やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。 作:武田ひんげん
俺たちはリビングでテレビを見ながらまったりしていた。
陽乃は俺の肩に寄り掛かっているので、髪の毛から発して来るいい匂いが鼻に入ってきた。
とにかくまったりと、のんびりと過ごしていた。
ここ数日、お互いにこういう時間は取れなかったのだと思う。俺は陽乃と連絡が着かなかったからなんだかそわそわしていたところがあったし、陽乃はイギリスで準備やらいろいろあったからだ。
ほんとにまったりとしている。さっきまではキスとかもしていたのだが、今は落ち着いていた。
「そういえばさ」
「なに?」
「京都のあの小屋のあの声、聞こえたんだろ?」
「うん」
ほんとあの声ってなんなんだろうか。笑い飛ばせるような感じでもないガチな感じだし、なんなんだろうな。
「冗談みたいな感じよねー。なんだか映画とかのフィクションを見ているようで」
「そうだな。でも現実、なんだよな 」
「ほんとよねー。ホントは後ろで誰かいってたとか?」
「それだったら静ちゃんもきこえてるはずだよー 」
「そうだな。たしか聞こえる人と聞こえない人がいるとか言ってたなー」
「そうだねー、静ちゃん必死だったもんねー」
「ほんと、誰かたすけてやってほしいよあの人を。見る度にひどくなってる気がするよ」
そういうと2人で笑いあった。アハハハってね。…平塚先生、すいません。
「ねえ八幡」
「なんだ?」
「キスしよ」
「ぶふぅー!」
思いっきり吹き出してしまった。落差がっ!会話の落差がっ!
「だめなの?」
「…いや、だめじゃない」
くそっ、そんな上目遣いで見られたら断れるわけ無いだろ…。世の男全員を虜にする目だぞ。
そうして俺たちは本日5回目のキスをした。
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再びリビングにてまったりしてる俺達。
相変わらず陽乃は寄りかかってきて、さらに腕まで絡ませてきている。
俺は恥ずかしいという思いは家の中なのでまったくなかった。それよかウェルカム状態である。
こうしてまったりとするのはいいな。しかも好きな人とまったりというのはまた一段と。
こうして二人でテレビを見ているだけなのに満足できるこの空間は幸せ以外の何物でもない。
出来ればこのままずっと…と思っているのは俺だけなのかと思い陽乃の方を向くと、陽乃はニッコリと笑った。なに?なんだか心の中で考えてたことを見透かされたような気がした。それはそれで悪くはない。なんか陽乃のものになってるよなー俺。
考えてることとかすぐ見透かされて一歩先を行かれる。陽乃はそこがすごい長けてる。俺はそういうところにも惹かれているんだよなー。やばい本格的に惚れてしまったな俺は。
でもそんな生活もこれからは出来なくなるのか?もちろんイギリスに行くんだから当然毎日は出来ない。
もしかしてほとんど、いやまったく会えなくなるなんてことはないだろうか。いや、それはないだろう。いやだが、いろんな話を聞く限り陽乃の家は普通の家とは違うみたいだからもしかしたら…。でもそうしたら俺は一体どうなるんだ?俺は一体…
「八幡、どうしたの?」
「え?あ、ああなんだ?」
「いや、なにか考えてるようだったから」
「ん?あ、まあな…」
「それってさ、これからのことかな?」
「え?あ、いやまあ、その」
「やっぱりね」
「いつも思うんだが、なんでわかるんだ?」
ここでも見透かされたので、思い切って聞いてみることにした。
すると陽乃はニヤリと笑って
「それは、私が八幡の恋人だからよっ♪」
「な、なっ」
なんて歯の浮くことを言うんだ。しかもニヤニヤしながら…。絶対わざとだろこれ。
「でも、冗談じゃなくてホントのことだよ。今まで間近で八幡を見てきたからこそこんなにわかるのよ。まあ今までの経験もあるけど」
「ふーん」
まあ確かにこうして今でも真横にいるし、今までもこうして一緒にいた。この一年間常になんだかんだの理由で横にいたのだからな。
そういえば、今もなんか経験とかいってたけど、今まで陽乃ってどんな生活を送ってきたんだろう。無性に気になったので俺は陽乃に聞くことにした。
「なあ陽乃」
「なに?」
「今までさ、お前ってどういう生活をしてたんだ? 」
「どういうって?」
「いやだからさ、俺と合う前とかどんな生活をしてきたんだ?ほら、お前の話とかからなんか普通の人とは違う生活をしているような感じがしてな」
「ふーん」
なんだよ、その含みのある声は…。なんか不気味。
「聞きたい? 」
「…ああ」
「そんなに聞きたい?」
「ああ」
「そうか、そうだね。八幡には話したいしね」
そういうと陽乃は話を始めた。
続く