やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。 作:武田ひんげん
それと、陽乃の過去のことに関してのことは二章第二話に投稿してあるので割愛させていただきます。
今回はその二章第二話の内容を前提として進めていきます。
俺は色んなことを聞いた。
なぜ陽乃が人になれているのか。なぜ陽乃が他人に求められる自分を演じる為に仮面を被っているのか。
正直俺は衝撃と現実味のなさが入り交じった複雑な感情を抱いていた。
ある程度は予想していた答えが帰ってきた。だけど、実際に聞くとやはりすごいというか、そんな経験をしているという衝撃と、俺らのような庶民が関わることのないような内容なので、まったく現実味が沸かない、まるで映画を見ているような感覚が入り交じっていた。
だけど一つだけ俺は地に足がついた感情があった。
「なあ陽乃」
「なに?」
「陽乃ってさ、これからもそんな生活を送るのか?」
「え?」
俺は慎重にならなければいけないと思った。一つ一つ言葉を選びながらそれでも核心に触れていかなければいけない。そう思っていた。
「これから先もさ、そうしてこれからも仮面を被ったりして生きていくのか?」
「…仕方ないよ。それが私の宿命だもの。…あ、でも八幡の前だと違うよ!八幡の前では仮面とかなくても話せるから」
「そういうことじゃない。そんなプレッシャーが常にかかった状況が続いているんだ。体にもいろいろ負担がかかっているはずだ。いくら俺の前で仮面が外せるからって24時間俺が常に真横にいるわけじゃないだろう?それにイギリスにいったらもう俺と今までみたいに毎日会えなくなる。それよかもっと今よりもプレッシャーというのも掛かってくるし、それに言葉とか文化とかの違いもある。生活環境も変わる。今まででさえ負担がかかっているというのに、追い討ちを掛けるように今まで以上に負担が掛かったらお前は倒れてしまうぞ!」
「でもね、もう変えられないの。私はそういう運命なの。いくら好きな人が出来ようが、関係ないの。私はこうして海外に行かされようとしている。ホントは私だって…いきたく、ないのに… 。八幡とずっと一緒に居たいのに…。ごめん、わたしなんだか涙出てきちゃった。あは、ごめんねなんだか。すごいこと言ってるわ私」
陽乃は涙を流し始めた。陽乃が涙を流すなんて滅多にない。いや今までなかっただろう。あの時以来だ。体育祭の日に倒れた日以来だ。
いや、あの時とは状況が違う。きっとこんな感じで泣くのははじめてなんだろう。それはこの状況と言葉でわかった。
それだけに俺はすごくもどかしい気持ちだった。なんだか非力な自分がムカついた。こんなに好きな相手が悲しんでるのに。
いや、違うだろ。俺はまたそんな弱気になるのか?いつもみたいに諦めるのか?俺はそんなチンケな男なのか?違うだろ。俺は変わらないといけない。今までならきっとこのまま諦めているだろう。だけど、俺はもうそんな自分のカラを破らなければいけない。なぜならここに守らないといけない人がいるから。環境があるから。そのためなら、もうどうだっていい。どんなに醜くてもいい。だから…
「なあ陽乃」
「なに?」
「明日、お前の両親と話す」
「…え? 」
「だから、お前の両親と話して海外に行くの辞めてもらう」
「え、え、え?」
俺はさっき聞いた。陽乃の本音を。そして陽乃を守るために、俺は動き出さないといけない。
「な、なんで八幡、そんなこと??」
「なんでって、お前のためだよ。それと俺のためだ。俺は今までなら諦めてた。何もできないって。でも俺は変わるんだ。お前のために、お前との生活を守るために」
なんだかスケールが大きくなってる気がするが気にしない。
すると陽乃は、
「は、八幡…」
「なんだ?」
なんだ?引かれたか?こんなに熱くなったおれは見せたことないからな。
でも、陽乃は、涙を流して、それでも、今まで見てきた笑顔をさらに超える笑顔を見せて、
「うんっ!私も八幡との生活守りたいよっ。ありがとうね」
おれは照れくさくなって顔を背けた。だって今までで一番の笑顔だもんな。そんな顔見せられちゃ、頑張らないわけにはいかないな。
続く
次回投稿は8月13日の19時頃です。
前回は体調不良により投稿できずすみませんでした。
それと、side~のところをsign~と書いていたのを修整しました。よろしくおねがいします。