真剣で世界に恋しなさい!   作:teymy

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ちゃうねん。(大阪さん弁。「これから言い訳をします」の意)

別に売春経営でグランプリ目指したりとか、未だにラブラブの奴隷ちゃんとイチャイチャするのに忙しかった訳じゃないねん。
ちゃんと仕事()忙しかったねん。
要するに遅れてすまねん。

後書きに一つ、内容についての報告があるので一読ください。

みじけぇ…。


第九話 季節の変わり目は始まりの合図

「席につけ!」

 

2年Fクラスの担任、小島梅子の声が響いた。

 

土日の休日が明け、連理がクラスの一員になって早一週間が経過した。

連理はその容姿と持ち前の好奇心で生徒たちに分け隔てなく接し、すっかり溶け込んでいた。やはり風間ファミリーとしての付き合いが優先されるため、彼らと行動を共にすることが多いが、概ねクラスの全員が連理を認めていた。

 

また、学園内でも連理の存在は有名であった。連理の容姿で男子制服を着ていれば少なからず話題に上がり、廊下を歩いていれば注目された。

最初こそ『あの美少女は何故男装をしているのか』と多少の混乱が起きたが、着物や金色に輝く洋服、まして軍服で登校する生徒が存在する川神学園である。すぐに『男装美少女』として誤解が広められた。

その誤解を真に受けて連理に告白する男子生徒が続出し、その度に九鬼英雄まで出張って男であることを懇切丁寧に説明したおかげもあり、現在では『美少女のような男子生徒』として正しい認識をされ始めている。

 

そうなると次なる問題が発生した。

連理が男であるという認識が広まった結果、今度は女子生徒からの告白合戦が始まった。特に3年生女子からの告白が多く、中では『弟になってほしい』という告白なのかよくわからないラブレターが下駄箱に入っていたときは流石の連理も大和に泣きついた。岳人も嫉妬に泣いた。

更に連理が男であると知った上で告白してくる男子生徒もいたが、こちらは悪質な意図が見えていたので大和による同性愛者の多いE組男子を介した制裁が成された。

 

余談ではあるが、最初の出会いから連理に並々ならぬ執着を見せた男、井上準については、親友の言動に珍しく動揺を隠せなかった葵冬馬と大和の間で協議が行われた。

協議の結果、榊原小雪と仲の良い連理を井上から遠ざけることは難しく、ならばせめて近くにいても害にならないよう教育し、現在は連理に対する悪意ある告白を潰すために活動している。

 

学園の外では、一週間のうち二日は放課後に川神院での修業が行われ、基礎トレーニングと気の扱いを学ぶ。二日と言う少ない日数なのは、あくまでも連理の『社会体験』のためであり、様々な遊びや学習をより多く体験する時間を確保するためである。

金曜日の夜には連理初参加となる『金曜集会』が開かれ、そこで再び連理の歓迎会がささやかに行われた。翌日の土曜日には再び川神案内と、今度は七浜まで範囲を伸ばして一日遊んだ。

精神をガリガリと削る告白合戦も井上による沈静化の目途が立ち、土日を使ってファミリーが連理をもてなしたため、ようやく素直に日々を楽しみ始めた連理は、今日も意気揚々と登校して席に付いている。

 

 

現状の確認が終わったところで、現在は朝のホームルームである。

担任小島が教卓の横に立ち、本日の予定や注意事項などを簡潔に述べている最中だ。

 

「来週には水上体育祭がある。各自水着の準備は怠るな」

 

水上体育祭と聞いただけで盛り上がるクラスの男子生徒たち。ざわざわと煩くなりかけたところで、小島が鞭を鳴らした。

 

「静かに!競技内容は掲示板に張り出されているため、確認しておくように。例年通りサプライズ競技なども組み込まれる。皆と相談しながらどの競技に出るか考えておけ」

 

川神学園の体育祭は出場者をハッキリと決めないため、当日の競技直前で出場者の変更が可能となる。

他のクラスの出場者を見て人員を配置することができるのだ。

 

ホームルームを終え、小島が出ていくとクラスメイトは始業までの時間を自由に使う。

連理は体育祭に付いて大和に質問していた。

 

「水上体育祭って?」

 

「うん?…あー、そうか。ま、不思議だよなぁ」

 

大和は川神学園ならではのこの行事に疑問を持っていない自分に軽くショックを受けた。一年過ごしただけで随分と常識を忘れてしまったものだ。

 

「運動会の水泳バージョンと言えばいいか…」

 

「……うんどう、かい」

 

簡潔な説明にも首を傾げる連理に、大和も『あー…』と気まずそうな声を上げた。今まで学校に通わず、九鬼に保護されていた連理なのだ。しかも話を聞くに精神状態も良好ではなかった筈。一般的な知識に欠けるのだろう。

 

「ごめんごめん。まぁ、学校の皆で泳いでレースしたり、水の中でスポーツをしたりして、どのクラスが一番得点を多くとれたかを競うんだ」

 

「………わかった」

 

「……うん、実際にやってみればわかるからな」

 

恐らくわかってない連理に、大和は当日できるだけ傍にいて説明してやろうと苦笑いを浮かべた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

Side 大和

 

「おーっす、連理いるかー」

 

「レンレーン! ウェーイ!」

 

昼休み、学食から帰ってくるとあずみさんと榊原小雪がやってきた。今日は九鬼英雄がいないため姉御モード(九鬼不在&連理を前にする時のモード)だ。

土日に七浜まで遊びに行くことを連絡したり、ちょくちょくこうしてクラスに来るためあずみさんとは話す機会が多い。

できるだけ仲良くなって九鬼とのパイプを繋げたい。

 

「あずみ姉とユキだ」

 

「あれ、九鬼は?」

 

「英雄さまは仮眠を取られてる。それより今日は水上体育祭についてだ」

 

連理から聞いたけど九鬼って家に帰っても仕事が忙しくてまともに休みがないらしい。その上で勉強もして学年上位にいるんだから大したものだ。

 

「連理、お前水着持ってないだろ」

 

「うん」

 

「あ、そっか。じゃあ買いに行かなきゃな…って、それであずみさんが来るってことは何かあんの?」

 

「いや、特にこっちから言う事はねぇし、水着も常識の範囲内なら文句は言わねぇ……が」

 

「が?」

 

「ラッシュガード…着せてくれ」

 

「日焼け防止…って訳でもなさそうだね…」

 

「あぁ、よく考えてみろ。……連理の見た目で海パン一丁だぞ」

 

「……」

 

「……オメェも分かるだろ?……なんかこう、なぁ?」

 

「……わかります」

 

あずみさんは深いため息を吐いた。

…うん。お疲れ様です。

 

因みに連理は既に榊原と楽しそうにお話してる。いつみてもほのぼのするコンビだ。

 

「まぁ、学園の許可は取ってあるからパーカータイプとかで大丈夫だ。さっきみたいに日焼け防止とでも言って買わせてくれ」

 

「了解」

 

「あと、これは出来ればでいいんだが」

 

「どしたの?」

 

「買いに行く日程を教えてくれねぇか? 李の奴が行きたいって三回転捻り土下座して頼んできてよ」

 

なにそれ超見たい。

 

「……あの人そんなに連理好きなんだな。この前も寮に着て散々可愛がってたし」

 

「アタイはもう一種の病気なんだろうなって思って接してる。九鬼ン中じゃ常識だな」

 

「スゴイな李さん」

 

そう思われても連理の事をある程度任されてるってことだもんな。

 

「取り敢えず了解。日程決まったらあずみさんに連絡する形で良いかな?」

 

「あぁ、ワリィな。多分、李がまたなんか美味い物持ってくからお前等で食ってくれ」

 

「ははっ、楽しみにしてるよ」

 

あずみさんも連理がらみになると周囲にも普通に優しいんだよな。いつもはS組らしい偉そうな感じだけど。

だからこういう話をしてる時はとても好感が持てる。

 

「はっ!?フラグが建とうとしている!?」

 

京はスルーっと。

 

「おーい、連理ー」

 

「あいー」

 

「ういー」

 

連理を呼んだら妙な返事で釣れた。ついでに榊原も釣れた。ホントに可愛いなこのコンビは。

 

「今度の土曜日に連理の水着も買いに行かないか?李さんも来るってさ」

 

「李も?…行く」

 

お、ちょっと嬉しそうだな。やっぱ連理も李さんが好きなんだろう。

 

「ねーレンレン、ボクも行っていい?」

 

榊原が誘いに乗って来た。珍しいな、こうゆう時は俺たちとは別で葵たちと連理を誘うと思ったんだけど…。

 

「ん、行こう」

 

連理は頷いて答えた。でも俺たちの中に榊原が混ざっても大丈夫だろうか?

一応葵たちも一緒に居たほうが榊原も俺たちも安心だろう。

 

「榊原さん、葵たちも一緒に来るのかな?」

 

「おー!じゃあボク、トーマ達に言ってくるね!」

 

瞳を輝かせてスタターっと教室を出ていく榊原。あの三人は仲が良いからなぁ。

 

「大和、良いの?」

 

モロが声を掛けてくる。まぁ普段だったら態々あの三人を加えるような提案はしないよな。

 

「今回は連理の買い物がメインだし、葵たちも連理には気を遣える奴等だ。榊原は連理と仲が良いけど、俺たちの中じゃ連理にしか心を開いてないからな。空気が悪くなるよりは良いだろ」

 

「うーん…」

 

「俺たちはいつでも連理と居られるんだし、今回は俺たちが気を遣ってやらないとな」

 

「…そうだね、連理も僕たちだけの交友関係って訳にもいかないもんね」

 

モロもやっぱりいいやつだよなぁ、クリスとまゆっちが加入したときみたいにちょっと懐に入る線引きがしっかりしているけど、それを無しにすればこうやって柔軟に考えることも出来るんだ。

人見知りが無ければ俺たちの中でも大人だと思う。

 

「という事で、今度の土曜日に決まりそうだけど、大丈夫かな?」

 

「ん?おう、李にも伝えとく。集合場所や時間なんかはまた後で教えろ、じゃあな」

 

あずみさんはいつの間にか連理を説教してた。今日は勉強をしっかりやっているかの話で連理が頬を膨らませていた。相変わらず反抗期のようだ。

俺にそういうとあずみさんはさっさと教室を出て行った。

 

再び教室の中を振り返ると、話を聞いていた風間ファミリーの面々が集まっていた。

 

「と、いう訳で今度の土曜日、連理の水着選定会、行く人ー?」

 

「はいっ!」

 

「はーい」

 

「はい!」

 

「パスだ。葵の野郎が来るんじゃ調子狂うぜ。榊原だけならともかくな」

 

「僕もその日はちょっと…」

 

「俺は行くぜ!」

 

反応は様々だな。

参加表明をしたのはワン子、京、クリス、キャップか。後で姉さんとまゆっちにも聞かないとな。多分参加だろうし。

 

「京は大丈夫か?葵たちも一緒になるけど」

 

「ん、まぁ一日だけだし…。それに結局連理を挟んでの交流になりそうだし、それくらいならね」

 

京も連理が来てから変わったかな…。以前ならこんな言い方すらせずに参加を拒否するか葵たちの合流に難を示すくらいならしていただろう。

 

…うん、連理は俺たちにいい影響を与えてくれる。連理と一緒に俺たちも成長していけるんだ。

こうやって連理との思い出も増えて行けば、李さんのお願いも達成できるかな…。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

と、いう訳で、土曜日。

予定通り連理の水着を購入するため、俺たちは集まった。

 

参加者は俺、連理、キャップ、姉さん、ワン子、京、クリス、まゆっちの風間ファミリーに加え、葵冬馬、井上準、榊原小雪に、李さん。そして今日もクリスの世話をするために島津寮に来ていたマルギッテさんだ。

 

李さんは一応仕事として来ているようで、いつも通りのメイド服姿だった。

集合場所である商店街ではなく、朝から島津寮に来てお土産を持ってきてくれた。出発まで結構時間があったのでみんなで美味しくいただいた。

 

「さて、全員集まったな」

 

「予定時刻の5分前です。当然と知りなさい」

 

人数を確認して全員に声を掛ける。

連理は既に榊原とマシュマロを食べながらホンワカ空間を生み出している。そしてそれを微笑ましく見守っている李さんとまゆっちに、同じような顔で葵も見守っていた。

 

「葵、頼むから連理を口説いたり井上を暴走させたりするなよ」

 

「えぇ、勿論ですよ。準も今では恋愛的な意味ではなく、憧れや崇拝に近い感情を持っているようですし。ユキとも仲良くしてくれていますし、それに…私が口説くには連理君は少々…眩しすぎる」

 

「連理マジですごいな」

 

まさか葵をしてここまで言わせるとは。

 

井上は昇天しそうな勢いで連理を見て涙を流している。どこかに感動要素はあっただろうか?

 

「おぉぉ……女神が、女神が微笑んでおられる…」

 

「おいハゲ、わかってると思うが暴走するなよ」

 

「分かってますよ百代先輩、俺は気付いたんだ……連理さんは、本来俺なんかが近づくことすら許されない女神…。それをあの御方はこうして近くに侍ることを許して下さった…それだけで、俺は満足なんです…」

 

(何言ってんだコイツ?)

 

「おーい、出発するぞー」

 

いい加減移動しないと時間がもったいないからな。

因みにこの後はキャップの提案により昼をどこかで食べてそのまま遊ぶことになっている。参加かどうかは個々人に任せる。

 

歩き出すと予想通りというか、やはりある程度はグループ同士で固まっていた。

連理を中心に集まっている榊原、姉さん、李さん、まゆっち。

風間ファミリー中心の俺、キャップ、ワン子、京、クリス、マルギッテさん。

そしてすれ違う女性に声をかけまくる葵に、その隣で連理を見て何故か拝み続ける井上。

 

…最近あの二人にツッコミ所が多いんだが誰か相談に乗ってくれないだろうか。

 

「水着という事はスポーツ用品店か?」

 

「ラッシュガードも買わなきゃいけないのよね?」

 

「格好良いの選ぼうぜ!」

 

「お嬢様、機能も重視しなければ連理が泳ぎにくいと推測します」

 

「連理には是非スクール水着を…」

 

「絶対嫌がるからやめろ」

 

身内へのツッコミも忙しいんだが俺過労とかで倒れないだろうか。

 

「連理~、私にも金平糖いっこお~くれっ!」

 

「ん、あーん」

 

「オゥフ、ナチュラルにやりおるな…」

 

「連理さんいつも金平糖をお持ちですね」

 

「あれは九鬼の揚羽様から頂いているものです。揚羽様も連理を弟のように思っておられますから」

 

「ボクもレンレンにマシュマロあげる~。あーん」

 

「あー」

 

『二人が可愛すぎて、おっちゃんお小遣いはずんじゃいそうやわ』

 

「松風は御二人の何なのでしょうか…」

 

もう俺の癒しはあのグループだけだわ。松風の気持ちがわかるもの。

今日も連理の可愛さで商店街がヤバい。良い意味で。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「なぁ、若。もしもの話だけどよ」

 

「何ですか?」

 

「もしユキがこのまま"あっち"に居たいって思うなら、どうする?」

 

「ユキがそれを望むのであれば、その方が良いでしょうね。私たちの中で、ユキだけは巻き込まれたと言える立場ですから」

 

「だよなぁ…。少し寂しいが、ユキにとってはそれが幸せかもしれねえな」

 

「準…貴方も、良いのですよ?」

 

「馬鹿言うんじゃねぇよ。俺は最後まで若に付いて行く。決めた事だ」

 

「有難うございます。惚れてしまいそうですよ」

 

「やめてくれ。俺は若に付いては行くが、ロリコニアを離れる訳じゃねぇんだ」

 

「それは残念」

 

 




話進まねぇええ!

これでもプロット通りという…。なぜこうも遅々として進まないのだ。
しかも今回はどうしても短くなってしまった…。一応毎回6000字以上を目安に書いているんです。時々無視しますが(笑)
次回は若干シリアスの予定。


一つ内容についてのご報告を。
一度失ったプロットを書き直していたのですが、どうしても設定的に変更になった部分がありますのでこれまで投稿した話の中で矛盾点を洗い出している最中です。
大筋は変更在りませんので些細な部分のみの訂正となりますが、下記に記した個所を変更いたしましたのでご報告させていただきます。

・連理が日本に来るタイミングを変更。それに伴い、六話のあずみのセリフを修正。
「ガキの頃はヨーロッパを転々としてたみたいだな。それから九鬼に保護されるまでは日本にいたらしい」

「両親と一緒にヨーロッパを転々としてたみたいだな。日常会話は日本語で話してたみたいだが、日本に来たのは九鬼に保護されてからだ」
となりましたので、よろしくお願いいたします。


次は恋姫を書くつもりです。(あくまでつもりです)


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