やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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緊張を解く方法はいくらでもある。しかし彼らはこの方法しかやらない。

試験日から二週間ほどで結果が出るみたいだ。

俺はとにかくそわそわしていた。でもしっかり努力はしたんだ。自信はある。だけど、なんか不安なんだよなー。

でも受かれば陽乃と一緒に居れるんだ。その為にやってきたんだ。ポジティブになれ。松岡修造みたいに。

大丈夫だ。大丈夫、大丈夫。

 

「八幡、まだそわそわしなくていいのよ。あと一週間もあるんだから」

「いや、今の内にそわそわしてれば、いざ結果が出るときキョドらなくていいだろ?」

「…なにをいってんの」

「いや、なんでもない。ただ、これは俺なりの心の落ち着かせ方だ」

「ふーん」

 

そう、これは心を落ち着かせるためだ。そうだ、もっと落ち着かせるように勉強をしよう。そうだ、勉強をすればいいんだ。

俺はバッグの中から入試対策用の勉強道具一式を出した。

 

カリカリカリカリ

 

「落ち着かせるために勉強をする方法はなかなかいいわね。グッジョブ」

「どうした?イギリスにいったから英語が入ったぞ?」

「ずっと英語ばっかり見てたからよー」

 

カリカリカリカリ

 

お、落ち着いてきたぞ。なかなか有効だな。

 

カリカリカリカリ

 

あー落ち着くわー、いいわー、これはいいわー。

 

カリカリカリカリ

 

ふっふっふ、これだけやったんだ。俺は完璧だ。ふっふっふっ。

 

チュッ

 

!!!!??

 

「んなっ!お前・・・なにしてんら?」

 

びっくりして噛んでしまったわ!なんで急に頬にキスしてくるんだよ。

 

「だってー、八幡キモかったんだもん」

「はー?」

「勉強しながらニヤニヤしてブツブツ気持ち悪い独り言言ってたらキモいでしょ」

 

声でてたんかー。すげー恥ずかしいわー。いやいや、それよりも、

 

「だから、それとキスのどこに関係があるんだよ」

「それは、乙女の秘密♪」

「…」

 

何が秘密だよ。まったく、すげーびっくりして恥ずかしいわ。…やばい、胸の高まりが…。て、何言ってんだ俺。抑えろー。そうだ、勉強をしよう。

 

カリカリカ…

 

「んっ」

「!!」

 

な、な、な、こ、今度は唇っすか?唇行っちゃうんっすか?まじっすか?俺ヤバイっすよ、超ヤバイ!

て、何言ってんだー!やばい、パニックなってる。

 

「ぷはあ」

「はあ、はあ」

「どう?」

「…どう?じゃねーよ」

「あらら、怒っちゃった?」

「いや、怒ってはないけど、その…」

「その…なに?」

 

って近い近い。顔近いって!またキスしそうになりそうだよ。

やばい、瑞々しい唇が…。すごく魅力的な唇が…。

 

「まだキスしたいの?勉強はもうしなくていいの?」

「もちろん勉強するよ」

「キスしたいんでしょ?」

 

近いってー!顔近いってー!

あ、やばい、もうだ、だめだ、堕とされる…。

 

「んっ」

 

あ、ああ、もうだめだな。もう流れに任せよう。てか、なんで俺勉強してたんだっけ?

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

 

時は流れ一週間。ついに発表の日。

ごくり…。今日、決まるんだ。

やばい、やっぱり緊張してきた。あんなに対策したのに、あんなに陽乃とキスしたのに…。

思い出したら恥ずかしくなってきた。

自然と肩の力も抜けてきた。

 

「さて、いこうか」

「あう」

「あう?」

「おう」

 

あぶね、やっぱ緊張してるな。

俺たちは平塚先生の所に向かった。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「おお、きたか。来てるぞ、結果が。安心しろ、私もまだ見てないからな」

 

平塚先生は封筒を出してきた。あの中に結果が。

 

「それじゃ、開けるぞ。じゃ、陽乃からだな」

「うん」

「あ、まて」

「どうしたの?」

「二人分入ってるな。てことだ、二人一気に発表だ 」

 

まじか。くっ、なんか緊張するな。

平塚先生が封筒を開いていく。

 

ピリピリピリピリ

 

ごくり。本日何回目かの生唾飲み込み。

 

そして、

 

「これだな」

 

白い紙を取り出した平塚先生。

あの中に…。

 

その紙をみた平塚先生。

 

「ん?これは、どう見ればいいんだ?」

「え?どゆこと?」

「え、あ、そういうことか、わるい、なんでもない。それじゃ、発表する」

 

ドクン、ドクン

 

心臓の音がモロ聞こえる気がする。やばい手汗が…。

 

「陽乃、合格」

「やったー!」

「よかったな、陽乃」

「うん静ちゃん!」

 

よかった、陽乃は合格だ。俺は…たのむぞ…。

 

「さて比企谷だが…」

 

ごくり…。

 

「合格だ。おめでとう、よくやった」

「…っ!」

 

やった…やった…!

 

「八幡!よかったね!」

「ああ!やったぞ、陽乃…平塚先生!」

「ああ、よくやったな」

「よかった!八幡!」

 

ギュッ

 

力強く抱きしめあった陽乃と俺。よかった、ほんとに良かった。

 

「ったく、青春だな。そういうことは私の前じゃないところでしたまえ」

 

平塚先生すいません。でも、うれしくて、うれしくて!

 

 

続く




次回投稿は8月25日19時頃です。

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