やはり捻くれボッチにはまともな青春ラブコメが存在しない。   作:武田ひんげん

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文化祭の準備はこうして進んでいく。

委員長の雪ノ下を中心に文化祭の準備は順調に進んでいった。

俺も記録雑務としての仕事をしっかりこなしていた。

そして気づけば文化祭まで残り一週間となった。

 

「みんな、文化祭まであと一週間だよ!がんばっていこう!」

 

今日も雪ノ下の掛け声で文実が始まる。これは毎日の定番になっていた。

雪ノ下はその頭の良さと回転の速さを生かして的確な指示を与えていた。

その姿をみて他の者たちも頑張っていた。

クラスの手伝いに行くものは最初の方はいたが、だんだん少なくなっていって今では一人もいなかった。

 

カタカタカタカタ

 

「これもよろしく」

 

カタカタカタカタ

 

「これも」

 

カタカタカタカタ

 

「これよろしくね」

 

今日もこうして雑務をこなしていく。横にいる澤村さんも同じく雑務をせっせとこなしていた。

 

「今日なんだか多いねー」

「だな。一週間前だからみんなバタバタだからな。この一週間はこうだろうな」

 

雪ノ下を筆頭としてみんな忙しく動いている。そこには少し緊張が漂っていた。

 

と、雪ノ下が立ち上がって、

 

「みんな、ちょっと聞いてもらえるかな?みんなよく頑張ってくれてるし、このままだと絶対文化祭は成功するよ!だから残り一週間はクラスの出し物とかの方に行きたい人がいたら行ってもいいからねー。ここにいるみんなも楽しめる文化祭にしなくちゃね!さあ、がんばっていこう!」

 

しかし、みんなはびっくりするくらい作業に熱中していった。そこにはクラスの手伝いに行こうとするものはいなかった。

みんなはわかっていた。ここにいる中で一番頑張っているのは雪ノ下だと。

的確な指示を下しながら、自らも膨大な数の仕事をこなしていた。クラスの手伝いにもいかずに涼しい顔で仕事をこなしていた。

雪ノ下がしっかりとした雰囲気を出しているのでみんなはせっせと仕事ができている。だから今さらこの雰囲気を壊すようなことはしたくなかった。

みんなは雪ノ下を改めて尊敬するような雰囲気になっていた。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

完全下校チャイムがなる三十分前になった。

 

「よーし、今日はこれで終わりだね。比企谷くん、作業状況はどうなってる?」

「順調だ。このままのペースで行けば十分当日に間に合うだろう」

「わかった。なら明日は当日の個々の裏方の仕事分担を決めていきます。じゃ、明日も頑張ろう!」

 

その声を最後に解散となった。

俺は少し仕事が残っていたので、その仕事を終わらせてから帰ることにした。

解散後、教室に残っているのは俺と雪ノ下のみとなった。

ちらりと雪ノ下のほうを見ると、ずっとパソコンの前で作業していた。

もしかしたら順調に作業が進んでるのって雪ノ下がこうして解散後も残って仕事をしているからなのか?

俺は気になったので聞いてみることにした。

 

「なあ雪ノ下、もしかして今までこうして放課後残って仕事していたのか?」

「うん。委員長は仕事量が多いからこうして残らないと終わらないのよ」

「そか」

 

雪ノ下は視線を再びパソコンに戻したので、俺も自分の仕事に戻ることにした。

 

その後二人は会話をすることなく、完全下校のチャイムが鳴るまで残って仕事をした。

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「よーし、みんな今日も張り切って頑張っていこー!」

 

次の日も、いつもどおり笑顔を見せながら雪ノ下の一言で文実がスタートした。

クラスの手伝いには誰一人行かずに全員揃っていた。

俺もすっかりなれた記録雑務の仕事をテキパキとこなしていく。この数日間で俺の雑務スキルすげーアップしだぞこれ。

 

カタカタカタカタ

会議室の中にはパソコンを叩く音が鳴り響く。誰一人として私語をせず、会話も仕事関係の簡単なものしかなかった。

 

仕事に熱中していたらあっという間に解散の時間となった。

 

「みんな今日もお疲れ様ー。明日もよろしくねー!」

 

その声を合図に解散していく。

しかし俺は残っていた。

 

カタカタカタカタ

雪ノ下は解散後もパソコンとにらめっこしている。

俺も仕事が残っているので残っていた。

 

カタカタカタカタ

雪ノ下の無機質なキーボードを叩く音が響く。

と、雪ノ下が顔を上げて、

 

「ねえ、比企谷くん」

「なんだ?」

「なんでじっと座ってるだけなの?」

 

そう、俺は今パソコンとにらめっこしているのではなく、ただ単に自分の席に座ってるだけだった。

 

「え?仕事が残ってるからだよ」

「仕事してないじゃんー」

 

雪ノ下が不思議そうな顔でそういってくる。

 

「仕事はこれから入るんだよ」

「え?どういうこと?」

「お前の仕事が残ってるだろ?」

「…え?」

「だから、お前の仕事の記録を取るのが俺の仕事だってことだよ。だから、その、お前が放課後残るなら俺も残るってことだよ」

 

雪ノ下はしばらくぽかんとしたあと、なにか納得したような表情になった。

そして、その後満面の笑みを浮かべて

 

「そういうことなら、しっかり仕事しなさいよ、比企谷くん!」

「おう。当然だ」

 

 

 

 

続く




さて、文実も着々と進んでますね。
次回投稿は6月28日の17時です。

感想などよろしくおねがいします。

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