異世界転生にハーレムを求めて何が悪い!   作:壟断

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05:男の嫉妬は醜い怪物である

 

 パルゥムの美少女を隣に座らせ,ヒューマンの美少女とエルフの美女を体面に座らせた白髪赤眼の兎小僧。

 それなにスクエアなんですかね?

 店内に入ってきていたのは気づいていたが、できるだけ無視しようとした。

 しかし、私もお酒が入り気分も緩み始めていたところに私と似たような卑しい笑みを浮かべた酔っ払い冒険者が彼女らのところに割って入ろうとするのに我慢ができなくなった。

 

「死に晒せェ!リトル・ルーキーぃぃぃいいっ!」 

 

「「うおああああああああああああああああ!?」」

 

 私の専用魔法である『グレータースティール』を発動させての飛び蹴りが酔っ払い冒険者を巻き込んで兎小僧に直撃する。

 本来であれば机やその上の料理まで粉砕してしまうような攻撃だったが、そこはさすがの『豊饒の女主人』に務めるウェイトレスたち。

 しっかりと料理や机を回避させて被害を最小限に留めていた。

 

「てめぇいきなり何しやがる!」

 

 私に蹴飛ばされてベル・クラネルと共に床に突っ伏していた酔っ払いの冒険者が立ち上がって私に怒鳴る。

 厳つい顔つきで如何にも荒事を好んでいます、というような風貌の男冒険者は、仲間の男たちに目配せをして私の背後を抑えた様子だ。

 

「私は、そこで可愛い女の子に介抱されているクラネル君に用事がある。外野は黙っていてくれないか?」

 

「いや、テメェが俺を蹴飛ばしたんだろうが! 見ろ、こんなにでけえタンコブができちまったじゃ「からの~踵落とし!」 ぐぎゃっ!?」

 

 これ見よがしに頭を下げて小さなタンコブを見せてきたので遠慮なく後頭部に鮮やかな踵落としをくれて店の床と接吻させてやった。

 

「て、てめぇ! よくも「からの~回し蹴り!」 どあっ!?」

 

 私の攻撃に倒れた男の仲間が背後から襲い掛かってくるが、それを最小限の動きで蹴り倒す。

 今の私は、酔拳Lv7だからな。

 背後からの攻撃など無意味。

 床にたたきつけた男の頭を踏みつけながら私はパルゥムの女の子に介抱されているクラネル君を睨み付ける。

 

「直接会うのは、始めてかな? ベル・クラネル君」

 

「あ、はい、たぶん。……えっと、どちら様でしょうか?」

 

 いきなり酔っ払い冒険者と共に自分を蹴飛ばし、酔っ払い冒険者を気絶させた私に疑惑と不安の目を向けるクラネル君。

 

「ベル様、この人はゼノン・ダイシン様です。ミアハ様のところですれ違ったことがありますよ?」

 

 クラネル君を介抱するように寄り添っていたパルゥムの美少女、リリルカ・アーデがため息交じりに言う。

 リリルカとは以前から顔見知りであり、先日も臨時のサポーターとして雇った仲なのでクラネル君に私を紹介する。

 

「あーそういえば、見たことあるようなないような。って、いきなり蹴飛ばすなんてひどいで「グレーター・スティール」痛っ、「グレータースティール」あ痛っ! 「グレーターステ

 

ィールⅡ」い、痛いですってば!?」

 

 リリルカの紹介にパッとしない様子で頷いていたクラネル君の表情にイラついたので『グレータースティール』のデコピンを食らわせる。

 

「確かに私は頭は薄くないが影が薄い。君のようなラブコメ野郎の目に留まらないのも仕方がないだろう」

 

「ら、らぶこめって何? というか、表情が気持ち悪、じゃなくて顔が怖いですよ」

 

 つぶらな瞳をきょどらせて戸惑いを示す小動物系男子に再びグレータースティールを構える。

 

「しかし、ハーレム冒険者撲滅委員会(会員募集中)のトップとして言わせてもらいたい」

 

「ハーレム冒険者って僕のこと!? ちょっと何か誤解を――」

 

 このハーレム兎は言うに事欠いて、この状況をハーレムではないとのたまうのか。

 明らかに好意を持っていると思われるリリルカとヒューマンのウェイトレス美少女シル・フローヴァ、かなり高い好感度を示していると思われるエルフの美女リュー・リオンをそばに

 

侍らせているにも関わらず、ハーレムではないと?

 マスコット的愛らしさを持つロリ巨乳である神ヘスティアの眷属になっておきながら?

 私は君の前にヘスティアの眷属にしてもらおうとしたが「君はちょっと……生理的に無理」と拒絶されたロリ巨乳と同棲しておきながら?

 ハーフエルフの受付嬢エイナ・チュールに一冒険者として以上に構われ、買い物デートにまで行っておいて?

 私は最初の冒険者登録でエイナちゃんが担当職員になったはずなのに次の日にはギルド職員男子(メガネ)が私の担当職員になっていたというのに?

 

 今もリリルカに介抱されながら「訳が分からないよ」という表情のクラネルに私自身も「わけがわからないよ」の思いと共に宣言する。

 

「よかろう、ここに聖戦を始めようではな「静まりなさい」 おぶぅ」

 

 閃光のように空を切り裂いた回し蹴りの一撃。

 その刹那に垣間見た穢れを知らぬエルフの園を瞼に永久保存し、私は意識を奈落の底へと落した。

 

 

 

 

 

 

 人生は理不尽でできている。

 私自身、褒められたような人間ではないが、それでも幸福な者を憎む程度は許してほしいと思う。

 何もできない世界から解放され、何でもできる可能性がある世界にたどり着いた私は、ハーレム冒険者を許さない。

 大恩あるミアハも天然の女たらしなので、私の主神でなければデストロイしていたはずだ。

 同じく天然ジゴロな神タケミカヅチもボールクラッシュしてやりたいと思った。

 耳慣れた神だったからファミリアに入団させてもらいに行った時も……あのたらし神め。

 ロキ・ファミリアのフィン・ディムナも捨て置けない。

 私より年上なのに少年のような見た目で、さらに戦闘力も高く、女性人気も高いなど言語道断。

 名前も親指の『フィン』なのか槍の『ディムナ』なのどっちかにしろと言いたい。

 何が『勇者(ブレイバー)』だ。

 年相応に禿て、デブって引退していれば良いものを。

 

 

 数え上げれば切がない恨み、いや、妬みが私を苛む。

 あの酒場であんなことをすれば多額の損害賠償を支払わされた挙句、今度こそ出禁になること間違いなしだ。

 今の私を唯一癒してくれる空間でなんと馬鹿なことをしたものか。

 確かにロキとの会話に緩んでいたとはいえ、酔いに任せて大失敗をするなんて以前の私ならあり得なかった。

 これも戦える力を得たことと目の前に物語の主人公のようなハーレム野郎が現れたせいだ。

 まったく、男の嫉妬は醜いと自分でもわかっているはずなのに――。

 

 

 

 

 

 

 深い、深い水底に沈むような後悔の念に身を任せるままにまどろんでいた私は、身体に感じる日の光の呼びかけに答えるように目を覚ます。

 

「……目、覚めたかい?」

 

「おはようございます、ミアハ様」

 

 最低な気分の私を待っていたのは、半裸の私の背に抱き付く我が主神ミアハと部屋の扉の隙間から黄泉の亡者の如き半眼で覗き見るナーザァ・エリスイス。

 

 やはり絶望的な目覚めだった。

 





本日のステイタス更新

ゼノン・ダイシン
 Lv.2
 力:I-99
耐久:H-150
器用:I-89
敏捷:I-20
魔力:B-650
【発展アビリティ】
 強欲:I
 あらゆる獲得要素において+補正が掛かる。
【魔法】
 グレータースティール:S
 接触した対象に付随するアイテム等の所有権を自分のものにする速攻性の特殊魔法。
 ランクアップにより、アイテム以外のものも奪うことができるようになる。
【スキル】
『強欲の代償(マモーナス)』
・認識範囲内の他者から嫌悪の感情を向けられるようになる。
 神でも例外ではなく、影響を受けない者はゼノンと何らかの親和性がある者に限られる。
・富を獲得する上で最上級の+補正を得る。
・強く欲すれば一時的に適性外のスキル効果を獲得できる。任意発動不可。
・このスキルは―――――――――――――――――により、『     』へ昇華する。
・このスキルは―――――――――――――――――により、『     』へ昇華する。
『嫉妬怪物(リヴァイアサン)』
・他者を妬めば妬むほど能力が増大するが、判断力が著しく低下する。
 嫉妬の対象が認識範囲内にいる限り、効果は持続する。
・このスキルは―――――――――――――――――により、『     』へ昇華する。
・このスキルは―――――――――――――――――により、『     』へ昇華する。

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