やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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甘いというのは砂糖以外にも種類がある。

やばい、やっぱり絶叫系は苦手だ。最初は行けるかと思って油断したのが間違いだった。

 

「まだきつい?八幡」

「…もうちょっとまってくれ…」

 

あれから10分ほどたったが、まだ体調が戻ってこない。どんだけ弱いんだよ俺の体。ベンチに俺は力弱く座っていた。

 

「ねえ八幡」

「なんだ?」

「膝枕、してあげようか?」

「…え?」

「ほらほら、おいでー」

「あ、ちょっ…」

 

あーれー、なんだか陽乃の膝の上に頭が着陸したぞー。そのまま膝枕されてるぞー。

…なに頭なでてるのー?ちょっと気持ちいいじゃん…

やばいわ、なんか眠くなって…

 

 

 

「ちょっと?八幡おきて」

 

気がついたら頬をペチペチ叩かれていた。

 

「ん?どした?」

「なにねてるのよー!」

「は?寝てねーぞ?」

「なにねぼけてるの?三十分は寝てたのにー」

「は?うそだろ?」

「ほんとよ」

 

 

そういえばウトウトはしてたが、まさか寝てたのか?全く自覚ないわ。

 

「でも、八幡の寝顔可愛かったなー!」

「…なにいってんだよ」

「またまた恥ずかしがっちゃってー!このこのー」

「はいはい」

 

「で、この後どうする?」

「なんでもいいぞー。帰るとかでもな」

「うん、帰るはなしで」

「はいはい。で、どうする?」

「あのね、行きたいところあるんだけど、八幡には刺激あるかもなんだけど」

「ん?絶叫か?」

「いや、そのタワーオブテラスってのなんだけど…」

 

あーたしか、建物の一番上から一気に急転直下のやつか。

 

「…お前が乗りたいならいいぞ」

「え?大丈夫なの?」

「大丈夫だろ」

「…そう。ならいこっか!」

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「とうちゃーく!どんどんぱふぱふー」

「おい、人多過ぎないか?」

「もー!折角気にしないどこうとおもったのにー!」

 

いやいや、なんで1時間待ちなんだよ。ここだけ多過ぎだろ。

てか、俺が寝てるあいだに一気に客が増えたんだな。来た時より、三倍は増えてるぞ。

しかもほとんどカップルだし。どんだけ人気なんだよここ。

 

「とにかく、あと1時間がんばろう! 」

「…帰りたい… 」

「そういわず頑張ってまとう!」

 

周りはカップルだらけ。俺らもカップルだけど、やっぱり居心地が悪いわー。今までまったくこんな状況なったことないからなー。

 

「ねえ八幡」

「なんだ?」

「わたし達ってこの先どうなるのかな?」

「何いきなりいってんだよ」

「…なんでもない」

「…まあ、何もないとは言えないけど、心配することはない。何かあってももう俺たちは一人じゃないんだからな」

「…八幡」

 

陽乃は俺の肩に寄りかかってきた。そこには、周りなんか気にならないくらい自分たちの世界が広がっていた。

 

「ねえ八幡」

「なんだ?」

「変わったよね八幡って」

「そう見えるか?」

「見えるよ。今までなら捻くれたこと言ってるもん」

「…そうだな。俺も変わることができるんだな」

「素直な八幡って可愛い」

「…はずかしいこというなよ」

「もぉー顔真っ赤にしてー!」

「お前のせいだろ…」

 

なんでこうこいつは恥ずかしいことが言えるんだよ。あーなんかほんと恥ずかしいわ…

 

「ねえ八幡」

「…なんだ?」

「ふふ、呼んだだけー」

「…はい?」

 

なあ、今さらだけどこいつってこんなキャラなのか?外面と中身のギャップが激しいんだけど。

まじか、こんな陽乃誰にも見せたくねー。やばいわ、俺意外に独占欲強いのか?

 

「ねえ八幡」

「…なんだよ」

「ふふっ、なぁーんでもなぁーい」

「…」

 

やべー可愛すぎる。言葉失うわ。何この可愛いの、ほんとに陽乃?俺の中で作られてた陽乃が崩れさっていくんだけど。

 

これ、すぐ一時間すぎるな。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

ふうー、回ってきたぜー…

あのあと結局同じようなやりとりをしていたらほんとにあっという間に順番が来た。

あますぎたわー。昔のコンビニスイーツぐらい甘かったわー。

 

「じゃ、いこっか八幡♪」

 

陽乃はそういって腕を組んでくる。…やばいって、二つの柔らかいものを押し付けるな。

あ、ニヤつきやがった。絶対わざとだな…

 

 

さあ、スタートです。

 

アナウンスが流れると、ついにスタートした。

陽乃はウキウキしてるが、俺はヒヤヒヤしていた。

ジェットコースター系ではないけど、やっぱり絶叫系だからビビっていた。

ということで、脳内実況始めます!

 

さーて始まりました、上に徐々に上がっているぞ!

おおっと、止まったぞ。もう最上階かー?

いやちがう!前のスクリーンになにかキャラが映し出されたぞー。

おっと、また上がり出したー。おお、とまったぞー。

あ、窓が開いた。外の景色が丸見えだー!綺麗だな。

横を見たら陽乃も魅入っている。やばい、可愛いって思っちゃったよ。

おおっと、窓が閉じた。もう少し楽しみたかったぞー。

さぁ、このあと、ん?降りだし…え?ちょ、まってーはやいって、急転直下すぎるだ…うわぁぁぁぁぁぁ!ぎゃぁぁぁぁぁ!はやい、ばやいってぇーーー!ふえぇぇーーん、こわいよぉお!

 

 

 

「あの、八幡大丈夫?」

「ぁ、ぁぁ」

 

はい、またこういう状態になりますた。

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「…もう絶叫は金輪際いかん…」

「…ごめんね八幡」

 

もうだめだ。二度と乗らないようにしよう。

でも、この膝枕は最高だ。またしてもらってるけど、心地よすぎる。また乗るのもいいな。どんだけ気が変わるの早いんだよ。

 

「ねえ八幡」

「なんだ?」

「夜のパレードが見たいんだけど、それまでどうする?」

「…寝たい」

「膝の上で?」

「…ああ」

「…もう、しょうがないな。じゃ、おやすみ、八幡」

 

やばい、心地よすぎるわ。まわりの目なんか気にならないくらい心地よい。ああ、もうまぶたが…

 

 

 

続く




日間ランキングトップ20に入ってることにびっくり。
正直かなり驚いています。

次回投稿は7月14日の22時です。

これからも応援よろしくおねがいします。

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