優れていて、オーブの王族に等しいアスハ家の跡取りであることが決まっていて……
G事件を知り、後先も考えず、ヘリオポリスに向かったのはそれがあったからだ。
この目で見たかったのだ。
父様は直接関係していなかったというが、代表首長である父様が本当に何も知らなかったとは思えない。きっと知っていながら、政治的判断で見逃していたはずだ。そうやって手に入れた軍事力で本当にオーブの平和が守れるのか……そう思えなかったからこそ、私はこの目でG兵器を見て、確かめたかった。
結果、あの災厄に巻き込まれた。
キサカのおかげで無事、本土に戻れたけど……そこで私は父様を詰った。
父様は、私が世間知らずだと逆に叱った。
だから世界を知ろうとした。
向かった先は、今の地球で最も困窮しているとされた北アフリカだ。
そこで現実を知った。
耐えきれなくなった私は、レジスタンスに加わった。
キサカには止められたが自制できなかった。
それからいろいろあって、<アークエンジェル>と再会し、一緒にオーブに戻ることになった私だったが……思い知らされたのは自分の小ささばかりだった。
だからこそ私は、それからというもの、苦手とした座学も頑張って受けた。
父様やユウナの御爺様に随行して外交の場も見学させてもらった。
自分の無知ぶり、小ささをさらに思い知らされる毎日だった。
そんな私に、新しい役目が言い渡されたのは少し前のことだ。
──カガリ。戦争の象徴として人を殺す覚悟はあるか?
父様のその言葉に、一瞬言葉に詰まったが、私はしっかり頷き返した。
こうして私は<アカツキ>の正規パイロットに選ばれた。
推薦者がユウナだと知ったのは、その後だ。
──オーブのフラグシップだから、乗るならカガリしかいないだろ。
簡単にそう言いのけたユウナは、シミュレーターによる訓練に付き合ってくれた。そこで初めて、ユウナがMSパイロットとしても優秀であることを知った。
──MSは頭で動かす兵器だからな。生身の格闘より楽なのは当然だ。
少しだけ笑えたのは、元<アークエンジェル>のフラガ大尉……いや、今はフラガ一佐か。彼に<アストレイア>の実機による模擬戦を挑まれ、僅差で負けた時のことだ。
──てめぇ、わざと負けたろ!
──んなわけあるかぁ! あの乳を好き勝手してるてめぇをボコる好機だったのに!
──はぁ!? セイラとかいう<アークエンジェル>の新艦長こましてんのてめぇだろ!
──て、てめぇ! 言っていいことと悪いことがあんだろ!!
──あぁん!? だったらやんのか!?
──やってやんよー!!
二回戦。ユウナの突撃→乱舞で模擬戦終了。
なんでも独自の格闘パターンを組んでいたらしい。超軽量の<アストレイア>は格闘戦に不向きなため、それを見越した<アストレイア>による対<アストレイア>格闘撃破用パターン、なんていうニッチなものを作れるユウナは、ある意味、<アストレイア>同士の模擬戦では無敵かもしれない。
──どや!
──開発者だからって、使えるようで使えん穴を見つけるのは得意らしいな!
──あーっははは! なんとでも言え、この負け犬!
──ちくしょー!
──ムウぅうううう!
その模擬戦は、イズモ級改修案で地上に降りてきていたマリュー・ラミアス技術一佐がフラガ一佐を殴り倒したことで決着した。あのラミアス艦長が、ユウナに何度も頭を下げている場面は、私にとっては少し衝撃的だったのは秘密だ。
そういえばあの二人、今月下旬には結婚するらしい。
来月にはムウ・ラミアス一佐とマリュー・ラミアス技術一佐になるんだとか。
──フラガなんて家名、残す価値が無いんでね。
ラウ・ル・クルーゼの絶望宣言を思えば、そういう結論になるも仕方ないと思う……
〈そろそろだな〉
ユウナの声で私はハッとなり、敵との距離が近づいてきたことに気が付いた。
〈いいな、おまえの役目は標的と砲台。一定距離に近づいた敵を、とにかく撃ちまくれ。まちがっても突撃するなよ〉
「わかってる! 何度も何度も何度も何度も言われたことだ!」
〈それでも不安なんだよ、おまえに関しては。過去の自分のバカさっぷりを呪うんだな〉
ぐっ……否定できない。
〈第一陣の攻撃開始まで残り5秒前……3、2、1ッ〉
>>SIDE END
>>CE71.06.15 本島@オーブ/OTHER
オーブ防衛戦──それはオーブの力を世界に見せ付けるショーそのものだった。
戦闘そのものは、大西洋連邦軍の航空戦闘機とオーブ本土防衛軍の<アストレイア>の激突から幕をあげている。だが、最新鋭機でも<スカイグラスパー>に頼らざるをえない大西洋連邦軍と、魔改造の果てに超軽量化&ジェット推進化がなされている<アストレイア>が多数配備されているオーブ軍では軽自動車と戦車ぐらいの違いがある。
初端のミサイル合戦こそ互角だったが、ドックファイトではあっけなくオーブ軍が勝利。
その後も、大西洋連邦軍は空母の甲板に<ストライクダガー>を出して応戦するものの、実は主武装であるM703 57mmビームライフルでは<アストレイア>を撃破できない。そもそも<アストレイア>にはユウナ謹製の優秀な対レーザー/ビームセンサーがついているため、見てから回避余裕でした、なんて状況が当たり前だったりする。
すべてはユウナ・ロマ・セイランが生み出したVR訓練技術のたまものだ。
現実と遜色のないVR訓練において、オーブ将兵はすでに膨大な数のZAFT軍とのありとあらゆる状況の戦闘訓練すら行っている。またオーブ軍用パイロットスーツにはニューロリンカーの機能を一部搭載。これを用いたAR(拡張現実)による情報支援と物理的な脳神経系補助のおかげで、今ではオーブ軍兵士の全員がZAFTの赤服に匹敵する実力を備えるまでになっている。
なお、リンカー系技術はコーディネイターよりナチュラルの方が総じて適正が高い。これはコーディネイターの脳神経系が最初から強化されてているおかげで、逆に過敏に反応してしまい、リンカー系技術との同調を拒絶しやすいために起きた現象だ。
結果、オーブ軍内部でのナチュラルとコーディネイターの能力格差はなくなりつつある。この事実は後に調査結果がまとめられ、廉価版ニューロリンカーが個人用端末として爆発的に売れていくことになる。また、このことがこの世界の在り様を一変させていくのだが、それはまた別の話だ。今はオーブ防衛戦の顛末についてのみ見ていくことにしよう。
戦闘開始から七分後、大西洋連邦軍は三機のガンダムタイプを投入した。
<GAT-X131 カラミティ>。
<GAT-X252 フォビドゥン>。
<GAT-X370 レイダー>。
アズラエル財団傘下の国防連合企業体が前期GAT-Xシリーズのデータを基に開発した、いわゆる後期GAT-Xシリーズたちだ。改良型PS装甲であるTP(トランスフェイズ)装甲を採用した大西洋連邦軍の切り札にも等しい戦力である。
パイロットは当初、ブーステッドマンと呼ばれる“投薬・特殊訓練・心理操作によりコーディネイター以上の身体能力を持たせた実験兵士”が予定されていたが、ジョン・ドゥ暴露事件によって実験兵士計画そのものが頓挫してしまった今、その手が使えない。そのため、今はソキウスと呼ばれる特殊な戦闘用コーディネイターたちが乗っている。
さらに旗艦の甲板から黒地に金があしらわれた<アストレイア>系のMSが飛び立った。
<MBF-P01-SP アストレイ ゴールドフレームSP>。
端的にいえば<ストライク>用のI.W.S.P.(統合兵装ストライカーパック)を強引に装備した<ゴールドフレーム>である。部分的にGAT-Xシリーズの技術で補強しているため性能は向上しているが、防御力の低さは変わらず、むしろ極端な加速性等によりまともが人間には扱いきれないピーキーな機体になってしまった。
だが、一人で無理なことも、この二人でなら不可能ではない。
〈今までの苦渋、百倍、千倍、万倍にして返すぞ!〉
〈ギナ! 出すぎるな!〉
<ゴールドフレームSP>のコックピットは複座型だった。
操縦担当のメインパイロットはロンド・ギナ・サハク。
火器管制担当のサブパイロットはロンド・ミナ・サハク。
強奪した<アストレイゴールドフレーム>を取引材料とし、ムルタ・アズラエルと合流するしかなかった国際指名手配犯のサハク兄弟だ。もはや彼らにしてみれば、この戦いで活躍したうえで勝利をおさめねば、身の破滅を待つだけという状況にまでおいやられているのだ……
だが、そんな兄弟を待ち受けている現実という名の壁は、とてつもなく高く、厚かった。
〈スワロウ1より本部。“黒狐”を発見。繰り返す、“黒狐”を発見〉
〈本部よりスワロウ1。接敵せず任務を継続せよ〉
〈スワロウ1より本部。任務を継続する。対応部隊に健闘を祈ると伝えてほしい〉
敵の陣容は、すでに全てが知られていたのだ。
〈本部よりハンター1。黒狐を発見。キツネ狩りの時間だ〉
〈ハンター1より本部。了解した、これよりキツネ狩りを開始する〉
猛然と<アストレイア>部隊が三機のGと<ゴールドフレームSP>に襲い掛かった。
〈なに!?〉
〈ちっ、連携が……〉
〈〈〈評価修正。オーブ軍の連携練度は極めて高いものと推察〉〉〉
魔改造された<アストレイア>は、量産機でありながらも<ストライク>に匹敵する性能を保持している。そのうえ、パイロットたちはVR訓練を積み重ねてきたスペシャリストたちだ。
いかにロンド兄弟とソキウスが優秀だとしても、自分より優れたパイロットが乗る機体を相手にした訓練を積んできた者たちと、自分に劣るパイロットや機体との戦闘しか経験していないコーディネイターたちとでは、どちらに分があるか、最初からわかりきっているようなものだ。
それでも戦いが膠着状態に陥るあたり、ロンド兄弟とソキウスたちも決して無能とは言い切れないところがある。逆に、彼らに対して、一機たりとも小破すら出さずにすんでいるオーブ軍の練度もかなりのものと断言していいだろう。
しかし、それを一変させる決戦兵器が、オーブには控えていた。
〈そーら、いい距離だ。ちゃーんとロックオンしてから撃てよ?〉
「威嚇射撃なしでいいんだな?」
〈必要ないだろ。もう交戦中だ〉
「わかった。──カガリ・ユラ・アスハより総員に通達! これより天の鉄槌を下す! 繰り返す! これよりアカツキによる天の鉄槌を下す!!」
その機体を大西洋連邦軍が認識したのは、ちょうどその時だった。
「新型です! オーブの新型がこちらに近づいています!」
旗艦の艦橋に詰める通信士が律儀に大声で報告していた。
だが、その声は他の奇声で部分的に上塗りされてしまう。
「なぜだなぜだなぜだ! なぜこうなる! どうしてこうなるんだぁあああ!」
この場でただひとり、軍服ではなくスーツを身に着けてた金髪の青年──ブルーコスモス盟主にしてアズラエル財団の会長、ムルタ・アズラエルは、頭をかきむしりながら、そう叫んでいた。
ここまで一方的な戦いにはならないはずだったのだ。
ロンド兄弟がもたらした情報から、オーブの量産型MSが防御性能を捨てて運動性と機動性を高めた機体であることは把握していた。飛行できるように改良されたとしても、戦闘機と比較にならない遅さで空を飛べる程度であり、その程度の兵器であれば艦隊の対空砲火と既存戦闘機の飽和攻撃で一掃できる計算だったのだ。
だが、蓋を開けてみればどうだ。
ミサイルというミサイルは迎撃され、戦闘機の機関砲は関節部でさえはじいてしまい、艦船の砲撃は磁石の反発力でも使っているかのようにヌルヌルと避けていく。それでいて射程の長いビームライフルでこちらは大損害を受けている。
海上だけではない。電波が使えないせいで精度が落ちたとはいえ、画像解析方式を主とすることでそれなりの性能が期待されていたイージス艦が、海中からの攻撃によって次々と沈んでいる。オーブは海洋国家のくせに潜水艦をたいして保持していなかった以上、すでに発表されている量産型MSの水中用を繰り出していると考えられるが、戦闘開始直前まで見つけられないほどの隠匿性を持っているなど予想外だ。
「どうして! どうして! どうしてどうしてどうして!!」
アズラエルは錯乱一歩手前だった。そんな彼を一瞥した艦隊司令は舌打ちをすると、通信士に顔を近づけた。
「報告を復唱! 新型と聞こえたが!?」
「はっ! 0時、1キロにオーブの新型を確認! こちらに──」
その時だった。
「──これをオーブの意思と知れ! アカツキ、フルバースト!!」
六条の閃光が大西洋連邦軍艦隊に襲い掛かった。
その一撃で巡洋艦1隻、駆逐艦3隻が大破。空母1隻が中破。空母1隻が甲板上のMSを破壊され、被害を出してしまった。
アズラエルが叫んだ。
「な、なんだ今のは!?」
「映像出ます!」
間髪入れず、モニターのひとつに観測映像が出力される。
そこに映し出されたのは黄金のガンダムタイプだった。
両肩の上と両脇の下から砲門を突き出し、両手にも大ぶりなライフルを構えている。背中には環状の不可思議な装置を背負い、今はそれが発光しながら、さらに大きな三重の黄金の円を展開していた。
「なんだ、あれは……」
「オーブの新型……」
「冗談だろ……」
MSの火力ではない。実際にはデュートリオンビーム受光器兼モノフェーズ球状光波防御膜装置“ヤタノカガミ”が本土からデュートリオンビームによるエネルギー供給を受けているからこその大火力なのだが、そこまでのことは彼らにもわからなかった。
「つ、通信が! あの新型から全周波数に向けて通信が流されています!」
通信士が叫んだ。
「つなげ!」
「はっ!」
艦隊司令の命令で即座に通信画面が表示される。そこには、黄金のティアラを頭に被り、純白のドレスに紫色の肩帯をかけた美しい少女のバストショットが映し出されている。あまりにも場違いな映像に、艦隊司令は一瞬、通信士をにらみつけたが、通信士は首を小さくふることで間違いではないことを主張した。
〈繰り返す! 私はオーブ連合首長国本土防衛軍将軍、カガリ・ユラ・アスハである!〉
アスハ──その名乗りだけで、彼女の立場は誰もが理解した。
オーブの王族、アスハ家の令嬢。
正真正銘のプリンセス。戦場に居てはならない種類の人物だ。
〈大西洋連合軍を名乗る無知蒙昧な侵略者よ! 我が国が狼を恐れるだけの羊とでも思ったか! これ以上の進軍、我が国の叡智と技術と努力の結晶であるオーブの剣、この<アカツキ>と我が軍が許さぬと心得ろ!〉
再び大西洋連合軍を襲い掛かる六条の破滅の光。
……もはや、戦いは決した。
二度目のフルバーストと共に、ムルタ・アズラエルが逃げ出したのだ。
自分が乗り込む<スカイグラスパー>を三機のG──というより主に<フォビドゥン>に──と<ゴールドフレームSP>に守らせながらアズラエルが戦場を離脱。ほぼ同時に大西洋連邦軍が降伏の意思を表明。全艦艇が主機を止めだしたことでオーブ軍も追撃できず、アズラエルとガンダムタイプ三機を見逃すことになってしまった。
だが、戦闘そのものはこれで終了した。オーブは守られたのだ。
「……本当に、守れたのか?」
〈さぁな〉
「おい」
〈とにかく戻れ。あと、医者のカウンセリングとか受けとけ〉
「そこまで軟弱じゃない。人殺しは……もう、経験済みだ」
いずれにせよ、こうして世界はオーブの剣を知ることになった。
地上においては<アカツキ>、
宇宙においては<フリーダム>、
そして高い汎用性を誇る<アストレイア>と高い練度を誇るオーブ軍兵士たち。
原作と大きくかけ離れたこの世界において、オーブ連合首長国は少数精鋭の守勢的軍隊ながらも、世界最強の軍事力を持つ国であると強く印象付けられることになったのだった。
>>SIDE END
>>CE71.06.25 アメノミハシラ/ユウナ・ロマ・セイラン
戦後処理も終わったのでアメノミハシラに帰ってきた。
「で、これなわけか」
「そうね。これなわけ」
帰ってきた俺を待ち受けていたのはセイラが取りまとめておいた諸々の新規情報だった。
ぶっちゃけると、オーブ防衛戦の3日後に始まった第三次ビクトリア攻防戦の顛末だ。
結論を言えば、原作通りに地球連合軍側が勝利した。ZAFTは最後の最後で自爆装置を作動したようだが、原作同様、特殊部隊の突入によりこれを阻止。地球連合軍はようやく宇宙に上がる手段を取り戻すに至ったというわけだ。
ただ、原作と大きく異なる点がいくつもある。
まず地球連合軍の主力が<ダガー>ではなく<ぺリオン>だったという点だ。
そもそも第三次ビクトリア攻防戦はユーラシア連邦が主となって行われている。そのため主力として<ハイぺリオン>の量産型である<ぺリオン>が使われたのだが、これが大活躍してしまい、アズラエル財団の面目は地の底まで叩き落とされる結果となっている。
また、オーブに攻めてきていたせいで、原作ではこっちで活躍したロンド兄弟が出陣していなかった。
おかげで、すでに地球連合軍では全軍の主力を<ぺリオン>系にしようという話が持ち上がっており、今後を見据えた宇宙戦用の改修機が大量生産に入っている。どうせ動体視力も反射神経もナチュラルはコーディネイターに及ばない。それならば機動性より防御性を強化し、移動砲台としてMSを運用する。という考え方が主流になりつつあるというわけだ。
まぁ、オーブ防衛戦での<アカツキ>のフルバーストが地球連合軍全体にアカツキショックと呼べそうなものをもたらした可能性も高いのだが。つーか、それならMSである必要性がないような気も……
一方、オーブは真逆をいっている。
身体機能の差による加速度耐性の問題こそ残っているが、リンカー技術によりナチュラルもコーディネイターも同等の反応速度を示せるようになったオーブ軍では、鹵獲した<ダガー>の高い量産性と整備性──地味に<アストレイア>より上だった。悔しい──に着目し、次世代量産機計画を今の時点から検討に入っている。
だったら、<ウィンダム>だ。
個人的に<ウィンダム>は全ガンダム系作品の量産機の中でも上位に位置するかっこよさを誇っていると思う。原作上のスペックは<ストライク>と同等、種死時代の<ザクウォーリア>より少し劣るという程度だが、<アストレイア>に施した技術を用いれば、次世代どころの話ではない性能になるはずだ。
それに、拡張性も<ジェガン>並みに確保できる可能性が高い。
戦後を見据えれば、これほどふさわしい機体もないだろう。いずれ起きる軍縮においては新規開発より拡張改良のほうが優位に立てる。地球連合とプラントの量産機がどうなるかわからないが、<ムラサメ>よりは発展性もある。
可変型はロマンだが、整備性や生産性が……
「それで、今後はどうするつもり?」とセイラ。
「どうするって……静観だけど?」
「戦争じゃなくて」
「あぁ、こっちか。もう戦闘もないだろうから、ヘリオポリスとアルテミス……L3の再興がメイン、かな?」
だってさ。もう、あれこれと仕掛けを施した後だし。
ジェネシス?
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦?
平気、平気。仕込みはもう、終わってるから。
>>SIDE END
<ウィンダム>かっこいいよ<ウィンダム>。種死では雑魚扱いだったけど<ウィンダム>のプロポーションは歴代ガンダム系でも屈指だと思う。最高は<ガンダムMkII>だろうけど。異論は認める。